オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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エ・ランテルの魔導王邸宅の中庭

 〈エルフ/森妖精〉の王国は壊滅したので、エルフの避難民達の大部分の希望者はトブの大森林のダークエルフ樹木都市に移り住んでもらう事になった。

 エルフの避難民たちのリーダーはエルフ国王の娘ルーギちゃんが務め、アウラやマーレの指示に従っているそうだ。

 まだまだダークエルフ樹木都市の居住層の空きは沢山あるから問題無い筈だ。

 ダークエルフ達との細かな折衝問題は、アウラやマーレが任命した〈エルダーリッチ/死者の大魔法使い〉の役人が処理する事になっているので、ダークエルフに有利な解決には成らないだろう。

 エルダーリッチには忖度は、することの無い様に命令しておいたので問題は少ない筈だ。

 

 ダークエルフ樹木都市で配備予定の木巨兵の運用だが、このままでは只のでかいウッドゴーレムと変わらないので自律思考させる為に、ナザリックで様々な実験を行った。

 

 広く戦える場所と言うことで選ばれた闘技場で様々な改造が施された木巨兵が的に向かって剣を振ったり、敵役のデスナイトを相手に鍔迫り合いを行っている。

 

「23番、失格。攻撃に移るまでの判断が遅いぞ」

「うーむ、23番は3つの職業、剣士と神官と魔法使いのゴーレムの人格による合議制で一体の木巨兵を動かしてますからな。どうしても判断が遅くなりますな。複雑な指令に対して柔軟な対応が出来るのが良いのですが」

「戦闘で判断が遅いのは駄目でしょう。死んじゃいますよ」

『そうですね、一瞬の隙が命取りになるのが実力の拮抗した戦いでは頻繁にありますから、此れは残念ながら却下ですね。ですが何かに使えるかもしれないので資料を纏めておいてください』

 

 豪華なローブを着込んだ赤黒い眼光を放つ骨の魔術師の姿をしたアインズは、フールーダやニニャや死の宝珠と共に様々な木巨兵改善案を試していた。

 フールーダは、既に帝国との間で引継ぎを済ませており、ナザリックに移籍する事が決まっていた。

 バハルス帝国の皇帝ジルクニフは、顔を若干引きつらせてナザリックへと送り出してくれたのだと聞く。

 木巨兵達は、失格とされた者が並ぶ列にニニャに率いられて並べられている。

 

「56番は、おお合格だな。デスナイトと指示なしで、まともに打ち合えている。どのような強化を行ったのだ?」

「はいっ、56番はゴーレムの核ともいう部分にアインズ様の下位アンデッド作成で作られた《レイス/死霊》を死の宝珠殿の魔法《ポゼッション/憑依》で体を乗っ取り永続化しております。木巨兵の体を動かしているのは〈死霊〉の方ですな。これならば低級な〈死霊〉を使って高レベルな木巨兵に自律的な思考や行動も可能です」

「うむ、暫定で此れを採用としよう。お前は別の場所で待機だ」

 

 その後も試験は続いたが56番以上の実験結果を出なかったので、まずはダークエルフ樹木都市で試験運用して良さそうなら量産化することに決まった。

 アインズが実験が終わり、フールーダに挨拶し別れると合格した木巨兵とニニャを連れ、始原の魔法《竜宝創造》で創られた《ゲート/転移門》の魔法が込められた部屋へと《集団転移/マス・テレポーテーション》で飛び、様々な場所へと繋がる闇が幾つも渦を巻き、闇の横に看板が立てられていた。

 門番として立つ、ノコギリクワガタにも似た姿を持つ〈ガーディアンナイト/守護騎士〉が数体おり、全員がアインズに向けて敬礼している。

 

「うむ、ご苦労。ダークエルフ樹木都市の〈転移門〉はどれかな?」

「ハッ、此方デス。オ確カメヲ御願イシマス」

「うむ、問題無いようだ。では行って来る」

「ハイッ、オ気ヲ付ケテ行ッテラッシャイマセ」

 

 ダークエルフ樹木都市と書かれた看板が横に立つ、闇の中へとアインズは足を踏み入れる。

 最上階の一室、アウラやマーレの住まう王の区画となっている部屋の一部の2つある闇の渦の一つからアインズは木巨兵とニニャを連れ現れる。

 天井全体が発光しており、酸素の方もアインズは必要ないが壁から供給されており、爽やかな香りがアインズの嗅覚を楽しませる。

 外へと続く扉をニニャがノックしてアインズが来たことを告げ、開けて貰った。

 

「アインズ様、いらっしゃいませ!。この度の要件は何でしょうか?」

「え、えっとダークエルフ樹木都市は適切に運用されていてエルフ達もダークエルフ達と共によく働いてくれています。問題は起こってない筈ですが何かありましたか?」

「こ、こんにちは。アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下、私はエルフの代表ルーギと申します。よろしくお願いします」

 

 王の間ではアウラとマーレがエルフの少女ルーギと話しをしていた所だった。

 壁際では、デスナイト達がアインズ・ウール・ゴウン魔導国所属を示す旗を片手に持ち、佇んでいる。

 アインズは、片手を上げて挨拶の代わりとし、喉飾りに意識を集中して老賢者風の声に変えて、本題に入る。

 

「ああ、別に問題は無いぞ。ルーギとやらも楽にして良い。木巨兵の試験運用に合格した者を連れてきた、この者の中身は〈死霊〉が操っていてな、ゴーレムの場合と違って思考して自律行動が可能だ。弱みとしてはアンデッドの弱点の一つの浄化に気を付けてくれるか?浄化されると恐らく只のウッドゴーレムになってしまうだろう。此方で長期運用の試験がしたいので1か月後の定期報告の時で良いので試験結果を纏めておいてくれ。内容は木巨兵を使った者達の聞き取り調査で良いぞ」

「はいっ、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「後は、此れだ。エルフ王の宝物殿にあった〈果実を作る魔法を4時間に6回発動できる杖〉だな。此れを使って〈万病に効く薬草〉や希少果実に使えば収穫も捗るだろう。お前達に預けるので存分に使いなさい。さて今回は、お前達に褒美がある。ニニャ、指輪を持って来なさい」

 

 木巨兵をアウラとマーレに渡し、ニニャが箱に入った2個の指輪をアインズに差し出した。

 アインズは箱から2つの指輪を取り出してアウラとマーレに一つづつ渡していく。

 

「これはな、タレント〈貴秘雫〉を使い使用回数の増えた〈流れ星の指輪〉で大量の経験値を得て、始原の魔法《竜宝付与》に経験値を使って創り上げた逸品よ。〈不老の指輪〉だ。これをお前達にやろう。お前達はまだ子供だが、いづれ年を取り衰える事もあるだろう。大人になってから使いなさい。なに心配する事は無い、他に不老が必要な異形種では無い料理長シホウツ・トキツや配下たちには分けてあるからな。すまないな、お前達に褒美として指輪を配るのが遅れてしまった、他の者にはダークエルフより寿命が短い者も居るので其方を優先させてしまったのだよ」

「謝らないで下さい。アインズ様。この指輪は有難く頂かせていただきます」

「ゆ、指輪をありがとうございます。大人になったら付けますね」

「うむ、感謝を受け取ろう。ルーギよ、ナザリックに大いなる利益をもたらす者には褒美が出る。これからもアウラやマーレに従いナザリックの為に働きなさい」

「はい、分かりました。より一層の忠義を貴方様に捧げます」

 

 アインズは皆に挨拶して、転移の魔法で創り出した《ゲート/転移門》を潜りナザリックにニニャと共に帰還した。

 

 〈不老の指輪〉でNPC達を不老に出来て良かったよ。

 良く考えたら料理長なんかは、寿命でいつか死んでもおかしくないからな。

 しかし〈不老の指輪〉は、ユグドラシルでもあったフレーバーテキストだけのゲーム内では年の概念が無いから全く意味の無い雰囲気アイテムだったが、この世界では優秀なアイテムに変わっているな。

 アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーでは全員寿命と言うものの無い異形種だから、〈人化の指輪〉は持ってても〈不老の指輪〉なんて人間種でも役立たずな雰囲気アイテムまで集めてはいなかったから始原の魔法《竜宝付与》で指輪に不老を付与出来て良かったよ。

 元々、ユグドラシルでもあったアイテムの所為なのか消費する経験値も少なくて済んだしな。

 

 アインズは闘技場で「漆黒」の冒険者パーティーと双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】のレベル上げをしつつ、自らも1レベル上昇させた。

 遂に「プリミティブキャスター」の職業レベルが最大レベルに達し、アインズのレベルは114と成り、《世界蘇生》系統の《世界大蘇生》、《世界完全蘇生》を獲得し、ひとかけらの骨からでも完全に生命力を回復して復活が可能と成った。

 そして《世界障壁》系の《世界絶対障壁》も得て、これは「世界の守り」を得ても此の障壁を超えるには何度も挑まなけらば成らず、又、「世界の守り」を持たない者は、障壁内では転移や特殊な移動が封じられるという物だった。

 常時発動型特殊技術は、スキルの威力上昇に全てつぎ込んだ御蔭で範囲は狭いが、当たれば大きな傷を与えられる事だろう。

 ニニャと死の宝珠もそれぞれレベルアップしたようで魔法を何にしようか相談しているようだ。

 

 ナザリックで一般メイドに憑依して食事を楽しんだ後は、ナザリックの執務室でニニャが魔導具を創り、ソアが魔導書で自習している横で、書類仕事をしていた。

 

 いつもは、昼は冒険者、夜は王様の仕事なのだが、今日は、ほとんど王様の仕事ばかりだな。

 ニニャやソアは睡眠不要な装備をしていたり、元々睡眠を取らずとも問題無い種族が装備品だったりの所為か執務室で仕事をする時は、いつも隣で作業の邪魔にならないように勉強や魔導具の作成作業してくれている。

 これがもし一般メイドに見られながら一人で黙々と仕事をするだけなんて想像するとゾッとしてしまう。

 ちょっとしたお喋りの相手に一般メイドは成ってくれないからな、助かってるよ。

 

 アインズが書類仕事を続け、そろそろ朝飯の時間かと仕事を一旦置こうとした時に、扉を叩き、一般メイドが部屋に入って来た。

 

「アインズ様、客人がエ・ランテルの魔導王邸宅に来ております。名を〈白金〉のリク・アガネイアと名乗っており、モモンと知り合いだと言ってますがどうなさいますか?」

「〈白金〉か、中庭に通してラナーに歓待させておけ、中身は空っぽの鎧だけだから香りの楽しめる物を用意しておくのだ。私が出よう。奴はモモンの正体をアインズだと見やぶった者だからな。側仕えにはコキュートスを置き、守護者数名を邸宅の各所に潜ませておくのだ。私の「殺せ!」という合図が無い限りは何もするなと伝えるのだ」

「はいっ、階層守護者各位に伝えます」

 

 エ・ランテルの魔導王の邸宅に《ゲート/転移門》の魔法の込められた闇の渦でニニャとソアとナーベとサルビアさんと共に飛び、コキュートスはシャルティアとアルベドとデミウルゴスとアウラとマーレと参加できる戦闘メイド全員という出張中で離れられないセバスとソリュシャンを除いた戦力で黒い闇からやって来ていた。

 

「御身の前に、奴を殺すのなら即座に殺してみせましょう」

「奴は遠隔操作の空っぽの鎧だ。殺せぬよ。それよりもコキュートスと戦闘メイド以外は邸宅の各所に見つからぬように身を隠して置け。私の「殺せ!」の合図が無い限りは、どのような無礼な行いがあっても無視するのだ。良いな」

 

 アインズはアルベドの言葉を否定して指示を出し、自らはモモンという漆黒の戦士として中庭に赴いた。

 中庭では、ラナー王女が背中の白い羽を風に靡かせて、一輪挿しが近くにある「白金」のリクとお喋りしているようだ。

 ラナー王女の斜め後ろでは、クライムが護衛の為に立っていた。

 

「うふふふっ、それでね、クライムったら……。あら、モモン様がいらしゃったみたいだから此れで失礼しますわね」

 

 ラナー王女が中庭を出たのを見届けた後に、コキュートスを斜め後ろに斧槍を持って立たせ、ナーベを含む「漆黒」の冒険者パーティーを「白金」と同じ円卓に座らせる。

 戦闘メイドのユリとルプスレギナとエントマが給仕を各自に対して行っており、シズは魔導銃を握って見張りをしている。

 モモンは最後に円卓につき、話を促した。

 

「モモンに話があるそうだな。「白金」のリクが、わざわざ来たんだ。重要な話なんだろうな?」

「邸宅の各所に強者が隠れているね。君達に総攻撃されたら鎧も凹んでしまうよ。安心して欲しい、君の様な規格外の者には喧嘩は売らないよ。今日は純粋に御願いに来たんだ。御願いの前に信頼の証として私の真の名を教えておこう。私の名前はツァインドルクス=ヴァイシオン、ツアーと呼んでほしい」

 

 ツアーは、そう言うと一輪挿しの花瓶の花を摘まみ香りを楽しんでいるようだ。

 モモンは、漆黒の兜に手を当て、隠密に徹した階層守護者達の動きが全てバレてると思って動いた方が良いだろうと考えなおした。

 

「……鎧が凹むか、ナザリックの総攻撃を受けても逃げ切れるだけの自信があると見えるな。ツアーか、これからはツアーと呼んでも良いのか?」

「ああ、ツアーで頼むよ。私の本体は、アーグランド評議国永久評議員の〈プラチナム・ドラゴンロード/白金の竜王〉と呼ばれる竜でね。本体が大きいので狭い場所の探索には此の鎧を使ってるんだ。さてアーグランド評議国は多種族国家でね。アインズ・ウール・ゴウン魔導国に似ているとも言える。其処の僻地に未発見の遺跡が発掘されたんだ。どうやらプレイヤー由来らしいんだが遺跡の中は狭くて「白金」の鎧だけしか通れないみたいだし、実力者が欲しいんだ。君達の力を貸して欲しい。報酬は「白金」と「漆黒」で山分けという事でどうかな?」

 

 未発見のダンジョン、実に冒険者らしい仕事じゃないか。

 実に心躍る冒険譚の始まりだと小躍りしそうになるのを、冷静さを装って咳ばらいをしつつツアーに声を掛ける。

 

「ゴホンッ、まず探索費用をアーグランド評議国で払って貰う。遺跡に潜る前に持ち主に充分に声を掛ける事が第一だ。私は泥棒では無いからな。もし返答があれば遺跡の宝は持ち主の物だから探索せずに帰るぞ。もちろん探索費用は帰る場合もきちんと払って貰おう」

「ああ、遣り方は任せるよ。探索費用の方もアーグランド評議国で出そう。ただし未発見の遺跡の探索費用を冒険者組合で見積もった金額になると思うよ」

 

 モモンはツアーと握手して、アーグランド評議国に早急に向かおうと約束した。

 アーグランド評議国に着いたら、首都の冒険者組合で「白金」のリクに会いに来たと伝えれば、冒険者組合からツアーに話が通るそうだ。

 モモンは、ダンジョン探索と聞いて思わず、鼻歌を出してしまい、ツアーに楽しそうだねと冷たい目で見られるのでした。

 

 おい、そんな目で見るな。

 男ならダンジョン探索は楽しみな物だろうが。




・〈不老の指輪〉
 オリジナルアイテム
 装備すると不老に成る。
 もちろん不老になるだけで不死では無いので、怪我や病気や殺されれば普通に死にます。
 ユグドラシルでもあった装備品だが、ゲームなので実質NPCやプレイヤーは不老なのでフレーバーテキストだけの雰囲気アイテムだった。
 アインズはタレント〈貴秘雫〉を使い、使用回数が増えた〈流れ星の指輪〉に願って大量の経験値を獲得して、始原の魔法《竜宝付与》で鍛冶長作成の指輪に経験値を使って不老効果を付与しています。
 料理長シホウツ・トキツには料理の都合上、不衛生なので指輪が付けれないので首飾りにしています。
 元々、ユグドラシルであったアイテムのせいか少ない経験値で出来たのでアインズも驚いていました。

・《世界完全蘇生》
 オリジナル始原の魔法
 《世界蘇生》系統の魔法。
 ひとかけらの骨からでも完全に生命力を回復してレベルダウン無しの復活が可能、消費コストを更に掛ければ名前と姿を知っていれば無からでも復活できる。

・《世界絶対障壁》
 オリジナル始原の魔法
 《世界障壁》系の魔法。
 「世界の守り」を得ても此の障壁を超えるには何度も挑まなけらば成らず、又、「世界の守り」を持たない者は、障壁内では転移や特殊な移動が封じられる。
 同じ《世界絶対障壁》の魔法を持っていれば、此の障壁は意味を成さず、ただ通り過ぎるばかりである。
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