オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

37 / 80
アゼルリシア山脈のラッパスレア山

 山頂から溶岩が噴き出し、ときおり爆発したように盛大に溶岩を吐き出していた。

 モモン一行は、魔法《ウォーター・ウォーキング/水上歩行》を掛けられている御蔭か沈むことなく溶岩の上を歩いている。

 岩肌が露出し草木も大部分が枯れ果てて溶岩の河が曲がりくねって流れていて、周囲には火蜥蜴や火炎属性の木や植物や小動物がうろついていた。

 

 さて、此処には人も居ないようだし、どうした物か。

 とりあえずドワーフの国近くの溶岩地帯から此処までは、天然の巨大転移門で繋がっている事を記しておかないとな。

 

 ニニャに冒険の記録帳に此処の事を書く様に指示していると、空から巨大な影が眼前に轟音を鳴り響かせ降り立つ。

 

「貴様ら、此のラッパスレア山の地上の主、〈エインシャント・フレイム・ドラゴン/古老の炎竜〉の住処と知っての侵入か!名を名乗れい」

 

 粉塵を巻き上げ地面を大きな4本の脚が踏みしめる、大きさは頭までが13~15m程で、その炎竜の肌は火炎が燃え盛るが如く真っ赤な鱗を生やし、山羊の様な天を衝く角を持ち、巨大な翼を広げ、長い首を伸ばして此方に問い掛けて来た。

 

 ドラゴンとしては、まだまだ弱いなレベル70を超えた辺りか。

 属性の偏ったドラゴンなんかはユグドラシル時代の狩場での良い獲物だったな。

 うーん、此の世界のドラゴンの素材が欲しいな、交渉してみるか。

 

 モモンは大きな声を張り上げて答えた。

 

「我々はアインズ・ウール・ゴウン魔導国の使者だ。私はモモン、こちらに居るのがハムスケ、ナーベ、ニニャ、ソア、サルビアだ。天然の転移門を潜ったら此処に出ていたんだ。貴方の住処だとは知らなかったのだ。許して欲しい」

「モモンさーん、この蜥蜴に謝る必要は……」

「ナーベは黙りなさい。ハムスケ、ナーベを抑えてくれ」

「分かったでござる。ささっナーベ殿、あっちに某と一緒に行くでござるよ」

 

 ナーベの口を押さえていた手をどけ、ハムスケに後は任せた。

 

「失礼した。本当に申し訳なかった。それで調査の為に此の辺りを調べさせて欲しいのと、できれば貴方の鱗か爪を頂けないだろうか?」

「うむ、天然の転移門か、それなら突然出て来ても不思議は無いか。調査と言ったが許すと思うか?お前達に分かりやすく言うと自分の家の庭に他人が入って来て調べさせてくれだとお断りだね。後、私の鱗や爪が欲しいだと冗談も大概にするのだな。私の機嫌が悪くならない内に、とっとと天然の転移門を潜って帰るが良い」

 

 うーん、確かに予約も無しに突然の訪問営業は断られやすいしな。

 此処は俺の営業の腕の見せ所だな、必ずや成功させてみせるぞ。

 

「そこを何とか。突然の訪問のお詫びの品としてアインズ・ウール・ゴウン魔導国の酒を樽で御用意しました。どうぞ御納め下さい」

 

 モモンは中空の闇から次々と溶岩の流れてない地面の上に酒樽を置いていくと、炎竜は中空から取り出しているのを驚いていたが、酒樽の山を見て取り繕うように咳をして話を続けた。

 

「オッホン、どうやら話が分かる方のようだ。これほどまでに謝られては仕方ない。ただし此処を調べるのと私の鱗や爪を分けるには条件がある」

「ほう、その条件を詳しくお聞かせ下さい。我々で出来る事ならやってみましょう」

「先ほど私はラッパスレア山の地上の主、と言ったな。このラッパスレア山の三大支配者は地上の私、地下の〈ラーアングラー・ラヴァロード〉、天空を支配している忌々しい不死鳥の〈ポイニクス・ロード〉がいるのだよ。条件と言うのは不死鳥の〈ポイニクス・ロード〉を倒すのを手伝って欲しいのだ。あの鳥の所為で私は翼を持っていても手酷く追い払われて低空しか飛べないのだ。見事倒せれば此処を調べるのも許そう。私の鱗や爪なんかも出来るだけ分けようじゃないか」

「ああ、地下の〈ラーアングラー・ラヴァロード〉なら我々で倒しましたよ。不死鳥の〈ポイニクス・ロード〉ですか、空を飛び回る敵は倒しずらいので貴方の背に我々を乗せて貰えるならやって見せましょう」

「地下の〈ラーアングラー・ラヴァロード〉を倒しただと。なんとなく力が有るとは思っていたが、其の力、どうやら本物のようだな。背に乗りたいなら乗るがいい、鞍でも何でも不死鳥の〈ポイニクス・ロード〉を倒せるなら我慢しようじゃないか」

 

 炎竜の身体に手綱代わりの縄を何重にも括りつけ、サルビアさんに補助魔法を掛けて貰い、空中から落ちても大丈夫なようにして貰う。

 死の宝珠には騎手として技量の上がる魔法を頼んだ。

 

「行きますよ、殿。《ワイデンエクステンドマジック・グレーター・プロテクションエナジー/魔法効果範囲拡大持続時間延長化・上位属性防御》《ワイデンエクステンドマジック・グレーターフルポテンシャル/魔法効果範囲拡大持続時間延長化・上位全能力強化》《グレーターマジックシール/上位魔法封印》《ワイデンエクステンドマジック・フォーリング・コントロール/魔法効果範囲拡大持続時間延長化・落下制御》」

『では《プロトタイプワイデンエクステンドマジック・ライダーレベルアップⅠ/魔法試作効果範囲拡大持続時間延長化・騎手職段位上昇Ⅰ》』

「準備出来たな、皆、縄を体に巻き付けて握れ。ハムスケは魔術師組の盾に成れ、魔術師組はハムスケの影から炎以外の遠距離魔法を唱えるのだ。ソアは、今回は炎竜の背に乗って移動するので移動できない〈叡者の王冠〉を身に付け皆に触れて貰って大儀式で魔法を唱えるのだ。炎竜さん、準備出来ました飛び立って下さい」

「飛ぶぞ、振り落とされても私は拾いに行かないからな、振り落とされない様しっかりとしがみついて置け」

 

 巨大な翼を広げ、空へと飛び立つ炎竜。

 瞬く間に雲を突き抜け、高空へと辿り着くと不死鳥の〈ポイニクス・ロード〉が待って居た。

 〈ポイニクス・ロード〉は不死鳥と言われているように体全体が燃えて真っ赤に成っており、羽ばたく度に火の粉が舞い散り、高速で高空を飛び交うレベル80を超える巨大な鳥だ。

 不死鳥の名の通り何度も復活するが、攻撃能力や防御能力は低くレベル70程度と成っている。

 〈ポイニクス・ロード〉は炎竜を見つけると後ろに回り込もうとしているが、炎竜が後ろ足の裏から連続で火球を出し、火球を連続爆発させる事で勢いを増して、空を爆速で飛び出し〈ポイニクス・ロード〉から距離を取り向き直った。

 

「何度も撃墜された時から編み出した魔法技術、燃費は悪いがお前の速度よりも速いぞ。さあ、モモン一行よ、奴には私の炎の吐息が効かないからお前達の魔法が頼みだ。奴を滅ぼすぞ」

「〈武技・七彩強化〉、〈武技・武器魔法付与:現断〉、〈武技・双剣魔空斬〉!」

「《マキシマイズトリプレットマジック・ピアーシング・アイシクル/魔法最強三重化・穿つ氷弾》」

「《マキシマイズトリプレットマジック・ドラゴン・ライトニング/魔法最強三重化・龍雷》」

「雷で痺れちゃえ!《オーバーマキシマイズトリプレットマジック・コール・グレーター・サンダー/魔法上昇最強三重化・万雷の撃滅》!」

 

 モモンの飛ぶ斬撃が空間を切り裂き、ニニャと死の宝珠が協力して放つ魔法《穿つ氷弾》が雨霰のように散弾じみた30本を超える数の人間の腕ほどの鋭い氷柱が辺りを薙ぎ払い、ナーベの魔法《龍雷》が敵めがけて落雷にも似た放電を発しながら竜の如く白くのたうち雷撃が中空を駆け、〈叡者の王冠〉で強化されたソアが大儀式で皆に力を分け与えられて雷系単体最強の魔法《万雷の撃滅》にて遥か高さから敵目がけて巨大な豪雷が降り注いだ。

 不死鳥〈ポイニクス・ロード〉は急旋回しつつ避けるつもりのようだ。

 〈ポイニクス・ロード〉の翼に気圧差が生じて翼の先っぽに飛行機雲みたいに雲を引きつつ急旋回して、魔法攻撃の何発かは喰らったが、此方に突撃するように飛び込みつつ、体の模様が光りつつ浮かび上がった。

 不死鳥〈ポイニクス・ロード〉が甲高い声で鳴いたと同時に嘴の先から魔法の雷撃や竜巻や酸の矢や熱線が次々と発射され、〈ポイニクス・ロード〉と炎竜は突進の勢いのまま擦れ違い、〈ポイニクス・ロード〉は翼をはためかせて上昇して行く。

 炎竜は、不死鳥〈ポイニクス・ロード〉の魔法攻撃に堪らず下降して魔法による被害を最小限に受け流しているが、翼には穴が開き、鱗にも罅が入り鱗よりも赤い血肉が見えていた。

 魔術師組を庇うハムスケにも魔法が当たるが、予め補助魔法を唱えておいた御蔭か軽傷だ。

 モモンも双大剣を回転させて攻撃魔法を粗方弾いたので鎧に傷が付いた程度だ。

 

「此のままでは埒が明かない。炎竜殿、〈ポイニクス・ロード〉と並んで飛べるか?できれば魔法で飛び移って奴を斬り落としてみせよう」

「がっははは。その短い剣でか、まあやってみろ。並んで飛んでやろう」

 

 炎竜が空中で翼を傾け旋回しつつ、後ろ足の裏に火球を創り出しては連続爆発させ、その爆発の勢いで急加速して、遥か遠くで飛ぶ不死鳥〈ポイニクス・ロード〉に追いつき、並走して飛ぶが〈ポイニクス・ロード〉は炎竜の頭を目掛けて様々な魔法を連射している。

 炎竜は炎耐性を持っているが他の魔法、特に氷系統に弱かった。

 炎竜の顔の半分は、氷の魔法こそ受けなかったが酸で焼け爛れ、雷撃で痛撃を受けて頭骨が覗くほどに傷を受けている。

 炎竜の背に乗った魔術師組も並んで飛ぶ不死鳥〈ポイニクス・ロード〉に向け、雷撃や氷を連射する事で次々と着弾し〈ポイニクス・ロード〉に傷を与えていた。

 モモンが体に巻いた縄を解き、ニニャに転移の魔法でモモンを不死鳥〈ポイニクス・ロード〉の背中に移動するよう頼んだ。

 魔法発動の失敗を恐れて、ニニャは少しでも発動確率が良くなるようにモモンに触れつつ魔法を詠唱する。

 

「モモンさんを不死鳥の背中に転移させる。《グレーター・テレポーテーション/上位転移》!」

 

 モモンが不死鳥〈ポイニクス・ロード〉の背中に転移したと同時に双大剣を背中に突き刺し、吹き飛ばされるのを防いだ。

 背中を刺された不死鳥〈ポイニクス・ロード〉が、けたたましい声で喚きながら錐揉み回転でモモンを振り落とそうとしているが落とせない。

 

「出て来い〈フロスト・ペイン・ツー/凍牙の苦痛Ⅱ〉!真なる力を解放せよ〈アイシー・バースト/氷結爆散〉!」

 

 モモンは、片手で中空の闇から氷のように青く輝き魔法文字が刻まれた歪んだ手形のような形の武器を取り出して不死鳥〈ポイニクス・ロード〉の背中に叩きつけて言い放った。

 周囲の気温が下がり、不死鳥〈ポイニクス・ロード〉の凍り付いた背中から氷の剣山が現れ、翼や頭に突き刺さっていく。

 ぐらりと不死鳥〈ポイニクス・ロード〉が揺れ、速度が落ちている。

 

 どうやら頭を氷の剣山で刺されて、脳が揺れたか斬り刻まれたかで脳震盪を起こしているようで良い機会だな、此れを使おう。

 

 モモンは、〈フロスト・ペイン・ツー/凍牙の苦痛Ⅱ〉を中空の闇に片付け、丁の字形の黒い杖を取り出し合言葉を言い、魔法アイテムの真の姿を現した。

 

「変形、〈吸生の大鎌〉。我が大鎌の一撃で滅びよ、スキル〈冥王星の滅魂〉!」

 

 変形の言葉と共に、杖から刃が飛び出し刃の部分から魔法の力が放出され青白い気炎が刃を包む大鎌へと変わり、スキルを唱えると大鎌が黒い光に包まれ、凍り付いた背中を斬り飛ばすと不死鳥〈ポイニクス・ロード〉の身体は黒い光が包み、スキルによる絶対即死貫通効果を多段発動して、何度も蘇る筈の不死鳥〈ポイニクス・ロード〉は絶対的な死を迎え墜落した。

 モモンは、空中を落ちながら中空の闇へ〈吸生の大鎌〉を再度変形させてから片付け、落ちているのを見たサルビアの「リリース/解放」の言葉で発動させられた、あらかじめ掛けられていた魔法《落下制御》により、ゆっくりと地面に降り立った。

 すぐ傍には墜落して体中の骨が折れた不死鳥〈ポイニクス・ロード〉が墜落して出来た衝突跡に倒れている。

 

「勝った、勝ったぞー!私がラッパスレア山の空も支配する!」

 

 空中を嬉しそうに周回していた〈古老の炎竜〉は、やがて満足したのかモモンの所へと降りて来た。

 炎竜の顔半分は、不死鳥の魔法にやられて骨が見えており痛々しいので、サルビアさんに治癒魔法で治して貰った。

 

「くくくっ、まだ信じられないな。本当に私達で倒したのか?この前の戦いで殺した時は、すぐに蘇ってきたが」

「ええ、この通り骨が折れて死んでいますし、問題ありません。不死鳥の死体は私達の方で預かりますが構いませんね」

「ああ、構わない。さて報酬は、此処ら一帯の調査と私の鱗と爪だったか?」

「ええ、調査の方はさせて貰いますが、鱗と爪については今回は良いです。先程の戦いで剥がれた鱗や爪や牙や角なんかが手に入りましたので此れを頂いていきます。後でアインズ・ウール・ゴウン魔導国の役人が交渉に来ると思うので、酒樽や肉なんか御持ちしますので鱗とか爪とかと交換して頂けると助かります。ああ、ちなみにアインズ・ウール・ゴウン魔導国の元首はアンデッドですので役人もアンデッドが来るかもしれませんが無碍に扱わないで下さいね」

「アンデッドが国の長ね。まあ、お前のような猛者が使者をしている国なら信用はしてみようか」

 

 不死鳥〈ポイニクス・ロード〉の死体が手に入ったし、素材を加工した後は復活させて、テイマーのアウラが現地の動物を手なずけられるか実験だな。

 アウラの良い愛玩動物になると良いのだが。

 

 モモンは、シャルティアに《メッセージ/伝言》で指示を出して不死鳥〈ポイニクス・ロード〉の死体をナザリックに送り、周囲の山々の調査に掛かり、モモン一行は夕方頃にゴンドの元に戻るのだった。




・《グレーター・プロテクションエナジー/上位属性防御》
 オリジナル魔法。
 属性ダメージの上位の軽減効果がある。

・《ライダーレベルアップⅠ/騎手職段位上昇Ⅰ》
 開発中のオリジナル魔法。
 騎手のレベルを上げる事で動物を上手く乗りこなせる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。