オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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トブの大森林の大洞窟 1

 ナザリックの守護者であるドルイドのマーレからトブの大森林での第2拠点である偽ナザリック作成の為に地下を掘り進んでいると大洞窟を掘り当てたとの報告が、ナザリックで〈武技・爪切り〉を見て新たな武技の開発を死の宝珠と話し合っていたアインズに届いた。

 調べてみると此の大洞窟は、時折天井が崩れて洞窟がその姿を見せるときがあり、そういった洞窟は様々なモンスターたちの住居となっている事が分かった。

 ハムスケを留守番にした「漆黒」の冒険者パーティーとカルネ村からエンリと自警団をやっているフォーサイトのヘッケラン、ロバーデイク、イミーナが、特別に改造され中に人が乗り込む事ができる様になった6m程度の鉄巨兵に乗り込んで魔導国からの依頼という形で大洞窟の探索に来ていた。

 巨大洞窟の天井は、鉄巨兵が動いても問題無い程に遥かに高く、その遥かに高い天井には光る鉱石か光苔か光るキノコでも生えているのか星空の様に煌めいて、まるで巨大洞窟の中でなく夜の外空間に居るかのようだった。

 地面には地下から染み出た魔力と天井からの僅かな光を浴びて、木々や草原が広がっており鹿や猪なども住み着いていた。

 各所の地下水が染み出して川が流れている。

 

 モモン達が操る鉄巨兵は、試験的な意味合いもあって特別製の物と成っており、個人により様々な武装や操縦方法が採用されていた。

 例えば遠距離の砲撃型鉄巨兵は両肩にも魔導大砲を備え、乗り込むのはレンジャーのイミーナで操縦は両肩の魔導大砲のみで他の歩行や両手武器は鉄巨兵任せで、二刀戦士のヘッケランの場合は、全身装着型の乗組員服と目元を隠す乗組員保護帽を付け、自転車のサドルに似た所に腰掛けながら乗員殻の中で両手両足のほぼ全身を使い接近戦仕様の鉄巨兵を操縦している。

 エンリとロバーデイクなどは、簡単な攻撃用のレバーと歩行停止用のフットブレーキ程度で後は、一般型鉄巨兵に任せた操縦と成っていた。

 モモンは、接近戦仕様の鉄巨兵に乗り込み操縦している。

 目元を隠した保護帽の中には廻りの風景が映し出されており、手足を動かすと鉄巨兵の手足も動くのが分かったので感覚的に使いやすい物となっていた。

 

「マスターモモン。如何デショウカ。乗員殻の中は振動や揺れ対策等も行っているので問題ありませんデショウカ?」

 

 モモンの乗組員殻の中で鉄巨兵の合成音声に似た声が鳴り響き、モモンは答える。

 

「うむ、問題無いようだ。鉄巨兵に備えた様々な魔法装置も十分な働きを見せている」

(殿ー!此れは凄いですね。こんな大きな物が動かせるなんて、私だったら触手や目を出せますので、どんな複雑な操作も可能ですよ。特別仕様の鉄巨兵が欲しいです)

 

 興奮したサルビアさんから《メッセージ/伝言》と仮想窓が浮き上がり、操縦しているサルビアさんの姿が映し出された。

 サルビアさんは、元々粘体生物で今は仮に人の姿に成って貰っている。

 だから、目や触手を出して鉄巨兵の両手を使って剣や盾を使い、両肩から魔導大砲を標的を見ながら撃つなど通常では出来ない様々な指示を出すこともできるだろう。

 

 サルビアさんには、神官型鉄巨兵を使って貰っていたが副兵装として両肩に魔導大砲、手も4本に増やして鉄巨兵の目も4つ目にして視野角を広げるとかした方が強いな。

 

 だが鉄巨兵のレベルは開発初期という事もあり、レベル50~60程度でまだまだ弱い。

 エンリやフォーサイトのメンバーが身に付けるなら巨人や低級のドラゴンとも単体で戦えるという強さに成るが、我々ナザリックの者が身に付ければ、装備品の上昇効果も無くなり逆に弱体化するだろう。

 ユグドラシルで一時期流行ったパワードスーツの様な物だが、此方は自由意志を持ち完全自動運転も可能だったり、戦闘を分担することで肩の魔導大砲を撃ったり、鉄巨兵には移動を任せて攻撃を行ったりできるので楽ではあるな。

 

 モモンは、鉄巨兵を動かして巨大洞窟の探索を続け、大洞窟の川の畔で鉄巨兵を超える高さの巨大茸が群生する場所に〈マイコニド/茸生物〉の集落を発見したモモン達とエンリとフォーサイトの面々は、鉄巨兵から降りてマイコニドに近づく。

 マイコニドとは、茸の異形種で私達に対峙しているのは2~3mほどのエリンギや舞茸や椎茸に手足が生えたような異形種で服は着ていなかった。

 他のマイコニド達は、遠巻きに此方を巨大茸の影から覗いている。

 

 何を食べているんだろう?

 やっぱり木屑とか茸が生えやすい物を食べてるのかな。

 まあ、挨拶しとこうか、鉄巨兵が珍しいのかジロジロと見ているが敵意は無さそうだし。

 

「やあ、こんにちは。私達は、地上のアインズ・ウール・ゴウン魔導国の者です。この地下世界には探索の為にやってきました。マイコニドさん達は、私達の国に加わる気はありませんか?加わるならアンデッドの騎士達を此の集落の護衛に寄こしましょう。加わらないなら仕方ありませんが此の辺りの情報だけでも教えて貰えませんか?」

「ああ、こんにちは。魔導国に加わってくれだの、周辺の情報をくれといわれて、その国の事を良く知らないのに返事は出来ないな。それにもし加わったら、アンデッドの騎士達が派遣されると言うが暴れないんだろうな?」

 

 大きな白い胴体に割れ目のような2つの目をしたマイコニドのエリンギが、ゆっくりと歩いてモモンの前に来て言い放った。

 

「其処は私達を信用して貰わないと無理でしょうね。私達の国を良く知って貰う為にそうだなぁ、何か困った事があるなら私達の国で一つだけ解決しましょう。私達は、鉄巨兵と言う巨大な兵器を運用できる国家ですから困り事なら大抵は片付けられますよ」

「ふむふむ、此れは、あの問題を片付ける機会なんじゃないか?なあ、みんな」

 

 モモンより頭一つ大きいマイコニドの椎茸が、エリンギや舞茸に相談して何やら頷いている。

 

「うむ、困った事を一つだけ解決してくれるだったな。なら大洞窟の奥にゴブリン共がオーガ達やトロール達と共に集まり、数万の群れを作っていてだな、其れの駆除を頼みたい。奴らには餌代わりに何体かの幼体が取られてな困っていた所だったのだ。駆除には儂ら3体も参加するので連れていってくれんか?足は遅いが腕力だけはオーガにも負けんぞ!もちろんゴブリンの群れの討伐に成功すれば、魔導国に加入する事を集落の皆に儂ら3人も加わって説得しようではないか」

「ゴブリン達に降伏勧告は行うぞ。私達の魔導国は多種族国家なのでね。降伏に応じない場合は殲滅する事になるので任せてくれ、足が遅いマイコニド達はナーベが乗る鉄巨兵が運ぼう。頼めるな、ナーベ」

「はっ、お任せください。さあ、さっさとキノコ共、~」

「こらっ、ナーベ。彼らマイコニド達は、今は仲間なのだ。丁重に扱え!」

 

 ナーベがキノコさん、此方へとか言ってるがまあ扱いは多少丁寧に成ったし、良いか。

 どうもナーベラルは、ナザリック以外に対する扱いが雑なんだよな。

 

 ナーベ操る鉄巨兵が3体のマイコニド達を抱え、モモン達とエンリとフォーサイトも鉄巨兵の胸の蓋を開け、開いた乗員殻に乗り込むと自動で蓋が閉まっていく。

 鉄巨兵達は、マイコニドの案内もあり大洞窟の川を越え、谷を跳躍し、切り立った崖を上りゴブリン共の群れを見つけた。

 

 あれは既に群れと言うより、ゴブリンの王国だろう。

 ゴブリンの王国は、粗末ながらも岩や木を組み合わせて壁際に壁を何重にもまるで迷路のように作り上げ、中央には不格好な城らしき物が物見櫓を前方に2か所備えて建っていた。

 崖の上から双眼鏡で覗いて確認してみたが、ゴブリン共がキノコの栽培を行ってはいるし、食用の蟲の繁殖も行っているらしいのが見えた。

 今も続々とゴブリンの王国の中に大洞窟の別の入口から蟻の行列の様に、ゴブリン達が森の恵みの木の実や果実、食べられる野草などを運び込んで備蓄を続けている。

 

「全員警戒態勢で今すぐに鉄巨兵に入れ。どうやら敵意は無さそうだが、お客様が来たぞ」

 

 モモンがそう言うと、皆は大急ぎで鉄巨兵に乗り込み、モモンが客人を待った。

 大洞窟内に小さく其れでいて良く通る声が響き渡る。

 

「此方に其方を害する気は無い。今からゆっくり其方に向かうので攻撃しないでくれ」

 

 崖の上に、全長は十メートルをゆうに超える体で鱗は明るい緑から暗い緑へと身震いするごとに変わり、蛇とも蜥蜴ともいえる胴体を持ち、八本の脚、頭部には王冠にも似たトサカを持つギガントバジリスクが3体ほど、その体をうねらせて現れた。

 上空には真紅の体を持つ通常のフクロウと比べて2回りも大きい2体が周回しつつ此方を人間じみた目で睨んでいるのはクリムゾンオウルだろう。

 後ろに立っているのは、金髪で柔和な笑顔を整った顔に浮かべた男だ。

 

 非常に優しげで、敵意など皆無な雰囲気すらあるが、10本の指に指輪を嵌めて魔法が施された服を身に付けている事からも何処かの冒険者か?

 

「私の名は、クアイエッセ。スレイン法国から此の洞窟にゴブリン共が王国を創りだしているから殲滅するように言われて来たんだ。そちらのゴーレムが腕に抱えているのはマイコニドかな。和やかな様子を見るに共闘中って感じに見えるがどうなのかな?」

「私達は、アインズ・ウール・ゴウン魔導国の依頼で来た冒険者と近くの村の自警団だ。私の名は「漆黒」のモモンだ。道中に出会ったマイコニドの依頼でゴブリン共の討伐を条件付きで請け負っている。条件と言うのは魔導国は多種族国家なのでゴブリンに降伏勧告を行うというものだよ」

 

 クアイエッセは、うんうんと頷きながら笑顔を見せる。

 

「なるほどね。じゃあ、マイコニドの討伐は命令されて無いし攻撃はしないよ。ゴブリン共に降伏勧告なんかしても無駄だと思いますが此方も其方の意見を尊重して、あなた方がゴブリンに攻撃するまでは攻撃しないようにしましょう。それで宜しいかな」

「ああ、それで構わないさ」

 

 中々の腕前のビーストマスターに見えるが、ギガントバジリスクの持つ猛毒の体液や石化の視線は、アンデッドの魔術師である俺には効かない。

 エンリやフォーサイトや漆黒の面々も鉄巨兵に乗っていれば、鉄巨兵自体がゴーレムの亜種ともいえる存在なので効かないだろうさ。

 まあ、ナーベが《ドラウンド/溺死》でも使えばギガントバジリスクは溺れ死ぬだろうから問題は無いな。

 

 モモンは鉄巨兵に乗り込み、鉄巨兵達は崖を滑り落りる。

 ゴブリンの王国に森の恵みを運んでいたゴブリン達が、鉄巨兵達が歩いて来るのを見て慌てつつ粗削りな岩と木を組み合わせて作られた城壁の中へと逃げ帰り門を閉めた。

 城壁の前まで来たモモンは、鉄巨兵に備わった魔法の拡声器を通して降伏勧告を行う。

 

「ゴブリンの王国に告ぐ。アインズ・ウール・ゴウン魔導国の使者であるモモンが来たと王に伝えるのだ。私達の魔導国に下り、忠誠を誓いなさい」

「ウルセエ、バーカ。死ネ、鉄クズ。オラァ岩デモ喰ラッテロ」

 

 城門の上から岩が幾つもモモンの乗った鉄巨兵目掛けて落ちて来た。

 落ちて来た岩を避ける為に鉄巨兵達は、後ろへと飛び退きつつ、モモンは《メッセージ/伝言》と仮想窓を使い皆に攻撃の指示を出した。

 モモンが乗る鉄巨兵は、《クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具創造》で鉄巨兵用の大剣を創り出し地面へと五芒星を描くように突き刺していきスキルを唱える。

 

「残念だ。魔導国に敵対したな、殲滅に移行する。我が5つの大剣から生まれ出でよ、スキル〈地球の再誕〉」

 

 地面に突き刺した5つの鉄巨兵用の大剣から〈根源の火精霊〉〈根源の水精霊〉〈根源の風精霊〉〈根源の土精霊〉〈根源の星霊〉の五体の巨大モンスターが生まれる。

 

「〈根源の火精霊〉は、最寄りの大洞窟の出口を塞ぎ出入りする者を燃やせ。他の〈根源の精霊〉達は、マイコニド達と鉄巨兵達の援護をしつつ、城を崩すのだ」

 

 〈根源の精霊〉達は胸の前で組んでいた腕を振りほどき、〈根源の火精霊〉は大洞窟の出口で逃げ出そうとするゴブリン達やオーガにトロールを焼き殺し、〈根源の水精霊〉と〈根源の風精霊〉は大波と突風を起こして城壁の門を破り、〈根源の土精霊〉はマイコニド達を援護しつつ自らの身体に乗せて破られた城門を潜り城下街を剛腕でマイコニド達と共に荒らしまわり、〈根源の星霊〉は中空を飛んで城に近づきつつ超重力を発生させ、継ぎ接ぎの城を崩している。

 

 レンジャーのイミーナが乗る遠距離の砲撃型鉄巨兵の両肩の魔導大砲から《魔法三重化》と《魔法最強化》された火球が、次々と物見櫓に命中し爆発が櫓を吹き飛ばして組み合わされた木々が燃えている。

 

「やった!、当たったよ。本番で上手くいくと嬉しいね」

 

 エンリやロバーデイクが操る一般型の神官用鉄巨兵は、片手に鉄巨兵用の棍棒にもなる杖を持ち《魔法効果範囲拡大化》と《魔法持続時間延長化》された神聖防護魔法を放ち、遠距離用と神官用の鉄巨兵に対するゴブリンの弓矢や投石を防いでいる。

 

「漆黒の皆さんは、前線で戦って下さい。自警団のフォーサイトの皆さんは陣形を整え、城門の外に逃げる敵を仕留めて下さい」

「ここは任せるのである」

 

 ヘッケランが操る接近戦仕様の鉄巨兵が近づくホブゴブリンやトロールを次々に斬り倒している。

 

「鉄巨兵に比べりゃ、敵の大きさはガキもいいとこだな」

 

 モモン達が操縦する鉄巨兵達が、ゴブリンの王国を更地にするまでに掛かった時間は、そう長くは掛からない物だった。

 

「……なんだ、あの強さは法国に至急連絡しなくては」

 

 スレイン法国に秘密裏に存在する漆黒聖典の第五席次「一人師団」のクアイエッセは、モモン達が攻撃を始めれば参加しようと思っていたが、5体の〈根源の精霊〉達の災害が現れたかのような力や凄まじい暴力的なまでの魔法と鉄巨兵達の恐ろしい威力を見て、張り付いた笑顔を崩し慌てて大洞窟を後にするのだった。




・マイコニド/茸生物
 トブの大森林の大洞窟に集落を作って暮らしている種族。
 オリジナル設定
 茸の身体に手足が生えてて服を着ていない、成体では2~3mまでの大きさに成り、腕力はオーガを超えるが足が遅い異形種です。
 発情期が来ると、愛する人と胞子を飛ばしあって子供を創る独特の子作りをする。

 なお、ナザリックに居る副料理長ピッキーは服を着ているマイコニドです。
 
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