エルフの国王デケム・ホウガンが逃げ出した事で拠点である王城に戻ったと考えたモモンは、皆を引き連れ、モモン達「漆黒」の冒険者チームとスレイン法国の兵達とアンティリーネとエルフ王国からはルーギちゃんがエルフツリーの王城へ向けて駆けだしている。
巨大な立派に聳え立つエルフツリーの巨木は、周囲にある王城に比べて細長いエルフツリーから吊り橋が蜘蛛の巣の様に張り巡らされており、此の巨木がエルフの王国の王城代わりに使われているとルーギちゃんから説明を受けた。
エルフツリーの巨木から雄叫びのような歌が聞こえる。
死の宝珠からモモンへ無詠唱の《メッセージ/伝言》が届く。
(モモン様、死の宝珠です。どうやら歌を交えた複雑な儀式を行っているようです。王城に蘇ったデケムが居る事は間違いないようですが、此の儀式は危険かもしれません。一旦退避した方が宜しいかと思います。)
「皆、この歌はどうやら複雑な儀式の一種だ。デケムが居る事は間違いないようだが、何が起こるか分からないので一旦王城から離れるぞ」
「ちっ、仕方ないわね。ようやく止めをさせると思ったのに。隊長、皆をまとめて下がらせて、お願いね」
モモンの言葉にアンティリーネは、スレイン法国の隊長に指示を出して兵士達を下がらせている。
スレイン法国の兵士達が王城から下がると、さっきまで居た場所にエルフツリーの王城の巨大な枝が轟音を立てて落ちた。
地面は罅割れ、陥没しており、次々に枝が大地を叩く轟音が木霊する。
エルフツリーの王城が自らの根を引き抜き、周囲の細長く見えるエルフツリーを触手のようになった王城の枝が引き抜き、巨木へと吸収させている。
王城の周囲のエルフツリーの中のエルフ達も話を聞かされていないのか助けを求める声を発しながら、巨木へと飲み込まれる事で生気を吸い取られミイラの如く骨と皮の姿になっている。
エルフツリーの王城は、エルフの国のエルフツリーを次々に飲み込み、巨大な枝で出来た触手を振り回す蛸のような獣の姿へと変わり、地響きを立てて此方へと向きを変えた。
「ルーギちゃん、あの王城には誰か大切な人が居たのかい?」
「……お母さんが居た。お母さんを殺して、あいつ許せない!王なら民を導く者でしょう?民を殺して只一人強くなっても意味が無いのに!」
「そうだね。あの王は私達で倒すよ、ルーギちゃんには遠くから弓を撃ってて貰うよ。ルーギちゃんが、あの触手の化け物の傍に居たら踏み潰されるかもしれないから充分に距離を取っててね」
「はいっ。モモン、頑張って!」
ルーギちゃんはモモンに声を掛けると懸命に走って其の場を離れる。
エルフツリーの王城の獣が空へ向けて触手を伸ばすと、急激に天候が悪化し空を灰色の雲が覆い、荒れ狂う暴風が吹き荒れ、吹き付ける豪雨がモモン達に降りかかる。
「どうやら魔法《テンペスト/暴風雨》か。此れでは植物系モンスターの弱点である火が効きにくいな。ソア、エルフツリーの王城の獣に向かって火ではなく雷か無属性の魔法攻撃を放てるか?」
「はいっ!御任せを魔法使いの人達は、今から〈幻想龍〉の頭から降りますので私に触れて下さい。儀式魔法を唱えます!」
ソアが〈幻想龍〉の頭から降り、ナーベやサルビアさんやスレイン法国の従軍魔法使い達に体を触られ、儀式魔法の準備に入ったのでモモン達とアンティリーネとモモンが召喚した5大高位精霊の〈根源の精霊〉達、ソアが召喚した〈幻想龍〉の火竜がエルフツリーの王城の獣の前に立ち、時間を稼ぐ。
「い、いきます。《ワイデンマジック・アース・サージ/魔法効果範囲拡大化・大地の大波》」
マーレの魔法《大地の大波》は、範囲拡大されて100メートル範囲の大地を押し寄せる津波のように操作して、巨大なエルフツリーの王城の触手だらけの蛸に似た獣にぶつかり、獣を押しとどめる。
魔法《大地の大波》を乗り越えて来た大きな触手達は、モモンやハムスケやアンティリーネが斬り落とし、小さな触手達がスレイン法国の戦士達によって各所で数十人掛かりで抑え込んでいる。
「〈武技・剛尾豪撃〉、〈武技・超斬撃〉でござる!」
ハムスケが武技で巨大触手を斬り落とし、〈根源の精霊〉達がそれぞれ雷撃や火槍や重力波や水波などを使い巨大な触手達を痺れさせ燃やし潰れさせ切り落として対処している。
「魔法の準備が出来ました!離れて下さい!」
ソアの声に従い、モモンは武技を使い、皆に退避を促す。
「〈武技・双剣漆黒空斬〉!皆さん、離れて下さい。巻き込まれますよ!」
モモンが漆黒の波動を美麗な模様が入った双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】に乗せ、空高く此方を押し潰そうとする巨大触手に双大剣を振ると漆黒の斬撃が2つ空中を飛び、触手を切り飛ばすと同時に漆黒の波動で巨大なエルフツリーの王城の触手だらけの体を蝕んだ。
皆が退避したのを見たソアが儀式魔法を声高らかに唱え、大地に魔方陣が浮かび上がり、魔法が発動する。
「世界を騙せ、魔法《イリュージョンズ・ザット・トリック・ザ・ワールド/ 世界虚偽幻術》、スキル〈カタストロフ/災厄〉!!」
ソアが幻術の究極の奥義を使い、極限まで幻術を修めた者が数日に一度行える幻術で世界に幻術をかけ、世界を騙し真実とさせ、自らが覚えていないスキルを発動させる。
極太の黒い極光が天の灰色の雲を貫き、純然たる破壊エネルギーの渦が巨大なエルフツリーの王城の触手だらけの蛸に似た獣を包み、体に大穴を開け、エルフツリーの王城の獣が立っていた大地にすら底が見えない程の大穴を開ける。
しばらく黒い極光が天から照射され続け、辺りの大樹海の木々は衝撃波に巻き込まれて消し飛び、大地は半ばガラス化したような砂漠へと変貌していた。
モモン達冒険者チーム達や〈根源の精霊〉達やソアが創り出した〈幻想龍〉、アンティリーネとスレイン法国の兵士達や離れた場所に居たエルフの少女ルーギちゃんはマーレの魔法《大地の大波》で作った窪みに身を潜め、衝撃波が通り過ぎるのを待った。
ソアがウルベルトさんの〈録画〉データを見たがっていたのは、こういう訳か。
やたらとウルベルトさんの魔法の活躍を見ては歓声を上げてたな。
デミウルゴスも仕事の合間を縫っては顔を出すし、あれはウルベルトさんの〈録画〉データを見たかっただろうに今度、褒美として見せてやるか。
モモンがソアの方を見るとニッコニコで笑顔を浮かべていたので溜息をついて頭を撫でておいた。
「あまり心配させてくれるなよ。ソア」
「ふふん、大丈夫ですよ!モモンさんは心配性なのです!」
「モモン様、あのでかい蛸はまだ生きてるみたいです。止めを刺せと御命じなら此処からでもスキル〈レインアロー「天河の一射」〉なら届きますが、どうなされますか?」
「ふむ、アウラよ、ちょっと待て。お前は、アンティリーネを除くスレイン法国の兵士達を護衛せよ。なるべく生きて帰れるようにするのだ。止めはモモンとその仲間達で頂こう」
アンティリーネが一足早く、窪みから飛び出し、半ばガラス化している砂漠となった大地に体の大半を消し飛ばされ、樹液を垂れ流して激痛に悶え苦しむ巨大なエルフツリーの王城の触手だらけの蛸の頭と思われる部分に向かって、アンティリーネは既に武器のスキルを使い切っていたので懐から魔封じの水晶を取り出し魔法を発動させる。
「今度こそ止めを刺してやる!《デス/死》!」
魔封じの水晶から魔法を使い第8位階魔法《デス/死》を放つ。
巨大なエルフツリーの王城の触手だらけの蛸の体全体がビクリと痙攣するが、死を与える魔法なのに即座にエルフツリーの巨大触手がアンティリーネの戦鎌の防御ごと吹き飛ばそうと槍の如く伸ばされる。
アンティリーネは、戦鎌「カロンの導き」を用いて肉盾となる5体の骸骨の戦士スパルティアトを召喚し、巨大触手を防ごうとするが5体の骸骨戦士達を砕き、アンティリーネは、砂漠をわざと転がり威力を殺しながら片膝を付いて起き上がる。
「くそっ、なぜ魔法が効かない。確実に即死耐性を突破して魔法が当たった筈なのに!やはり、スキル〈The goal of all life is death/あらゆる生ある者の目指すところは死である〉で無いと駄目なのか?……だけどあのスキルは数日に一回しか使えないのに」
「それは奴が複数の魂で即座に復活するからでしょうね。奴は周囲のエルフツリーと其処に住まうエルフ達を取り込んだ。魂も取り込んでいるせいで即死魔法は意味を成しません」
まあ死の宝珠から教えて貰ったんだが、複数の魂を持つから即死魔法や死霊魔法が効きません、なんてユグドラシルのボスモンスターでも居たなあ
あの時は慣れない攻撃魔法で体力を削り切ったかな。
「これをどうぞ。この霊薬は私が冒険の際に見つけて来た物です。差し上げますよ。さて即死魔法が効かないなら話は簡単です」
「どうすんのよ」
モモンは、しゃがみ込みアンティリーネに生命力回復の霊薬を渡して、アンティリーネが霊薬を飲み込んでいるのを見ながら言い放つ。
「殴って削り切れば良いのです。幾ら無数の魂を持っていても無限ではない。生き物は、いつか滅びる。自明の理です。貴方は此処で回復まで待って居て下さい。私達「漆黒」の冒険者パーティーで奴を倒します」
モモンは、そう言うと立ち上がり、巨大なエルフツリーの王城の触手だらけの蛸に向かって走りだす。
モモン率いる冒険者チームは〈根源の精霊〉達やソアが創り出した〈幻想龍〉やエルフの少女ルーギちゃんも含めて、巨大な植物の蛸に向かって攻撃しているようだ。
「サルビア、私に補助魔法を掛けるんだ。〈武技・完璧戦士化〉、〈武技・戦士職段位上昇Ⅴ〉、〈武技・階層〉、〈武技・七彩強化〉、〈武技・黒曜石剣の円陣〉、……〈武技・閃光走破〉!」
サルビアさんの補助魔法が次々にモモンに掛かり、体が軽くなったような気がする。
モモンは、〈武技・閃光走破〉で砂煙を残し踏み出した地面を陥没させ、魔法《ディメンジョナル・ムーブ/次元の移動》と見紛う様な目にも止まらぬ速度で、次々と繰り出される巨大触手の連撃を潜り抜け、巨大なエルフツリーの王城の触手だらけの蛸の頭に辿り着くと大きく双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】を振り上げつつ、3つの黒曜石の剣と背後の双大剣が浮かび舞い踊り、周囲の樹の体を斬り刻み続ける。
「〈武技・巨神十字斬〉!」
豪雨が降りしきる空の雲を断ち割り、巨大蛸を縦に斬り抜け、大地に地割れを生じさせ、大きく双大剣を開いた後に交差して今度は巨大蛸を端から端まで横に斬り飛ばし、砂漠化した大地の端にある木々を巨大斬撃で横断する。
巨大蛸は4つに分かれた体を何とかして戻そうと、分かれた体同士から根の様な触手を伸ばして体を結ぼうとしているが、無駄な事だとモモンは連続で武技を唱える。
「〈武技・巨神斬〉、〈武技・巨神八光連斬〉!、〈武技・巨神八光連斬〉!~~」
巨大な体に当たると幸いとばかりに、巨大斬撃の八回攻撃で攻撃力は高いが命中率の低い武技を至近距離でモモンは当たれば幸いとばかりに放ち続ける。
空の曇り空は散り散りに斬り刻まれ、大地には巨大斬撃で作られた地割れが数え切れない程に出来上がる。
何度か武技で斬り飛ばしていると段々と巨大な植物性の蛸の再生力に陰りが見え始め、しばらくしてエルフの国王デケムの下半身と右腕を斬り飛ばされた体が巨大なエルフツリーの王城の触手だらけの蛸から見えたので右の大剣でデケムの腹を突き刺し引き抜いた。
引き抜かれた巨大なエルフツリーの王城の斬り刻まれた蛸のような体は萎びて最早使い物に成らないだろう。
モモンはデケムに顔を寄せ、こっそりと話しかける。
「デケム、良い顔じゃないか。このまま首を切り落として塩漬けにしてから頭をスレイン法国に渡そう。知っているか加工された方の肉体、つまり頭では復活できない。残った身体はアインズ・ウール・ゴウン魔導国で復活させて素材に成って貰おう。死んだ方がマシな扱いを寿命が尽きるまで行う事と成る。お前が聞こえてたら良かったのに残念だよ。復活を望んでしまう己の愚かさに苦しむのだな」
デケムは既に意識が無く、苦痛に歪んだ顔で気絶していた。
無駄に生命力を増大させる儀式に頼るから、こうなるとも言える。
体が大きいだけだと当たり判定も大きく成るから、其処の所を改善しないと駄目なんだよな。
モモンは左の大剣でエルフの国王デケムの首を刎ね、中空の闇から塩壺を取り出し、デケムの頭を埋めてアンティリーネに渡しておいた。
「塩漬けなんて古臭いわね。《プリザベイション/保存》の魔法を掛けた方が良いのに此方で掛けておくわよ」
「ああ、私達のとても古い習慣でね。敵の首を取った時に塩漬けにするんだが其れでも構わないよ」
一度、加工したという事実が重要なのだからな。
この点はナザリックでもデミウルゴスが皮を剥いで巻物にする際に実験済みだ。
「それで私との決闘はどうします?あまり手加減できそうにないので死んでしまうかもしれませんよ」
「あはははっ、さっきの戦闘で貴方の強さは実際に剣を交えなくても分かったわ。私の負けよ。ねえ、スレイン法国に住んで私と結婚しろとは言わないから私を抱いてくれない?貴方との子供が欲しいの」
「いや、今回はスレイン法国と協力関係に成りましたが、アインズ・ウール・ゴウン魔導国はカルネ村でのスレイン法国の襲撃を覚えていますよ。私もアインズ様に教えて貰って憤ったものです。ですから、そんなスレイン法国の方と親しくするつもりは有りません。貴方個人や一緒に戦ったスレイン法国の兵士の方々には悪印象は無いのですが申し訳ない」
「そっか、カルネ村か。……私は襲撃について聞いて無いんだけど後で神官長に聞いてみるわ。ごめんなさい、モモン、無理な事を言ってしまって」
「分かって貰えて嬉しいよ。アンティリーネ」
さて、半壊というか全壊というかエルフ王国は壊滅状態だな。
トブの大森林のダークエルフ樹木都市に移り住んでもらえるかエルフ達に話すとするか。
後は、萎びた巨大なエルフツリーの王城の斬り刻まれた蛸のような体からエルフの宝物を回収するのとエルフ国王の首を斬られた体の方を持ち帰るようアウラとマーレに頼んでおくかな。
・巨大なエルフツリーの王城の触手だらけの蛸に似た獣
オリジナルモンスター
エルデンリングの大蛸に似た姿です。
巨大なエルフツリーを儀式により化け物に変形させ、周囲のエルフツリーをエルフ達ごと生気を吸い取り、複数の魂を持つ植物系モンスターです。
儀式の主人の命令を聞き、主人の魔法を唱えます。
・〈武技・剛尾豪撃〉
オリジナル武技。前提:〈武技・豪撃〉
〈武技・剛腕豪撃〉と同じくダメージ量が増える<豪撃>の上位武技。
この武技は、尾を攻撃手段とする種族が覚える事がある。
・〈武技・双剣漆黒空斬〉
オリジナル武技。前提:〈武技・双剣空斬〉、〈武技・漆黒付与〉
双剣で付与された漆黒の波動ごと斬撃を飛ばし相手を切り裂く武技
・〈武技・巨神八光連斬〉
オリジナル武技。前提:〈武技・巨神斬〉、〈武技・八光連斬〉
双大剣で空を割り、大地に地割れを作る斬撃を周囲の敵に8回叩き込む神速の武技。
溜が必要なのと攻撃がばらける命中率の低い剣閃という弱点がある。
・《イリュージョンズ・ザット・トリック・ザ・ワールド/ 世界虚偽幻術》
オリジナル魔法、第10位階魔法。
原作にある「世界を騙す幻術」です。
この小説では極限まで幻術を修めた者が数日に一度行える幻術で、自らが覚えていないスキルや魔法を見ていれば使えるとしています。
回数があることから超位魔法かスキルとも思えますが、再詠唱時間がとても長い魔法という事にしています。
・〈カタストロフ/災厄〉
オリジナルスキル
〈グランドカタストロフ/大災厄〉や〈ぷちカタストロフ/小災厄〉が原作で登場しているので〈カタストロフ/災厄〉もあるだろうと登場させました。
最大MPの大半を使う超大技で超位魔法を凌ぐ力があります。
純然たる破壊エネルギーの渦が敵を覆い尽くし破壊します。