オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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ローブル聖王国の大都市プラート

 亜人連合軍に占領された大都市プラートへ進軍したローブル聖王国軍は、冒険者モモン達の冒険者部隊と聖騎士レメディオスが率いる聖騎士団、神官団団長ケラルトと聖王女カルカが率いる神官団は、質は兎も角、兵力は圧倒的に足りていなかった。

 ローブル聖王国軍の兵数は国家総動員令で徴兵した約2万人、対する亜人連合軍は5万人を超える数が集結し、籠城ではなく此の数の差なら勝てると踏んだ亜人連合軍は、野戦を挑みに来た。

 大都市プラートは、亜人達に攻められた以前の戦いで攻城兵器により、街を囲む城壁の彼方此方が砕け欠けており防衛に向いて無い事も一因だろう。

 モモンは、両軍が隊列を揃えて戦いを始めようとする時にニニャに《メッセージ/伝言》を飛ばした。

 

「モモンだ。そろそろ始めてくれ」

 

 大都市プラートの遥か上空にフロストドラゴン空輸便達が〈デス・ナイト/死の騎士〉の仮面兵達を連れ、ニニャが仮面兵達に魔法《フォーリング・コントロール/落下制御》を掛けてまわっていた。

 シャルティアが片手に槍を持ち真紅の鎧に身を包み、純白の羽を広げて待って居る。

 

「まだでありんすか?そろそろ待ちくたびれたでありんす」

「来ました。モモンさんの《伝言》です。始めますよ、シャルティア様」

「ふふふ、ようやくでありんす。行くぞ、お前ら」

 

 フロストドラゴン空輸便達から次々に仮面兵達が大都市プラートに向け、魔法《落下制御》の効果でパラシュートで空挺降下する兵士達のように降下して行く、シャルティアは既に大都市プラートに向け空挺降下すると言うより、落下より速い速度で羽ばたきながら落ちていった。

 ニニャと黒宝珠の杖に嵌った死の宝珠も最後の仮面兵が降下した後に、自らに魔法《落下制御》を掛け大都市プラートに向け降下していった。

 降下する仮面兵達に自由落下で追いついたニニャは、魔法《落下制御》の効果を発動させ怪我一つ無く大都市プラートに降り立つ。

 既にシャルティアが辺り一面を血の海に変えていたが、ニニャは傍にいる降下して片膝をついた仮面兵達に指示を出す。

 

「モモンさんの命令を伝えます。〈デス・ナイト/死の騎士〉の仮面兵の皆さんは、時間まで此の都市で暴れまわり亜人達を殺しまわって下さい。時間が来たら仮面兵達は門へ移動、配下に成ったゾンビ達は同士討ちをさせて後始末をお願いします。では初めて下さい」

 

 仮面兵達が雄叫びと共に辺りへと散って行く、ニニャは護衛用に死の宝珠の力を借りて魔法を唱えた。

 

「死者達よ我らの大剣と成れ、《サモン・アンデッド・7th/第7位階死者召喚 スケルトン・チャンピオン/骸骨覇者》」

 

 呼び出された魔法武器であるクレイモアを持ち全身鎧を着た〈骸骨覇者〉の2体のアンデッドは、自らも召喚を行い、ニニャの守りを固めていく。

 ニニャの廻りには、〈骸骨覇者〉の2体が召喚した〈スケルトン・ガーディアン/骸骨守護者〉達2体を含めて4体のアンデッドが守備陣形を組んだ。

 

「これで都市内の亜人達の全滅は時間の問題かな?貴方たち、〈骸骨覇者〉と〈骸骨守護者〉は全ての亜人達が駆逐される時間まで私の身を守って下さい。ねえ、死の宝珠さん。モモンさん達は、後どれだけ掛かるんだろう?」

『そうですね。両軍の戦いは数万規模ですから、多少時間が掛かるでしょう。此処で気長に待ちましょう。何かあった場合もシャルティア様が、《ゲート/転移門》でナザリックに避難させてくれます。それにしても今回のアンデッド兵を使った空挺降下は、素晴らしい働きです。シャルティア様に意見を具申した甲斐がありましたね』

 

 以前、ナザリックの女子会でニニャと死の宝珠は、シャルティアにフロストドラゴン空輸便を使ったアンデッド降下作戦について相談を受けていたのだ。

 シャルティアは、降下させるアンデッドは魂を喰らう事で体力を回復する〈ソウルイーター/魂喰らい〉を使い、落下によるダメージを相殺させる案を出してきたが、魔法《落下制御》を使って落下ダメージ自体を無くしてしまおうと案を出したのはニニャと死の宝珠だった。

 シャルティアは今は暴れまわっているが、都市内の亜人達が残り少なくなれば、ニニャの身の安全を確認して、後はアンデッドの仮面兵達に任せて撤退してもらう予定だ。

 

 大都市プラートの城壁の外、ローブル聖王国軍と亜人連合軍はフロストドラゴン空輸便達から次々に仮面兵達が大都市プラートに向け降下した後に見計らったかのように激突した。

 大軍勢率いる亜人連合軍はローブル聖王国軍を半包囲し、そのまま押し潰すかに思えたが軍の真ん中から裂けるように亜人の兵士達が切り裂かれていく。

 クライムは、《ディレイド・ブラスト・ファイアーボール/遅発火球》と《プロテクションエナジー・ファイヤー/火属性防御》の魔法を掛けられた〈スタチュー・オブ・アニマル・ウォーホース/動物の像・戦闘馬〉で敵陣に激突すると《遅発火球》が仕込まれた赤い宝石が植物性糊で胸にくっついたゴーレム馬に亜人の兵士達がぶつかり、赤い宝石が亜人の一人に強烈に当たり、罅が入ると巨大な爆炎が辺りを吹き飛ばした。

 空中から亜人達の腕や脚がバラバラと振ってくる中、当たる瞬間に飛び退いて爆発から逃れて《火属性防御》を掛けられているクライムに被害はほとんど無く、〈動物の像・戦闘馬〉は激突の瞬間にクライムの懐に小さな馬の人形として潜り込んだ。

 他の戦場でも爆炎と爆発音が聞こえることから、亜人の兵士達の先鋒を挫く目的は達成したとみて良いだろう。

 クライムは、純白の面頬付き兜と全身鎧から生えた純白の羽を広げ、爆発で混乱している亜人の群れの中に居る見事な彫刻の鎧に身を包んだ亜人に斬りかかる。

 

「〈武技・能力向上〉、〈武技・知覚強化〉、〈武技・脳力解放〉、……〈武技・飛翔斬撃〉!」

「くそっ、こんな攻撃で亜人連合軍十傑の一人、ヘクトワイゼスが倒せるか!我が騎士槍〈フレイムスピアー〉を喰らえ!」

 

 見事な彫刻が施された鎧を着た〈オルトロウス/半人半獣〉のヘクトワイゼスが、クライムの放った〈武技・飛翔斬撃〉で肩を切り裂かれながら円錐型をした騎士槍で跳ね上げ、炎を噴き上げた騎士槍を突き刺す。

 だがクライムは左手に持ったルーン刻印が入った小型盾で武技を使い、槍の先端を弾く。

 

「やらせるか、〈武技・パリィ〉。……てぇぇぃ!」

 

 弾かれた騎士槍につられてバランスを崩したヘクトワイゼスに向け、クライムは頭突きを喰らわせた。

 頭突きにより目から火花が飛ぶかのような衝撃を受けたヘクトワイゼスは片膝を付き、頭を振るわせていたが、槍で弾かれ大きく剣が泳いだのを持ち直したクライムに頭を斬り落とされる。

 倒れたヘクトワイゼスが手に持つ騎士槍〈フレイムスピアー〉が砕け散り、粉々になって戦場の風に吹き飛ばされていく。

 

 戦場の別の場所では、ブレインが〈蒼晶刀〉1本で敵の大軍と渡り合っていた。

 

「〈武技・領域〉、〈武技・能力向上〉、〈武技・能力超向上〉、〈武技・神閃〉!、〈武技・六光連斬〉!」

 

 廻りを大軍に囲まれ、集中力が切れないよう節約しつつ武技を繰り出している。

 目にも止まらぬ知覚できぬ程の一撃を繰り出す〈武技・神閃〉と〈武技・六光連斬〉を併用して、囲もうとしていた亜人達を6連の瞬撃で斬り飛ばしていく。

 亜人達の攻撃は、〈武技・領域〉により紙一重で避け、体力の消耗を抑えているが、流石に疲れが見え始めていた。

 

「ヒヒヒ。大軍に囲まれ孤立無援という訳か。さぞかし疲れとる事じゃろう。儂の名はハリシャ・アンカーラ、亜人連合軍十傑の一人よ。我が籠手〈ストーンピラー〉の餌食に成って貰おうか」

 

 ハリシャは、〈ストーンイーター/石喰猿〉の変異種で純白の長い毛を持つ猿にも似た亜人、通称「白老」と呼ばれる残忍な〈石喰猿〉だ。

 黄金の装身具を身に付け、黄土色の籠手を両手で何度も打ち付けて自らの強さを誇示している。

 ブレインは、亜人の親玉の一人に出会った事を喜んでいた。

 

「へっ、ゴーレム馬の爆発に巻き込まれて吹っ飛んだ先に親玉の一人と会うなんて、今日はツイてるな。いくぜ」

「ソリャァ、石に跳ね飛ばされるが良い」

 

 ハリシャが籠手に包まれた両手を大地に叩きつけると、大地から岩柱の大群がブレインに向かって伸び、ブレインが〈武技・領域〉で回避する。

 ハリシャは、続けて口から次々に石を吐き出してブレインの回避の邪魔をしている。

 

「ちっ、〈武技・領域〉が切れたか。だが此れならどうだ!最強秘剣〈武技・爪切り〉!!」

 

 瞬間移動のように見える凄まじい足運びで、ハリシャに近づいたブレインが鞘に入れた刀を抜き放つ。

 絶対命中にして超高速の同時四連斬撃がハリシャの首を斬り飛ばし、頭が宙を飛び、〈蒼晶刀〉に気力を込めた斬撃がハリシャの身体を凍りつかせた。

 氷像となったハリシャの持つ籠手に大きな罅が幾つも入り、元には戻らない事が分かる。

 

「ふう、此れで一息つけるか?」

「ブレインさん、助けに来ました。しかしさっきの武技は凄いですね。初めて見ましたよ」

「ふっ、王都が炎に包まれた夜から己を鍛え上げて開発した絶対必中の〈領域〉と神速の一刀〈神閃〉を併用して、さらに〈四光連斬〉を放つ大技よ」

「フム、素晴ラシイ武技ダナ。後デ詳シク聞カセテクレ。魔法《ピアーシング・アイシクル/穿つ氷弾》」

「もう此の辺の敵は倒せそうっす。次に行きましょう」

 

 モモンが助けに来た時には、ブレインは亜人連合軍十傑の一人の首を刎ねていた。

 冒険者コキューが人間の腕ほどもある氷弾を亜人達に、ばら撒いて亜人達の体を散り散りにさせている。

 舞い踊るかのような大斧の連撃で周囲の敵を薙ぎ払いながら近づくのは、冒険者レギィだ。

 馬に乗ったアダマンタイト級冒険者チーム〈蒼の薔薇〉が近づき、亜人連合軍十傑の「獣帝」を皆が力を合わせて斬り倒したとラキュースがモモンに報告している。

 モモンの冒険者チーム「漆黒」と他の冒険者達もモモンに合流して、ナーベやソアが魔法を亜人達に放ち、ハムスケも武技で応戦し、従者としてつけられたネイアも訓練して身に付けた弓の武技を使い亜人達を次々に射抜いていた。

 

「一旦、敵の前線を抜き、後ろに出てから部隊を折り返し、ローブル聖王国軍と冒険者部隊で挟み撃ちといきましょう。亜人達の親玉達は倒したようですし、指揮を取る者が居なければ烏合の衆だ。後は掃討戦です」

 

 モモンは亜人達の軍勢を切り抜いて先を進むために先頭に立ち、武技を使って自らの能力値を上昇させた後、両手に持った微細な模様が入った双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】の奥義(スキル)を使い、敵の軍勢を打ち払う。

 

「世界意思よ、其の力此処に示せ!奥義(スキル)〈ワールドセイヴァー〉!!」

 

 モモンが双大剣を交差した後に切り開くと、白い光の波が前方扇状に広がり続け戦場を飲み込んでいく。

 光の波に包まれた亜人達は、光の刃が其の体を切り刻み、木っ端微塵に成って血を地面にばら撒きながら倒れていった。

 亜人達の軍勢を切り抜け、後方に廻った冒険者部隊は亜人連合軍の指揮する者が殺され大半の者が戦場に光る波間に倒れていった事から亜人達は混乱状態と成り、ローブル聖王国軍との挟み撃ちで亜人の軍勢は打ち取られたのだった。

 大都市プラートに逃げ帰ろうとする亜人達の群れも、何時の間にか門の前で仁王立ちする〈デスナイト〉の仮面兵達の片手剣に斬り飛ばされ大盾で叩き潰されていた。

 

 良し、シャルティアの作戦通り、フロストドラゴン空輸便達を使ったアンデッドの仮面兵達の降下作戦は上手く行ったようだな。

 此れでシャルティアも名誉挽回した事だし、次回からは何か褒美を取らせないとな。

 

 大都市プラートを取り返し、冒険者達の歓声と雄叫びが木霊する。

 聖騎士レメディオスが率いる聖騎士団が大都市プラートに敵の援軍が来ないか警戒して、神官団団長ケラルトと聖王女カルカの率いる神官団が負傷者を治療する中、聖騎士レメディオスと神官団団長ケラルトと聖王女カルカはモモンの無事を確認して胸を撫でおろしていた。




・《ディレイド・ブラスト・ファイアーボール/遅発火球》
 オリジナル魔法、第7位階魔法。
 時間を置くほど爆発の威力が上がる宝石(時限爆弾のようなもの)を設置する。
 元ネタはD&Dにある第7位階魔法《ディレイド・ブラスト・ファイアーボール》です。

・〈武技・飛翔斬撃〉
 オリジナル武技、前提:〈武技・斬撃〉、羽が生えている者。
 翼による飛翔により速度の乗った斬撃系のダメージを与える。

・騎士槍〈フレイムスピアー〉
 オリジナル武器。
 炎を噴き上げ、突き刺した相手を焼く騎士槍。
 作中では、持ち主が死んだら罅が入り粉々に砕け散る魔法が限定付与されていた。

・籠手〈ストーンピラー〉
 オリジナル武器。
 此の籠手を両手で大地に叩きつけると、目標に向かって岩の柱群が飛び出して跳ね飛ばす。
 作中では、持ち主が死んだら罅が入り粉々に砕け散る魔法が限定付与されていた。
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