オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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ササシャル遺跡の探索 1

 飛竜騎兵の里での飛竜競争から半年が過ぎ、未探索ダンジョンの探索やナザリックでの闘技場での鍛錬により、アインズはレベルが6ほど上昇するだけの経験値を貯める事に成功していた。

 さっそく貯めた経験値を使いタレント「ジーニアス」を職業レベルに変更する願いをタレント〈貴秘雫〉を消費して使用回数の増えた〈流れ星の指輪〉を使用して叶えて置き、前提条件と成っていた職業レベル「ジーニアス」の上位職業「レジェンダリー・ジーニアス」を1レベル取っておいた。

 職業「レジェンダリー・ジーニアス」は、一日に職業のレベル回数ほど全ての職業レベルを入れ替えられるという強力な効果を持つ職業だ。

 これで魔術師のビルド構成に悩む必要は失せたかに思えたが、様々な職業のビルドの構成に悩む事になり、結局悩みは尽きないのだった。

 鍛冶師の職業を得る為にナザリックの鍛冶長に弟子入りしたり、神官系の修行の為にペストーニャに神官の心得を教授されたりと「レジェンダリー・ジーニアス」でビルドを組むために役に立ちそうな職業の訓練を積んでおいた。

 其の間に魔導国の加盟国は増え続けており、ラナーにより新たなタレントの人材発掘作業で幾つかタレントを報酬と引き換えに獲得した。

 タレント〈連続魔〉、一日短時間、発動準備時間なしで魔法を放てるだとか、タレント〈速攻魔〉、一日短時間、発動不可時間なしで次の魔法を放てるなどだ。

 これがあれば魔法詠唱に長い間待たなくて良いし、使用後のリキャストタイムの長い魔法も撃ち放題という訳だ。

 後は、タレント〈天下無敵〉という短時間どんなレベルの攻撃でも防御行動を取っていれば受け切れるというものがあり、これを武技に応用できればレベル100までの相手の攻撃だけでなく、レベル100を超えたあらゆる敵の攻撃を止められる武技が出来そうなので楽しみだ。

 他は召喚時間延長とか武技の集中力使用量減少などの細々したものがあり、検証が必要な物も多かった。

 闘技場での訓練を重ねて新たに得たタレントの試運転や武技の鍛錬を行い、息抜きを兼ねて漆黒の戦士モモンの姿を取り、ソアやニニャそしてハムスケとサルビアさんの「漆黒」の冒険者パーティーを連れ、魔導国王都エ・ランテルの冒険者ギルド近くの高級宿屋の一室へと《ゲート/転移門》を唱え、闇の靄の中へと赴いた。

 高級宿屋の一室では、ナーベが片膝を付いていた。

 

「お帰りなさいませ、モモンさーん」

「うむ、何か変わった事はあったか?」

「はい、冒険者組合長から遺跡探索の依頼を受け取りました。何でも探索されつくした遺跡だそうなんですがアダマンタイト級冒険者、「漆黒」のモモンの目で見て判断して欲しいとの事です」

「ほほう、遺跡ね。組合から来た依頼の書状を見せてくれ。ふむふむ、ササシャル遺跡ね。酒場で吟遊詩人に歌われる巨大な遺跡じゃないか。入り口の近辺に中枢部まで一息に歩める安全な通路があるのを帝国ワーカー「ヘビーマッシャー」のグリンガムが聞いた事があるらしいな」

「はっ、その通りかと」

 

 ナーベが頷いた後、ニニャが持つ黒宝珠の杖に据え付けられた死の宝珠からモモンに向かって声を掛けられた。

 

『「ヘビーマッシャー」は、以前にナザリック地下大墳墓の帝国側の襲撃者として皆殺しにして有る筈です。第五階層「氷河」にて死体を氷漬けで保管中です。復活させて話を聞くのも良いのでは?話を聞いた後は、褒美として記憶操作でもして放り出せば良いでしょう』

「情報収集は大切だな。良し、ナザリックの利益になる情報を吐き出せば、記憶操作の上で放りだしてやろう」

 

 後日、大幅に記憶喪失を抱えて右往左往する「ヘビーマッシャー」の姿が帝国で見られたとか、「漆黒」のモモン達は、遺跡に関する知識を本に纏めた物をニニャが所持して魔導国王都エ・ランテルの冒険者ギルドへと赴いた。

 事前に連絡しておいたスレイン法国のアンティリーネと王国からは、アダマンタイト級冒険者チーム「蒼の薔薇」が冒険者ギルドの入口でモモン達を待って居た。

 

「あらっ、早かったわね。「蒼の薔薇」との御喋りは此処までね」

「何が御喋りだ!口喧嘩の域だぞ、あれは!」

「まあまあ、二人ともモモンさんの事が大好きなのは良く分かったから大人しくね。お久しぶりです、モモンさん。今日は共同任務で、あの有名なササシャル遺跡の調査だとか。足を引っ張らないよう頑張りますね」

 

 入り口前では、アンティリーネとイビルアイが言い争いをしていたようで、ラキュースが口喧嘩を仲裁しつつモモンに対して挨拶を述べている。

 思わず笑顔を浮かべる微笑ましい遣り取りに「蒼の薔薇」のラキュースさんとイビルアイさん、法国のアンティリーネを好ましく思ってしまう。

 そういえばギルドの皆とも、こんな遣り取りで御喋りや下らない口喧嘩をしたっけな。

 

「はははっ、こんな所でもなんです。冒険者組合長にササシャル遺跡の調査をする挨拶と後程、会議室を借りて皆さんに私達が集めた情報を公開したいと思います。如何ですか?」

「はいっ、それで結構です。ほらっ2人共、モモンさんと一緒に行きますよ」

 

 冒険者組合長プルトン氏にササシャル遺跡の調査の開始の報告をしてから会議室で、「ヘビーマッシャー」から聞き込んだ遺跡に関する知識を纏めた本を皆に公開した。

 

「なるほど、此れはこんな所まで詳しく書いてあるとは、モモンさんの情報源は聞きませんが大変参考に成りました」

「モモン様、流石です!」

「ほー、休憩所まで書き込んであるじゃねえか」

「罠の位置も完璧」

「近道も完備、入口近くから中枢部までのルートも書いてある」

「これ此処まで書いてあるなら再調査なんて必要ないんじゃない?」

 

 アンティリーネの言葉にモモンは首を振った。

 

「見れば分かるが此の箇所に不自然な場所がある。この場所に更に地下に降りる階段が隠されているか地下空間に宝箱が眠っているかは現地に行って調べてみないと分からないからな。皆さんには此処まで辿り着くまでの間の雑魚処理を御願いしたい」

 

 モモンは一度、職業を「盗賊」系に変更して地図を精査しており、その時に気になった点を書き留めておいたのだ。

 確かにモモンが指摘した箇所だけ遺跡が避けるように構築されており、調べてみる価値がありそうなのは理解してくれたようだった。

 その後、「蒼の薔薇」には実は私は魔法戦士なんですと切り札の一つを明かし、「漆黒」と「蒼の薔薇」とアンティリーネは、モモンの詠唱する渦巻く闇の形をした《転移門》を「蒼の薔薇」チームは恐る恐る潜り抜け、アンティリーネはモモンの魔法なら問題無いと言わんばかりに堂々と潜り抜けた。

 《転移門》を潜り抜けた先はヴァディス自由都市近くの森の中、此処から馬で進めば良いとモモンが人数分のゴーレム馬を懐から取り出し、瞬く間に本物の馬と同じ大きさとなった。

 モモン達はゴーレム馬に乗り、北方向へと駆けだす。

 数日掛けて、トブの大森林の更に北側の森の中のササシャル遺跡と呼ばれる遺跡群へと辿り着いた。

 ササシャル遺跡は、古ぼけた苔むした石の柱で出来た神殿の様な作りで奥は崩れ落ちている。

 近くには、まだ遺跡にお宝が眠っていないかと地表部分を探す冒険者達がおり、挨拶を交わし、ハムスケを残し、神殿内の地下への階段を下りて行く。

 

「地上の冒険者達には要注意ですね。私達が疲弊しつつお宝を持っていたら襲い掛かってくるかもしれません。もし宝物を見つけたら私の〈インフィニティ・ハヴァザック/無限の背負い袋〉へと入れて手ぶらで帰るのが良さそうですね」

「うーん、同じ冒険者仲間を疑うのは良くないけど、まったく疑わないのは悪手ね。それで冒険者同士の諍いが減るなら良いわ」

 

 地下1階に降りると〈スライム/粘体〉が複数体、壁や床を這いずり廻って「漆黒」と「蒼の薔薇」に襲い掛かってくるのをナーベとニニャが《ファイアボール/火球》で纏めて吹き飛ばす。

 天井から〈スライム/粘体〉が、ラキュースの呼吸器を塞ごうと落ちて来たのをモモンが双大剣で弾いて壁にぶち当たり、ドロリと液体の染みとなって消えていった。

 

「モモンさん、ありがとうございます」

「何、助けあいですよ」

 

 遺跡の機能は既に停止しているのか、森から遺跡に住処を移したモンスター達で地下1階は一杯だ。

 ジャイアント・スネークや〈ジャイアント・ラット/大型鼠〉やトブ・ベアなどを倒しつつ、中枢部に繋がる近道をティアとティナの忍者娘達が発見した。

 

「本に書いてある通りだから簡単」

「仕掛けの解き方も書いてあったので簡単」

「さて、まず本に書かれてある通りなのか調べる必要があります。セキフ、出て来い。そして此の先を探索し中枢部と思われる場所に繋がっているか調べて来なさい。時間は1時間とする。行け」

「御意、では行って参ります」

 

 モモンの影からセキフが飛び出すと瞬く間に近道へと侵入した。

 30分と経たずに帰り、報告を聞くモモン。

 

「良くやった。セキフは影に戻れ。皆さん近道は確かに中枢部へと繋がっているそうです。一度覗いて見て此処へ帰ることを提案します。まだ他の階層に何かあるかも知れませんからね」

「じゃ、さっさと行こうぜ。日が暮れちまうよ」

 

 ガガーランの言葉に皆は頷き、先頭は忍者娘ティア、次に戦士のモモンとガガーランとアンティリーネ、中央に神官戦士ラキュースと神官サルビアさん、後列にナーベとニニャとソアとイビルアイ、最後列に忍者娘ティナが後ろを見張りながら付いて行く隊列と成り、近道へと入って行く。

 近道は石壁で出来た横に3名が並んでも余裕のある下りの石階段に成っており、先を進むと中枢部と思われる巨大な扉へと続く道の両側にある幾つかの部屋の一つに辿り着いた。

 

「ふむ、確かに中枢部のようですね。此の先はフロアボス、つまり遺跡の番人の居る部屋のようだ」

 

 「ヘビーマッシャー」のレベルは低く、ナザリックの下僕にすら歯が立たないレベルだった。

 吟遊詩人での話では遺跡の番人と戦い、勝利したとあったし、本人にも確認済みだ。

 戦ったのはデカいトカゲだったか?

 

 一旦、辺りを探索して、死んだ冒険者のゾンビ・ウォリアー達をモモンとガガーランとアンティリーネで倒しつつ、近道を戻り地下の階層をしらみつぶしに探った。

 落とし穴を避けたり、針の付いた吊り天井をモモンとガガーランで支えて皆に避難して貰ったり、火球の如き魔法の砲弾を吐き出す小型の〈ストーンゴーレム/石の動像〉達をモモンが火球を打ち返して〈石の動像〉達を破壊したりと妨害に会いつつ、又、地下を降り中枢部へと戻って来た。

 

「まだ見つかっていない隠し部屋は幾つかありましたね。金貨や宝物もあるようですが後で分配を決めましょう。ここまでで更に下へ行く隠し部屋は見つかってないとなると、遺跡の番人を倒した部屋にあると見て間違いないと思います」

 

 アダマンタイト級冒険者チーム「漆黒」と「蒼の薔薇」とアンティリーネは、遺跡の番人の居る門を開ける。

 其処に居たのは「ヘビーマッシャー」が倒したと言われるデカいトカゲが首を持ち上げ、此方を見ていた。

 

「ふむ、遺跡が復活させたか「ヘビーマッシャー」が法螺を吹いたか?まあ、復活だろうな。おーい!蜥蜴君、此処を調べたいんだが良いかね」

 

 モモンがデカいトカゲに知性がある事を期待して声を掛けるが、トカゲの返答は遺跡を揺らすような吠え声だった。

 

「あら此れで決まりね。トカゲは微塵切りにさせてもらうわ」

「俺の〈フェルアイアン/鉄砕き〉で頭を叩き割ってやらぁ」

「やれやれ、〈武技・階層〉、〈武技・七彩強化〉、〈武技・黒曜石剣の円陣〉、飛べ双大剣」

「援護します。射出!〈浮遊する剣群/フローティング・ソーズ〉!」

 

 アンティリーネとガガーランが駆け出し、モモンが其れを追い、ラキュースが剣群を射出した。

 ナーベやソアやニニャ、イビルアイが先行する近接組に攻撃が当たらない様に単体用の魔法攻撃を繰り出し、炎や雷や氷や結晶の弾丸が次々にトカゲの胴体に命中する。

 サルビアさんは、魔法効果範囲拡大化した補助呪文を唱え、「漆黒」と「蒼の薔薇」とアンティリーネ達を強化している。

 「ヘビーマッシャー」に倒せる程のデカいトカゲでは、アダマンタイト級冒険者チーム「漆黒」と「蒼の薔薇」とアンティリーネには勝てず、良い所の一つも見せずにズタボロになり身を横たえ、息の根を止められた。

 その後、遺跡の番人の居る部屋を隈なく探し、セキフや忍者娘ティアとティナの観察眼から奥の壁が怪しいと報告をモモンは受け取った。

 

「さて、怪しい壁は見つかったようですがラキュースさんどうします?私個人としては探索を続行したいんですが?」

「そうね、小休止を取った後に潜りましょう」

 

 小休止を各々が取り、怪しい壁は幻術が掛けられた前人未到の隠し扉だった。

 モモンは胸を高鳴らせ、今だ誰も見た事の無い遺跡の探索を楽しんでいた。




・ササシャル遺跡
 原作で名前だけ登場した遺跡
 オリジナル設定
 王国と帝国の中間地点の森の中に遺跡が存在するとしました。
 入り口の近辺に中枢部まで一息に歩める安全な通路があるらしいと帝国ワーカー「ヘビーマッシャー」グリンガムの話に出て来るとあり、この話ではグリンガムは、実際に安全な通路を知っており、中枢部の番人を倒しているとしています。
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