モモンは案内役のゴンドと合流して、十分な休息を取った後に廃都フェオ・テイワズの見張りのクアゴアの大群を片付けた後、死の迷宮と呼ばれる無数の分かれ道ができた洞窟に辿り着いた。
この場所にはモンスターが出現しないが、猛毒の火山性ガスが一定周期で放出され、ガス溜まりも存在して元王都のフェオ・ベルカナに行くには此処を通るしかないのだと案内役のゴンドは言っていた。
だが死の迷宮など通らなくても全員で《マス・フライ/全体飛行》で飛び越えてしまえば問題無い。
死の迷宮を飛び越え、長い間を歩いて、元王都のフェオ・ベルカナに辿り着いた。
元王都では様々な彫刻が街路樹の代わりに聳え立っており、岩を組み合わせた建物が大通りの両脇に立ち並んでいる。
大通りを進んで行くと一匹の大きな、いや……やけに丸い〈フロスト・ドラゴン/霜の竜〉と傍に立つ若干毛色の異なる胸毛が黄土色の少し大きな体格をした毛むくじゃらの〈クアゴア/土掘獣人〉とクアゴアのおよそ5万人を超えるだろう大軍勢が待ち構えていた。
「其処で止まれ!此処より先に行くと言うならば、此の私こと凶悪で強大なフロスト・ドラゴンとクアゴアの大軍勢が相手になるぞ!!」
ふーん、今までに見たことない姿のフロスト・ドラゴンだな。
フロスト・ドラゴンの素材はアゼルリシア山脈で大量に手に入っていたが、もう少しあると良いか。
まあ、王都と王城の解放をドワーフに約束したし、こいつ等も片付けるか。
背中の双大剣を取り出したら、フロスト・ドラゴンが顔を青くして震え始めている。武者震いか?
「試すような真似をして申し訳ありませんでした!私の名はヘジンマールと言います。貴方様方の強大さ、身を持って実感して平伏させて頂きます。此の態勢はフロスト・ドラゴンにおける最大限の服従の証でございます!」
フロスト・ドラゴンのヘジンマールは、ハッタリ紛いの言葉にも特に動揺が見られない事に戦慄して、地面に体を擦り付けるかのように平伏していた。
何故なら竜と此の大軍を見ても平気な顔で、さて片付けるかと部屋のゴミを片付けるかのような気軽さで剣を抜いていたからだ。
クアゴアからの報告で度々クアゴアの大群を相手にしているのに鎧や服に目立った汚れや傷が見当たらないし、傍についてるドワーフも特に緊張もせずに此方を見ている事からも何度も強敵退治を時間も掛からず安全に熟しているのだろう。
ドワーフの書物にある冒険者は様々な種族で構成され、フロスト・ドラゴンの霜のブレスを防ぐ脅威の冷気耐性のアイテムを装備している者が多くいることも知っている。
勝てない!私の父親の〈フロスト・ドラゴンロード/霜の竜王〉のオラサーダルク=ヘイリリアルでも歯が立たないって事だけは、ヘジンマールが部屋に籠ってドワーフの書物を読み漁り貯えた知識とドラゴンとしての勘で強烈に感じ取れる。
「フロスト・ドラゴン様、戦われないのですか?貴方様の力と此の数を持ってすれば大抵の奴をやっつけてしまうでしょう」
「大抵の奴じゃないから、このように平伏してるんだよ!お前達があの御方に勝てると思うなら挑んでみれば良いじゃないか!」
平伏した丸いフロスト・ドラゴンが、クアゴアの王らしき大型の胸毛が黄土色の個体と言い争っている。
うーん、さすがに降伏した者を攻撃はできないな。
案内役のゴンドも見てるし、降伏した敵を殺す訳にもいかない。
「あー、そのなんだ。私は、クアゴア統合氏族王ペ・リユロだ。フロスト・ドラゴン様は、あなた方に降伏するようだが我々に力を示して貰わないと降伏できない。力試しをして其の者達に勝てれば降伏しよう。負ければ全員帰ってくれないか」
「ああ、いいぞ。私はアインズ・ウール・ゴウン魔導国の使者で、名はモモンと言う。此方は補助魔法を仲間に掛けて貰うが、敵が何人でも私一人で戦おう。なに負ければ降伏する相手に本気は出さないが、死んでも文句は言うなよ」
王都の大通りで双大剣の剣閃が閃き、青い胸毛の獣人クアゴアが何人も吹き飛ぶ。
モモンが片脚を岩が敷き詰められた路面に叩きつけると地面が隆起し、石筍が何十人ものクアゴアの脚を串刺しにして、体は宙へと舞い上がる。
次々に大剣を創り出しては投げつけ、金属耐性のある数十人の獣人クアゴアの腕や脚を圧倒的な力技で、半ば吹き飛ばしてクアゴア達は地面へと転がって藻掻いている。
「もう良い。降参だ。というか魔導国ってなんだよ。ドワーフとどういう関係だよ。……クアゴア達よ、彼らは強い、強すぎる。フロスト・ドラゴン様は、すぐに降参なさったがあの方が正しかった。我ら一同完敗です。あなた方、アインズ・ウール・ゴウン魔導国にアゼルリシア山脈クアゴア統合氏族は恭順しますので、どうか寛大な配慮を頂きたい」
「うむ、クアゴアの恭順を受け取ろう。ドワーフ達に迷惑を掛けない様に、今後はアインズ・ウール・ゴウン魔導国の役人が来るので其の者の言う事に従って貰おう。魔導国の元首はアンデッド、つまり骨だとか死体が動く強力で知的で賢明な方なのだよ。今後来る役人もアンデッドが来るだろうが攻撃せずに話を聞いておくように。さっきの戦いで大剣の平部分で攻撃したり、なるべく急所を外して攻撃したが死んだ者は居るか?居ないんだな、ならサルビアさん、クアゴア達の治療をお願いします」
「はい、殿。お任せ下さい」
クアゴア達の治療を終え、フロスト・ドラゴンのヘジンマールの背にモモンは乗り、他の者達は徒歩で王城へと案内された。
王城の大広間にヘジンマールの父親や母親や他の妃もいると言うので、其の者達を倒せば王城の解放作戦は終わりだ。
王城に居るフロスト・ドラゴン達が居る大広間の扉前で様々な補助魔法を唱えて貰っていると、モモンにゴンドがヘジンマールの鱗を撫でながら話しかけて来た。
「のう、こやつの両親だけでも助けてやれんか」
「そうですね、降参したら助けますが抵抗するつもりなら諦めて下さい」
「うむ、ヘジンマール。それで良いか?」
「はい、ありがとうございます」
ヘジンマールが扉を開け、父親や妃達に大声を張り上げる。
「この御方は我が主、速やかに城を明け渡し、降参するようにせよ!」
「貴様!狂ったか、殺してやる。そこに居るちっぽけな者ども纏めてな」
一人のフロスト・ドラゴンの妃が逃げ出したが、モモンは構わず背中から双大剣を取り出して、父親の怒声に怯えたヘジンマールの背中から降り立った。
「ふん、話も聞かないとは程度が知れるな。〈武技・階層〉、〈武技・七彩強化〉、〈武技・戦士職段位上昇Ⅴ〉……〈武技・巨神斬〉!」
〈武技・巨神斬〉により、空間を切り裂く巨大な剣閃が城の大広間の天井を切り裂き、床に敷き詰めた金貨に寝そべったフロスト・ドラゴンロードのオラサーダルク=ヘイリリアルの肩口を斬り抜け、右前脚と右後ろ脚と尻尾の半分を斬り飛ばす、そのまま大広間の床に双大剣は大きな切断面を残し止まった。
〈武技・階層〉は〈武技・領域〉の強化版でより大きな距離を知覚でき、得られる情報も相手の動き及び生命力や魔力やスタミナなんかが分かる物となっていた。
おおよそオラサーダルクの生命力は半分以下で息も絶え絶えで、体を縦に半分にした事で腹から臓物が出て、斬られた切断面から血が噴き出し床を濡らしている。
フロスト・ドラゴンの妃達は武技を見て、ヘジンマールのように平伏して震えている。
「どうだ、降参するか?降参するなら命だけは助けてやろう」
「……こ、降参する。助けてくれ、いや、ください」
「良し、サルビアさん治療を頼む。さてフロスト・ドラゴンの妃達は降伏済みか、心配するな。降伏した者は殺しはしない。とりあえず全ての竜は、城を近日中にドワーフに明け渡してアインズ・ウール・ゴウン魔導国の管理下に入って貰おう」
フロスト・ドラゴンの妃達に全てのフロスト・ドラゴンを集めて貰い、魔導国の管理に入って貰おうとしたが、反発した若いドラゴン一匹を〈武技・巨神斬〉で唐竹割にして殺した以外に特に無く、フロスト・ドラゴン達は恭順した。
その後、王城の宝物庫の大扉の前でモモンは魔法を唱え鍵を開けようとしたが開かなかった。
「これは特殊な扉だな。魔法を使っても開かない。まあ良い、生命力を消費するが始原の魔法を使おう。全ての扉よ、我が前に開け《世界解錠Ⅰ》!」
全ての扉の鍵を1日1回のみ開ける神秘の始原の魔法《世界解錠Ⅰ》の力で、宝物庫の大扉は開いて行く、こうしてモモン一行はゴンドと共に金貨や様々な武具や書物が満載の宝物庫を喜び勇んで漁るのだった。
・〈武技・階層〉
オリジナル武技、前提:〈武技・領域〉、生命力及び魔力等の感知系魔法
〈武技・領域〉より大きな範囲を知覚できるようになった武技。
敵の動き及び生命力と魔力とスタミナを知ることが出来る。