オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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アーグランド評議国の山奥ダンジョン 1

 モモン達「漆黒」の冒険者パーティーと「白金」の冒険者パーティーが山奥の洞窟に足を踏み入れて、しばらく歩くと洞窟の土を掘り抜いた様な箇所から床や天井や壁が石造りの人工的な物に成っていた。

 モモンは、自らの影から忍者のセキフを呼び出し、周囲の罠の感知をさせると罠が此れでもかと出て来るのだった。

 

「そこが落とし穴になっております。作動させて穴を開けさせますので少々お待ちを」

 

 落とし穴を作動させて穴を開け、壁の小さな穴から飛び出す槍を切り落とし、床付近の引っ掛け罠を解除しているセキフには大助かりだ。

 道中に現れる〈エルダー・ブラック・ウーズ/古き漆黒の粘体〉達を「漆黒」と「白金」の魔術師組が遠距離から魔法で焼き払い、骸骨のマスターガーダー達をモモン達の接近戦組が片付ける。

 

「燃え尽きろ、〈武技・炎滅撃波〉!」

「〈武技・飛竜突き〉!」

 

 モモンの武技で骸骨のマスターガーダー達は直線状に伸びる炎の衝撃波に纏めて吹き飛ばされ、起き上がり炎を燻らせる個体に「白金」のリザートマンの竜騎士が武技を唱え、ダンジョンの天井近くまで飛び、落下しつつ騎槍をマスターガーダーの脳天から股下まで突き刺している。

 ツアーの空中を浮遊するハンマーがマスターガーダーを粉砕し、竜を模した白銀鎧が白銀の槍の石突の部分でマスターガーダーの頭骨を砕き、動くマスターガーダーは、もう居ない。

 モモンは、しゃがんでマスターガーダーの砕けた骨を手に取り、しばらく眺めた後に放り捨てる。

 

「やはり、ダンジョン特有の出現モンスターのようだ。召喚モンスターなら倒せば黒い霧となって消えるからな。《オール・アプレイザル・マジックアイテム/道具上位鑑定》、持っている武器は付与も含めて此の世界では有り得ない程の性能を誇るようだが、ダンジョン特有の出現モンスターと武具は、やがてダンジョンに吸収される。此れはモンスターが身に付けていた武具を持ち帰ろうとインベントリボックスに入れてもダンジョンを出れば消えてしまうのだよ」

「このダンジョンで冒険者が死ねばどうなるんだい?」

「ユグドラシルならリスポン場所で復活だな。此処ではどうなるか?」

 

 無詠唱化した《メッセージ/伝言》で死の宝珠にモモンは問い掛ける。

 《メッセージ/伝言》の魔法は、無詠唱化すれば、使用者は発声せずに会話できるので内緒話には最適な魔法なのだ。

 

(答えよ、死の宝珠よ)

(はい、モモン様。大昔、数百年前でしょうか、現れたダンジョンでは死んだ冒険者は、ダンジョンにやがて身に付けた武具ごと飲み込まれ、死体はゾンビとして武具は宝箱の戦利品として再利用されたとの報告が書物に書かれておりました。此のダンジョンでもそうなのかは不明ですが、もし死者が出た場合は即座に復活させるか、ダンジョンから死体を出さないと取り込まれる恐れがあるので気を付けた方が宜しいでしょう)

 

 モモンは、死の宝珠から聞いた内容を「漆黒」と「白金」の冒険者パーティーに教え、先を進む。

 通路は下へと延び、底が見えない程の大穴の中心に絶壁が立ち上がり、その絶壁の上に下り階段が続いており、要所要所に下り階段から突き出した燭台が台座の上で燃え盛っている。

 其処をセキフを先頭に「漆黒」と「白金」の冒険者パーティーは下り階段を進んで行く。

 ガコンッという音が鳴り響くとほぼ同時に階段幅とほぼ同じ大きさの巨大な石球が「漆黒」と「白金」の冒険者パーティーの後ろに大音を立てて落ちて来た。

 巨大な石球が、下り階段を降りている途中の「漆黒」と「白金」の冒険者パーティーを目掛けて猛スピードで転がり出す。

 

「まずいっ、皆、下り階段途中の燭台のある台座に飛び移るんだ」

 

 モモンの注意で、下り階段の要所に備えられた各所の燭台が供えられた台座にそれぞれが移り、巨大な石球をやり過ごす、だがしばらくすると続けてガコンッという音が鳴り響くと大音を立てて巨大な石球が転がり落ちていく。

 

「……セキフは、巨大な石球を避けつつ通路の先を特に曲がり角を調べろ。私だったら巨大な石球を避けた曲がり角の通路に転移の魔方陣でも仕込んでおくからな」

「ちょっと御待ちを、セキフさんには、私が魔方陣を地面に描くときの魔力液と筆を持っていって貰います。それで転移魔方陣に一筆加えれば無効化できる筈ですから、今から第一位階召喚魔法で小動物を出すので、転移魔方陣に小動物を置いて無力化の確認を御願いします」

「御意、かしこまりました」

 

 ユグドラシルでは、転移の魔方陣は道の端に避けるか遠回りで避けて行くしかなかった。

 遠回りでもダンジョンは、拠点と同じく「システム・ アリアドネ」によって、必ず入り口から心臓部まで一直線に繋がっている物だから、必ず次の移動拠点までは行ける筈なんだ。

 しかし転移魔方陣に一筆加えるとはな。

 ユグドラシルでも可能だが、咄嗟には思いつかなかったな。

 

 モモンが、巨大な石球が転がる間も下り階段の先の石壁の各所の穴からスケルトン達が魔法の弓を撃っているのを美麗な模様が入った双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】を回転させ、魔法の矢を弾き飛ばす。

 モモンやツアーが弓矢を防ぐ間にセキフが召喚されたネズミを連れ、巨大な石球が転がる先の通路を調べに行った。

 どうやら石球を避ける幾つかの曲がり角の通路に転移魔方陣が設置されていたようで、ニニャの機転により転移魔方陣に一筆加えて無力化した事をネズミを転移魔方陣に乗せて確かめたと戻って来たセキフの報告をモモンは受け取った。

 

「さて、私が転がる巨大石球を防ごう。其の間に皆は急いで下り階段を降りて、セキフが無力化した最初の転移魔方陣まで移動して欲しい。では行くぞ!」

 

 ガコンッという音が鳴り響くと大音を立てて巨大な石球が転がり落ちて来たのを下り階段の道の中心にモモンは立ち、機会を見計らい武技を唱える。

 

「真っ二つになるがいい!〈武技・剛閃撃〉!」

 

 双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】を縦に振るい、瞬時に剛力を発揮して斬り飛ばすと巨大石球は2つに割れ勢いのまま、下り階段の脇の底の無い空虚な闇へと吸い込まれていく。

 皆は其の間に下り階段を降りていたのだろう「漆黒」と「白金」の冒険者パーティーは、モモンに対して早く降りて来いと手招きして大声を出していた。

 次の巨大石球が落ちて来る前にモモンは、下り階段を慌てて降りて皆の曲がり角まで避難する為に急いで滑り込んだ。

 ガコンッという音が鳴り響くと同時に大きな音を立てて巨大石球が脇を通り抜け、転がっていく。

 

「みんな怪我は無いか?……うむ、良い様だな。さて此のまま此処に居てもしょうがない。何回か横穴に入るのを繰り返して先を進むぞ」

「モモンさーん、ご報告があります。セキフが先程この先に宝箱を発見したそうです。いかがなされますか?」

「ナーベよ、宝箱は開けるものだぞ。ツアー、宝は「漆黒」と「白金」の冒険者パーティーで山分けだったな。開けても良いよな」

「ああ良いとも。ところで盗賊が居ないけど忍者のセキフで大丈夫なのかい。忍者は罠発見能力は高いけど宝箱を開けたりするのは不得意だろう?」

「其処は私に任せて欲しい。まず宝箱は〈ミミック/擬態宝箱〉というモンスターが化けている場合があるので宝箱が壊れない程度に叩くっ!うむ、本物だな。そして始原の魔法《世界解錠》!。ふう、後は開いた宝箱に罠が無いかをセキフが確かめれば問題無い。サルビアさん、減った生命力を回復する為に持続回復の魔法を私に掛けて下さい」

 

 モモンがサルビアさんに持続回復の魔法を掛けて貰っている間に、セキフが宝箱に罠が仕掛けられていないか、じっくりと確認した後に宝箱を開けると、中には強力なノックバックが付与された大槌と金銀財宝が宝箱に目一杯に詰まっていた。

 ツアーや白銀の竜鎧を除く「白金」の冒険者パーティーが目の色を変えて喜んでいる。

 モモンは、大量の金貨を調べるとユグドラシル金貨と分かり、モモンはナザリックの運営で目減りする金貨の補給が出来て、ほくそ笑んだ。

 強力なノックバックが付与された大槌自体は、攻撃力も低く、その分ノックバック性能を上げた物のようで此れは此れで珍しいので良い土産になると喜んでいた。

 とりあえず大槌や金銀財宝は、空にしておいた〈インフィニティ・ハヴァザック/無限の背負い袋〉に入れ、モモンが管理する事になった。

 その後は、幾つもの横道を活用しながら行き止まりにあった宝箱を開け、幾つもの霊薬や巻物や様々な武具や金銀財宝を手に入れて行く、巨大石球を避けて、巨大石球が通り抜ける道を進んで行くと巨大石球が大穴へと落ちる曲がり角に着いた。

 巨大石球が底に激突する音がしない事から、途中で下り階段の上に転移しているとみて良いだろう。

 曲がり角の先は無数のギロチンが空中の梁から垂れ下がり、振り子の様に一定周期でバラバラに動きつつけ、そこの細い道をギロチンを潜り抜け進むという物だった。

 細い道の両側は深い幅広い穴になっており、穴の底には無数のモンスターが犇めいており、穴を越えた両側のそそり立つ石壁の幾つもの壁穴には〈インセクト・ハイソーサラー/昆虫の高等魔術師〉と見られるローブを着て杖を持った昆虫達が2本脚で立ち此方を見ている。

 どうやら此の場所は、《テレポーテーション/転移》系や《フライ/飛行》系の魔法やスキルや能力を封じられているようで、ひとり程の幅の細い道を無数のギロチンが振り子の様に揺れる中を通り抜けつつ、両側の壁穴から覗く〈昆虫の高等魔術師〉の射撃魔法を避けて進むしかなさそうだった。

 

「これは困ったね。私の浮遊効果も消えてしまったようだ。ギロチンを避けつつ魔法を避けるか、攻略は無理じゃないか?ギロチンで落とされるか魔法を当てられて穴に落ちるよ」

「無理と思うから無理なんだよ。こういうのは何度も死にながら攻略するものだ。だが「漆黒」と「白金」の冒険者達に何度も死ねというのも無茶な話か。……良し、此れしか無いな」

 

 ツアーが地面を踏みしめつつ、ギロチンで死なないまでも穴の底に落ちて犇めくモンスター達を見て、戦わないといけないのかと嘆いていると、モモンが攻略方法を提案した。

 今は、モモンが其の攻略方法を実践中だ。

 

「時よ止まれ、魔法《タイム・ストップ/時間停止》。始原の魔法《世界加速》!さて《世界加速》中は停止した時間の中でも攻撃すら出来る程の加速力を得ている。これは他者に影響を及ぼせると言うことだ。だから細い道を人をひとりづつ程度なら運べるという訳だ」

 

 モモンは、始原の魔法で生命力を削りながら魔法《タイム・ストップ/時間停止》で停止した時間の中を《世界加速》で必死になって「漆黒」と「白金」の冒険者パーティーをえっちらおっちらと細い道の終点まで運びこんでいた。

 停止した時間の中では、喋る者もツアーしか居ないのでツアーに説明をしつつも「漆黒」と「白金」の冒険者パーティーを運び終える。

 モモンは、投げナイフで〈昆虫の高等魔術師〉達に次々と投擲しておく事も忘れない。

 投げナイフは、《世界加速》の効果で〈昆虫の高等魔術師〉達の体に幾つも突き刺さった状態で止まる。

 

「驚いたよ。まさか時間停止して全員を運ぶなんてね。君は妙な始原の魔法を会得してるね。そもそも竜は自らの体の爪や牙や角、尾の一撃や竜の吐息を磨く為に始原の魔法を使うからね」

「お前の方こそ、此の止まった時間の中でも動けるとはな。そろそろ時間停止を解除するぞ。早く止まったギロチンを潜り抜けて此方へ来い」

「分かったよ、そう急かさないでくれ」

 

 ツアーが細い道を渡り、此方に来たことを確認して時間停止を解除すると投げナイフが体に幾つも突き刺さり驚いた〈昆虫の高等魔術師〉達は、不意を突かれバランスを崩したせいもあり、次々と足を滑らせ深い穴へと落ちて、穴の底の犇めくモンスターとぶつかり拉げた音を出して両者共に潰れている。

 通路の奥に宝箱があり、左壁には下り階段が続いている。

 モモンが双大剣を宝箱に一当てすると、宝箱が飛び上がり箱から触手が伸びて痛みに苦しんで辺りを転げまわっている。

 

「〈ミミック/擬態宝箱〉だ!魔法使い組は火を使え!」

 

 「漆黒」と「白金」の冒険者パーティーの魔法使い組は宝箱が突如モンスターに変わったことに驚きながら、モモンの的確な指示により〈ミミック〉に対して《ファイヤーボール/火球》や《ファイヤー・ストーム/炎の嵐》や《フレイム・アロー/炎の矢》を容赦なく次々に叩き込む。

 〈ミミック〉は何も出来ずに、灰すら熱による上昇気流で吹き飛んでいる。

 

「……危なかった。ユグドラシルの〈ミミック〉なら最悪の場合は、魂を掠め取られる恐れがあったからな」

 

 魂を取られると聞いて青褪める冒険者パーティー達を落ち着かせるために、此処で一度休憩を取るか。

 まだまだ先は長いからな。




・竜騎士
 オリジナル設定
 リザートマンの竜騎士、普段は〈ワイバーン/飛竜〉を乗りこなしている。
 元ネタは、原作web版でアーグランド評議国の亜人、強者であると噂されていました。

・〈武技・飛竜突き〉
 オリジナル武技
 空高く飛び、上空から敵の脳天に強烈な一撃を叩き込む武技、主に槍を使う。
 元ネタはファイナルファンタジーの竜騎士のジャンプ攻撃です。

・〈インセクト・ハイソーサラー/昆虫の高等魔術師〉
 オリジナルモンスター
 昆虫系の魔法使い、2本足で立ち上がり魔法を唱える。

・〈ミミック/擬態宝箱〉
 オリジナルモンスター
 ファンタジー世界で人を騙し、宝を開けた人を丸のみにするモンスター。
 ヤドカリのような甲殻類、タコのような頭足類やカエルのような爬虫類など様々。
 高レベルのミミックならスキル〈ソウルスティール〉を使い、魂を奪う事で全滅する事もある。
 ユグドラシルなら対抗手段も豊富にあり、最悪課金すれば復活も可能だった。
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