冒険者組合で吸血鬼と大地が変容するような熾烈な争いの末に、これを討ち滅ぼした事について報告すると報奨金を貰い、モモンとナーベは、アダマンタイト級と認められ、ニニャはミスリル級に昇格した。
冒険者組合から鎧の修復をするように頼むからと言われて、鎧を渡そうという時に、杖に嵌め込まれた死の宝珠から秘密裏に《メッセージ/伝言》が飛んできた。
(死の宝珠です、モモン様。御顔は、どうなされるのですか?少し奥で話しませんか)
「組合長、少々御待ち頂けますか。仲間内で話したい事がありまして席を外します」
「ああ、かまわない」
モモン達は、廊下に出て誰も注目していない事を確かめてから死の宝珠に小声で語り掛け、兜を上げ顔を見せる。
「死の宝珠、顔は幻術でこのように創ってある問題は無い」
『モモン様、安心しました。ですが幻術での顔は英雄の顔としては相応しくないかと、もう少し美形かつ漢っぽさを感じさせる健康的な造形にできませんか?』
「ふむ、美形かつ漢っぽさを感じさせるね。美形という事は、美形な顔の造形が登録されていたな、それと漢っぽさならガゼフ・ストロノーフがそれぽかったな、今の顔に混ぜてみよう、健康的って事は痩せすぎという事か多少こんな感じか、どうだ美形かつ漢っぽさを感じさせる健康的な顔か?」
『英雄の顔として問題無いかと』
はぁ、元の顔は、現実世界の顔だから4枚目程度の平凡な顔立ちなので仕方無いとはいえ、英雄の顔ね、まあモモンは英雄として売り出す予定なんだから顔も大切か。さて組合長に顔を見せて鎧を直してもらうか。
その後、組合長に顔を見せて感嘆の声を貰い、やはり顔は大切かと思いながら鎧一式を渡した。
鎧が直る間、ギルド武器に死の宝珠と共に幻術を教えて基礎的な魔法が使えるようになり、そして、ようやく鎧が直ったと冒険者組合からの報告を宿に泊まっていたナーベが受け取った。
モモンは、セキフに遠くから周囲を警戒しつつ隠密で付いて来いと指示して冒険者組合へと足を踏み入れる。鎧を受け取り1階へ降りて行く、金が足りないから依頼を探さないとな。
モモンとその一行は、現在冒険者掲示板で依頼を探していた。
「ニニャ、アダマンタイト用の金になる良い依頼が無いか見てくれないか?我々二人は、ここの文字が分からなくて依頼が読めないんだ」
「そうなんですか?じゃあ良い依頼を探して見ますね。……これ何か、どうでしょう?南方の森で〈ゴブリン/小鬼〉部族が連合を組んで村を荒らしているので退治して欲しいそうです。頭数次第で、そこそこの金額になるかと」
「よし、それで行こう。……依頼が読めないのは、やはり問題があるな。他国でも文字は異なるだろうし、その度に他国の文字を勉強するのもな。《リーディング/読解》の魔法を読み解くのが難しい文章全てを読み解ける《読解Ⅲ》まで取るようにしないといけない。ニニャ、覚えてくれるか?」
「はい、現在《リーディング/読解》の魔法を、本などを翻訳するのに《読解Ⅱ》まで習得してますので、次のレベルアップで《読解Ⅲ》まで取るようにします」
依頼の紙を受付嬢の所に持って行き、注意事項を聞いて受け付けてもらった。
南方の森まで徒歩で行くのには遠いので、ハムスケは、遠出の為に背中に擬装用の野営用道具を纏めて持っている。
モモン達は、〈スタチュー・オブ・アニマル・ウォーホース/動物の像・戦闘馬〉を3体使う事にした。
この〈スタチュー・オブ・アニマル・ウォーホース/動物の像・戦闘馬〉は、動く騎乗動物像、いわゆる一種のゴーレムを召喚することのできるアイテムで、この動物像は騎乗技術がなくても命令すればいいだけなので、モモンでも簡単に騎乗ができる点で使い勝手が良かった。
ゴーレム馬で南方を探る事、数日で森近くの廃墟となった村を占拠している緑色の肌をした薄汚れたゴブリン部族が連合を組み、北上しようと準備しているのを発見した。
ゴブリンとは、人間と猿を掛け合わせて邪悪さを振りかけたようなモンスターだ。つぶれた顔に平べったい鼻をつけ、大きく裂けた口に小さな牙が上向きに生えていて、肌の色は明るい茶色又は緑色をしており、油で固まったようなボサボサの髪をしている。闇視を持ち一般的に体格には優れず、知性も人間に比べると劣っているが中にはゴブリン・シャーマンのような例外もいる。群れを作り敵に襲い掛かる習性を持ち、数次第では大軍勢を率いる事もあるという。
モモンは、村から見えない所でゴーレム馬から降りて作戦を伝えた。
「よし、奴らを倒すぞ、私が村の横から攻撃を仕掛ける。お前たちは、その後に此処からゴーレム馬に乗って攻撃魔法で攻撃するように、ゴブリンが近づいたらゴーレム馬に乗りつつ距離を取るようにせよ、ハムスケはナーベやニニャに近づく敵を排除する事。村人がまだ生き残っているならば保護するように動け。レベル差から言って負けない実力差が大きい相手だからな、無傷で勝つぞ」
「はっ、かしこまりました」
「殿、お任せあれ、このハムスケ頑張るでござるよ」
「はい、わかりました」
『了解しました』
黒宝珠の杖に嵌め込まれた死の宝珠がモモンに、魔法《プロトタイプエクステンドマジック・ウォリアーレベルアップⅠ/魔法試作持続時間延長化・戦士職段位上昇Ⅰ》を掛けている。
モモンは、2本のグレートソードを両手に構え新しく覚えた武技を唱え準備を整えた。
「〈武技・黒曜石剣の円陣〉、〈武技・双武器魔法化〉」
双大剣を振ると空中に黒く輝く3つの黒曜石の剣を創り出し、モモンの頭上を取り囲むように並んでいる。そして双大剣には魔法の光が青白く輝いているようだ。双大剣に一時的に魔法の力を宿し、切れ味を増大させたのだ。
モモンは、屈みこみゴブリンに見つからないように隠密で村の横まで歩いている。
ゴブリン共は、ボロ布を着込み粗末な剣や棍棒を持ち、中には弓を持っている個体もいるのが見える。喋る言葉は片言ぐらいしか聞き取れないので、どうやら世界に広がる翻訳魔法では翻訳しきれない獣に近いゴブリンのようだ。
モモンは、屈んでいた体を伸ばしゴブリンの群れに突撃する。空中に浮かんでいた3つの黒曜石の剣が目の前に立っていたゴブリンの頭、首、胴体に突き刺さるとゴブリンは、血を吐き出しながら吹き飛んで倒れた。
右隣のゴブリン・ファイターの胴体を薙ぎ払い、左隣に立っていたゴブリン・アーチャーの頭を斬り飛ばす。
その後、廃墟の村の入口付近で、魔法の音が絨毯爆撃しているように聞こえて来た。
どうやらナーベとニニャが、廃墟になった村から出てくるゴブリン共を魔法で攻撃しているのだろう。
重い足音と共に、大きな棍棒を持った巨躯を誇るホブ・ゴブリンが現れた。
だが、その棍棒を振る機会は与えないとモモンは一気に肉薄する。
空中に浮かぶ3つの黒曜石の剣が、意志を持っているかのようにホブ・ゴブリンに襲い掛かかり、双大剣を振り下ろす。
「〈武技・双剣斬撃〉」
双大剣により3枚におろされたホブ・ゴブリンは、ゆっくりと体を倒していった。
崩れた家の壁際から槍が飛び出すのをモモンは、交差した双大剣で受け、武技を唱える。
「〈武技・要塞〉」
ゴブリン・ランサーの粗末な槍は、双大剣の守りを突破できずに中ほどから圧し折れた、すかさずゴブリン・ランサーにモモンは唐竹割を食らわせた。
続けて、崩れた家の壁際を覗き込み問題無いのを確かめて進むと廃墟となった村の中心部であったろう広場は、腐臭のする肉屑や壊れた家財道具が転がり若干狭くなっている。
広場では、捻じれた杖を持ったゴブリン・シャーマンが部下の数人のゴブリン達に何事か怒鳴っているのが見えた。どうせ大した事は言ってない。
モモンは、ゴブリン・シャーマンの前に居るゴブリン共を双大剣で切り捨てながら進んで行った。
ゴブリン・シャーマンは、下品に笑いながら杖をこちらに突きつけ魔法でも唱えようとしているのだろうが、遅い、モモンは、右手を大きく振りかぶって大剣を投げる。
ゴブリン・シャーマンの頭に大剣が命中し、頭が柘榴のように割れたのが見えた。
それを見た他のゴブリン達は、急いで森の中に逃げようとしたがモモンに後ろから薙ぎ払われていく、数人のゴブリンが逃げたが廃墟のゴブリンの9割は倒せた事だろう。
廃墟での戦いが終わった後、皆で崩れた家屋を探して生存者を探したが誰もいなかった。村人は、巣穴に持ち去ってしまったか食べられたかしたのだろう。
ニニャが討伐部位の耳を切り取っているのが見えるが、やはりユグドラシルのデータクリスタルは、落ちていない。
「死の宝珠よ、モンスターを倒してデータクリスタルが手に入ったという話は聞かないか?」
『……いえ、データクリスタル?、そんな物を落とすモンスターの噂を知りません。モモン様の昔いた場所では落ちていたのですか?』
「ああ、ユグドラシルでは、稀にデータクリスタルが落ちていたんだが、この世界に来てから落ちなくてな」
『ふむ、ではデータクリスタルを落とす確率が0になってしまったのをなんとかしたいと、それならデータクリスタルを見つけられるよう魔法を考えましょう。モモン様、ニニャの肩に触れて下さい』
その後、モモンと死の宝珠は、基礎となる魔法を《グレーターラック/上位幸運》として、これを改良して《シルバー・べカニング・キャット/銀の招き猫》という発見力を高める魔法を開発した。
ユグドラシルでもドロップ率上昇アイテムはあったが、元々のドロップ率に×(掛ける)仕様だったので0に何を掛けても0のままだった。
この魔法は、元々のドロップ率に+(足す)仕様なのでドロップするはずなのだ。
廃墟の家の一室に籠り魔法を唱えるのは、アインズだ。
モモンは、戦士の恰好をしているので魔法がほとんど使えないから、モモンからアインズへと姿を変えて魔法を詠唱していた
「《プロトタイプエクステンドマジック・シルバー・べカニング・キャット/魔法試作持続時間延長化・銀の招き猫》、実際に倒してみないと分からないな。ゴブリンが森に逃げたという事は、そこに本拠地があるのだろう。倒しに行くか。」
アインズが《クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具創造》の魔法を使うと白い光が駆け抜け、モモンの漆黒の全身甲冑姿に成っていた。
外に出るとモモンは、セキフを呼ぶため声を張り上げた。
「セキフ、用がある。出てこい!」
「御意」
「セキフ、この先にゴブリン共が根城にする拠点があるはずだ。2時間以内に見つけ出してこい」
「了解しました」
45分程度で戻って来たセキフはゴブリンの拠点を報告していた。どうやらゴブリン達は、森の奥の廃墟の山城を拠点にしているようでゴブリン多数にゴブリン・チャンピオン数体にゴブリン・キングまでいるそうだ。
ゴーレム馬をアイテムボックスに戻して、徒歩でセキフに森の中を案内してもらいつつ廃墟の山城から気付かれない所まで辿り着いた。
「後ろに崖があるな、私は其処から強襲しよう屋根に穴も開いてることだし問題無く山城の広間まで行ける筈だ。その後にお前達は、ここから見える門番のゴブリンを魔法で倒し門から飛び出すゴブリン共を魔法で攻撃しろ。ハムスケとセキフは、ここでナーベとニニャを守れ」
「はっ、かしこまりました」
「殿、今度もナーベ殿とニニャ殿を守ってみせるでござる。このハムスケに任せるでござるよ」
「御意、畏まりました」
「はい、わかりました。門は狭いから狙いやすいので大丈夫です」
『了解しました』
モモンは、廃墟の山城の後ろの崖まで、屈みこみ見つからないように隠密歩きで移動している。
崖は高く、普通の人間なら飛び降りれば死を覚悟する高さだ。
モモンは、武技を唱え守りを厚くして、中空に手を伸ばし暗闇に手を突っ込み波紋を広げながら《フライ/飛行》が付与されたペンダントを取り出し身に着ける。
「〈武技・七彩強化〉、〈武技・黒曜石剣の円陣〉」
武技により一瞬体が七色に光輝き、各種耐性強化と全能力強化によって身体能力が向上して体が軽くなるのを感じて、双大剣を振ると3つの黒曜石の剣が空中に現れ頭上を囲み始めた。
空を飛ぶモモンは、廃墟の山城の中央部の屋根が崩れた広間へと、加速をつけて墜落するような勢いで降り立つ。
広間では、ゴブリン・ファイター数体とゴブリン・アーチャー数体が居る、ゴブリン・チャンピオン2体に奥の方にはゴブリン・シャーマンが立っていて骨と木でできた貧相な玉座にゴブリン・キングが座っているのが見える。
ゴブリン達は、突然の侵入者に驚いていたが一人だと気付いて、何て間抜けな奴なのだろうという感じで、こちらを指差し下品に笑っている。
「さて、終わらせるか。スキル〈太陽の爆発〉」
モモンの双大剣に炎が付与され、炎の双大剣の片方を突き付けるとゴブリン・キングの足元を中心に攻撃範囲を示す真紅の円が浮かび上がり、その後、ゴブリン・キングを中心に炎が吹き荒れゴブリン・チャンピオン2体、傍に立っていたゴブリン・シャーマンにゴブリン数十体を巻き込み、崩壊した屋根を突き抜けるような火柱が立ち昇った。
魔法の音が城門付近で聞こえてきたので残敵掃討は上手くいっているのだろう。
ゴブリン達の焼死体に近づくと、焼死体の他にデータクリスタルがゴブリン・キングの死体の代わりに1つ置いてあるのに気付いた。
「ほほう、どうやら魔法は上手くいったようだな。ゴブリン・キングの死体を媒介にしてデータクリスタルを生成したのか。うむ、性能は、ゴブリンだけに良くは無いが、これでデータクリスタルの補給の目途は立ったな」
廃墟の山城内のゴブリン共を皆殺しにして、生き残りの村人がいないか探した後に帰路に着く事にした。
どうやらニニャと死の宝珠は、レベルアップしたようで魔法は、補助系2つと攻撃系1つの割合で取る事にしたようだ。
ゴブリン共の換金用の耳も大量に集まったが、もっと金を集めないとセバス達にも活動資金を渡さないといけないし困ったものだ。
さあ、エ・ランテルの冒険者組合に報告する為に戻るか。
・《リーディング/読解》
原作にもある文字を翻訳する魔法。未熟だと文章の一部しか読み取れない事から段階があるとしました。
オリジナル設定:読解Ⅰ~Ⅴまで、Ⅰだと読み解くのが難しい文章だと極一部のみ、Ⅲで文章全てを読み解ける、Ⅴで謎々の答えや暗号が読み解けるとしました。
・〈武技・黒曜石剣の円陣〉
オリジナル武技。武器を振って空中に黒く輝く3つの黒曜石の剣を創り出し、意志を持っているかのように相手に襲い掛かからせる武技。
魔法《オブシダント・ソード/黒曜石の剣》の魔法最強三重化した物を武技化したもの。
魔力と集中力を消費して発動するため、魔法より魔力を消費しない。
エルデンリングの巨剣陣が元ネタです。元ネタと違い一種の召喚術なので。何度も術者の元に戻り又使えます。
・〈武技・双武器魔法化〉
オリジナル武技。武器に一時的に魔法の力を宿し、切れ味を増大させる。
魔法《マジック・ウェポン/武器魔法化》の魔法二重化した物を武技化したもの。
魔力と集中力を消費して発動するため、魔法より魔力を消費しない。
・〈武技・七彩強化〉
オリジナル複合武技。様々な耐性強化魔法、身体向上強化系魔法を組み合わせた効果が期待できる。
魔力と集中力を消費して発動するため、魔法より魔力を消費しない。
・《シルバー・べカニング・キャット/銀の招き猫》
開発中のオリジナル魔法、発見力を高める魔法で《グレーターラック/上位幸運》の魔法を改良した物です。
ユグドラシルでは、モンスターを倒した際にデータクリスタルと素材をドロップするが、この世界では落とさないようです(データクリスタルのドロップ率0%)。素材は剥ぎ取らないといけません。
ユグドラシルでもドロップ率上昇アイテムはあったが、元々のドロップ率に×(掛ける)仕様だったので0に何を掛けても0のままだった。
この魔法は、元々のドロップ率に+(足す)仕様なのでドロップするようになりました。
内容)
基礎魔法《グレーターラック/上位幸運》、《エンハンスメントマジック/魔法増強》〈データクリスタルをドロップする確率に加算(+)する〉、《リミッテイションマジック/魔法限定》〈データクリスタルをドロップする確率に加算以外の効果が無い〉、魔法試作開発《シルバー・べカニング・キャット/銀の招き猫》