大裂け目の吊り橋前に建つ砦では、総司令官に指令を受け、ドワーフ兵達が《ライトニング/雷撃》と同じような効果のあるマジックアイテムを撃ち続け、ドワーフの三名の魔術師が第三位階の《サンダーボール/雷球》や、第二位階の《サンダースピア/雷槍》の魔法でクアゴアの大軍勢を迎撃しているが吊り橋のクアゴアを単純に撃退できずに押され気味だ。
吊り橋は3人が横に並んで歩けるほどでハムスケも余裕で通れる程の幅があり、太い縄と分厚い板で出来ており、ドワーフの戦士達は雷属性が付与された弩で攻撃しているが金属耐性のあるクアゴアには、それほど効かず、目に当たらなければ問題無いとばかりにクアゴア達は片腕で目元を隠しながらマジックアイテムの《雷撃》や魔法を避けつつ砦に近づいている。
モモンは、総司令官に近づきつつ助太刀を大きな声で打診した。
「総司令官殿!、クアゴアに押されているようだが助太刀は必要か?」
「援軍か、頼む戦線が崩壊しそうなんだ。手伝ってくれないか」
モモン一行は雷魔法を射撃しつつドワーフ兵に混じり戦いを始める。
サルビアさんに何が出来るか聞いてみると、補助系魔法詠唱者と判明したので持続回復以外の回復魔法は私には必要ないので使わない様に頼んでおいた。
サルビアさんがドワーフ兵達も含めた皆に効果範囲を拡大した補助系の魔法を掛けて、ハムスケは魔法使い組を前に立つ事で守っている。
「行くよ、《ワイデンエクステンドマジック・グレーターフルポテンシャル/魔法効果範囲拡大持続時間延長化・上位全能力強化》、《ワイデンエクステンドマジック・グレーターラック/魔法効果範囲拡大持続時間延長化・上位幸運》、《ワイデンエクステンドマジック・リジェネート/魔法効果範囲拡大持続時間延長化・生命力持続回復》、《ワイデンエクステンドマジック・ブレス・ウェポン/魔法効果範囲拡大持続時間延長化・武器祝福》、《ワイデンエクステンドマジック・ストライキング/魔法効果範囲拡大持続時間延長化・打撃》、《ワイデンエクステンドマジック・エレメンタル・ウェポン/魔法効果範囲拡大持続時間延長化・精霊武器》」
「此処からは敵は一歩も通さないでござる」
ドワーフ兵達の体や持っている弩に魔法による上昇効果が掛けられ、弩には魔法《精霊武器》で〈電撃〉の力が込められたのか稲光のような物が纏わりついた。
モモンは自らの影に向かってセキフを呼び出す。
「セキフ出て来い。フウマも全員出てきなさい」
「御意、只今参上しました」
「フウマを連れ、クアゴアに対して後方で陽動作戦を実行するのだ。行け」
フウマは、ヒューマノイドタイプの中でも忍者系統のレベル80を超えるモンスターで素手戦闘や特殊技術に長けており、後方を忍術で攪乱するには最適のモンスターだ。
セキフとフウマ達は、スキル〈闇渡り〉でクアゴアの大軍勢の後方へと影から影へと短距離転移を繰り返して出現し、金属耐性のあるクアゴアに素手戦闘で斬り裂いたり、関節技で相手の首を圧し折ったり腕を捻じ曲げたりさせては、スキル〈闇渡り〉で影へと転移を繰り返して相手を翻弄する。
モモンは忍者達の活躍を見てから、中空の闇の中から雷が付与された大弓を取り出し、吊り橋を通らねばならない為に直線状に集まって進軍するクアゴアの大軍勢に向け、雷が付与された矢を背中の矢筒から取り出し、当たるを幸いとばかりに次々に撃ちまくった。
大弓の矢は、雷に弱いとされるクアゴアに当たると金属鎧並みの硬度を誇る毛皮を貫き、一度の弓引きでクアゴア達の体を抉り抜き、吊り橋から何匹も撃ち落していく。
「こう狭いと撃てば当たるな。魔法よりも私の大弓の方が速いからな」
ドワーフの戦士達も大喜びで更に雷が付与された弩でクアゴアを射抜いていった。
「がははっ、儂の弩でクアゴアが雷で痺れとる。ざまあないの」
「ごちゃごちゃ言っとらんと、早よ撃て。クアゴアはまだまだ居るぞ」
ナーベやニニャと死の宝珠は《チェイン・ドラゴン・ライトニング/連鎖する龍雷》をそれぞれ詠唱し、手を打ち合わせると白い稲光が弧を描き、2匹の身体を捩る龍のごとき白い雷撃がクアゴアに襲い掛かり、近くに居るクアゴアへと続けて攻撃をし続けた。
ソアは《サモン・プライマル・エアエレメンタル/根源の風精霊召喚》で〈プライマル・エアエレメンタル/根源の風精霊〉を呼び出し〈根源の風精霊〉が突風でクアゴア達を押しのけ吊り橋から落としたり、落雷を落としてクアゴア達を吹き飛ばしていた。
「やったー!、〈根源の風精霊〉偉い偉い!」
モモン一行が戦線に加わった事でクアゴアの大軍勢に押されつつあった所を大きく巻き戻し、遂には反対側の吊り橋まで押し込んだのだ。
クアゴア達は新たなモモン一行の力に動揺し、大幅に数を減らした事で此のままでは勝てないと判断したのか赤い毛を胸や頭部分に生やした上位種と思われるレッド・クアゴアに退却を命じられ引いていった。
セキフとフウマ達はクアゴアの大軍勢を追撃していたが、充分に追い払ったとモモンが感じたので帰還を命じてモモンの影に潜り込んだ。
総司令官は額の汗を拭いながら、モモンに礼を述べる。
「ふぅー、やぁ助かりました。後ろの大扉を閉めて籠城戦をせねばならんかと思ってましたからな。摂政会に報告せねばならんのですが、モモン殿も報告の為に是非来ていただきたい」
「ええ、分かりました。ゴンド、すまないが一緒に来てくれないか摂政会に呼ばれてね、私達だけではドワーフの事は良く分からないから助言を頼むよ」
「おう、ええぞ。しかしあんた等は凄まじく強いな。クアゴアの大軍勢を追い払ってしまうとはな。儂からも礼を言わせて貰おう。ありがとよ」
総司令官に摂政会議場まで案内され、ゴンドと共にモモン一行は応接室のような所で待たされた。
待たされている間に、ゴンドからドワーフが如何に都市を切り崩しながら逃げ廻り、とうとう此の都市しか残されていないことを聞かされたモモンは其れは残念ですねという風に装いながら良い機会だと考えていた。
ドワーフには、英雄級の者は昔は居たようだが今は居ないようだ。
ならばモモンの力は高く摂政会に売り込めるに違いない。
サルビアさんは、廻りの物が珍しいのかキョロキョロと辺りを見廻しては、手触りを楽しむように物に触っていて危なっかしい事この上ない。
飾られた壺を触って割りそうなので、後で色々な物を見て触らせてあげますので大人しくしてて下さいと言って静かにしてもらった。
なんかしょんぼりと椅子に座った美女を見ると何とかしてあげたくなるけど我慢しないと、そもそもあの姿は仮の姿を創ってるに過ぎないんだから。
そうして待っていると摂政会の準備が整ったのか、係の者が呼びに来てモモン一行は摂政会に参加する。
摂政会では総司令官がモモン達の活躍が無ければ此の街を放棄する羽目になっていたと言われ、摂政会の参加者から感謝の言葉を貰うのだった。
酒造長や食料産業長や洞窟鉱山長からは特にモモンに対して厚く御礼を言われた。
「いやー助かったよ。酒樽ごと逃げようかと運ぶ準備をしていてね。無駄になって良かった」
「うむ、新しく畑を作るにしても畑に適した土地を見つけなくちゃならん大変な仕事だ。良かった良かった」
「逃げた先に良い鉱脈があるとも限らないしな」
摂政会の長達に恩が売れたようでなによりだ。
さて摂政会に渡したアインズ・ウール・ゴウン魔導国の親書は読んで貰えたかな?
「ええ、ドワーフの戦士達が苦戦していましたので加勢させてもらいました。クアゴアの大軍勢を退けられて良かったです。さて以前お渡ししたアインズ・ウール・ゴウン魔導国の親書は如何ですか?アインズ・ウール・ゴウン魔導国との国交、酒や野菜とドワーフの武器や道具の取引、アンデッド兵や安価なアンデッドの賃借、ルーン技術の学者やルーン工匠の招聘ぐらいだったかと思いますが如何でしょう?」
総司令官や洞窟鉱山長は、アンデッドを使った警備や採掘については賛成との意見を出し、他の長達も仕方ないと承認した。
クアゴアの大軍勢を見てしまえばドワーフ兵だけでは足りないだろうし、危険を伴う採掘には死んでも惜しくないアンデッドは最適に思えるのだろう。
他の事については、長達は顔を見合わせて、商人会議長が代表としてモモンに問いただした。
「アインズ・ウール・ゴウン魔導国というのはアンデッドが治める国と書いてあったが、そこと国交を結ぶのは恐ろしいわい。取引については良い条件に見えるな、もう少し詳細を詰めてから答えを出させて貰おう。ルーン技術の学者やルーン工匠の招聘というとるが、ルーンなんて古臭い技術を欲しがるアンデッドとか怪しすぎるわい。もし魔導国にルーン工匠を派遣するにしても安全かどうか確認させて貰う為に調査団は受け入れて欲しいの」
「国交については、私達のような冒険者チームに全権を委任した使節団として派遣する聡明さと寛容さを評価して頂きたいですね。実際に大裂け目での私達の活躍でドワーフ国は助かりましたでしょう。取引については詳しい者が此方に来られるので其の者と話して下さい。魔導国にルーン工匠を派遣した場合の調査団の受け入れも毎年でも大丈夫です」
モモンは、ドワーフの長達の疑問に答えつつ、続けて話し出した。
「ドワーフ国は次々に都市を落とされて後が無いとゴンドさんに聞きました。そこで私共と案内役のゴンドさんで失われた都市の解放と旧王都の奪還を目指して冒険の旅に出ようと思います。様々な場所を見つつの解放作戦に成るので時間は掛かりますが、必ずやドワーフの国の王都の竜達を制圧し取り戻して御覧に入れましょう。報酬は王城の宝物庫の宝を私が両手に持てる限り頂きます。如何でしょうか?」
「竜を倒す?そんな事ができるのか。竜を制圧して王都を解放して貰えるなら、宝物庫の宝を一抱え程度なら安いもんだ。摂政会からも是非お願いしたい」
摂政会に王都解放の条件について承諾して貰い、礼を言ってから摂政会議場を出た。
モモンは大裂け目の砦に向かって歩きながら、ゴンドに向かって話しかける。
「ゴンドさん、宝物庫にあるかもしれないルーンの技術書と魔導書が手元にあれば、他のルーン工匠も魔導国に来て頂けますかね?」
「そうさな見た事もない技術が書かれているならルーン工匠も魔導国に来るのも問題はなかろうよ。ルーンの魔導書なんかは儂は聞いた事が無かったもの。他にも王都の技術書ならルーンについての未だ見ぬ知識が有りそうに思うのよ。まぁ後は美味い酒と食い物があれば言う事なしだな」
「なるほど美味い酒と食い物ですか」
大裂け目の砦でドワーフ兵達に挨拶しつつ、吊り橋を渡り、ゴンドの案内で長い間を歩き、放棄都市となった南にあるドワーフの都市フェオ・ライゾへと差し掛かろうとしていた。
岩陰に隠れてフェオ・ライゾを伺うと、敗走したクアゴアの大軍勢と此の放棄都市に駐屯するクアゴアの軍勢が集まり、何やら相談しているようだ。
既に連絡役のクアゴアが何体か行き来しているようだが、軍勢が動く気配は無いので問題は無いだろう。
先の戦いで吊り橋の向こう側とは言え、逃がしてしまったのは経験値が惜しかったように思うので今回は一網打尽と行こう。
「セキフ、カシンコジも全員出て来い。奴らを此処で仕留めたいので逃げ場所に幻術を張り、逃げ道を塞いで来い。終わったら連絡に来なさい」
「御意、早速取り掛かります」
モモンの影からセキフとカシンコジが5体現れたかと思うと、命令を受諾したとセキフが言ってカシンコジ達を連れ放棄都市フェオ・ライゾの方々へと散って行った。
カシンコジはヒューマノイドタイプの忍者系統のモンスターでレベル80を超え、幻術に長けるモンスターだ。
カシンコジ達が居れば問題無く出入り口を幻術で隠せるだろうよ。
数十分経つとセキフとカシンコジ達はモモンの前で膝を付き、無事に出入り口全てに幻術を掛け終え、クアゴア達が出入り口を見つけられず動揺を始めていると報告した。
「宜しい。では今から放棄都市フェオ・ライゾのクアゴアの大軍勢を排除する。案内役のゴンドさんは俺達の後ろで待機。ソアは魔法《イリューソリィ・ドラゴン/幻想龍》で雷の竜を出してくれ。ナーベは私の右からニニャは左から雷の魔法を使い、遠くのクアゴアを優先して攻撃して欲しい。私とハムスケは近づくクアゴアを斬る役目だ」
「むう、クアゴアは金属耐性があるのでござろう?母上、某の尾に雷の魔法を付与して欲しいでござる」
「はい、行きますよ。《ワイデンエクステンドマジック・エレメンタル・ウェポン/魔法効果範囲拡大持続時間延長化・精霊武器》……」
サルビアさんに様々な補助魔法を我々に掛けて貰い準備万端だ。
「さあ皆、行くぞ。クアゴアの大軍勢を倒すぞ」
放棄都市フェオ・ライゾのクアゴアの大軍勢は逃げ場所を幻術で潰され、モモン一行によってあっと言う間に全員が倒されている。
ニニャがナザリックに連絡して、シャルティアとナーベが黒い渦の転移門の中へと次々にクアゴアの大軍勢の死体を放り込んでいる。
「シャルティア、いつも死体運びを頼んで済まないな。こんな真似を頼めるのは、お前しか居ないんだ。いつかお前にも別の役目をやるから其の時まで我慢してくれないか」
「そんな滅相も無いでありんす。至高の……、ゴホン。モモン様の御命令なら何なりと致しましょう。では失礼するでありんす」
「シャルティア様、お疲れさまでした」
「お疲れさまです」
「お疲れさま!」
ゴンドは黒い渦に入ったシャルティアを見て、転移系の魔法とシャルティアとナーベの高レベルによる怪力を始めて見たのか驚いていた。
「へぇー驚いた。あの嬢ちゃん達、あんなに簡単にクアゴアを放り投げて黒い渦の中に全員運びやがった。力が強いんだな、あんな細腕なのに」
「シャルティアは魔導国の守護者という階級にいるとても偉い人だよ。私は知己があるので親しくさせて貰っているがゴンドさんは気を付けなくちゃ首が飛ぶよ」
「ひぇー、首か、物理的に首が飛びそうじゃ。あんた親しくしてるって言ってたが、あれは其の程度の感情ではなさそうじゃ。あれはお主に惚れとるな」
モモンは、シャルティアが惚れてるのは骸骨のアインズなんだけどなと思いつつ、笑って次の指示をゴンドに出した。
「はははっ、さてゴンド。放棄都市フェオ・ライゾは解放したが次は何処へ行けば良いんだ?」
「うむ、放棄都市フェオ・ライゾから旧王都フェオ・ベルカナに向かう途中にある三つの難所の一つで溶岩の流れる河。地表から数キロも潜っていない浅い場所にマグマが流れている不思議な溶岩地帯よ。溶岩の河には体長五十メートルを超える昔の冒険者が言うには提灯アンコウのようなモンスターの〈ラーアングラー・ラヴァロード〉が泳いでいるんじゃよ」
「ほう、〈ラーアングラー・ラヴァロード〉ね、どの程度の強さかな。そんな浅い所でマグマか、何かカラクリがあるな」
「うむ、私が大裂け目の底であった天然の転移門が此処で開いて、其処からマグマが流れ込んでいるんじゃないかな」
サルビアさんによる説明を聞いたモモンは、この山では天然で転移門が開いていたっけとサルビアさんに聞いたのを思い出していた。
サルビアさんは、大裂け目の底で天然の転移門が開いてる間は子供達と暮らしていたって言うしな。
モモン一行と案内役のゴンドは、旧王都フェオ・ベルカナに向かう途中にある三つの難所の一つの溶岩地帯に向けて歩きだすのだった。
・《ストライキング/打撃》
オリジナル魔法
術者が指定した範囲内の武器1つに、追加ダメージを与える魔法を付与する。
元ネタはD&Dにある神官系第3位階魔法《ストライキング》です。
・《エレメンタル・ウェポン/精霊武器》
オリジナル魔法
魔法でない武器を+1の魔法の武器にし、さらに[酸][電撃][火][雷鳴][冷気]の内1種を選択して追加ダメージを与える。
元ネタはD&Dにあるドルイド系第3位階魔法《エレメンタル・ウェポン》です。