オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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エルフの王国のエイヴァーシャー大樹海

 モモンはエイヴァーシャー大森林を訪れていた。

 エイヴァーシャー大森林は、スレイン法国の南方に広がる森林地帯であり、この森林地帯は、トブの大森林とアゼルリシア山脈の二つを合わせたよりも遥かに広大であり、丘の上から見た森の木々が風になびき、波のようにうねる様子はまさに海原のようにモモンには思えた。

 

「これは大森林というより、大樹海の名が相応しいな。魔導国では大樹海と命名しよう」

 

 その後、ナザリックに居る元奴隷の3人の〈エルフ/森妖精〉達から聞いていたように大樹海の奥の奥、人跡未踏の場所でダークエルフの集落を見つけ、《ゲート/転移門》をトブの大森林のダークエルフ樹木都市と繋げ、アウラとマーレを呼び出してダークエルフ達の勧誘を任せておいた。

 

 ダークエルフ同士だから話も弾むだろう。

 アウラとマーレなら上手く行く筈だ。

 さて、此処は既にエルフの王国の筈、勝手にダークエルフを連れて行く訳にもいくまい、エルフの王様か責任者に話を通しておくか。

 

 モモンは、《飛行》が付与された首飾りを中空のアイテムボックスから取り出すと身に付けモモンの冒険者パーティーに話しておいた。

 

「私はエルフの王城でダークエルフを連れていくことの許可を貰うつもりだ。此れから空中高くから地上を見下ろしてエルフの王国の王城を見つけるつもりだよ」

「私もお供します。モモンさーん」

「殿、頑張ってください。応援してます」

「私も《クレアボヤンス/千里眼》で探して見ます。確かエルフの王国の王都の近くに三日月湖がある筈です。先程ダークエルフの方に話を聞きましたが、此処から北西の方角だそうです」

 

 ナーベを連れ、モモンは空中高く飛び上がり、上空何千メートル以上の位置から大樹海を眺める。

 辺り一面に緑の海原が続いており、風が吹く度に波がうねるように森が騒めいている。

 

 ニニャの言葉によれば北西に三日月湖がある筈だが?

 

「モモンさん、北西の方角に三日月湖が見えます。あの周辺ではないでしょうか?」

 

 ニニャが言っていたように北西に小さな三日月湖とスレイン法国から木々を伐採しながら進軍しているのか三日月湖へ続く細い小道が遠くに見える。

 三日月湖の近くにはエルフツリーの魔法で生えた奇妙な木々が立っているのが分かる。

 スレイン法国とエルフの王国は戦争しているんだったか?

 魔導国諜報部隊の報告によれば、エルフの王様がスレイン法国の女性戦闘員を襲ったのが始まりだとか。

 王の身勝手さで国家の危機とか馬鹿なのかな?馬鹿なんだろうな。

 はぁ、そんな奴に話をつけに行かなきゃ行けないだなんて、アホらしいが仕方ないか。

 

 モモンは空中から降下して地面に降り立ち、今、見て来たことを大まかな地図を地面に棒切れで書きつつ、ニニャの《千里眼》での補足説明も交えながら、皆に説明した。

 

「~と、まあ、こんな感じだな。彼方の方角で間違いないようだ。アウラとマーレもダークエルフへの勧誘も一段落しただろう。此の大樹海でエルフの王都を見つけるのに二人には役立って貰うぞ」

「はいっ、お任せください。ダークエルフの集落の者は、トブの大森林のダークエルフ樹木都市の見学に行ってます。見学の引継ぎもダークエルフ樹木都市の者に任せて来ましたし大丈夫です」

「は、はい。僕の魔法とお姉ちゃんのスキルで森の木々が避けて進めるので大して時間は掛からないかと」

 

 アウラとマーレに率いられ、モモン達は大樹海を進む、途中で〈アンキロウルスス/連甲熊〉や〈ギガホーンエルク/巨角箆鹿〉や〈ジャイアント・ヒプノティズムパイソン/巨大催眠蛇〉等に襲われたが、返り討ちにして三日月湖へと向け進んで行く。

 エルフとスレイン法国軍が相対して戦っている場面に遭遇した。

 木陰に隠れながら見ると、どうやらエルフ側は、外見年齢は8歳になるかどうかの小さな女の子一人でスレイン法国の軍4万程を釘付けにしているようで、エルフの少女は、こんもりと盛り上がった土の頂上に小さな椅子を置き、矢が木立を縫うように進んで法国の兵に襲い掛かり、空中で矢が拡散する技なども使いスレイン法国兵を攪乱しているようだ。

 

「どう見る、アウラ」

「そうですね。あの小さな女子は、レベルの割には中々やるんじゃないでしょうか。でも元気が無いように見えますね」

「ふむ、どうやらうんざりしているようだ。あんな小さい女の子に、どんよりした顔をさせているのはな。……エルフの王に会って、エイヴァーシャー大樹海のダークエルフを連れていくのを話すつもりだったが止めるぞ。奴に此の国は相応しくない。スレイン法国兵を無力化して、まずは彼女を保護する。行くぞ!」

 

 モモンがそう言うと、木陰から出て来てエルフの少女に近づきつつ、武技を唱える。

 

「〈武技・戦士職段位上昇Ⅴ〉、〈武技・階層〉、〈武技・七彩強化〉!」

 

 エルフの少女が此方に気付いたのか、体に釣り合わない大きな弓から矢が拡散し木々を縫いながらモモンを射抜こうと近づくが、〈武技・階層〉の効果で矢は全てモモンに感知され、軽く籠手で矢を受け流して、〈武技・早足〉は使用せずに悠然と進む。

 スレイン法国兵からは、《マジック・アロー/魔法の矢》がモモンに向かって投げつけられるが、マーレが魔法で植物を急成長させ、蔦の壁で《魔法の矢》を受け止めた。

 

「スキル〈影縫いの矢〉!」

 

 アウラは、スレイン法国兵達の影に次々とスキルで矢を突き刺し、動きを止めている。

 モモンは、近づいて小さな丘のような土の盛り上がりの上で椅子に座る少女を下から眺めた。

 最早、此れで終わりかと安堵してるような表情を浮かべる少女は更に矢を放つ。

 

「〈武技・パリィ〉。お嬢さん、御名前は?」

 

 至近距離から放たれた矢を事も無げに、武技を使い鎧の籠手で受け流して名前を聞くと。

 かなわないと思ったのか、小さな体に似合わない大きな弓を下げて答えてくれた。

 

「ルーギ。エルフの王国の国王デケム・ホウガンの娘、今は失敗作かな。殺すの?痛くないと良いけど」

「ルーギか、良い名前だね。私達はアインズ・ウール・ゴウン魔導国の者だよ。此の国は王が禄でも無いから倒してしまおうかって考えていた所さ。どうかな君も乗らないかい?王の情けない顔を見れるかもしれないよ」

 

 ルーギは名前を褒められたのが嬉しかったのか頬を染めて喜んでいたが、急にウンザリとした顔をした。

 

「駄目よ。王様には誰もかなわないもの、あーあ、せっかく自由に成れると思ったのに」

 

 ルーギの座っていた椅子の下の、こんもりと盛り上がった土が起き上がり、その巨体を露わにする。

 レベル87のモンスターである高位精霊《プライマル・アース・エレメンタル/根源の土精霊》が自らの体から土砂を落としつつ、ルーギを頭に乗せ立ち上がった。

 《根源の土精霊》が両腕による叩き付けをモモンに放つが、両腰から美麗な模様が描かれた双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】を抜き放ち武技を使って弾き返す。

 

「〈武技・無敵要塞〉!《根源の土精霊》と踊れ、双大剣!」

 

 弾き返された両腕に大きく体をよろめかせながら《根源の土精霊》に、モモンの背後から飛び出した双大剣が深く其の体に突き刺さる。

 

「《リリース/解放》、《カコフォナス・バースト/不快音の爆裂》!」

 

 甲高い音と共に双大剣から音波が放たれ、《根源の土精霊》の体が罅割れる。

 空中を浮かぶ双大剣には《上位魔法蓄積》で魔法が幾つも蓄積されており、土系エレメンタルに効果が高い酸系、音波系も勿論蓄積済みだ。

 

 酸系は、使ってしまうと上に乗ってるルーギちゃんが酸で怪我する可能性があって危ないからな。

 

 《根源の土精霊》は、体を罅割れで崩しながら右腕を鞭のように伸ばし地面を薙ぎ払うが、モモンは跳躍で空中に逃れつつ、両腰に双大剣を収め、片手を中空の闇へと突っ込み武器を取り出していた。

 偉丈夫のモモンの体に比べても更に一回り大きい黒い艶やかな特大な大槌〈暗黒孔の大槌〉を両手で振りかざして、《根源の土精霊》の右肩に叩きつけ武器のスキルを解放する。

 

「砕けろ!スキル〈重力渦〉!」

 

 《根源の土精霊》の右肩が発生した超重力の螺旋球に抉り取られるように大穴が開く、地面に降り立ったモモンは〈暗黒孔の大槌〉を中空の闇へと返すと、右肩が抉られ、ふらつく《根源の土精霊》に近づき両腰の双大剣を抜き放ちながら、《根源の土精霊》の頭に居るルーギちゃんを避けて武技を放つ。

 

「喰らえ、〈武技・漆黒八連撃〉!」

 

 《根源の土精霊》を双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】による八連撃が襲う。

 両腕を切り落とし、胴体を真一文字に双大剣で切り開き、両足も斬り飛ばす。

 袈裟斬り、逆袈裟斬りで最後は首を双大剣で挟み込むように飛ばして、《根源の土精霊》は其の生命力を使い切ったのか只の土塊に戻り、盛り上がった土塊の上の椅子にしがみついたエルフの少女ルーギが驚きすぎて茫然とした表情で此方を見ていた。

 両腰に双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】を戻し、背中に浮遊する双大剣を収め、ルーギに再び問い掛ける。

 

「さて、エルフの王の情けない顔を見たくはないかな?」

「……王様の、いや王の情けない顔が見たい!あいつを殺してくれるなら何だってするわ!」

「女の子が何だってするとか言っちゃいけないよ。さっき言っただろ王を倒すって、君みたいな女の子に協力して貰えるなら嬉しいよ」

 

 ルーギちゃんは椅子を離れ、モモンに抱き着いてきたので背中を摩っておいた。

 ルーギちゃんは、安心したのかモモンにしがみつきながら涙を流している。

 

 うーむ、こんな小さな少女に戦争行為をさせるとは、エルフの王国の国王デケム・ホウガンは悪党ではなく外道だな。

 さてアウラとマーレがスレイン法国兵を無力化しているが、スレイン法国の責任者に話を通して置かないとな。

 

 ルーギちゃんをマーレに任せると、ルーギちゃんはマーレやアウラのオッドアイの瞳を見て驚いていた。

 

「「王の相」が出てる。二人は王様なの?」

「そ、そうだよ。今は、お姉ちゃんと一緒にダークエルフの王をやってるんだ」

 

 モモンがスキル〈影縫いの矢〉で影を縫い留められたスレイン法国の兵に近づき、よく聞こえるように大声を出す。

 

「皆さん!申し訳ありませんがスキルの効果で暫くは、そのままです!皆さんに危害は加えませんが、あの小さなエルフの少女ルーギちゃんは、私達アインズ・ウール・ゴウン魔導国のモモンが保護させて頂きます!エルフの王国の国王デケム・ホウガンも私達で倒しますのでご安心下さい!」

「……あら危害を加えないなんて、そいつは残念。敗北を知れると思ったのに」

 

 スレイン法国の兵達の奥から、金色の十字の模様があちこちに入った白い鎧を着込み、兜を片手で持ちながら若い女性が歩いて来た。

 見た目は10代前半の少女で長い髪は片方が白銀、もう片方が漆黒の色をしている。

 髪と同様、瞳の色も左右で異なっているという奇抜そうに見えるデザインだが、ユグドラシルではキャラメイクでどうにでもなる物だ。

 

 此れはスレイン法国でのプレイヤーか?

 

 少女の艶やかな唇から、モモンへ向けて声を掛けられた。

 

「あら、私は顔を見せたのに貴方は見せてくれないの?」

「申し訳ありません。そうですね敵意が無いという証拠に顔を見せましょう」

 

 無詠唱の《メッセージ/伝言》で死の宝珠がモモンに忠告する。

 

(モモン様、死の宝珠です。人化の指輪を付けて兜を取って下さい。他国、しかもスレイン法国の者が兜を取って顔を見せろと言っているのです。なんらかの幻影を打ち破るスキルか魔導具でも使うかもしれません)

 

 死の宝珠の言う事も、もっともだと赤いマントで見えない様に籠手を外し、人化の指輪を付け、兜をおもむろに外して、英雄然とした彫りの深い黒髪黒目の顔をスレイン法国の少女に見せた。

 少女は呆けたような顔をしていたが、顔を赤らめ在らぬ方向を向いてモモンへ話しかけた。

 

「んんっ、モモンとか言ったわね。私の名前はアンティリーネ・ヘラン・フーシェっていうの、自分に勝てる男であれば器量・人格・種族を問わず結婚して子供を産んでも良いと思ってたんだけど、どう私と戦わない?勝てば、こーんな可愛い女の子が結婚してくれるわよ」

「何を言ってるんですが、この蚕が。モモンさーんには既に決まった女性が~」

「失礼しました。結婚を前提とした戦いはしませんよ。それにエルフの王との戦いの前ですからね。万が一があってはいけません」

 

 モモンは、迂闊な事を口走ろうとしていたナーベの口を手で塞ぎつつ答えた。

 アンティリーネは、不服そうな顔でモモンを見て、溜息をついた。

 

「じゃ、仕方ないか。でも後で戦ってよ。ルールは任せるからさ」

「ええ、その時は冒険者らしく戦いましょう」

 

 エルフの王国へ攻める事となったモモンは、スレイン法国と共同戦線を組み戦う事となった。

 モモンのエルフの王が悪いので他のエルフ兵は私達で無力化するので、なるべく殺すなという甘い考えを実現する為にも仕方なかった一面はある。

 

 はぁ、カッツェ平野の合戦で、あれだけ殺したのに今更だよな。

 一般メイドに憑依して食事を取ったり、人化の指輪を付けて人間に成るせいか、人間性を回復したようなんだよな。

 どうもアンデッドの時の様な非情で冷酷な判断ができない。

 ルーギちゃんに他のエルフも助けて欲しいと頼まれれば、助けられる命で本人に咎が無ければ助けても良いかと思ってしまう。

 まあルーギちゃんのような実例を見てしまうとな。

 

 ルーギちゃんがナザリック製の粗食を頬一杯に入れて食べているのを見てから、モモンは、樹に其の身を預けながら、エルフ兵達をどう助けるかは置いておいて、ルーギちゃんから聞いたエルフ王の様々な話を頭に置いて魔導国諜報部隊の報告書を読みながら、エルフの王との戦いを考え始めていた。




・暗黒孔の大槌
 オリジナル武器
 黒い艶やかな特大な大槌、武器のスキルで重力系の魔法が回数制限付きで使える。
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