オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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トブの大森林の大洞窟 2

 大洞窟にてゴブリンの王国を壊滅させ、残党狩りを終えたモモン達はクアイエッセには結局会わなかった。

 どうやらゴブリン狩りに参加せずにモモン達に任せてスレイン法国に帰還したようだ。

 マイコニドの集落に帰り、戦闘に参加した舞茸や椎茸やエリンギのマイコニドの説得も実を結び、マイコニドの集落は魔導国に加わる事となった。

 マイコニドの集落の周辺では、貴重な薬用の茸が群生しており、此れを栽培して貰って魔導国への特産品として取引に使って貰うといいのではと話し合った。

 マイコニドの集落に別れを告げ、モモン達が操る鉄巨兵の集団は、大洞窟の探索を続け、奥地へと何日も掛けて足を踏み込む。

 奥地には大洞窟にも関わらず大きな森が広がっており、獣道を押し広げて鉄巨兵達は進む。

 

「うーむ、鉄巨兵で進めるのは此処までか?後は、降りて森の探索を続けるか。おや、人影が見えたぞ」

 

 モモンが操る鉄巨兵が木々に隠れた人影に近づくと、どうやら簡素な狩人服を着込んだ〈ダークエルフ/闇妖精〉のようで此方を睨みつけて手には弓を持っている。

 モモンは鉄巨兵に備わった魔法の拡声器を使い、声をかける。

 

「すみません、私の名はモモンです。私達は、地上のアインズ・ウール・ゴウン魔導国の者です。この地下世界には探索の為にやってきました。お話を聞かせて貰えませんか?」

「なんだ、喋れるのか。探索ねえ、お話って何を話せと」

 

 ダークエルフは持っていた弓を下ろし、怪訝な目で鉄巨兵達を見上げた。

 

「はい、私達、地上のアインズ・ウール・ゴウン魔導国は加わる集落を探しています。マイコニドの集落には加わって貰っています。ダークエルフさんの集落も加わって貰えないでしょうか?」

「うーん、それは私では決められないな。集落の長に話してくれ、ついて来い」

 

 森の中を鉄巨兵達が楽に進める様にダークエルフがスキルか何かを使ったのか、森の木々が鉄巨兵達を避けているので、ダークエルフの案内の元、モモン達は鉄巨兵で森の木々を掻き分ける事無く集落まで辿り着いた。

 エルフの集落は、広場を中心に整然と木々が立ち並び、人々は樹上の暮らしを木々の間を簡易な吊り橋で結び行き来しているようで、木の上で木を変形させて作ったプランターに植物を植えて栽培しているのが見える。

 ダークエルフの住む木は奇妙に歪み、人が生活しやすいように木が階段を作ったり、窓が木に開いてたり洞が居住空間になっていたりと住みやすい様になっており、〈ウッドゴーレム/木動像〉達が働きダークエルフ達が生活を行っているようだ。

 

「私達は、エルフの魔法で変形させた木、エルフツリーの上で生活している。今から長老会を集めるので広場で待って居てくれ」

 

 ダークエルフは、そう言うと木から垂れ下がった縄を伝い、するすると上へと上がって行く。

 広場で待つ間に、モモン達は地面に片膝を立てた鉄巨兵から降り立ち、エルフツリーを眺めていた。

 

「凄いです!木がこんな風に曲がるなんて!あっ、木の一体成型で出来た椅子と机が広場の隅にありましたよ!」

「ダークエルフは、どうやら独自の魔法で木を変形させて住居はもちろん、家具、道具、武具に変化させるなど、エルフツリーが文化の中心に成っているようだな。原始的な狩猟採集社会で文明レベルは高いとは言えないな。さて魔導国との取引に使えそうな物は何かないかな?」

 

 ソアとモモンが話していると、木の上から縄を伝いダークエルフ達が降りて来て、護衛のウッドゴーレム達が木の上で木に取り込まれたかと思えば地上付近の木から次々に現れた。

 

 エルフツリーの魔法の応用なのだろうか、ウッドゴーレムにしては珍しい移動方法だな。

 

「なんだ、ゴーレムには人が乗っていたのか。私はゴーレムと喋っていたのかと思ったぞ」

「はははっ、あのゴーレムは鉄巨兵と言うんだ。先程は鉄巨兵に乗ったままで失礼したね。さて勝手ではあるが机と椅子を用意させて貰ったよ。話し合いを始めようか」

 

 モモン達が、広場にあった机を並べ大机を作り、椅子を並べて会談の場所を作りあげて、皆が其処に座り、話し合いが始まった。

 

「はじめましてじゃな。此のダークエルフの村で長老会の長をやっておる。此方は狩猟頭、祭祀頭、薬師頭じゃよ」

「はじめまして。地上のアインズ・ウール・ゴウン魔導国の冒険者モモンと言います。よろしく御願いします」

 

 ダークエルフの長老会の長は、やせぎすで深い皺を眉間に湛えた老年の男で他の狩猟頭、祭祀頭、薬師頭は壮年の男達だ。

 

「早速だが質問が有る。地上ではザイトルクワエは、どうなったのだ?儂らは、ザイトルクワエから逃れるために地下に潜った一族よ。他の氏族はエルフに助けを求めて「妖精の小道」を使用して「大移動」で此処を離れたんじゃがな」

 

 「妖精の小道」?、ナザリック第六階層に「妖精の小道」「月の道」と呼ばれている転移系能力が使用できる場所があるが、どうやら其れとは異なる技術のようだ。

 詳しく聞いてみたが、如何やら言葉のみが伝わっているそうで詳しい事は分からなかった。

 

「すみません、話がそれましたね。ザイトルクワエの話でしたね。あの魔樹なら私の冒険者パーティーが倒しましたよ。まだ瓦礫が転がっている筈なので地上に見に来られれば分かる筈です」

「おお、それは凄いな。儂らの祖先は逃げる事しか出来なかったのに、早速地上に偵察部隊を送ろう。此れで儂らの部族は地上に帰れるぞ。もう奴に大量の肉や果物を捧げなくても良いのじゃ」

 

 長がダークエルフ達に声を掛けると、嬉し泣きをして喜ぶ者、両手を上げて歓声を上げる者が続出する。

 

「その、奴と言うのは誰なんです」

「奴とは、ドラゴンじゃよ。奴の名は〈ディープダークネス・ドラゴンロード/常闇の竜王〉と名乗っているのを聞いた事がある。儂らは大洞窟に住まう代わりに〈常闇の竜王〉に食料を捧げてるんじゃ。此の辺りの他種族全てがな」

「此処に来る途中にゴブリン達が大量の食糧を蓄えているのを見たのですが……」

「……ゴブリンの王国か、あそこも竜王に貢物を送る事で生き長らえているな。今回はゴブリンの王国が食料を〈常闇の竜王〉に届ける番の筈じゃ」

「ゴブリンの王国は私達が鉄巨兵で滅ぼしているんですが、どうなります?」

「まずいな、今頃は〈常闇の竜王〉が何時までも届かない貢物に耐えかねて飛んできてもおかしくない。悪いが、あんた達は、すぐに此処を出てくれ。儂らは、いずれ地上に戻るにしても今は、この大洞窟に住んで居るのだから〈常闇の竜王〉に従う契約に成っておるのよ」

 

 ウッドゴレーム達が戦闘態勢に入ったのか半身に成り両手を胸の位置に両足を揃えていたのを広げて前後に踏みしめている。

 ダークエルフ達も弓を手に取り、地面に向けて射線は切っているが何時でも撃てるように準備を整えた。

 

「申し訳ありません。此処を出ていきます。すみませんが案内の方を御願いします。地上に出られることがあれば魔導国への加入を御検討いただけますでしょうか?」

「案内は付けよう。地上に出て偵察部隊がザイトルクワエの死を確認したら魔導国への加入も検討しよう。ではな、〈常闇の竜王〉から逃げて地上に出られる事を祈っておるよ」

 

 案内役として村へ連れてきたダークエルフが再び担当し、スキルを使い帰り道の木々が鉄巨兵を避けていく。

 

「モモン、これは独り言だ。どうやら長老会はお前達を〈常闇の竜王〉に売り飛ばすつもりのようだ。この森を抜けて暫くすればドラゴンが飛んでくるだろう。隠密でやりすごすか、戦って大洞窟を抜けるかは好きにするんだな。健闘を祈るよ」

「長老会が〈常闇の竜王〉に私達の事を話しても気にしないで下さい、ダークエルフの村の長老会の長も大洞窟での決まりを守っているだけですから」

「そうか、そう言って貰えると気が楽に成るよ。ほら、森の出口だ。じゃあな、また会おう」

「では、また会いましょう」

 

 ダークエルフは、そう言うと森へと帰っていく、モモンは帰り道に打ち合わせた通りに準備を整え、大洞窟の出口を目指して進んで行く。

 しばらくして森が見えなくなると、翼がはためく音と轟音と共に土砂が舞い上がり、影に似た闇の竜たる〈常闇の竜王〉が大洞窟の出口を目指していたモモン達の眼前に降り立つ。

 ほっそりとした暗黒の竜は、大きさは鉄巨兵を遥かに超え、2本の捻じくれた角を生やし蝙蝠に似た翼を広げ、心をざわつかせるような蛇の優雅さで動き、その目は真紅の光が漏れているかのように輝いている。

 

「貴様らか私の奴隷共を殺したのは!死んで償え、我が腹の中で悔やむが良い!」

「話し合いましょう。私は……」

 

 モモンは魔法の拡声器で話しかけようとするが、〈常闇の竜王〉は耳を貸さず大きく息を吸い込み始めた。

 

「逃げろ!大洞窟の出口を目指すんだ。危険な時は緊急避難せよ」

 

 〈常闇の竜王〉は、降り立った地響きが収まらない内から口を大きく開け、黒い靄の様な影のブレスをモモン達が操る鉄巨兵達に目掛けて吹き付ける。

 モモンの操る鉄巨兵達の目であるカメラに影が纏わりつき見えなくなり、影のブレスにより鉄巨兵が自らを支える筋力を吸い取られ、片膝をついた。

 

「マイマスターモモン、申し訳ありません。此のままでは動けません」

「諦めるな逃げるぞ、限界解除!」

 

 鉄巨兵に掛けられた限界を突破し、鉄巨兵の目の影は晴れ、片膝を付いていた状態から立ち上がるが各所から火花や白煙が上がり長くは持たない。

 他の者も限界解除したのかフラフラと立ち上がりつつ、煙を出しながら散開して出口を目指す。

 

「まだ立ち上がるか、スキル〈シャドウ・ワープ〉、始原の魔法《死の爪》!」

 

 〈常闇の竜王〉は自らの影に潜り込むとモモンが操る鉄巨兵の影から鉄巨兵を空中に弾き飛ばしながら躍り出ると同時に、空中で身動きが取れない鉄巨兵目掛けて指先を指し示し、無生物にすら絶対的な死を与える始原の魔法《死の爪》を告げる。

 鉄巨兵は体を痙攣させたかと思うと脱力し、そのまま激しい音を立てて地面に転がる。

 

 くそっ、鉄巨兵に思い入れも出て来た所なのに、ゴーレムの一種でもある鉄巨兵相手に即死魔法が効くだと、始原の魔法は何でもありだな。

 鉄巨兵に備わった様々な魔法効果も軒並み死んでしまったようで、魔法の拡声器や緊急避難用の転移も動かない。

 アダマンタイト級冒険者パーティーの〈蒼の薔薇〉の一員、イビルアイと死の宝珠から話を聞いたが、始原の魔法はワールドアイテムから得られる「世界の守り」で防げるが、副次的な炎や氷なんかが発生した場合は防げないそうだ。

 だがこの始原の魔法《死の爪》は明らかに対象に死を与えているので、ワールドアイテムを装備する俺には効かない筈だが他の者が危ない。

 

 《メッセージ/伝言》を使い、ナーベに無事を知らせるモモン。

 

〈ナーベ、モモンだ。此れから転移の魔法でカルネ村に戻ろう。お前達も緊急避難として鉄巨兵に備えられた転移を使い、あらかじめ登録されているカルネ村に飛ぶのだ〉

「了解しました。早速イモムシ共に緊急避難をするように連絡します」

 

 ナーベがイモムシとか暴言を吐いてるが、〈常闇の竜王〉相手に今の装備では勝てないだろうし今は無視して素早く転移の魔法で離脱しなければ。

 

 〈常闇の竜王〉は、右前足でニニャが乗る鉄巨兵を空中高く掬い上げ、鉄巨兵達の魔導大砲を喰らっても目を細めるだけで大したダメージには成らず黒い波紋が広がるだけだ。

 〈常闇の竜王〉の巨大な尾の一撃でエンリやフォーサイトの鉄巨兵達を吹き飛ばして鉄巨兵達の鎧は、へこみを作りつつも持ちこたえた。

 

「緊急避難しなさい!イモムシ共!」

 

 ナーベの魔法の拡声器を通した声が大音声で大洞窟の中を響き渡り、次々に鉄巨兵の中の乗組員が転移していき残った鉄巨兵達は、全自動で敵たる〈常闇の竜王〉に対するがレベル差の暴力により次々と鉄屑に成り果てた。

 その光景を帰り道で打ち合わせた通りにモモンが設置した幾つかの〈録画〉で撮っていたアイテムは魔法遅延化した転移により、暫くしてからナザリックに転移して〈常闇の竜王〉攻略の糸口を掴むために解析される事と成る。

 

 カルネ村に転移したエンリや自警団として参加したフォーサイトのヘッケラン、ロバーデイク、イミーナとモモン達冒険者パーティーは、地べたに座り込んで息を整えていた。

 彼方此方をぶつけたのか体中に青痣や切り傷や擦り傷が出来ており、エンリやロバーデイクやサルビアさんが治療して回っている。

 モモンとナーベは、打ち合わせる事があるのでと断りを入れて崖の上まで来ていた。

 

「……あの野郎、私の話も聞かずに一方的に鉄巨兵を鉄屑にしやがった。私の財産である鉄巨兵達をだぞ。許せる物か!ナーベ、至急ナザリックの知恵者たちに連絡を入れ、〈録画〉内容を検討し、〈常闇の竜王〉をナザリックの守護者達とアインズで滅ぼすぞ」

「はっ、畏まりました」

 

 モモンの目元を隠す乗組員保護帽は欠け、そこから覗く片目から赤黒く燃え盛るような光を発していた。




・《死の爪》
 オリジナル始原の魔法
 対象の生命の火を消して死亡させる始原の魔法。
 術者が対象を指差しつつ始原の魔法を唱えると、対象は無生物ですら死亡してしまう。
 この始原の魔法を受けて死亡した生物は、通常の蘇生魔法では生き返らない。
 生き返らせるためには《ウィッシュ/願い》が必要となる。
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