オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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飛竜騎兵の里 1

 属国となったバハルス帝国の南西に珪岩で出来た巨大な石の柱が立ち並んでいる場所が有り、其処の無数にある洞窟に〈ワイバーン/飛竜〉を飼いならす部族の者達が居るとの話を王都エ・ランテルでモモンとして活躍している時に冒険者組合長プルトン・アインザックから聞き、アインズは、飛竜を使ってシャルティアのフロストドラゴン空輸便を手助けできないかと漆黒の戦士モモンになり、交渉の為にバハルス帝国の南西の岩山に来ていた。

 交渉には「漆黒」の冒険者パーティーに魔導国から飛竜を飼いならす為や遣り取りの為にビーストテイマーのアウラが参加。

 そしてスレイン法国からアーグランド評議国との世界盟約で大っぴらに外出できなかった番外席次「絶死絶命」ことアンティリーネも、スレイン法国が魔導国属国となり、世界盟約が実質意味を為さなくなった為にアーグランド評議国から外出を許された為に冒険者モモンに付いて廻っており、既に「漆黒」の冒険者の一員の様な者になっていた。

 

「なあ、アンティリーネ、一緒に付いて来てくれるのは嬉しいが、スレイン法国の方は大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。魔導国の属国になってから見た事もない天使たちが大勢国の見張りや国境付近の野生生物の駆除に精を出してるし平和な物よ。私だって世界盟約から解き放ってくれた魔導国には感謝してるわ。まあ、私の仕事は、とある場所の守護だったんだけど暇になった六色聖典が代わってくれたから問題ないわ。今は御婿さんを探してるんだけど誰か居ないかしら?」

 

 片方が白銀、もう片方が漆黒の色をした奇妙な色合いの長い髪を揺らし、モモンを見つめる少女。

 モモンは気付いて無い風を装い、ナーベに声を掛けている。

 

「ナーベ、そろそろ珪岩で出来た巨大な石の柱群が見えてもおかしくないはずだが、場所は有っているのか?」

 

 アンティリーネは、ふくれっ面で兜を被り周辺の探索を始め、他の者達も辺りを見廻している。

 ナーベは、ニニャと死の宝珠と相談しているようだ。

 死の宝珠がインテリジェンスアイテムという事は。冒険に加わった時にアンティリーネには知らせてあり、アンティリーネは兜越しに話の輪を見て加わった。

 

「こう山々に囲まれていては周辺の状況が分からないわね」

『ふむ、ニニャ。モンスターに襲われぬように不可視化した非実体の魔法の目を飛ばしましょう。魔法《ゴッドアイ/神の目》を唱えて、まずは高く高度を取り、辺りを見廻して貰えませんか?』

「へえー、そんな便利な魔法があるんだ。私が山に登って探索するよか早そうね」

「いきますよ。神の目よ、見え無き其の目で確かめよ。魔法《ゴッドアイ/神の目》」

 

 モモンは、不可視化した物でも見通せるので浮かび上がる魔法の目が良く見えたが、アンティリーネは戦士の勘で見えない筈の魔法の目を捉えているようだ。

 不可視化された魔法の目が、ふよふよと浮かび上がり高度を取り始め、ニニャは魔法の目に意識を集中させているのか両目を固く閉じている。

 

「北東の方角、距離にして、……ああ駄目です。《神の目》が破られました」

「なにっ、不可視化を見破る者が居たのか?」

「飛竜に噛み殺されました。野生の勘でしょうか?」

 

 羽ばたく音と共にモモン達に影が降りかかる。

 革製の鎧を身に付けた飛竜の口にベルトを結び付け、それを操る人間種と見られる騎兵の姿が其処にはあった。

 飛竜騎兵が声を張り上げて、モモン達に声を掛けた。

 

「其処の者達!此処より先は飛竜騎兵の里、許可なき者は通せん!帰るが良い!」

「許可ならあるぞ!書状を見てくれ!バハルス帝国皇帝の印と宗主国であるアインズ・ウール・ゴウン魔導国の印だ。此処へは世に名高い飛竜騎兵の力が借りられないかと相談に来たんだ。君の上司に合わせて欲しい」

 

 飛竜を切り立った岩に止め、岩を滑り降りる騎兵。

 モモンを注意深く観察しながら、書状を渡して貰い、隅々まで読み込んでいる。

 ハムスケは岩に止まった飛竜を眺めて、挨拶している様で飛竜も首を振って挨拶を返していた。

 

「確かにバハルス帝国皇帝印だな。アインズ・ウール・ゴウン魔導国ってのは何だ?もしかして帝国は魔導国の属国になったのか?」

「ああ、知らないんだね。バハルス帝国とリ・エスティーゼ王国は戦争に敗れて魔導国の属国になったのだよ。今は以前に比べて平和なものだよ」

 

 書状を読み終わり、モモンに返す騎兵は驚きつつも軽く礼をしつつ謝った。

 

「なんと!そうか、すまない。私達は昔からバハルス帝国とは細々と商取引はあったが、最近は「大暴竜」が出没して商人を襲うから取引してなくてね」

「「大暴竜」ってのは何です。竜が暴れているのですか?魔導国から優秀なビーストテイマーの子を預かっていましてね。お役に立てるかと思います」

「えへへへっ」

 

 アウラはモモンから優秀と褒められて照れくさそうに後頭部に両手を当てて、恥ずかしがっていた。

 

「こんな小さな子が?耳長、エルフか!長命種なら小さな子でも猛獣や魔獣を手懐けられるのも容易いか。「大暴竜」ってのは異形の野良の飛竜でね。図体は普通の飛竜の3倍、熊の様にがっちりとした体格で黒い鱗に身を包み、雷を操り、業火を吐き出す化け物だよ。我々、飛竜騎兵の総力を挙げても追い払うしかできない相手なのだよ。さあ、飛竜に付いて来てくれ。飛竜騎兵の里で長に話を通して欲しい」

 

 モモン達、「漆黒」の冒険者パーティーは飛竜騎兵の乗る飛竜に案内され、珪岩で出来た巨大な石の柱が立ち並ぶ無数の洞窟が石の柱に開いている場所まで連れて来られた。

 石の柱が立ち並び、広場となった場所に飛竜は降り立つ。

 モモン達は、騎兵に案内され一際大きな洞窟に案内され草を編み込んで作られた座布団へと座る。

 既に騎兵がモモン達を集落に案内する際に手で合図を集落に送っていたのは見えたので、集落の長達が集まっていたのには驚かなかった。

 

「何やら我らに力を借りたいとか?正式に魔導国に従属せよとも書いてありましたな」

「はい、飛竜騎兵の力を借りれば魔導国は大きく進歩できるので是非とも力をお借りしたい。魔導国への加入は今は結構です。魔導国に力を貸して頂ける中で魔導国との付き合い方を学んで頂ければ、自ずと魔導国に加盟する方が得だと分かるでしょうからね」

 

 モモンの持ってきた書状を眺めながら飛竜騎兵の長達は頷きあい、結論をモモンに話す。

 

「一つ飛竜で競争をしようではないか。もちろん競争だから騎手が相手の飛竜に対する魔法攻撃や遠距離攻撃やスキルなんかは禁止とさせて貰おう。我々が勝てば我らへの報酬を上乗せして貰おう。負ければ報酬を割り引こうではないか?」

「飛竜の里で飛竜競争ですか、そちらに有利な条件での競争。いいでしょう、報酬の上乗せも許容範囲ですし、魔導国の力を見せて差し上げますよ。騎手は此の子が……」

 

 モモンは、アウラの背中を押しながら自信満々に告げると。

 飛竜の里の長達は難色を示した。

 

「駄目だな、飛竜の里では未成年に見える者の飛竜への搭乗は許可できない。話によると優秀なビーストテイマーと聞くが見た目が問題なのだよ。すまないね」

「そんなー、アイン……、んんっモモンさん、どうしましょう?ビーストテイマーの職業とか騎乗スキルとか誰か持ってますか」

「アウラよ、そう嘆くことは無い、私が騎手に立候補しよう。飛竜は選ばせて貰えるんだろうね」

「ああ、勿論だとも。案内の者が飛竜の厩舎に連れて行ってくれるはずだ。そこで選ぶと良い。競争は1時間後とする。異論は無いな?」

「勿論だとも良い勝負をしよう」

 

 案内役の者は此処へ連れて来た騎兵だった。

 騎兵は竜の鱗鎧を着込み、兜や鎧には竜の牙を加工して角を生やしている物を身に付けている。

 彼はモモン達を飛竜の厩舎と言う名の洞窟を加工して作られた発着場に連れて来た。

 ここで飛竜の世話をしつつ、いざという時は飛竜を次々に飛び立たせるのだろう。

 モモンは沢山いる飛竜の中からアウラに最も飛行能力の高い竜を選ばせた。

 その竜は蒼黒い鱗をしており、一際大きな翼を持ち、筋肉質で此方を見て唸り声を上げている。

 

「おいおい、沢山の飛竜からそいつを選ぶとは命知らずだな。そいつは熟練者じゃないと乗りこなせない暴れ竜だぜ。もっと大人しい飛竜を選んでやるから其れにしろよ」

「あら、その大人しい竜なら競争に勝てるのかしら、勝てないわよね。モモン、本当に此の竜を乗りこなせるの?」

 

 アンティリーネの言葉に案内役の騎兵は、まいったなと言う感じで頭を掻いているが、暴れ竜を乗りこなせるのは今は無理だ。

 タレントを使わなければな。

 

「まあ、任せてくれ。タレント「ジーニアス」発動、最終レベル5を職業「ドラゴンライダー」に変更。ニニャ、持続時間増加で試作中の魔法《ライダーレベルアップⅠ/騎手職段位上昇Ⅰ》を唱えてくれ」

「はい、分かりました」

 

 ニニャが唱えた様に見せて、死の宝珠が影でモモンに魔法を掛ける。

 職業「ドラゴンライダー」とは、ナザリックのドラゴンは課金で当てたLv90近い階層守護者直轄の2体の竜でマーレのドラゴン2体の内の1体を借り受けて取得した職業だった。

 まあ実際は竜の背に乗っけてもらってアウラの指示で数歩ほど歩いただけなんだが、タレント「ジーニアス」で取得できる職業に入っていたのは嬉しい結果だった。

 

「さて、これで大丈夫な筈だが。アウラ、暴れ竜を躾けてやりなさい」

「はいっ、ふぅー。むんっ、……これで此の飛竜はモモンさんの命令には逆らいませんよ」

 

 アウラが魔法の吐息を暴れ飛竜に掛けると途端に怯え始め、アウラが目を鋭くして睨みつけると両翼を地に付け、平伏して降参の姿勢を取っているようだ。

 モモンは平伏した飛竜を撫でつつ、中空の闇の中から諸々の装備やアイテムを取り出し、漆黒の全身鎧から漆黒の騎乗用軽装鎧へと着替えていく。

 

「搭乗者は一人なの?」

「いや、特に決まりはない。二人で乗り込んで一人は操縦に一人は騎竜に回復魔法を掛けている者も居るぞ。だが飛竜への負担から搭乗者は、二人までだな」

 

 案内役の飛竜騎兵に飛竜競争の詳しい話を聞くアンティリーネは、二人で乗り込んで良いというのを聞くと満面の笑みでモモンに告げる。

 

「モモン、私も飛竜競争に参加するわ。これでも馬を乗りこなせるもの、飛竜にだって乗れるわ。私はモモンが使えない神官系魔法を職業「ハイクレリック」で習得してるんだから」

「ふむ、飛竜から落ちても拾いには行けないけど其れで良いなら後ろに乗り込んでくれ。飛竜に回復魔法を掛けてスタミナを回復してくれると助かる」

「任せてよ。私が飛竜から落ちたら、ほっといても大丈夫よ。いざとなったら空を飛ぶわ」

 

 その後、モモンとアンティリーネが乗り込む飛竜にサルビアさんやナーベやニニャが持続時間を伸ばした様々な支援魔法を掛け、案内役に連れられて広場へと戻る。

 広場には大勢の人々が集まり、飛竜競争を見守っているようだ。

 既に広場には、スラリとした首を持つ美しい青い鱗をした飛竜が二人の搭乗者を乗せ、出発を待って居た。

 飛竜の里の長達が皆に飛竜競争について説明を始め、何度も聞いた事があるのか「漆黒」の冒険者パーティー以外は聞き流しているようだ。

 

「飛竜競争は此の里を中心に右回りに回転するように此の広場に先に到着した者を勝者とするが、各地点には飛竜が潜り抜ける為の5つの大きな輪が設置してあるので潜り抜ける事が重要だ。此れを潜り抜けないと大幅に減点され、例え先に到着した勝者とはいえ点差で負けてしまう事もありえる。減点内容や加点内容は分かるかな御客人」

「ああ、案内役に此処まで来る道中に説明を受けたよ。念の為にルールを纏めた本を見せて貰えるかな。……ふむ、案内役に聞いていた話とほとんど一緒だな。ニニャ、このルールブックを《コピー/模写》と《クリエイト・ブック/本作成》でもう一冊作りなさい。後でルールを変更されては困るからな」

 

 創られたルールブックを長達に見て貰い、問題無い事を確かめてから連名で本に魔導具のペンを使ってサインしていく、此れで例え複写したとしても魔導具のペンの魔力は複写できず唯一無二のルールブックが出来上がる。

 死の宝珠が飛竜の里の者に聞こえない様に、こっそりとモモンに助言する。

 

『モモン様、乗り込む飛竜にサルビアさん達が補助魔法を掛けて速度は出るので、直線では此の飛竜の飛行速度にかなう者は居りますまい。ですが曲線では注意された方が宜しいかと、操縦技術に差がある事は御存知の筈、飛行速度を落として廻ろうとする時に抜かれるやもしれません』

「うむ、曲線に注意か。どうすれば良いと思う」

『そうですね、モモン様達の乗る蒼黒い飛竜は一際大きな両翼を持つようですので曲線を曲がる時は翼を大きく広げて進路妨害をすべきかと愚考いたします。申し訳ありません、騎乗スキルが無いので此れ以上思いつきません』

「いや、充分だ。では行って来るぞ」

 

 蒼黒い鱗を持つ飛竜にアンティリーネと乗り込み、準備は整った。

 飛竜競争開始の鐘が辺りに鳴り響き、2頭の飛竜は飛び立つのだった。




・アンティリーネの飛行
 オリジナル設定
 アンティリーネは、「レッサーワルキューレ/オールマイティ」の職業を取っており、この職業レベルの影響で翼が生えると此の小説では設定しました。
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