オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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エ・ランテルの魔導王の邸宅

 戦争が終わり、帝国と王国は無条件降伏して両国はナザリックの属国となり、帝国には巨額の賠償金を分割払いで王国からエ・ランテルとナザリック地下大墳墓一帯の土地を受け取り、ナザリックは国を興す事になった。

 王の名は様々な守護者達から出たがコキュートスの案がアインズは大層気に入り、今後はアインズ・ウール・ゴウン魔導王と名乗り、国の名はアインズ・ウール・ゴウン魔導国となったのだった。

 エ・ランテルに元々あった都市長の邸宅及び貴賓館を接収して、表向きの王城として此れから支配していく予定だ。

 

 都市長の邸宅及び貴賓館は、床は埃一つなく磨き抜かれて、色のついた少しばかり濁ったガラスが嵌め込まれた窓も綺麗に掃除されていて、天井に設置された《コンティニュアル・ライト/永続光》が掛かった照明も部屋の隅々までピカピカにまるで鏡のように磨かれていた。

 沢山ある部屋には立派な家具が置かれ、少し手を入れれば其処で暮らすこともできるほどに整備されていた。

 立派な家具の色は黒や茶色の落ち着いた色合いで、煌びやかでなく静謐さを前面に出した家具構成でアインズは気に入っていた。

 アインズ・ウール・ゴウン魔導王に渡す屋敷なのだから、失礼が無いように大掃除して家具を新しく配置したのだろう。

 

 先の連合軍との戦争でアインズは大幅な経験値の獲得を果たした。

 得られた経験値により、レベルは107となって始原の魔法を使える「プリミティブキャスター」の職業を2レベル上昇させ、新たな始原の魔法は、《世界小爆発》の系統の《世界中爆発》と《世界大爆発》、《滅魂の爪》の系統の《滅魂の波動Ⅰ》、後は《世界蘇生》、《世界再生》、周囲の者のあらゆる状態異常を治し体力も小さく回復させる《世界軽傷治癒》を得た。

 スキルは始原の魔法の威力上昇を取っていった。

 2レベル上昇した後に残った魂(経験値)を使い、アインズは表向きの王城となった邸宅の一室を改装した作業室でニニャと死の宝珠とソアが見守る中、始原の魔法《竜宝作成》で、あるアイテムの創り出していた。

 

「我に新たな竜の宝を!《竜宝作成》!ふう、ようやく出来たな〈戦士の指輪Ⅰ〉が、此れをコキュートスに与えれば武技を覚えることだろう」

『間違いなく武技を覚えるでしょう。ですがコキュートス殿は充分過ぎる程に強すぎます。武技の習得条件の一つ、鎬を削る緊迫した戦いはできないでしょう。どうされるのですか?アインズ様』

「確かにコキュートス様は背丈も大きいですし、戦いにならないんじゃないでしょうか」

「コキュートスさんに手加減して戦って貰えば!……駄目か、経験値にならないや」

「ふっ、この間、ギルドメンバーの私室の目録の中から〈人化の指輪〉が幾つか見つかってな。コキュートスには人化して貰うつもりよ」

 

 アインズが作成したアンデッドやナザリック・オールドガーダーと他少数の亜人種と人間が魔導国軍として、外の練兵場でコキュートスが訓練を行っていた。

 訓練を指揮していたコキュートスをナザリックの一般メイドが、魔導王陛下が御呼びになっていると呼びに来たのだ。

 コキュートスが一般メイドに連れられ、魔導王の邸宅で会議室を急遽改造して謁見室となった部屋の奥の高台に魔導王が立ち、黒宝珠の杖を持ったニニャとソアとセバスと戦闘メイド達とアルベドが1段低い位置で魔導王の両側の通路にずらりと立ち並び、世話係の一般メイド達が壁際に立って居た。

 コキュートスは魔導王の前まで歩き、片膝をつき挨拶した。

 

「只今参上シマシタ。御呼ビト聞キマシタガ、御用トハ何デショウ?」

「うむ、皆、楽にして良い。さてコキュートスには戦争で役に立って貰ったな、魔導国軍の兵への訓練も感謝しているぞ。その褒美だ、この〈戦士の指輪Ⅰ〉と〈人化の指輪〉のアイテムを与えよう。〈戦士の指輪Ⅰ〉は戦士職レベルが1上がる指輪だ。この指輪を身に付け鍛錬を積むとコキュートスでも武技を覚えられるだろう。まずは〈武技・斬撃〉か〈武技・双剣斬撃〉を覚えるのが良いかな。武技の鍛錬については後で死の宝珠に聞くと良い勉強になるぞ。休日や休み時間に遊びがてら〈人化の指輪〉で人となり、此方で用意した現地に合わせた遺産級や聖遺物級の弱めの装備とアクティブスキルは危険な時以外禁止の縛りで冒険をすれば緊迫感のある鍛錬が積めることだろう。お供は、カルネ村がナザリックの領地と成り、暇になったプレアデスのルプスレギナ・ベータを連れて行くと良い。冒険する時は、2人共に名前を変えておくようにするのだぞ」

「ハッ、畏マリマシタ。休日二何ヲスルカ悩ンデ居タノデ助カリマス。ルプス、冒険ノ時ハ宜シク頼ム。早ク冒険者デ鍛錬ヲ積ミ、一刻モ早ク最高階級二到達スルゾ」

「はい、お任せください。見事相方を務めあげて見せましょう」

「お前達、あくまで休日や休み時間に遊びで冒険して来いって話したよな。最高階級には、2人共ゆっくり成れば良いからな。あとルプス、楽にしろと言ったのだから口調も元の気楽な感じで喋って良いのだぞ」

「そっすか、いやーあの話し方はバレると恥ずかしいっす。コキュートス様、楽しんで頑張りましょうっす」

「ウム」

 

 コキュートスに下半身を隠すように布を巻いて貰い、試しに〈人化の指輪〉を嵌めて貰った所、青白い長髪と髭を生やした筋肉が異常に発達した長身の体を持つ渋いおじさんが現れた。

 コキュートスは、2本の腕を勢いよく回転させたり膝を屈伸させて調子を確かめている。

 

「ウム、腕ガ2本ノミトハ何ダカ物足リナイデスナ」

「うひょー、恰好良いっす。体触っても良いっすか」

「なかなか良い男振りではないか、だが言葉は、やはり片言か。喋るのはルプスに任せておく事だな。後で冒険に必要な〈読解の眼鏡〉や〈無限の背負い袋〉に二人分の装備を与えよう」

「カタジケナイ、有難ク頂キマス。シテ何処デ冒険スレバ良イデショウカ?」

「そうだな、王国と帝国は属国にしたし、ドワーフの国は私達が行く予定でもある。ローブル聖王国、カルサナス都市国家連合、スレイン法国だな。おすすめはローブル聖王国だ、ここで亜人達が群れを作って都市に襲撃を掛けているそうだから退治に行くのが良いんじゃないか?」

「デハ、ローブル聖王国デ冒険者ト成リマショウ。休日二亜人達ノ群レ相手二大暴レシテ見セマス」

 

 コキュートスの上半身をぺたぺた触っていたルプスは、あまりにもやり過ぎたのでユリに拳骨を喰らって悶絶していたので戦闘メイド達を下がらせた。

 コキュートスと其の日は冒険談義を繰り広げ、何日か経ち王国から黄金の姫、ラナー王女が人質代わりの政略結婚相手として来ることが決まった。

 

 さてラナー王女には、ナザリックの此の世界の支配に大きく貢献して貰った。

 王国の八本指、六腕の捕縛、王都の物資の回収そして馬鹿貴族共と第一王子のナザリックの襲撃と処分、王国と帝国の連合国軍の阿呆貴族達の殲滅と大軍の兵士達の死。

 それらにラナー王女は、計画立案から関わって貰った。

 ナザリックのアルベドやデミウルゴスも此の世界での知識が無いせいか、ラナー王女の計画を少々調整するに留めていたほどだ。

 

 謁見室では守護者達とセバスと戦闘メイドが両側の壁際に控え、アインズが奥の高台で簡易玉座に座って待って居た。

 ラナー王女と護衛のクライムが一般メイドに扉を開けられ、謁見室に入って来る。

 アインズの前まで来ると、ゆっくりと片膝をつき言葉を待った。

 クライムは戦闘メイドのナーベラルを見て、吃驚したような顔でラナー王女と同じく片膝をついた。

 

「さて、戦闘メイドのナーベラルを見て、此の声を聴いて分かったかも知れないが。どれ、この様にモモンに変身して見せるか」

 

 アインズが立ち上がり、顔に手をやると白い光が体全体を一瞬包み、漆黒の全身鎧姿のモモンになる。

 兜を取って英雄然とした素顔も見せてから、もう一度顔に手を当て体全体に白い光が瞬き、元の眼光が赤黒く光る髑髏の豪華なローブ姿の魔術師になった。

 クライムは、アインズがモモンに変身した姿を見て言った。

 

「なっ、騙していたのですか」

「騙していないさ。変装して実地調査していただけだ。それに今回の戦は、元々王国と帝国に非があり私達には非が無い事は伝聞でも掲示物でも知っているだろう?さて話は変わるがラナー王女、貴方の知略は王国では無用の物となっていたが、ナザリック地下大墳墓では違う、貴方をとても優秀であると評価しよう。私の部下と成り、その知略を此のエ・ランテルの邸宅で生かしてみないか。王国と帝国などの属国の運営、そして此の都市の運営を貴方に任せたい、部下も付けようじゃないか。褒美はそうだな、私との結婚はせずに、そこのクライムとかいう犬と王国の目を気にせず未来永劫仲睦まじく暮らせるというのはどうだ?守護者達、断っても殺すな」

「……分かりました、お引き受けします」

「ラナー様!本当に宜しいのですか?」

「クライム、私達が一緒になるには此のくらいの機会が無いと駄目なの。圧倒的な力を持つ国が譲歩しているの、此れを逃せばどうなるか分からないわ」

「くくくっ、契約は守ろう。ああ、モモンの正体は私だとは言うなよ、護衛で付いて来て控室で待って居る〈蒼の薔薇〉にもな。地上では全ての種族が平和に暮らせる都市を創るつもりなので、その為の政策を立案、実行するのだ。さて契約では未来永劫と言う話だったな、これを2人で使え、種族変更アイテムの一つ、天使になるための〈昇天の羽〉を2つ与えよう。ナザリック地下大墳墓に忠誠を誓い、大いなる利益をもたらす者には褒美が出る。此れからの働きに期待しているぞ」

「はい、有難く頂きます。見事な働きを御見せしましょう」

「……はい、ありがとうございます」

 

 アインズの言葉と褒美に対してラナー王女は、うやうやしく、クライムは苦渋の決断をしてラナー王女の為に不承不承ながら受け取ったのだった。

 

 ラナー王女とクライム君が謁見室から退室して、皆には持ち場に戻るように指示を出した。

 デミウルゴスやアルベドは流石はアインズ様とか言ってるが、実際は俺には政治家とか王様とか無理なんだよな、出来る奴に任せるのが一番だ。

 ラナー王女は、敏腕らしいから大まかな政策を決めておけば、それに合わせて細かな調整もしてくれるだろう。

 クライム君もいきなりで驚いたのか不躾な口調だったが、ラナー王女がいればやがて治まるに違いない。

 クライム君を犬呼ばわりしてしまったが、ラナー王女からの要望なんだ、我慢して欲しい。

 しかしラナー王女もクライム君に歪んだ愛情を向けてるなあ、こんなの現実世界でも珍しいぞ。(まったく無い訳では無い、むしろ現実世界の特殊な性癖だらけの中でも穏当な方というのが人の業の深さと言える)

 さて法律にも魔導王と側近が最上位に存在し、庇護下にある者たち全てが平等に扱われると載せないといけないな、部下達に指示を出して置こう。

 金儲けだが既にエ・ランテルの都市の税収、属国からの税収も合わせ、これに今度始める労働用アンデッドの貸し出しでの金額も合わせて考えると莫大な金額が手に入る。

 これだけの金が動けばセバスの宝石売りや霊薬売りはしなくても良さそうだが、まだ支配地になっていない場所への隠れ蓑としての商売はやるべきだろう。

 セバスは、ローブル聖王国にでも行商に出して、ソリュシャン・イプシロンとニニャの姉のツアレニーニャを補助にすれば良い情報も集まるな。

 ドワーフの国へは、以前に帝国の禁書庫も探って入口までの古い交易用の地図を見つけてあった。

 この古い地図が何処まで信用できるのか、入口が崩れてないかは行ってみないと分からない。

 アインズ・ウール・ゴウン魔導国として、モモンにドワーフ国の発見、調査、探索、交渉の依頼を名指しで出すか。

 あれ?今、モモンは、国家間の戦争に参加した所為で銅級冒険者だったよな、銅級冒険者が探索任務なんて上級の依頼を受けられたかな、名指しの依頼なら大丈夫だったか?

 うーむ、名指しなら昔にンフィーレアの護衛依頼を受けた事があったな、いけるぞ。

 アインズは、新たな冒険への期待に赤黒い眼光を輝かせて、ナーベラルとソアとニニャと共にドワーフ国に行く準備をするのだった。




・《滅魂の波動Ⅰ》
 オリジナル始原の魔法。
 元ネタは、原作の《滅魂の吐息》で、此方では黒いレーザーのように吐き出します。
 様々な始原の魔法があり、低位や中位の始原の魔法があるそうなので登場させました。
 手で短距離に黒い波動を送り、波動に触れた者は抵抗の余地なく一瞬で消滅させる魔法。
 《滅魂の波動Ⅱ~Ⅲ》という系統の始原の魔法がある。
 Ⅰ~Ⅲは発音しなくても魔法は発動する。(最も範囲、攻撃力のある魔法が選ばれる)
 Ⅲだと長距離を黒い波動が襲い、波動に触れた者は抵抗の余地なく一瞬で消滅させるだろう。

・《世界軽傷治癒》
 オリジナル始原の魔法、低位の始原の魔法。
 術者以外の周囲の者のあらゆる状態異常を治し体力を小さく回復させる(アンデッドも回復する)。魂(経験値)を使えば自らの状態異常を治し体力を回復させる事も可能です。
 《世界中傷治癒》、《世界重傷治癒》、《世界大治癒》という系統の始原の魔法がある。

・〈戦士の指輪Ⅰ〉
 オリジナルアイテム
 アインズが魂(経験値)を使い、始原の魔法《竜宝作成》で創り出した指輪。
 戦士職レベルが1上がる指輪、ナザリックの者が身に付け、鍛錬を積むと武技が覚えられる。
 元ネタはツアーが創り上げた戦士としての技量が上がる指輪です。
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