オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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エ・ランテル近郊の森 2

 エ・ランテル近郊の森の奥に半球体の闇の扉が現れ、中からアインズ、アウラ、マーレ、ニニャ、セキフが現れた。

 アインズは元の黒いローブから茶色のローブに着替え、アクセサリーも変えているようだ。

 

「アウラ、マーレ、お前たちとは、ここで別れるとしよう。ニニャ、黒宝珠の杖を渡せ、そしてニニャもここで待機だ。」

「はい」

 

 ニニャは、死の宝珠が付いた黒宝珠の杖を両手でアインズに渡して応援した。

 

「ご武運を」

 

 アインズは、それに頷きをもって返した。辺りを見渡し皆に声を上げた。

 

「皆で周囲の偵察に入れ。ただし、敵の数が3名を超える場合は、即座にナザリックに撤退せよ。セキフはニニャの撤退を手助けせよ」

「御意」

「かしこまりました」

「いいな、絶対に撤退せよ。それも、また私の計画の一環なのだから。それにアウラやマーレに預けた【山河社稷図】と【強欲と無欲】は、ナザリックの秘宝であるワールドアイテムだ。絶対に奪われてはならない。場合によっては、お前たちの命よりも大切だと知れ」

「はい」

 

 しかし魔法で視認は、していたが、やはりシャルティアを精神支配したワールドアイテム保有者は、いないか。どうなっているんだ。

 

 森を杖を突いて歩いているアインズは、自分を囮としているのに敵が中々引っ掛かって来ない事に苛立っていた。

 

「くそが。仲間を探すべくアインズ・ウール・ゴウンの名を轟かせる。その手段は選ばないつもりだった、しかし、それでも余計な争いは避けるよう静かに行動してきた。にもかかわらず、これは一体どういう事だ。どこの誰か知らないが必ず始末してやるからな、自分たちの愚かさをたっぷりと嘆かせてやる」

「アインズ・ウール・ゴウンに喧嘩を売って、そのままで済むと思うなよ」

 

 憎しみを込めて枝を握り閉め、へし折り、その場で放り捨てる。こんな物では、到底憎悪が晴れる訳ないのだが遣らずには、いられなかった。

 やがてアインズは、エ・ランテル近郊の森の奥にある不自然に開けた場所に、シャルティアの目前まで辿り着いた。

 

 馬鹿だよな。もっと上手くやる手段は知っているんだけどな。アウラとマーレは丸め込めたがアルベドは俺の大嘘に気付いているだろうな。

 それにしても本当に博打だとは思わないか、シャルティア。ユグドラシルの時のように復活できるのかどうかも分からないのに、生死を懸けた戦いをしようと言うのだからな。でも、見たくないんだよ、お前たちが殺し合う姿を。それに……。

 

「私は、アインズ・ウール・ゴウン。ならば、その名に懸けて敗北は有り得ない」

「《ボディ・オブ・イファルジェントベリル/光輝緑の体》。やはり死の宝珠の報告通り、完全な敵対行動と見做さない限りは戦闘準備には入らない。まるでゲームだなぁ」

「ならばシャルティア。悪いが戦闘開始まで、そのまま待っていてもらうぞ。死の宝珠、打ち合わせた通り強化の魔法を私に掛けろ」

『はい、アインズ様。《プロトタイプエクステンドマジック・ウォリアーレベルアップⅠ/魔法試作持続時間延長化・戦士職段位上昇Ⅰ》、《プロトタイプエクステンドマジック・ウィザードレベルアップⅠ/魔法試作持続時間延長化・魔術師職段位上昇Ⅰ》、《プロトタイプエクステンドマジック・クレリックレベルアップⅠ/魔法試作持続時間延長化・神官職段位上昇Ⅰ》、《プロトタイプエクステンドマジック・シーフレベルアップⅠ/魔法試作持続時間延長化・盗賊職段位上昇Ⅰ》』

 

 アインズは、様々な魔法を唱え自らを強化していく

 

「《フライ/飛行》《ブレス・オブ・マジックキャスター/魔法詠唱者の祝福》《インフィニティウォール/無限障壁》《マジックウォード・ホーリー/魔法からの守り・神聖》《ライフ・エッセンス/生命の精髄》《グレーター・フルポテンシャル/上位全能力強化》《フリーダム/自由》《フォールスデータ・ライフ/虚偽情報・生命》《シースルー/看破》《パラノーマル・イントゥイション/超常直感》《グレーター・レジスタンス/上位抵抗力強化》《マント・オブ・カオス/混沌の外衣》《インドミタビリティ/不屈》《センサーブースト/感知増幅》《グレーター・ラック/上位幸運》《マジックブースト/魔力増幅》《ドラゴニック・パワー/竜の力》《グレーター・ハードニング/上位硬化》《ヘヴンリィ・オーラ/天界の気》《アブショーブション/吸収》《ペネトレート・アップ/抵抗突破力上昇》《グレーター・マジックシールド/上位魔法盾》《マナ・エッセンス/魔力の精髄》《ディレイ・テレポーテーション/転移遅延》《トリプレットマキシマイズマジック・エクスプロードマイン/魔法三重最強化・爆撃地雷》《トリプレットマジック・グレーター・マジックシール/魔法三重化・上位魔法封印》《トリプレットマキシマイズブーステッドマジック・マジック・アロー/魔法三重最強位階上昇化・魔法の矢》」

 

「さあ、行くぞ。《プロトタイプマジック・ギロチン・オブ・ヴァンパイア/魔法試作化・吸血鬼の断頭台》」

 

 アインズが詠唱すると目の前に通常の3倍は大きい巨大な魔方陣が現れて、シャルティアの頭上に空間を切り裂く白い大きな刃に交差した2つの刃が付いているのが見えた。今か今かと落ちるのを待っているかのようだ。

 その後、アインズは超位魔法の10メートルもの蒼白いドーム状の立体魔法陣を展開させて、辺りの様子を伺った。

 

「伏兵は無しか。それとも、まだ様子見か。いい攻撃のチャンスの筈なんだがなぁ。まったく何が何だか」

 

 片手を上げ中空の暗闇へと伸ばすとアイテムボックスから水色のバンドが出てきた。それをアインズは左手首に嵌めると自動で巻かれていく、時間を設定するとバンドから可愛らしい声が出てきた。

 

「モモンガお兄ちゃん、時間を設定するよぉ」

 

 ぶくぶく茶釜さん、なんでこの時計はボイスをカットできないのかな。

 アイテムボックスから文字の書かれた木の板をいくつも取り出し腰の帯に嵌めていく。

 皆さんの力、お借りする事になるかもしれません。

 超位魔法の蒼白いドーム状の立体魔法陣が光輝き、準備が整ったようだ。

 

「さて、行くか。超位魔法《フォールンダウン/失墜する天空》」

 

 シャルティアの頭上から空間を切り裂く白い大きな刃に交差した2つの刃が落下、シャルティアの頭をズタ袋のように切り裂いた、その瞬間、超高熱源体によって生じた絶熱が一気に膨れ上がり、効果範囲内の全てを貪欲に貪り尽くす光の柱によって包まれた。

 効果範囲の地面は、大きく抉れ超高熱源体によってガラス化していた。空は、大気が変動した事で曇り空になっている。

 シャルティアは伝説級の真紅の全身鎧と、神器級アイテムのスポイトランスを装備している。兜は顔の部分が開いており、白鳥の頭部のような形で左右から鳥のような羽が突き出しているのが判る。胸から肩を経由して、鳥の翼をイメージした装飾があり、腰は真紅のスカートが巻き付いている。

 

「くっくっく、くぁーあっはははは。アインズ様、かなり痛かったですよー。あはは!」

 

 倒れたシャルティアは、自らの体をふらつきながら起こして声を上げた。顔は、兜の下から流血しているのか真っ赤に染まっている。

 

「つまらないプレゼントだよ。気に入ってくれたか、シャルティア」

「あっははは。素晴らしい。これほど巨大な力を持つアインズ様を殺さなけらばならないなんて!」

「なあ、何故私を様と呼ぶんだ」

「これは異な事を、至高の存在であるあなた様をアインズ様と呼ぶのは当然ではないですか」

「お前の今の主人は誰だ」

「私の主人は……。私は何故アインズ様と戦うんですか?いや、違う。攻撃されたから、攻撃されたからには全力で滅ぼす必要がある。どうして、……よく分かりませんが攻撃されたからにはアインズ様を滅ぼす必要がありますね」

「そうか、了解した」

 

 お前の状態はな。何者かに精神支配を受け、何かが起きて命令が与えられぬまま置かれたんだろ。

 

「おやおや、どうされたのですか?アインズ様、そんな様子で私に勝てるのですか?」

「ふん、アインズ・ウール・ゴウンに敗北は無い。シャルティア、お前は私の前に平伏すのだ」

「あっははは。それは恐ろしい」

 

 シャルティアは、疾走して土埃を巻き上げつつアインズの元に行く、シャルティアの足元が次々に爆散した。

 

「危ないぞ。……すまないなシャルティア、そこは《トリプレットマキシマイズマジック・エクスプロードマイン/魔法三重最強化・爆撃地雷》が仕掛けてあるんだ」

「《マキシマイズマジック・グラビティメイルシュトローム/魔法最強化・重力渦》》

 

 アインズは大きく腕を振りかぶり超重力の紫電渦巻く螺旋球を放つ。

 

「《ウォール・オブ・ストーン/石壁》」

 

 爆撃地雷で転倒したシャルティアは、体を回転させ片手を地面に付け、地面から巨大な石壁を作り出す、防御用の石壁を重力渦が粉々にして魔法は掻き消えてしまった。

 

「《マキシマイズマジック・ホールド・オブ・リブ/魔法最強化・肋骨の束縛》

 

 アインズは、大地から巨大な肋骨を飛出させ虎ばさみのようにシャルティアに襲い掛からせた。シャルティアは、閉じ込められる前に飛び出すが胴体を挟まれ傷を負いつつも肋骨から無事抜け出した。

 空を飛ぶシャルティアに、アインズは声を掛ける。

 

「シャルティア、言うのを忘れていたよ。この辺りには罠を仕掛けさせてもらった。パタパタと飛んで来たらどうだ?」

「アインズ様、そのような挑発には乗りませんよ。空中にも罠を仕掛けられているのでしょう」

「バレバレだったか」

「はい、バレバレです」

 

 そんな訳は無い。仕掛けた地雷の魔法は、あれだけだ。MPを無駄使いして効果が期待できない魔法に廻す余裕なんて無い。俺のMPが尽きる前に、どこまでダメージを与えられるか。

 シャルティアのスポイトランスは相手にダメージを与えると、その量に応じて傷を回復させる事ができる。だから本来は後衛である俺も前衛となる者を召喚できない、弱いモンスターではスポイトランスの回復に利用されるだけだからだ。

 シャルティアは空中では罠に掛かるからと地面へと降り立ち、まずは長期戦準備の為に回復を使った。

 

「《リジェネート/生命力持続回復》」

「回復の暇は与えんよ。《マキシマイズマジック・グラビティメイルシュトローム/魔法最強化・重力渦》」

 

 アインズは腕を上げ振り下ろし超重力の紫電渦巻く重力渦をシャルティアに向け放つ。

 

「《グレーター・テレポーテーション/上位転移》」

 

 転移してアインズの左後ろから不意を突こうとしたが、転移を一時的に阻害され消えてから現れるまでに、数秒のタイムラグを発生させられた。

 

「ううっ、《ディレイ・テレポーテーション/転移遅延》?」

「《ドリフティング・マスター・マイン/浮遊大機雷》」

 

 空中のシャルティアの廻りを浮遊する3つの巨大な火球が爆発するが、〈ミストフォーム〉で霧となり逃げつつ機会を伺っている。

 

「甘い、《マキシマイズマジック・アストラル・スマイト/魔法最強化・星幽界の一撃》」

 

 アインズは、非実体に効果的な一撃を与える光輝く針を数え切れぬほど放った。〈ミストフォーム〉を貫き、シャルティアは血を吐きながら地面へと転がって膝を突き実体を露わにしている。

 

「《マキシマイズマジック・サウザンドボーンランス/魔法最強化・千本骨槍》」

 

 大地を割ってシャルティアを中心とした広範囲に、無数の膨大な数の骨槍が勢いよくシャルティアに突き出す。

 

「《グレーター・テレポーテーション/上位転移》」

 

 空中に転移で逃げたシャルティアに対してアインズは魔法を唱えた。

 

「逃がすか、《マキシマイズマジック・グラビティメイルシュトローム/魔法最強化・重力渦》」

「〈不浄衝撃盾〉!」

 

 シャルティアは周囲に赤黒い衝撃波を発生させ、攻撃魔法をかき消した。

 

「なにっ」

「アインズ様、こんなスキルを私が持っていると知っていましたか?」

「ほう、見たことがないな」

 

 いや、見たことは無いけどペロロンチーノさんから聞いた事はあるぞ、言わないけど。

 

「うふふふふ、いつまで強がっていられますかねぇ。アインズ様」

 

 シャルティアは、片手を上げ3メートルを超える白銀の戦神槍を生み出してこちらを狙い定めている。

 

「これの名は〈清浄投擲槍〉と言います」

「スキルによる召喚か」

 

 白銀の戦神槍がシャルティアの手から飛び出すとアインズの胸元に魔方陣が現れ、そこを目指して槍が突進してきた。アインズは槍が胸元にぶつかる直前に叫んだ。

 

「スキル〈無敵〉!」

 

 白銀の戦神槍が砕け散り、アインズは余裕そうに胸元の埃を払っている。

 

「ええっ、何です。それは神聖属性を持つ武器、魔法扱いの武器なんですよ」

「なに、ちょっとしたスキルの応用だよ。これで終わりか?」

 

 シャルティアが信じられないと、もう一度白銀の戦神槍を生み出し、アインズの胸元に魔方陣が現れ槍が突撃してきた。

 

「スキル〈無敵〉」

 

 やはり白銀の戦神槍がアインズに当たって砕け散った。アインズは、やれやれと肩を竦めた。

 

「こちらの番だな、《マキシマイズマジック・リアリティ・スラッシュ/魔法最強化・現断》」

 

 腕を大きく振りかぶり《リアリティ・スラッシュ/現断》が放たれ、白く輝く刃がシャルティアの胴体を切断して腹から血が噴き出すが、みるみる元に戻っていく。

 

「ただの回復魔法では無いな。何をした!」

 

 嘘だけどな。ペロロンチーノさんから聞いたぞ、〈時間逆行〉だろ。自身の時間を逆行させてダメージを回復させるスキルだな。

 

「そんなに驚かないで下さい。アインズ様、これもスキルなんですよ。卑怯なんて思わないで下さいよ、ペロロンチーノ様が与えて下さった力ですから。アインズ様よりあの御方の方が優れていたという証明では」

「それは本音の部分ぽいな」

「ええっ?」

「行くぞ、シャルティア。お前がどのようなスキルを持とうが私の魔法の方が上だと知れ」

「えへっ、打ち合いでしょうか、アインズ様。ならば負けませんよ」

 

 アインズは白く輝く刃を放ち、シャルティアは白銀の戦神槍を生み出し放った。

 

「《マキシマイズマジック・リアリティ・スラッシュ/魔法最強化・現断》」

「〈清浄投擲槍〉、あと何回防げますか?アインズ様」

「スキル〈無敵〉!」

 

 アインズはスキルを応用して〈清浄投擲槍〉を防ぎ切り、《現断》によってシャルティアの胴体を切断して腹から血が噴き出すが、シャルティアはスキルを使い元に戻っていく。

 

「アインズ様のMPも大分削れたはず」

「では、こういうのはどうでしょう。《マキシマイズマジック・ヴァーミリオンノヴァ/魔法最強化・朱の新星》」

「《トリプレットマキシマイズマジック・コール・グレーター・サンダー/魔法三重最強化・万雷の撃滅》」

 

 いくつもの雷を束ねて作ったような3本の巨大な豪雷がシャルティアを貫いた、アインズを紅蓮の炎で包み込んでいるが両手を握りしめ唸り声を上げるだけだ。

 

 熱い、まったく痩せ我慢も楽じゃない。いつもと違って、この装備は対神聖用で対炎用は切り捨ててるから、これでシャルティアは俺を神聖魔法で攻撃しようってなったら楽なんだが。

 

 シャルティアは、こちらを伺うような視線を向けつつ地面に降り立った。

 

「アインズ様。炎への対策は、されているようですね」

「弱点を補うのは基本だろ」

「《マキシマイズマジック・ブリリアントレイディアンス/魔法最強化・輝光》」

「《マキシマイズマジック・トゥルー・ダーク/魔法最強化・無闇》」

 

 シャルティアは、無属性の闇で包まれ体を蝕まられた、アインズは光で包まれ、神聖属性のダメージを受け、たまらずよろめいて数歩後ずさった。

 それを見たシャルティアは、神聖魔法がアインズに効くと判断したのだろう。

 

「弱点は、そこですね。アインズ様」

 

 ……その後、シャルティアは、激しい戦いで神聖魔法を連続で使用したせいか息が切れているようだ。

 

 ふう、よろめいた演技をした甲斐があって良かったよ。騙されてくれなきゃ逃走も考慮に入れていた所だ。

 アインズは強化魔法を唱えた。

 

「《ボディ・オブ・イファルジェントベリル/光輝緑の体》」

「防御系の魔法、でも正解ですよ。今から直接攻撃に掛からせてもらいます」

 

 アインズは、シャルティアはクラス特性で遠距離戦も近距離戦もできる事を思い出し愚痴を吐いた。

 

「なんて不利な戦いなんだ」

「えっ、アインズ様。……ならば、撤退されれば宜しいのでは」

「まあ、そうなんだがな。私は、そう非常にわがままなんだよ。シャルティア、逃げたくないんだ。誰にも理解されないかも知れないが私は、この瞬間にギルド長としての満足感を得ているんだ。何だろうなあ、私は、いや俺はギルド長の地位にあったが基本的にやっていたのは実務や調整だ。でも今の俺はギルドの為に先頭で戦っている。自己満足かもしれないな」

「それは男の矜持というやつなんでしょうか」

「そうなのかもしれないな。さて詰まらない話で水を差してしまった。再開するとしよう」

 

 シャルティアのスキル〈飛行能力〉によって蝙蝠の翼が現れ広がり、装備による白い翼と合わせて位階魔法の《フライ/飛行》よりも速く飛ぶことが出来るだろう。

 

「〈眷属招来〉」

 

 眷属の蝙蝠達を呼び出し、共にアインズへと近接戦を戦いにやってきた。

 もちろんアインズは、そんな事は許さない。

 

「《シャークスサイクロン/大顎の竜巻》」

 

 高さ百メートル、直径五十メートルにもなる巨大な竜巻が発生し、巻き込まれると中を泳ぐ六メートル程の鮫が襲い掛かる、飛行するものに対して有効な魔法が眷属の蝙蝠達とシャルティアに向かって行き飲み込んだ。

 シャルティアは、傷を負いつつも巨大竜巻を突っ切りアインズに突進してきた。

 

「《マキシマイズマジック・グラビティメイルシュトローム/魔法最強化・重力渦》、スキル〈弱体化付与〉」

 

 アインズは腕を突き出し超重力の紫電渦巻く重力渦をシャルティアに向け放つが、シャルティアは間一髪で魔法を避け、アインズにスポイトランスで攻撃しようと突き出す。

 アインズもシャルティアに向け杖を突いて距離を取ろうとするが鎧に当たろうと距離を詰められて攻撃を受け、スポイトランスが突き刺さってしまう。スポイトランスが光り、相手の体力を吸収するかと思われた時に声が聞こえた。

 

「《ボディ・オブ・イファルジェントベリル/光輝緑の体》発動」

 

 するとスポイトランスで突かれていたのが、嘘であったかのように空間が動き、スポイトランスから体が離れた。アインズは、シャルティアに杖を突き更に離れるように距離を取った。

 

「《ウォール・オブ・スケルトン/骸骨壁》」

「《マキシマイズマジック・フォース・エクスプロージョン/魔法最強化・力場爆裂》

 

 荒れ狂う不可視の衝撃波が骸骨壁を打ち砕く、砕かれた壁の向こう側ではアインズは3つの魔法を解放しようとしていた。

 

「《グレーター・マジックシール/上位魔法封印》解放」

 

 3つの《グレーター・マジックシール/上位魔法封印》が解放され、中から30発もの必中の光弾を飛ばしていく、シャルティアは空中で咄嗟に避けようと回避行動に入るが命中していった。

 たまらず魔法を唱え掻き消そうとした。

 

「《マジックディストラクション/魔法解体》」

 

 シャルティアは、槍を振り魔法を振り払うとアインズに突撃していった。アインズは、杖を突き距離を取ろうとしたが鎧に掠っただけで、そのまま吹き飛ばされた。

 シャルティアのスポイトランスが光り輝き、体から体力回復の緑の光が溢れているのが見えた。

 

「《フライ/飛行》、回復したか。《トリプレットマキシマイズマジック・リアリティ・スラッシュ/魔法三重最強化・現断》」

 

 空中から三重の《現断》を発動するもシャルティアは、致命傷にならないよう傷を負いつつアインズに近づいていく、アインズも近づかれないよう杖で鎧を突いて距離を取ろうとした。

 

「〈不浄衝撃盾〉!」

 

 赤黒い衝撃波によってアインズは、吹き飛ばされ凄まじい勢いで地面に叩きつけられる。何回か地面を転がり《フライ/飛行》の魔法で立ち上がった。

 その時、シャルティアは空中から自由落下で落ちてきた。地面にぶつかる鎧と肉の音、腕や足も変な方向に曲がっている。シャルティアは何故、自分が落下したのか分からないようで立ち上がろうとしたが崩れ落ちた。

 

「がぁ、くそ、アインズ様と戦わなければいけないのに体が……」

「ようやく効いたか。能力値ダメージで筋力や敏捷性が落ちてスキルや装備品の使用条件を維持できなくなったのだろう」

「そんな、触られてないのに」

「スキルの応用だ。武器、この場合は杖だな。それにスキル〈弱体化付与〉で能力値ダメージの効果を付与した。さて終わりだ」

「変形、黒宝珠の杖」

 

 刺突剣のように変形した杖先をシャルティアの頭に軽く刺し、上位魔法蓄積によって封じられていた魔法を解放する。

 

「《リリース/解放》」

 

 開発中のオリジナル魔法である《リアリティ・バイト/現咬》が発動し、杖先から空間を切り裂く3つの白い牙が飛び出て圧倒的な力でシャルティアの頭を嚙み千切った。

 するとシャルティアは、その場で飛び退き距離を取った。

 

「さすがはアインズ様、ペロロンチーノ様が持たせてくださった蘇生アイテムの御蔭で私は助かりました。能力値ダメージは死によって無効化。もう杖には触りませんよ」

 

 ペロロンチーノさん。俺対策のつもりか?こんちくしょー!

 

 シャルティアは、全身白色の本人そっくりの人造物を生み出した。魔法行使能力やスキルの一部は使えないが、武装や能力値や耐性は本人と同じ分身だ。

 

「来たか、ついに来たか。シャルティア最大の切り札〈死せる勇者の魂(エインヘリヤル)〉」

「〈眷属招来〉」

 

 眷属の『エルダー・ヴァンパイア・バット/古種吸血蝙蝠』、『ヴァンパイア・ウルフ/吸血鬼の狼』、ネズミを大量に呼び出した。

 

 この数は、少しまずいな。範囲魔法で一気にケリをつけて、エインヘリヤルは、どうするのか。

 

 エインヘリヤルが、アインズの元に突進して来て攻撃を始めた。思わずアインズは変な声が漏れてしまう。

 

「のぉ」

 

 シャルティアは、眷属達を己の糧にすべくスポイトランスで突いていた。眷属達は影に戻り、スポイトランスが光り輝き、体から体力回復の緑の光が溢れている。

 

 汚え、いくら〈フレンドリィファイア/同士討ち〉が有効だからって自分が召喚した眷属を回復に使うかよぉ

 

 エインヘリヤルがアインズに突撃して槍を突き刺し吹き飛ばした。アインズは地面を背中で擦りながらエインヘリヤルの猛攻をかわして、《フライ/飛行》の魔法で距離を取りスキルを発動した。

 

「スキル〈The goal of all life is death/あらゆる生ある者の目指すところは死である〉!」

 

 このスキルは、エクリプスのクラススキル。最大レベルの5レベル目に達すると習得できる。このスキルで強化された即死効果は、たとえ相手が即死無効化能力を持っていても即死させることができる。

 アインズの背後に十二の時を示す時計が浮かび上がり鐘の音が鳴った。

 

「《ワイデンマジック・クライ・オブ・ザ・バンシー/魔法効果範囲拡大化・嘆きの妖精の絶叫》!」

 

 辺りに死を告げる嘆きの妖精の絶叫が響き渡り、即死魔法に合わせて時計の針が時を刻んでいく。

 

「くっ」

 

 シャルティアが悪い予感からスキルを発動させないよう、エインヘリヤルに攻撃を指示して、こちらへ来ようとしている。エインヘリヤルがアインズに攻撃しているが、時計の針が時を刻み続け、やがて終わりの鐘が鳴る。

 

「ここまでだ」

 

 白い光が辺りを飲み込んでいく、光が静まった時。

 周囲一帯、直径200メートル内にある全ては命無き物にすら死を与えるスキルによって、大地は砂漠となり、死んだ空気は吸った者の肺を汚して死に至らしめ、曇り空の雲も死んで青空が広がっている。

 どうやら眷属とエインヘリヤルは消滅し、シャルティアも死亡したようだ。

 文字の書かれた木の板を使う事も、もう一度超位魔法を使う事もなく決着が着いた。手札を余らせて勝ったのだから良かったのだろう。

 シャルティアやエインヘリヤルの近接攻撃を受ける際に、死の宝珠から〈武技・要塞〉を訓練して、相手の攻撃を跳ね返す防御系の武技の獲得を狙ってみてはと、打ち合わせの時に言われたので心の中で武技を唱えてみた御蔭か、もう少しで〈武技・要塞〉を獲得できそうだ。

 うむ、着実に自分が強くなっていくのが判る。

 さあ皆と共にナザリックに帰ろう。




・黒宝珠の杖
 オリジナルアイテム、死の宝珠を組み込んだと分からないよう名前を変えた杖。
 現地の者に怪しまれないようアダマンタイトの合金で作られている。普段は床を傷つけないよう杖として使う。変形させると杖の先端は尖っていて刺突剣のようにも使える。上部は剣の柄のように鍔と握りと柄頭があり、鍔部分に死の宝珠を嵌めこむようになっている。変形させる合言葉は「変形、黒宝珠の杖」である。
 刺突剣のように使うためには現地の魔法使いが緊急時に使う、又は《ウォリアーレベルアップⅠ/戦士職段位上昇Ⅰ》の魔法を唱えないとユグドラシルの魔術師では振り落としてしまう。
 魔法効果は不壊、魔法の杖、変形、上位魔法蓄積など

・《ウィザードレベルアップⅠ/魔術師職段位上昇Ⅰ》、《クレリックレベルアップⅠ/神官職段位上昇Ⅰ》、《シーフレベルアップⅠ/盗賊職段位上昇Ⅰ》
 開発中のオリジナル魔法、第4位階魔法、それぞれの職業レベルを1上昇させる。今回はレベル上昇によるステータス増加やレベル格差によるダメージの増減効果を期待してアインズに掛けられた。

・スキル〈無敵〉
 オリジナル応用スキル、上位物理無効化Ⅲと上位魔法無効化Ⅲの強化版のスキルで、発動すると一瞬だけ相手の攻撃を受けない無敵状態になる。
 ただしスキルなどで付与されたノックバックは防げない。
 上位物理無効化Ⅲと上位魔法無効化Ⅲの強化の為にMPを多く消費するので多用はできない。

 内容)
 上位物理無効化Ⅲ(レベル60程度の攻撃まで無効化)→強化→(レベル100程度の攻撃まで無効化)
 上位魔法無効化Ⅲ(第6位階以下の魔法を無効化)→強化→(第10位階以下の魔法を無効化)

 正確には、スキル〈無敵〉という名前では無く、アインズ本人が発動させやすいように分かりやすくして言っているだけである。
 本来は、上位物理無効化Ⅲ強化(レベル100程度の攻撃まで無効化)限定(MP消費、瞬間)上位魔法無効化Ⅲ強化(第10位階以下の魔法を無効化)限定(MP消費、瞬間)という名前であるが長すぎて戦闘の際に使えないのでスキル〈無敵〉という名前になった。


・スキル〈弱体化付与〉
 オリジナル応用スキル、能力値ダメージⅣの強化版のスキルで、発動すると武器に能力値ダメージⅣの効果が、しばらくの間、付与される。
 ただし、能力値ダメージⅣの強化の為にMPを消費するので多用はできない。

 内容)
 能力値ダメージⅣ(相手に触れる事で相手の肉体能力(筋力や敏捷性)にダメージを与える)→強化→(武器で攻撃する事で相手の肉体能力(筋力や敏捷性)にダメージを与える)


・《リアリティ・バイト/現咬》
 開発中のオリジナル魔法、《リアリティ・スラッシュ/現断》の近接版であり威力を強化されている。
 空間を切り裂く3つの白い牙が飛び出て圧倒的な力で前方を嚙み千切る魔法

 内容)
 基礎魔法《リアリティ・スラッシュ/現断》、《エンハンスメントマジック/魔法増強》〈魔法三重化、魔法最強化、ダメージ増加〉、《リミッテイションマジック/魔法限定》〈近接〉、魔法試作開発《リアリティ・バイト/現咬》
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