オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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ローブル聖王国の捕虜収容都市ロイツ

 アインズは、大都市プラートを解放した後の部隊再編の為の休暇を使って、ナザリックで双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】のレベル上げと自分のレベル上げの為に闘技場で毎日訓練漬けの日々を送っていた。

 ニニャや死の宝珠も闘技場で戦いの日々を送っており、共に1レベルほどアップしていた。

 アインズは、ニニャの籠手【強欲と無欲】を渡して貰い、《ネーミング/命名》の儀式によってレベルが110の大台に乗り、もはやレベル100台のプレイヤーでは、ほぼ勝てない程のレベル差となった。

 だが種族差、カルマ差、性差、職業差、ワールドチャンピオン等であるかどうかで勝敗は変わる。

 アインズは、プレイヤースキルが有る方で無く、レベル100台のアインズは、自分が全プレイヤー中で、中の上だと認識している。

 まあ複数の神器級ゴッズアイテムの装備品や、課金アイテムを多数所持していることを加味しても上の中といった所なので、レベル110台でもユグドラシルトップランカーと渡り合えるかと言われると難しい所だった。

 

 もう10レベル上げれば、ユグドラシルトップランカーのワールドチャンピオンにも楽に勝てるだろうし、レベル上げを頑張るか。

 さてレベルが上がった事でプリミティブキャスターの職業レベルを取り、始原の魔法の取得をした。

 

 全ての扉の鍵を開ける事から概念が広がり、閉じた空間なら開けられるようになった《世界解錠Ⅱ》と《世界解錠Ⅲ》、複雑な呪いも解けるようになる《世界解呪Ⅰ》を得たのだった。

 

 部隊再編の休暇も終わり、アインズは再び漆黒の戦士モモンと成り、モモン一行はローブル聖王国へと赴いた。

 捕虜収容所となった小都市ロイツに行き、捕らわれた捕虜の救出に赴くのだと聖騎士団団長レメディオスは熱く語っていたが、そんなに旨い話は無く、小都市ロイツに着いた時には捕虜の少年を掲げた山羊の獣人が固く閉じられた門に聳える石壁の上に立って此方を牽制していた。

 

「近づくんじゃねえ!こいつの命がどうなってもいいのか?とっとと兵士達を下げろ!!」

「兵を引け!人質が死んでしまう」

 

 聖騎士レメディオスが馬に乗って手綱を引いて、兵士達に声を掛けて下がらせた。

 

「ケラルト、レメディオス、どうします?弱き民に幸せを、誰も泣かない国を創りたいけど人質が……」

「そうね、残念だけど人質の少年は切り捨てる他ないわね。捕虜収容所だし、捕虜何てほっといて亜人達は逃げると踏んだんだけど……」

「ケラルト!誰一人として死者を出さないということ以上の正義は存在するのか!?何とかならないのか!」

 

 聖王女カルカは、黄金の髪を揺らしながら解決策を探っているように二人に問い掛け、神官団団長ケラルトは厳しい顔で人質は見捨てようと提案し、聖騎士団団長レメディオスは踏ん切りがつかないのかケラルトに他に方法が無いのかと両手を広げて声を張り上げた。

 

 まあ人質作戦は、聖王女カルカの治めるローブル聖王国には有効だろうな。

 実際に動きが止まって如何すべきか今更話し合っているようではな、ケラルトが大局を見て人質を切り捨てようとしているのは好感が持てる。

 聖王女カルカや聖騎士団団長レメディオスは、人としては好感が持てるが民を導く者としての視点に欠けているのが問題だな。

 こういう交渉では相手に譲歩すべきでは無く、即攻撃が正解だからだ。

 だが落としどころは必要だろう。

 

 モモンは聖王国の三人娘の所へと行き、話しかけた。

 

「お話し中の所すみません。どうやら人質を取られて話が纏まらない様だったので声を掛けさせて貰いました。どうでしょう、こんな方法が~」

 

 モモンは全身鎧にマントを左肩に掛け流し、捕虜収容所となった小都市ロイツの石壁の前まで行って、石壁の上の人質となった少年の喉笛に短剣を突き付けた山羊の亜人、〈バフォルク/山羊人〉に大声で声を掛ける。

 

「やあ!私の名は冒険者のモモンだ!この捕虜収容所代わりの都市ロイツを解放しに来たのだが捕虜を解放して逃げてくれないか?もちろん君達の身の安全は保障しよう。逃げる君達に追撃何て掛けないとも捕虜の身を案じるのに忙しいからね」

「知るか!そんな世迷言が信じられるか!とっとと兵士達と一緒に向こうへ行きやがれ!」

「交渉は決裂ということだね。残念だよ。……殺れ」

 

 モモンの後ろに隠れて《インヴィジビリティ/透明化》の魔法を掛けられていた従者の少女ネイアが、モモンの右側のマントの掛かっていない身体の隙間から少年の喉笛に短剣を突き付けた〈山羊人〉が石壁のどの位置に立って居るかを確認すると、速やかに低い姿勢を取り黒弓を構えて〈武技・空撃ち〉と呟き、空に向けて矢を放った。

 矢はモモンを超え空の彼方へと飛んでいく、暫くすると人質を取った〈山羊人〉の脳天へと矢が落ち突き刺さった。

 頭蓋骨に深々と突き刺さった矢により〈山羊人〉は、白目を向き倒れようとした所に、人質ごと〈山羊人〉を貫くような何本もの矢が次々に突き刺さり、音も無く崩れ落ちた。

 小都市ロイツ内の〈山羊人〉達は、人質を取った〈山羊人〉が人質ごと射抜かれたのを見て動揺して、悲鳴や怒声が響き渡っている。

 

 ふふふ、上手く行ったな。

 此れで多くの〈山羊人〉達は、人質は役に立たない、人質ごと弓で射抜かれるという事が分かった筈だ。

 だが実際には人質の少年は無事だ。

 〈山羊人〉の脳天に刺さった矢以外の胴体に刺さったように見える幾本もの矢は、全てソアが放った幻影の矢、その後は人質が騒がない様にニニャに魔法距離延長化した《サイレンス/静寂》を掛けてもらったので他の〈山羊人〉達には、人質ごと弓で射抜かれてしまうという姿のみが残ったのだ。

 モモンの影から出てきたハンゾウ達とセキフに人質問題が片付いた時点で行動を起こせと言ってあるので石壁の大扉も開く筈だ。

 

「小都市ロイツの大扉が開いたぞ!皆進むんだ!行くぞネイアさん」

「はい、モモンさん」

 

 モモンとネイアが走って大扉へと向かう、遅れてモモン一行の「漆黒」パーティーと冒険者コキューとレギィと冒険者部隊が続く。

 聖騎士団や神官団も遅れて馬を走らせ、大扉へと向かった。

 アンデッドの仮面兵達は小都市ロイツの各所の大門に張り付き、逃げ出す亜人共を叩き潰す為に待機した。

 街を進むと人質を取る〈山羊人〉が何度か現れたが、モモンのよく狙って撃ちなさいの言葉を胸にネイアは、人質を避けて頭を射抜き、人質の喉笛を握る腕を射抜いていた。

 

「モモンさん、新しい武技を得ました!〈武技・精密射撃〉だそうで頭や部位を狙って撃つのに補正が多めに入る武技だそうです」

「やったな。これで人質を避けて撃つのも楽になるな」

「ウム、弓デ狙イ通リノ場所二撃テルノハ大キイゾ」

「やったっすね。ネイアちゃん」

 

 ネイアが新たな武技の報告をすると、モモンや冒険者コキューにレギィが褒めてくれた。

 〈武技・精密射撃〉を武器に黒弓で次々に襲い掛かる〈山羊人〉達の頭を撃ち抜いていると、一回り大きい立派な体躯をした瞳は緑色で体毛は銀色の〈山羊人〉が魔法の武具を身に付け、供を十数人連れて現れた。

 一目見ただけで只者ではない雰囲気を発しながらモモン達冒険者に声を掛ける。

 

「俺の名はバザー、人呼んで「破壊の豪王」と呼ばれる〈山羊人〉の王だ。お前達好き放題やってくれたな。殺してやる。皆かかれ!」

「ムウ、此処ハ御任セヲ捕虜ノ救出二向カッテ下サイ。レギィハ雑魚ヲ頼ム」

「はーい。お任せっす」

 

 冒険者コキューとレギィが此処を受け持つようだ。

 都市に収容されている捕虜を救出するのにも時間が掛かるので此処は任せたぞ。

 

 ネイアが去り際に武技を使って、黒弓で〈山羊人〉の豪王バザーの頭を狙ったが剣で叩き落とされた。

 冒険者レギィは早速〈山羊人〉達の中心に飛び込んで大斧で薙ぎ払っていた。

 時折、神官系の攻撃魔法を唱えているのか、レギィに殴られた〈山羊人〉が燃え上がる。

 

「《フレイム・ブロウ/炎煌撃》っす」

 

 モモン達冒険者部隊、神官戦士団、聖騎士団が足早に通り過ぎても豪王バザーと冒険者コキューは鍔迫り合いを繰り返し、目にも止まらぬ斬撃の応酬を続け、バザーが剣の力を解放して剣から吹き上がった砂が壁のように広がって冒険者コキューに襲いかかっている。

 冒険者コキューは、特殊な歩法でその場を離れ、砂塵嵐から逃れたかと思えばバザーが斬りかかる。

 

「〈武技・素気梱封〉、〈武技・剛腕豪撃〉、〈武技・武器破壊〉!」

 

 バザーの剣〈砂の射手(サンドシューター)〉が繰り出す〈武技・武器破壊〉による衝撃をコキューは2刀で受け流しながら、くるりと回転しつつ斬撃を繰り出す。

 バザーが剣で防御すると、2刀の斬撃で持っていた剣がバラバラに斬り飛ばされる。

 

「くそっ、〈武技・武器破壊〉した側の剣が破壊されるとか、おかしいだろ。使いたくは無かったが大曲剣〈砂魔女(サンドウィッチ)〉!がああぁぁっ痛えぜ糞が!」

 

 豪王バザーは片手の折れた剣を放り捨て、背負った大曲剣〈砂魔女(サンドウィッチ)〉を取り出すと持ち主のレベルが足りないせいで体中が激痛に軋むのを絶叫を上げる事で誤魔化しながら、コキューへと大曲剣を振り下ろす。

 バザーの周囲に超圧力で創られた砂刃が幾つも浮かび、コキューへと襲い掛かる。

 冒険者コキューは、バザーの大曲剣を避けつつ、武技を唱え、迫りくる砂刃を武技で出来た2つの竜巻で撃ち落とす。

 

「〈武技・双剣旋風烈斬〉!魔法《アイス・ピラー/氷柱》」

 

 大曲剣〈砂魔女(サンドウィッチ)〉がもたらす激痛に油汗を流しながら豪王バザーは、魔法で出来た人間ほどもある氷柱を砂で出来た盾で防ぎつつ、自らが持つ盾を構えたまま突進してコキューへと叩きつける。

 

「〈武技・盾突撃〉ィィ!」

「……ヌウ、小癪ナ」

 

 バザーが繰り出す大曲剣の連撃をコキューは、双刀で捌きながら距離を取り、武技を唱えバザーへ斬りかかった。

 

「〈武技・能力向上〉、〈武技・能力超向上〉、〈武技・剛腕剛撃〉、〈武技・双剣烈震斬〉!」

 

 冒険者コキューは、身体能力を向上させ前方へ跳躍すると前に回転しつつ双刀が防ごうとした大曲剣を切り裂き、バザーの左肩から胴体を斬り抜け、地面へと叩きつける。

 地面を斬り付けた双刀のあまりの衝撃に地響きを立て地面が揺れた。

 豪王バザーは、左肩から血を噴き出し、噴き出した血が地面を叩く音と共に盾を持った左腕が落ちる。

 茫然としたバザーは、崩れ去る大曲剣〈砂魔女(サンドウィッチ)〉を見ながら、冒険者コキューの〈武技・双剣斬撃〉を頭に受け、止めを刺された。

 

「……王の名に懸けて、ひれ伏すのは……一度で十分だ。俺は……最後まで……」

 

 豪王バザーは、そう言い残すと立ったまま死んでいた。

 冒険者コキューは、其の姿を見て何も言わず魔法でバザーを凍らせて氷像とした。

 

「レギィ、雑魚狩リヲ楽シムノモ程々二シテ捕虜ヲ救出スルゾ」

「はーい、分かったっす。よっと」

 

 冒険者レギィが大斧を縦横無尽に振り回して、残りの〈山羊人〉達を一掃すると二人は街の奥へと進み、冒険者部隊に合流するのだった。




・《世界解呪Ⅰ》
 オリジナル始原の魔法、低位の始原の魔法。
 あらゆる呪いを一日一回限定で解ける。
 上位の魔法だと体力回復効果や人物だけでなく場所にも適用できるし、使用回数も増える。

・《フレイム・ブロウ/炎煌撃》
 オリジナル魔法。
 敵単体に殴りつけ「火」によるダメージを追加する。
 対象が火傷の場合にダメージがアップする。
 オリジナル設定、この小説では【オバマス】のスキルをこのような魔法に変えています。

・〈武技・精密射撃〉
 オリジナル武技。
 相手の頭や部位を遠距離武器で狙うのに補正が多く入る武技。

・〈武技・双剣旋風烈斬〉
 オリジナル武技。
 双剣の剣圧で2つの竜巻を起こし触れた物を空中へと打ち上げる。
 元ネタはサムライスピリッツの旋風烈斬です。
 コメントを参考にさせて貰いました。ありがとうございます。

・〈武技・双剣烈震斬〉
 跳躍後に前方へ回転しつつ、双剣で敵ごと地面を叩き切り地震を起こす武技。
 元ネタはサムライスピリッツの烈震斬です。

・大曲剣〈砂魔女(サンドウィッチ)〉
 オリジナル武器。
 大量の砂を操り、砂塵嵐、超圧力の砂刃の群れ、砂盾などを使える大曲剣。
 持ち主のレベルが足りないと発狂するほどの激痛が持ち主を襲う。
 作中では、持ち主が死んだら罅が入り粉々に砕け散る魔法が限定付与されていた。
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