オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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ドワーフの国の溶岩地帯

 案内役のゴンドに連れられモモン一行は、フェオ・ライゾからフェオ・ベルカナに向かう途中にある三つの難所の一つである溶岩の流れる河に辿り着いた。

 眼下の浅い場所には、溶岩の河を泳いでいる体長五十メートルを超える巨大な提灯アンコウのような〈ラーアングラー・ラヴァロード〉がいた。

 直上に居るモモン一行には気付いてないのか悠々と泳いでいる。

 

 マグマ対策に〈炎耐性の指輪〉とマグマに飲まれると呼吸困難になるから〈水中呼吸の指輪〉か、そもそも魚タイプのモンスターは水、この場合は溶岩に潜るから戦いにくいんだよな。

 仕方ない、魔法を解禁するか。

 以前に〈ナザリック・キング(エクスキューショナー)〉の職業レベルを取る事で、鎧と剣を自由自在に扱えるようになっているから全身鎧でも問題は無いが、魔法使いの衣装で無いせいで魔法使い用の魔法の威力補正とか魔法効果が上がるとかMP増加の恩恵とかの魔法が込められて無いが我慢しなくてはな。

 

「うむ、皆に念の為に〈炎耐性の指輪〉と〈水中呼吸の指輪〉を人数分ほど配ろう。ハムスケは炎耐性と水中呼吸の腕輪をそれぞれ尾に付けるのだ。まずは超位魔法の《ザ・クリエイション/天地改変》で〈ラーアングラー・ラヴァロード〉の身動きを封じる。その後は皆で囲んで叩くぞ」

 

 超位魔法の《ザ・クリエイション/天地改変》は、ユグドラシルでは火山地帯の熱気からのダメージや氷結地帯の凍結ダメージを抑えるために用いられたフィールドエフェクトの変更を可能とする超位魔法だ。

 ユグドラシルでは一つのエリアが効果範囲で普段は何の効果もない平原にして敵の上昇効果を掻き消したり、敢えて逆属性の地形効果を与える事でモンスターに様々な下降効果を与える事も可能なのだ。

 

「では、超位魔法を唱えるぞ。皆は私から離れるように立体魔法陣に干渉すると何が起こるか分からないからな」

 

 モモンは、10メートルもの蒼白いドーム状の立体魔法陣を展開させる。

 

「へぇー。お前は、戦士のような格好で魔法が使えるのか。驚きじゃな」

「ええ、私は魔法戦士でね。このちょっと変わった魔法も使えるんですよ」

 

 しばらくすると蒼白いドーム状の立体魔法陣の発光が強くなり、準備は整った。

 

「この地域一帯を氷結した吹雪地帯に変えよ。《ザ・クリエイション/天地改変》!」

 

 溶岩が凍り付き、〈ラーアングラー・ラヴァロード〉は体の上半分を出した状態で身動きが取れなくなり、体に纏わり喰いつくかのように食い込む氷河を割ろうと体全体を揺らして氷を砕こうとしている。

 雲が洞窟の天井付近に厚く浮かび、厚くて灰色の雲から吹雪が風と共に降りしきった。

 

「うへぇ。まるで外の雪山のようじゃ」

「モモンさん、此処から魔法を撃ちましょうか?」

「モモンさーん、魔法で片が付くなら接近戦を挑まなくても宜しいかと存じます」

「いや、当初の予定通りに行こう。魔法使い組は上の通路から下で藻掻いている〈ラーアングラー・ラヴァロード〉を私とハムスケの攻撃を邪魔しないように撃て、魔法は氷系統が望ましいが炎以外なら何でも良い。ハムスケ、下へ降りて身動きが取れない〈ラーアングラー・ラヴァロード〉を斬るぞ、付いて来い」

「了解でござるよ、殿。付いていくでござる」

「殿。補助魔法を2人に掛けますので少々お待ち頂けますか。《レジスト・コールド/冷気耐性》、《ツインマジック・レジスト・ファイアー/魔法二重化・炎耐性》、《ツインマジック・ウォーター・ウォーキング/魔法二重化・水上歩行》、《ツインマジック・ジャイアント・ストレングス/魔法二重化・筋力倍加》、《ツインマジック・グレーターフルポテンシャル/魔法二重化・上位全能力強化》、《ツインマジック・グレーターラック/魔法二重化・上位幸運》、《ツインマジック・ブレス・ウェポン/魔法二重化・武器祝福》、《ツインマジック・エレメンタル・ウェポン/魔法二重化・精霊武器》」

 

 サルビアさんに様々な補助魔法を掛けて貰い、双大剣には〈冷気〉が白い霜が煙るように付与され、〈ラーアングラー・ラヴァロード〉が氷河に嵌り、身動きが取れなくなった元溶岩へと岩を次々に飛び移り降り立つ、凍った溶岩に雪が積もり、本来滑りやすいが魔法《水上歩行》の効果でしっかりと大地を踏みしめる事が出来た。

 〈ラーアングラー・ラヴァロード〉は此方を睨んだかと思えば口から溶岩を吐きかけて来た。

 溶岩自体は〈炎耐性の指輪〉とサルビアさんに魔法《炎耐性》を掛けて貰ったので殆どダメージは無いのだが、ダメージの無い溶岩は泥のような物なので汚れたくないから適当に避けつつ頭を双大剣で斬り裂いた。

 ハムスケも〈武技・超斬撃〉を使って〈ラーアングラー・ラヴァロード〉の片目を切り裂き、魔法使い組も崖の上から盛んに胴体目掛けて雷や氷や石弾の魔法攻撃を次々と撃ち下ろしている。

 〈ラーアングラー・ラヴァロード〉の吐き出す溶岩を避けつつ頭を断ち割り、巨大な提灯アンコウは地響きを立てて固まった溶岩に頭をめり込ませた。

 

 良し、クアゴアの大軍勢を倒した事と〈ラーアングラー・ラヴァロード〉を倒した事でレベルが上がりそうだ。

 後でニニャに籠手を渡して貰って、レベルアップの儀式をするかな。

 此処から見渡してみると、確かに巨人でも通れるような大きな天然の転移門から溶岩が固まった溶岩を溶かして流れ込んでいるのが分かった。

 やはり、この山は天然の転移門が出来やすい土地のようだな、まあ天然の転移門の先を調べるのは後回しとして休憩を取ろう、もう少ししたら超位魔法《ザ・クリエイション/天地改変》の効果時間も過ぎてしまうしな。

 

 上の崖に戻ったモモンとハムスケは案内役のゴンドに休憩を取ろうと言い、両者一行は、それぞれモモンの天幕とゴンドの天幕の設営の準備に入った。

 モモンが建てた天幕の中でモモン一行は、ナザリックに帰る為に中空に浮かぶ黒い渦のような《ゲート/転移門》を開き、ナーベを留守番に残し、サルビアさんを今回はナザリックの皆に紹介する為に連れて《転移門》を潜る。

 ナザリックの地上に帰り、髑髏の魔術師の姿に戻り、その姿をサルビアさんに見せた。

 

「驚いたか?私こそはナザリック地下大墳墓の主、アインズ・ウール・ゴウン魔導王だ。この格好の時は、そう名乗っているよ。冒険者の全身鎧の恰好の時はモモンと呼ぶようにな」

 

 ニニャの持つ黒宝珠の杖に嵌った死の宝珠が挨拶をサルビアさんに述べた。

 

『初めまして、死の宝珠と申します。知性あるアイテムというのは珍しいそうで冒険の時は喋れない設定なので、サルビア様の方でも私が困った時に助け舟を出す等よろしく御願いします』

「……ええ、その驚きました。ハムスケ、此の強大なアンデッドの魔術師が貴方の殿なのよね。で、此方の杖に嵌った黒くて鈍い輝きの球が死の宝珠さんね」

「そうでござるよ。殿は実は、とっても強い魔法使いでござる。死の宝珠殿は物知りでござるよ」

「うむ、納得できたようで何よりだ。ハムスケ、サルビアさんを連れてナザリックの皆に挨拶して来なさい」

「分かったでござる。ささっ、母上、某と一緒に挨拶回りでござるよ」

 

 ハムスケがサルビアさんと一緒に挨拶回りに行ったのを見て、ナザリック地下大墳墓敷地外の地上に建てられた1階建ての小屋でプレアデスのユリから転移用のリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを人数分受け取りソアとニニャを従えて、玉座の間の前まで転移して中に入り、アインズのレベルアップの為にニニャの籠手【強欲と無欲】で貯めていた経験値を使い、儀式を行う。

 アインズは、レベルは108と成り「プリミティブキャスター」の職業を1レベル上昇させ始原の魔法を3つ習得した。

 《滅魂の波動Ⅰ》の系統の《滅魂の波動Ⅱ》、あらゆる鍵や魔法の鍵も1日に1回開けられる《世界解錠Ⅰ》、転移阻害の結界《世界歪曲障壁》を頭に浮かんだリストの中から選んだ。

 

 《世界解錠Ⅰ》は冒険する際に必要な鍵開けが、魔法でどうにもならないような場合を考えて習得した。

 そのような場合は少ないだろうが零ではないからだ。

 又、そのような場合にこそ貴重なアイテムが隠されているのが、ユグドラシルでは普通だったからで昔は盗賊職のスキルを取っていた仲間に鍵開けして貰っていたが、今はギルドに盗賊関連のスキルを持った者は居るが任務中で手が離せない、そこで自分で開けてしまえば良いと此のスキルを取ったのだ。

 

 アインズは儀式を終え、ニニャとソアの方を振り向くとニニャと死の宝珠がクアゴアの大軍勢を倒したのでレベルを1上昇したそうで魔法選びに困っているようだ。

 アインズはニニャと死の宝珠の魔法選びに付き合い、その後、時間通りに夕食と朝食を食事当番の一般メイドに憑依して取り、挨拶回りを済ませたハムスケとサルビアさんを連れ案内役のゴンドが居る溶岩地帯に戻った。

 冒険者の漆黒の全身鎧にマントを付けた姿に白い光が体を照らした一瞬の間に戻り、跪いたナーベに片手を上げて、立ち上がったナーベを連れ天幕の外に出ると、外では焚火で料理を作っているゴンドが居た。

 

「おう、おはよう。早いな、飯を済ませるから少し待ってな」

「おはよう、今日は崖下の溶岩河に浮かぶ天然の転移門が何処に繋がってるか調べるつもりだよ」

「……おはよう」

「おはようございます。ゴンドさん」

「おはよっ!」

「おはようでござるよ。某たちはもう朝御飯を食べて来たので大丈夫でござるよ」

「おはようございます。ハムスケったらあんなに食べて動けるのかしら心配だわ」

 

 ゴンドが、水筒に魔法を付与して、そこから水が一日に一定量出て来るのを利用して、焚火の上で組み上げられた鍋に水をたっぷりと貯め、乾燥野菜の携帯食を細切れにして温かいスープに戻している。

 スープを飲み、パン代わりのパサついた携帯食をスープに浸して食べつつ、ゴンドはモモンに聞いた。

 

「なあ、あんな天然の転移門なんて調べてどうするんじゃ。溶岩しか出ておらんじゃないか」

「何が有るか何が無いかは調べない事には分かりません。さあ食べ終わったなら支度してください。此処で待って貰いますが、案内役のゴンドには天然の転移門が閉じてしまったり、一日経っても我々が帰って来なかったり、我々が天然の転移門に潜っている間に敵がやって来た時には荷物を纏めて逃げ出して貰わないといけませんからね」

「がはははっ、もしモンスターと遭遇した場合は、〈不可視化のマント〉を被って不可視化になって逃げだすから儂の事は心配いらないぞ」

 

 案内役のゴンドが身支度を整え、魔法を掛けたモモン一行は、ゆっくりと崖を魔法《レヴィテート/空中浮揚》の効果で降下して行く、魔法《ウォーター・ウォーキング/水上歩行》で溶岩の河に降り立つと、あらかじめ装備していた〈炎耐性の指輪〉と魔法《レジスト・ファイアー/炎耐性》で溶岩の熱さは、ほとんど感じない。

 念の為に〈水中呼吸の指輪〉も装備しているので、溶岩を頭から被せられても呼吸が出来るので窒息は、しない。

 溶岩の河の上流へ進むと巨大な天然の転移門が見えてきた。

 天然のせいか魔法での転移門と違い黒い渦で無く、向こう側の景色が見て取れる。

 天然の転移門を覗いて見ると、溶岩溜まりの様のように見え、其処から溶岩が転移門に溢れ流れ込んでいるようで、〈ラーアングラー・ラヴァロード〉の幼体が何体も流れる溶岩の上で飛び撥ねているのが見えていた。

 

「よし、溶岩溜まりのようだな。皆、警戒行動に移れ。隊列は、私とハムスケが先頭だ。一番後ろはセルビアさん、真ん中はソア、右はナーベ、左はニニャだ。……では行くか」

 

 モモン一行は、巨大な天然の転移門を潜り、地下の溶岩流から昇って溶岩を吹き出す火山の山頂付近に着いた。

 此の山は一体何て名前の山なのか、場所はどの辺りか、まずは周辺を調べてみようかな。

 

 




・《レジスト・コールド/冷気耐性》
 オリジナル魔法、第1位階魔法。
 冷気に耐性を持たせる。術者を中心とした効果範囲内の全ての生物に有効。効果範囲は術者と共に移動していく。第1位階魔法。
 元ネタはD&Dにある神官系第1位階魔法《レジスト・コールド》です。

・《レジスト・ファイアー/炎耐性》
 オリジナル魔法、第2位階魔法。
 火や炎に対する耐性や抵抗力を上げる魔法の呪文。
 術者が指定した1体にしか効果がないが、普通の火では傷つかなくなり、魔法の火にもある程度の耐性を得る。
 元ネタはD&Dにある神官系第2位階魔法《レジスト・ファイアー》です。

・《ウォーター・ウォーキング/水上歩行》
 オリジナル魔法、第3位階魔法。
 接触した生物1体に、液体の上を歩けるようにする魔法。
 海水や淡水だけでなく泥や氷の上でも歩くことができるし、転んでも液体の中に沈むことはない。
 ただし温度などの効果から保護してくれるわけではないので、熱湯の上を歩けば熱いし氷の上を歩けば冷たいことに変わりはない。
 元ネタはD&Dにある魔力系第3位階魔法《ウォーター・ウォーキング》です。

・《ジャイアント・ストレングス/筋力倍加》
 オリジナル魔法、第3位階魔法。
 対象の筋力を巨人並みに強化する魔法。
 元ネタはD&Dにある魔力系第3位階魔法《ジャイアント・ストレングス》です。

・《世界解錠Ⅰ》
 オリジナル始原の魔法、低位の始原の魔法。
 あらゆる鍵や魔法の鍵も1日に1回開けられる。
 上位の魔法だと結界を閉じた空間として解いたり、解錠できる使用回数が増える。
 
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