アーグランド評議国の山奥ダンジョンの報酬はギルド拠点だった。
だがモモンは、既にナザリック地下大墳墓という拠点を持っており、ユグドラシルでは2つの拠点は持てないので、ダンジョン崩壊を選びダンジョン内の宝は山分けを選んだ方が良いのかと悩んでいた所、死の宝珠が見かねて無詠唱の《メッセージ/伝言》を送って来た。
(モモン様、死の宝珠です。一体どうされたのですか?もしかしてダンジョン攻略の報酬に悩んでおられるのでしょうか?)
(うむ、実は報酬が此のダンジョンをギルド拠点にしても良いという内容でな。私は既にナザリック地下大墳墓という拠点を持ってるから、此のダンジョンを拠点には使えない。ユグドラシルでは2つの拠点は持てないからな。試しにやってみると既に拠点を持っていますと目の前に半透明な板が現れて書かれていたよ。この半透明の板は個人ごとの通知だからお前には見えないのだろう?)
(見えませんね。モモン様、私は装備品でもあります。手に取ればモモン様と一体と認識されて私も半透明の板が読めるかもしれません、どうか手に取って下さい)
モモンがニニャに断ってから、死の宝珠が嵌った黒宝珠の杖を借り、再び半透明の板を見た。
モモンが無詠唱の《メッセージ/伝言》で死の宝珠に内緒話をする。
(どうだ見えるか?言葉が分かるか?)
(見えます。私も至高の方々の言語は学んでおり、読めますよ。ふむ、この基本と書かれた言葉が気になります。指で触れて貰えませんか?)
半透明の板に「基本の報酬は~」とあり、良く見ると基本の字が他の書体と若干違う事に気付いた。
早速、モモンが「基本」の字に指で触れると更に半透明の板が浮かび上がった。
「なになに、「このダンジョンの拠点を必要でない方は、このダンジョンをカスタマイズできます。カスタマイズした新たなダンジョンを再度攻略するも良し、愚かな犠牲者が右往左往するのを眺めるのも良し。このダンジョン拠点が必要になりましたら、新たな攻略者が出る前に拠点の採用をご検討下さい。」か、なるほど拠点として採用した場合のお手本を見せてくれる訳か」
(モモン様、このダンジョンが拠点として使えないならナザリックでは出来なかったユグドラシル製のアイテムや金貨を手に入れる為の鉱山として活用されては如何でしょうか?攻略者が出ると、このダンジョンを拠点としてしまう恐れがあるのでダンジョンボスはモモン様が倒した巨大鬼のような倒す為の仕掛けを解けば比較的簡単に倒せる物でなく、単純に強くされた方が安心できます)
死の宝珠の意見を聞き入れ、ダンジョンボスは強さ重視でダンジョンに挑むレベル100の者が複数いても簡単には勝てない程の強さにして、ダンジョンの宝箱の中身はモンスターの強さによることからナザリックで対処可能な高レベルなアンデッド系統のモンスターで固め、ダンジョンの空間は定期的に変わる事にして、低レベルな罠は採用して高レベルな罠は無しで設定した。
まあ、アンデッドのアインズならダンジョンのアンデッドの闇属性の魔法やスキルなんかは効かないし、アインズには、スキル〈不死の祝福〉という周囲のアンデッドの反応を感知し、大雑把な数と方向が分かる常時発動型スキルもあるので楽勝だろう。
様々な設定を終え、ダンジョンが生まれ変わり、床や壁面が動き、空間が変わるゴゴンッという音が、ダンジョンボスの大広間に鳴り響く。
「何をしたんだい?」
「ああ、このダンジョンの設定をしていた。このダンジョンの報酬は拠点として使えるという物だったが、私には必要ないのでね。このダンジョンは生まれ変わり、新たな攻略者を待つだろう。新たな攻略者が出るまで、このダンジョンはアインズ・ウール・ゴウン魔導国とアーグランド評議国との共同管理で如何かな?断るならダンジョンを崩壊させて中の宝は山分けだが、この提案を受けるなら恒久的に、このダンジョンは新たな攻略者が出るまで宝を生み出し続けるだろう」
「宝を生み出し続けるダンジョンか、無から生み出すのかな?」
「竜脈が生み出す魔力を変換しているとあるな。このダンジョンでも時間さえかければモンスターや宝箱は復活するわけだ」
モモンは、空中に浮かぶ半透明の板のダンジョンの詳細の項目を読み込み、そう言ったが、他の者達には見えないので慌てて言い出す。
「おほん、私の目の前には他の者に見えない半透明の板が空中に浮かんで文字が書かれているので、それを読み上げたんだ。決して適当な事は言っていないぞ。で、ダンジョンの件はどうするんだ、ツアー」
「魔導国と評議国との共同管理を前向きに検討させてもらおう。まあ宝を生み出すダンジョンなら評議員達も宝に目がないドラゴンだ。宝には飛びつくだろう、後で書面を送ってくれ」
「よし、決まりだな。では地上への転移門が開けるようだ。それで帰ったら宝の山分けの相談をしようじゃないか」
まさかダンジョン攻略を続けるだけで、ユグドラシルのアイテムや金貨が手に入るとはな。
評議国との共同管理だが、高難易度のアンデッドダンジョンにしたから評議国の冒険者では無理だろうな。
ツアーや白銀の竜鎧か、かなりランクが落ちるがリザートマンの竜騎士辺りなら攻略も多少は上手くいくかもしれないが、ツアーは評議員で普段は忙しいだろうし、白銀の竜鎧はツアーについてるだろう。
後はリザートマンの竜騎士だけだと、御供が居ても地上1階の攻略するのさえ難しいな。
だが、ナザリックの階層守護者達なら対アンデッド装備に身を包めば、攻略は、さほど難しくは無い。
なんなら、私がダンジョン攻略に参加しても良いくらいだ。
ダンジョンボスさえ倒さないのであれば、何度でも挑戦可能な宝探しが出来る訳だ。
モモン達は、ダンジョンが攻略された事で地上への転移門が開く事ができ、「漆黒」と「白金」の冒険者達は転移門を潜ると、山肌に開いたダンジョンの穴の横で待機していたハムスケの隣に転移した。
「殿!びっくりしたでござるよ!ダンジョン攻略は上手くいったでござるか?」
「ああ、もちろんだとも。サルビアさんも皆に補助魔法を掛けて貰ったし大活躍だったぞ」
「まあ、殿ったら。うふふっ」
ハムスケには、母上と慕っているサルビアさんを褒めておいた。
モモン達と「白金」の冒険者達は、評議国の首都ドラゴンズブレスに戻り、冒険者組合の組合員の立ち合いの元で正式に魔導具や巻物や霊薬やユグドラシル金貨を査定して貰い、査定された金額の評議国金貨で山分けをした。
欲しい魔導具などがあれば、その金貨で買い直すことで又、買い戻す魔導具が「白金」の冒険者と重なった場合は、話し合いか即興のオークションが開かれる事で問題は解決したのだった。
モモンは、アーグランド評議国の首都ドラゴンズブレスに別れを告げ、ナザリックに帰還した。
ダンジョン探索によるモンスターや罠の突破、初ダンジョン攻略という刺激的な体験で、経験値も溜まりに溜まり、「漆黒」の冒険者達は戦闘メイドであるナーベを除き、レベルアップや新たな魔法を会得していた。
アインズは「ワールドコネクター」の職業レベルを獲得し、レベル115となり、「ワールドコネクター」の効果で、自らに「世界の守り」を得る事ができた。
これで例えワールドアイテムを持っていない状態でもワールドアイテムの効果や始原の魔法の効果は、ほとんど防ぎきれる筈だ。
鞘を修理に出している双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】のレベルは120となり、最早、武器のスキルを使うだけでレベル100の敵だろうと大抵の奴は消し飛ぶ程の威力が出せるようになった。
もう少し鍛え上げれば、ナザリック地下大墳墓だろうと何処の拠点だろうと単騎で制圧できる武力が手に入る事となる。
この世界に来てからログイン状態が続いている判定になっているのか、双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】のレベルは上がり続けている。
これならユグドラシルで記録された【世界意志(ワールドセイヴァー)】のレベルを超える日も近いだろう。
ナザリックでメイドに憑依して豪華な食事を楽しみ、ゆっくりと休憩を楽しんだ後にエ・ランテルに転移し、魔導王邸宅の大会議室で豪華な椅子に座ってフールーダの報告をニニャとラナーと共に聞いた。
フールーダは、バハルス帝国の純白のローブは今ではナザリック製の漆黒のローブへと変わり、クリスタルを思わせる輝きを放つ数珠を首から提げている。
両手に大き目の宝石をはめ込んだ魔法が付与された指輪をそれぞれにして、黄金の輝きをもつ手甲に身を包み、杖を持った老人だ。
今では完全に老化を止める〈不老の指輪〉をアインズから下賜され、不老の体を手に入れている。
「ふむ、ゴーレムの複数頭脳体接続による合議制の個体は中々に優秀なようだな。ゴーレムゆえの自律的な思考が出来ないが、この個体は我々の疑問に対して様々な知識を総合して答えを導き出している」
「はい、ゴーレムの頭に職業の知識を詰め込み、それを複数体繋げました。戦士や魔法使いや狩人や薬師や錬金術師や市長や兵士などなどの知識を総合して、長たるゴーレムがそれを我々が設定した法則に基づいて決定した答えを導き出すのです。この複数頭脳体接続個体が居れば様々な答えが瞬時に導きだせますな。例えば魔導国王都の道路の整備計画などは、あっと言う間に作り上げました」
『複数頭脳体接続個体では長すぎます。賢者個体と言い換えましょう。ですが人間のように意識の閃きや経験による勘や思考の伝達、身振りや口振りなどで他者に上手く伝える力などはありません、それに部屋一杯の体では移動能力にも問題があるようです。あまり賢者個体に頼りすぎるといけません、ラナー様やナザリックならアルベド様やデミウルゴス様やパンドラ様なら上手く使いこなすでしょうね』
ゴーレムの賢者個体は、自律思考が出来ない為に考えの閃きや勘という物が欠けていると死の宝珠が言っているが問題は無い筈だ。
俺が使うならゴーレムの賢者個体の言うとおりに行動してしまうだろうが、ラナーや階層守護者の知的階級の者達なら、それを踏まえてあくまで参考として物事を軌道修正できるだろう。
「死の宝珠の意見を採用する、試験的に稼働させたゴーレムの賢者個体の端末を作成して、人間大の端末ゴーレムをラナーに使ってもらおう。賢者個体及びその端末ゴーレムを複数体作成し、階層守護者達に配るのだ」
「はい、端末ゴーレムを見事使いこなしてみせましょう」
ラナーは、背中の白翼を揺らして自信満々にそう言い切った。
大会議室で様々な事を決め終わり、アインズは執務室で書類に印鑑を押す作業をする事にした、
ダークエルフ樹木都市で木巨兵の聞き取り調査報告書を見たが概ね高評価だったので、木巨兵に憑けた《レイス/死霊》が浄化されないよう《レジスト・ホーリー/聖耐性》の魔法を付与しておく事を加筆してサインしておき、押印しておいた。
アインズが次々に書類を見て行くと竜王国へ出張に行っていたセバスから《伝言》が届いた。
「突然にどうしたのだ?」
〈竜王国がミノタウロスの大軍勢の襲撃により崩壊いたしました。エ・ランテルに難民を《ゲート/転移門》の魔法で送っております。シャルティア様の《ゲート/転移門》で送れない分は、フロストドラゴン空輸便達に乗せて送るつもりです。連絡も無しに行動したことは申し訳ありません〉
「良い、《伝言》が今まで送れなかった原因があったのだろう。お前の全てを許そう。詳しい話は後で直接会って話そう。お前のやりたいようにやりなさい」
〈ありがとうございます〉
竜王国の崩壊か、竜王国に貸しだしたデスナイトの気配は、まだあるし、これは無力化されたか。
アインズは立ちあがり、アインズ当番の一般メイドに扉を開けてもらい謁見室へとセバスの報告を聞く為に赴いた。
・《レジスト・ホーリー/聖耐性》
オリジナル魔法、第2位階魔法。
聖属性の魔法に対する耐性を獲得する。
元ネタはD&Dにある神官の第1位階魔法《レジスト・コールド》、第2位階魔法《レジスト・ファイアー》です。