エ・ランテルの魔導王邸宅の謁見室の高台の豪華な椅子に座り、髑髏の魔術師姿のアインズは竜王国の王女ドラウディロンと宰相と片膝を付いたセバスの報告を受けつつ、〈変声の喉飾り(チョーカー)〉に意識を集中して老賢者風の声に変えていた。
謁見室の壁の両側には、黒宝珠の杖を握りしめる鳥仮面を付けたニニャに一般メイドや階層守護者達や黄金に輝く全身鎧を着用し真紅のマントを身に付け煌びやかな槍を握りしめた衛兵代わりの〈ナザリック・マスターガーダー〉達が並び権威を示している。
セバスは身に付けた執事服は薄汚れ、顔には隈が出来ていた。
竜王国の女王ドラウディロンと宰相は、服の汚れやほつれを気にせずに顔に疲れを滲ませて話している。
竜王国の民達を守る為に全力を持って臨んだのだろう。
「ふむ、〈ミノタウロス/牛頭人〉は竜王国との戦争で弱体化したビーストマンの国を攻め滅ぼし、竜王国へは〈ミノタウロス発射団〉とも言うべき者が次々に幻のアダマンタイトの城壁をミノタウロスに飛び越えさせ、内部に潜入し城門を開け、ミノタウロスの軍勢に前線の街は壊滅、デスナイトも特殊な縄で拘束され、街の危機を知らせようと早馬や《メッセージ/伝言》を使おうにも早馬はミノタウロスの騎馬兵に潰され、《伝言》の魔法はミノタウロスの持っていた魔導具による妨害工作で使えなかったと。その後は、お前達が気付くまでに王城まで攻め入り、竜の女王の始原の魔法は咄嗟のことで人数が集まらず使えず、セバスと二人で奮戦するも居ない場所では、竜王国の兵士達は敗走を続け、最早如何にもならないとのセバスの説得を受けて城門を閉じ、城門をミノタウロスが打ち破る隙に、セバスが城を抜け出して魔導具の《伝言》の妨害範囲を抜け、シャルティアに《伝言》の巻物がなんとか繋がり、《転移門/ゲート》の魔法で城へ逃げて来た人々を難民としてエ・ランテルに送ったか」
「はい、おおよそ、その通りでございます。捕虜となった複数のミノタウロスに聞き出した内容ですので間違いないかと。《伝言》の妨害範囲は追い続けるミノタウロスの騎馬兵が持つ魔導具によって範囲が変わり、《転移門/ゲート》の魔法を使えるシャルティアにしか連絡できませんでした」
「アインズ殿、どうか竜王国の土地を取り返して欲しい。もちろん報酬は期待してくれて構わないぞ」
竜王国の女王の言葉にアインズは、片手を顎に添えて言い放つ。
「竜王国の女王、いや亡国の女王ドラウディロンよ。それは出来ないな。土地はミノタウロスから攻め取るが最早、竜王国の土地では無く、アインズ・ウール・ゴウン魔導国の領土と成るからな。だが領土には領主、魔導国では領域守護者と呼ぶが其れを決めねばならない。……セバス、お前がやりなさい。補佐の人選は任せるぞ。其処に元竜王国の領地経営に詳しいドラウディロンや宰相が居るから補佐に任命するのも良いだろうが、ドラウディロンには前線でセバスと共に戦って貰うぞ。その働きによって竜王国の領地の今後が変わるだろう」
ドラウディロンは、がっくりと肩を落とすが、宰相に前線で頑張れば、まだ竜王国の民を救えますと言われ、アインズの髑髏の顔をしっかりと見据える。
セバスは、竜王国の女王ドラウディロンの姿を見て、顔を綻ばせているようだ。
「ところで、セバスよ。ドラウディロンは、お前の眼鏡に叶ったか?求婚されていたが婿に行くのでは無く、嫁に来ても良いと思えるか?」
「はっ、竜王国女王ドラウディロン様は民に慈悲深く、王城での執務の後に自らも前線で働くなど勤勉でございます。とても良い人だと思います。まだお嫁さんに来てとは言えませんが、前向きに考えさせて頂きます」
「良かったな、ドラウディロン。結婚の返事はミノタウロスから領土を取り返したらするように、ツアレとも結婚するのだろう?セバスに遠慮して言わないが、ツアレも結婚を待ちくたびれているだろうさ。うむ、結婚の日取りが決まったら報せるのだぞ」
頬を赤く染めたセバスやドラウディロンをその場に残し、軍の編成を決める為に大会議室へと向かう。
アインズは、自らのデスナイトの反応が次々に竜王国で消えていくのを感じていた。
アインズは、膨大な数の召喚魔法で既に召喚したアンデッドとの絆とでも言うべき物が分からなくなり、昔に召喚したアンデッドでは視界の共有などが使えなくなっていたのだ。
デスナイトに何が起こったか分からないが、まあ良い。
デスナイトではミノタウロスに対抗できなくても手はあるだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
現在、アインズ・ウール・ゴウン魔導国軍は、屈強なレベル50~60程度の巨人程もある鉄巨兵を主体に身長は2m後半~3m程のミノタウロスの軍勢を打ち破り、進軍を続けていた。
既に竜王国の王城や主要な都市を奪い返し、ミノタウロスが攻め取った元はビーストマンの国の王都へと進んでいた。
ミノタウロス達は、以前にビーストマンの国が送り出したケンタウロス型ゴーレムで国が壊滅しかかった伝承があり、鉄巨兵は一見すると巨大な鉄で出来たゴーレムの様に見える事でミノタウロスは身を竦ませ、元冒険者で鉄巨兵の搭乗者に成り、冒険者時代の技術により振るわれる武技にミノタウロスは翻弄され、またその怪力はミノタウロスの一撃を軽く盾で押し返しただけで、ミノタウロスの斧に罅を入れ両手にダメージを与える。
ミノタウロス達の士気は崩壊して、まともに戦う者は少数で大多数は逃げ惑うばかりだ。
ふむ、ナザリックの諜報部隊の話の通りだな。
ミノタウロス達には、アンデッドよりゴーレムに見える鉄巨兵の方が効果的だな。
前線では、執事服を着たセバスが踵落としで鉄槌を持ったミノタウロスの頭部を砕き、回し蹴りで周囲の双斧を握ったミノタウロスやミノタウロスの豪傑の体を砕きつつ体の破片を吹き飛ばし、破片に巻き込まれミノタウロス達が狼狽え、腰を落として掌を敵の集団に向け、スキル〈気爆掌〉で一気に掌から衝撃波を出し、後方に居た呪術師のミノタウロス達やミノタウロスの射手達を粉微塵に消し飛ばす。
ドラウディロンは漆黒の竜を模した鎧に身を包み、敵陣に突っ込み武技で自らの力を解放する。
「〈武技・竜変化Ⅱ〉!、畏れおののけミノタウロス!」
ドラウディロンは、大型の漆黒の竜に変化し、戦場に降り立つ。
巨大な漆黒竜は4つ足で大地を踏みしめ、天高く双角が伸び、背中には鱗を生やした蝙蝠のような翼がはためいている。
その威容はミノタウロスには耐えきれない者が多く、腰を抜かす者、逃げ出す者が続出する。
漆黒竜が大きく息を吸い込むと、命を蝕む黒い炎を吐き出し、ミノタウロス達を多数巻き込み炭に変え、耐えた者も黒い炎に体を蝕まれ徐々に体力を失っていく。
漆黒竜の鉤爪で薙ぎ払われ、ミノタウロス達を蹴散らし、竜の嚙みつきでミノタウロスの重騎兵がミノタウロスを運んでいた2頭の馬ごと噛み砕かれている。
戦場に聳える串刺しになったビーストマンの死体の群れから、アインズは〈デス・アーチャー/死の弓兵〉を創り出し戦列に加え、突き進む。
デス・アーチャー達の尽きぬ矢筒から大矢を取り出し、一斉にミノタウロスに大弓を斉射して次々に大矢が突き刺さり、ミノタウロス達が絶命している。
何体かのミノタウロス達が魔法の縄でデス・アーチャー達の動きを絡めとろうとするが大弓による遠距離攻撃やあまりのデス・アーチャー達の数の多さに魔法の縄を持ったミノタウロス達は大矢でハリネズミと成り、息絶える。
漆黒の戦士モモンに扮したパンドラがチーム〈漆黒〉として活躍しており、ニニャとソアとナーベによる魔法爆撃でミノタウロス達を黒焦げの炭に変えている。
サルビアさんはレベル70を超える特殊な鉄巨兵に乗り込み、その粘体の体を存分に使い、両肩に魔導大砲、手も4本に増やして鉄巨兵の目も4つ目をギョロギョロと動かしてミノタウロス達の軍勢に突っ込んでは、4本の腕に握った聖杖にも棍棒にもなる杖を手当たり次第にミノタウロス達の頭に打ち込み、ミノタウロス達を地面にめり込ませて、両肩の魔導大砲を遠くのミノタウロスの集団に打ち込み、あらかじめ魔導大砲に仕込んでいた範囲拡大した《ファイヤーボール/火球》を炸裂させ、ミノタウロスの集団を上空高く吹き飛ばす。
階層守護者達も総動員でミノタウロス達の大軍勢を追い詰めている。
コキュートスは、既に〈戦士の指輪Ⅰ〉で武技を覚えており、武技を使った連撃がミノタウロス達に振るわれる。
「我ガ剣二力ヲ、〈武技・剛腕豪撃〉、〈武技・無双旋風裂斬〉!」
無数の竜巻がミノタウロス達に襲い掛かり、ミノタウロスの闘士達やミノタウロスの戦斧使い達を巻き込み、竜巻により巻き起こった真空波により切り刻まれ、ミノタウロス達の腕や頭が戦場に転がっている。
アウラがビーストテイマーとして数多の魔獣を操ってミノタウロスの軍勢を屠り、マーレがドルイドとして魔法《ストーン・プレス/岩石圧力》で上空、空高くに巨大な岩石を幾つも創り出し、それをミノタウロス達の集団に降らせている。
ミノタウロスの軍勢は巨大岩石の雨を、その集団の所為で大きく身動きが出来なくて避けられず、巨大岩石に次々に潰されている。
アルベドは黒い鎧を身に纏い漆黒の羽を腰から出し、シャルティアは真紅の鎧を身に纏い背中から白翼を出して、それぞれがアインズの両隣りで周囲に目をやり、アインズの安全に気を配っている。
デミウルゴスはアインズの斜め後ろで魔導軍の指揮を取って、今は鉄巨兵を前に進軍させ、セバスと〈武技・竜変化Ⅱ〉が時間経過で解けたドラウディロンを下がらせるべく〈シャドウ・デーモン/影の悪魔〉を伝言役にして指示を出しているようだ。
ミノタウロスが占領したビーストマンの王都の崩れかけた王城から、一際デカい身長3m後半のミノタウロスの将軍格とも言うべき者が覆面を被った密偵のミノタウロスの一団を連れ現れた。
ミノタウロスの将軍に襲い掛かる巨人程もある鉄巨兵を水平に吹き飛ばし、別の鉄巨兵達を巻き込み倒している。
あまりの強さに及び腰になる鉄巨兵だが、ミノタウロスの将軍自体はレベルは低い筈だ。
精々、レベル30台だろうが、魔法武器や武技などのスキルも合わせてもレベル40~50程度、鉄巨兵が一方的にやられるのは変だな。
「アインズ様、このセバスにあのミノタウロスの将軍の相手をさせて下さい」
「良かろう。もしもの事もあるからな、本気を出して戦っても良いぞ。デミウルゴスよ、セバスを出すが良いか?」
「アインズ様の決定に逆らう者などナザリックには居りません。セバス、ナザリックに恥をかかせないでおくれ」
「はい、では行ってまいります」
周辺の鉄巨兵達はミノタウロスの将軍を遠巻きに包囲し、セバスがミノタウロスの将軍に近づくのを見守った。
「お初に御目に掛かります。アインズ・ウール・ゴウン魔導国で執事をやっております、セバスと申します。勝負を御願いします」
「ほほう、爺さん、あんたやるね。俺は爆殺将軍と言う者だ。さあ、戦おうか」
密偵のミノタウロス達は、魔法《フレイム・アロー/炎の矢》を次々に撃ち出すが、セバスは両手を円のように動かし《炎の矢》の軌道を手で僅かに変え、あらぬ方向へと飛ばしていく。
セバスが《炎の矢》を捌きながら、ミノタウロスの爆殺将軍に近づくと冷や汗を足らしながら密偵のミノタウロス達へ指示を出した。
「まさか魔法を手で捌くとはな!くそっ密偵達よ、今こそ俺に力を貸せ!」
「分かりました。ミノタウロスの国に栄光あれ!爆殺!」
密偵のミノタウロス達がそう言うと、次々に其の身を膨れ上がらせ血飛沫と共に爆発する。
その血を浴びたミノタウロスの爆殺将軍の体が更に大きくなった。
ミノタウロスの爆殺将軍が手に持った黄金に縁どられた巨大斧も魔法の道具の効果で共に巨大化する。
ふむ、ミノタウロス独自のスキルの力か、補助の者が生命力を使うと強化される仕組みと見た。
あれで鉄巨兵達を吹き飛ばしていたのだな。
最早、ミノタウロスの巨人と言っても良いくらいの大きさとなった血に染まった爆殺将軍が雄叫びを上げ、セバスに挑む。
「〈武技・肉体向上〉、〈武技・能力向上〉、〈武技・剛腕豪撃〉!〈武技・斬撃〉!」
「むう、これは当たると私でも傷を負ってしまいますね。スキル〈払掌〉!」
ミノタウロス爆殺将軍の武技で肉体能力を向上させ振り下ろされた斧にセバスが拳を合わせると同時に半身に成り、斧がセバスの横を擦り抜け大地を切り分ける。
大地を切り分けた斧にセバスが片足で乗り、ミノタウロス爆殺将軍にスキルを叩き込む。
「いきますよ。スキル〈百裂脚〉!」
セバスが片足立ちになり、もう一方の足でミノタウロス爆殺将軍に無数の突き蹴りを喰らわせる。
ミノタウロス爆殺将軍は無数の蹴りで顔が腫れ上がり、片方の角も折れ、頭に霞が掛かったかのように棒立ちとなった。
隙を見逃さず、セバスは爆殺将軍の懐に潜り込むと自らの変身を解き、全力でスキルを爆殺将軍の腹に叩き込んだ。
「変身!スキル〈ドラゴニュート・フォーム〉、スキル〈昇竜〉!」
セバスは、黒竜の鎧を着込んだ怪人の様な姿に変身した様に見えたが、すぐさまミノタウロス爆殺将軍の腹をスキルでぶち破り、血飛沫と共に空中へ飛び上がり、片手の拳を振り上げた姿で翼を広げ、腹に大穴が開き倒れたミノタウロス爆殺将軍の背中にゆっくりと降り立った。
「変身、スキル〈ヒューマン・フォーム〉」
セバスが執事服姿に戻ると、鉄巨兵達から歓声が外部音声で聞こえ、拍手が送られる。
アインズもセバスが本気で戦う姿を久々に見て、感動して拍手を送っていた。
さて、ミノタウロスの将軍も倒したし、後はミノタウロスの軍勢の掃討戦だな。
今後の憂いを無くすべく、ミノタウロスの国に攻めなければいけないからさっさと済ませるか。
・〈武技・竜変化〉
オリジナル武技、前提:数々の竜系統の武技の習得、竜の血を引く者である事
熟達により、変身できる竜の大きさや持続時間が変わる。
Ⅰでは中型、Ⅱでは大型、Ⅲでは超大型のドラゴンに変化する。
体力と集中力を消費する武技、消費量によりドラゴンに変化する時間が伸びる。
始原の魔法に近い武技です。
・〈武技・無双旋風裂斬〉
オリジナル武技、前提:複数の武器を振るえる事、〈武技・旋風裂斬〉
数多の剣を振るって、無数の竜巻を放ち敵を斬り刻む。
元ネタはサムライスピリッツより旋風裂斬です。
・〈払掌〉
オリジナルスキル
モンクのパリィ系のスキル。
掌で相手の拳や武器を払う。
・〈百裂脚〉
オリジナルスキル
モンクの蹴り系のスキル。
片足立ちになり、もう一方の足で無数の突き蹴りを喰らわせる。
・〈昇竜〉
オリジナルスキル
モンクの殴打系のスキル。
跳躍しつつ片手で相手を殴り抜ける。
攻撃後の隙が大きいがダメージが大きい技である。
・〈ドラゴニュート・フォーム〉
オリジナルスキル
竜人に変身する。
・〈ヒューマン・フォーム〉
オリジナルスキル
人間に変身する。
・《ストーン・プレス/岩石圧力》
オリジナル魔法
空中空高くから岩石を呼び出し、敵の集団に降らせる。
熟達の冒険者なら見て避ける事も可能だが当たった時のダメージは大きい。
元ネタはモンスターコレクションより魔法《ストーン・プレス》
・〈デス・アーチャー/死の弓兵〉
オリジナルモンスター
デス・ナイト系列のモンスター、デス・ナイトと同じ特殊能力を持つアンデッドの弓兵。
尽きぬ矢筒を持ち、大弓を射るアンデッド。
・セバスの変身
セバスは変身すると竜人になるそうです。
製作者の「たっち・みー」さんが特撮(変身ヒーロー)好きなので怪人っぽい変身ヒーローになっています。