オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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ササシャル遺跡の探索 2

 隠し扉を潜り抜け、モモン達一行は地下深くまで続く下りの螺旋階段を降りる。

 階段を降りる途中で〈ジャイアント・バット/巨大蝙蝠〉が久しぶりに訪れた獲物を捕食しようと牙を向き出しにしてモモン達に襲い掛かるが、モモンやガガーランの双大剣や大槌で打ち落とされて底へと落ちて行く。

 やがて螺旋階段を下りきり、底に付いたモモン一行は落ちて潰れた巨大蝙蝠を避けて先を進む。

 通路は床、壁、天井は石を組み上げて作られており、魔法の松明で各所が照らされていて暗視が無くても行動に支障がない様になっていた。

 しばらく進むと床が無くなり、点々と足場に成る石柱の群れが広がっていた。

 底を覗き見ると緑色の霧が立ち込め、骸骨が散乱しているのが見える。

 

「ふむ、此処は足場を跳んで向こうに行くのが正しい手順か。付き合う必要は無いな、《マス・フライ/全体飛行》」

 

 モモンが魔法を唱えるとモモン一行全体に《飛行》効果が発動し、皆の体が浮かび上がる。

 

「ちょっと、魔法を掛けるなら、あらかじめ言ってよね。私は特殊技術で飛べるから外してよ。自分で飛んで辺りを哨戒するから」

「モモン様、私も魔法で飛べますので外してください。見張りをします」

 

 アンティリーネとイビルアイは、独自に飛ぶことで辺りを警戒すると言っていたので《全体飛行》の効果をそれぞれ切っておいた。

 アンティリーネは。特殊技術で翼を展開して飛び上がり、イビルアイは慣れた様に《フライ/飛行》の魔法を唱え、浮かび上がる。

 アンティリーネとイビルアイに周囲の見張りを任せ、足場の上を飛ぶ。

 

「右前方から巨大蝙蝠の群れ多数発見!私達目掛けてやってくるよ」

 

 アンティリーネの言葉通り、空中を飛ぶモモン達に巨大蝙蝠が襲い掛かるがモモンは武技を唱え、一蹴する。

 

「〈武技・双剣漆黒八連空斬〉!」

 

 モモンが双大剣を八連続で振ると延長線上に現れた漆黒の波動を孕んだ風の刃が空気を歪ませ揺らめきを残しつつ、巨大蝙蝠を次々に斬りさき、漆黒の力に蝕まれ落として行く。

 空中を飛行する際の罰則だったのか飛行モンスターが次々に現れ、モモンが武技を放つ双大剣や背中の宙に浮かぶ双大剣で飛行モンスター達が切り裂かれ墜落していった。

 

「モモン、すまねえな。一人でやらせちまって」

「お気遣いなく、もう終点ですよ」

 

 ガガーランの言葉にモモンは答え、《全体飛行》を解除してモモン一行は地面に降り立つ。

 モモンは双大剣を振り、飛行モンスターの血糊を落とすと鞘に入れ先に進む。

 しばらく行くと通路が入り組み、木製の扉が沢山ある場所に着いた。

 目についた扉を忍者娘のティアとティナに調べてもらい開けて貰うと、何も無い空き部屋だった。

 

「どうやら空き部屋のようですね。ティア、ティナ、隠し通路なんかはあるかい?」

「なさそう」

「調べたけど無い」

「ふむ、他の部屋も調べるか、どうしますラキュースさん」

「そうね、このダンジョンの調査が依頼内容だから扉は無視して通路を先に進んだ方が良いと思うわ。幾つかの扉の中には宝箱が眠ってそうだけどね」

 

 ラキュースさんの意見を採用し先を急ぐモモン一行の前に、行き先の無数の木製の扉を開けてアイアンゴーレム達と鉄製の〈ナイトゴーレム/騎士の動像〉達が騎槍と中盾を持って現れた。

 次々に木製の扉が開き、アイアンゴーレムと〈騎士の動像〉が通路を埋め尽くすほどにモモン達一行の行方を阻む。

 

「鉄製の動像に此れが防げるかな。〈武技・金剛撃波〉!」

 

 すかさず武技を使い、双大剣を地面に叩きつけると通路幅一杯の対物理特化の衝撃波を直線状に放つ、鉄で出来た動像達が粉微塵に吹き飛んだ。

 

 イビルアイとソアがモモンを褒めちぎるが、背中が痒くなるので止めて欲しいな。

 

「流石です。モモン様!」

「モモンさん、すごーい!」

「さあ、残りの動像もあと僅かだ。動像は、近接だと打撃攻撃や魔法だと音波や酸に弱い。狩りつくすぞ!」

 

 ガガーランやアンティリーネが半ば崩れかけた〈騎士の動像〉を砕き、ナーベやソアやニニャとイビルアイが広範囲魔法を後方で立て直そうとするアイアンゴーレムに打ち込み、ラキュースさんやサルビアさんは後方支援で援護魔法を皆に掛けて貰う。

 忍者娘のティアとティナは後方でラキュースとサルビアの護衛をして貰い、しばらくして通路を埋め尽くす勢いで出て来た動像達が全て崩壊して片が付いた。

 

「モンスターハウスのような湧きだったな。片が付いて良かったよ」

「モモンさん、モンスターハウスって言うのは今の様な大量の敵を相手にする事なのでしょうか?」

「ああ、すみません。説明が足りませんでしたね。概ねその見解であってますよ。先を急ぎましょう」

 

 入り組んだ通路を忍者娘のティアとティナを先頭に探索しつつ先に進み、滑り台のような下りの通路まで来た。

 滑り台は幅が3人ほども楽に通れる程で、路面は石造りとは思えないほどの滑らかさで足を一歩踏み入れれば下まで真っ逆さまだ。

 滑り台の下の方は暗く、モモンの暗視でも見通せない何らかの魔法的な視覚効果が張られている様だった。

 

「ふむ、滑り台か。ニニャ、《スパイダー・クライム/壁登り》の魔法を効果範囲を拡大化して全員に掛けて貰えるか」

「はい、お任せを。《ワイデンマジック・スパイダー・クライム/魔法効果範囲拡大化・壁登り》」

 

 《スパイダー・クライム/壁登り》とは、垂直な壁や崖あるいは天井を移動する能力を付与する魔法で、天井や壁を移動する際に足が接地面に吸い付く事で落ちずに移動できる魔法。

 この魔法を使えば、ツルツルの滑り台の様な床でも足が床に吸い付き滑り落ちる事は無いのだ。

 「漆黒」と「蒼の薔薇」の冒険者すべてに《壁登り》を掛け、モモンが一先ず滑り台へと足を踏み入れるが魔法の効果で足はピタリと路面に吸い付き、滑り台を滑らずに進むことが可能となった。

 

「うむ、大丈夫そうだな。皆さんも滑り台に足を踏み入れてみて下さい。滑りませんから安全ですよ」

 

 皆、恐る恐る足を滑り台へと踏み入れ、滑らない事を確かめている。

 その後、《壁登り》の魔法効果が切れる前に滑り台を歩いて、皆で滑り台の下を目指して行くと途中で大穴が開いていたのを発見した。

 滑っていたら大穴に落ちていたのは間違いが無いだろう。

 滑り台の大穴の両縁に体を横にすれば歩ける程の幅があり、其処を通って更に下を目指す。

 滑り台は、最下層まで続いており、最後には巨大な木製の門の前にまでモモン一行は辿り着いた。

 巨大な木製の門の前では門番代わりのサーベルウルフやトブ・グレーター・タイガー達が襲い掛かるがラキュースの〈フローティング・ソーズ/浮遊する剣群〉の射出やモモンの背中に背負った双大剣を空中に踊らせて魔獣達は斬り飛ばされた。

 

 しょせん魔獣、遠距離攻撃手段を持たないモンスターへは遠距離からの複数連続攻撃を繰り出すのが一番だからな。

 

「どうやら此のダンジョンのボスの扉のようだな。開けますが構いませんね、ラキュースさん」

「ええ、構わないわ。何にせよ確かめないと依頼内容を書けないわ」

 

 中に入る前に打ち合わせを済ませて、皆の配置を決めておく。

 巨大な木製の扉を開くと壁際には美麗な彫刻が施された石柱が数多く並び、石を組み上げて作られた大きな部屋の中央では大きさは3mを超える巨大な目が周りから幾つもの触手が生え、触手の先端からも小さな目が付き空中を浮かび上がっている。

 

 あれは〈アイボール〉系か、〈アイボール〉は探知に特化した種族だ。

 また特殊な視線で様々な効果を発揮する事でも有名だな。

 知性があるようには見えないが、まあ物は試しだ。

 

「我々は此処のダンジョンの調査を任された冒険者だ。君に危害を加えるつもりは無いが話せるかな?」

 

 巨大な目はジロリとモモンを睨むと目から白い光線を放つ、モモンは斜めに放たれた白い光線を避けつつ正体不明の〈アイボール〉に近づきつつ、背中の双大剣を空中へ浮遊させる。

 

「倒すしかなさそうだ。皆、打ち合わせ通りに動いてくれ!」

 

 皆が配置に着く中、正体不明の〈アイボール〉は全身を震わせると同時に空中に無数の魔法陣が浮かび上がり、空中の魔法陣から〈アースワーム/大地の長虫〉や〈ギガント・バジリスク〉や〈コカトリス〉などの魔獣が召喚され、モモン一行に襲い掛かる。

 

「〈武技・階層〉、〈武技・戦士職段位上昇Ⅴ〉、〈武技・七彩強化〉、〈武技・黒曜石剣の円陣〉、踊れ双大剣!」

 

 モモンの頭上に黒曜石の石剣が3つ浮かび、近くに居た〈ギガントバジリスク〉を斬り刻み続ける。

 既に空中を浮遊していた双大剣が踊れの言葉と共に正体不明の〈アイボール〉を目掛けて双大剣を突き立てようとする。

 ガガーランは、〈アースワーム〉相手に〈武技・超級連続攻撃〉を繰りだし、アンティリーネは、〈コカトリス〉の首を戦鎌で斬り落としていた。

 ナーベやソアやニニャとイビルアイの魔法使い組は近接組の援護射撃で次々に召喚された魔獣を魔法で消し飛ばし、ラキュースとサルビアさんは皆に広範囲に拡大した援護魔法を掛けている。

 忍者娘のティアとティナは神官組を護衛しつつ、近づく魔獣に向かって手裏剣を飛ばし牽制しているようだ。

 正体不明の〈アイボール〉の幾つもある触手が鞭のように伸び、宙を飛び〈アイボール〉の体に突き刺さろうとする双大剣を弾き、モモン一行を目掛けて鞭のような触手が振るわれる。

 モモンは腰の美麗な模様の入った双大剣【世界意志(ワールドセイヴァー)】を抜き、幾本かの触手を斬り落とすが、ガガーランや忍者娘のティアとティナが残った触手に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられ罅が入り、ガガーランや忍者娘のティアとティナは床へと擦り落ちる。

 どうやら意識を失ったようで起き上がって来ない。

 嵐の様に鞭状になった触手が振るわれ、防御に精一杯で倒れたメンバーには近づけられない。

 

「素早くアイボールを倒すぞ!〈武技・決闘宣言〉!」

 

 正体不明の〈アイボール〉が、モモンの武技を受けてモモンから目が離せない。

 〈アイボール〉の目から緑の粒子の光線が放たれ、モモンを貫く。

 

「〈武技・無敵要塞〉!」

 

 モモンは、咄嗟に双大剣を交差させ武技を唱えた。

 〈武技・無敵要塞〉を擦り抜けてモモンに緑の光線が当たるが、モモンには何が起きたか分からない。

 

「〈武技・閃光走破〉、〈武技・星光連撃〉!」

 

 閃光の様に短距離を瞬間的に移動し、星の光の如く剣閃が煌めき、正体不明の〈アイボール〉の体を無数の剣撃で斬り刻み血煙に変える。

 浮遊する〈アイボール〉の肉塊は、たちまちの内に浮遊する力を失い、地に落ちた。

 モモンは、正体不明の〈アイボール〉が確実に死んでいる事を確かめてから双大剣を鞘に納め皆に向き直る。

 死の宝珠から無詠唱化した《メッセージ/伝言》が届く。

 

(モモン様、魔法で創った兜が消えております。後、幻術も解け、骸骨の姿が蒼の薔薇に見られてしまいました。どうやら〈アイボール〉の緑の光線は強力な魔法効果の除去のようです。見られたからには殺されますか?)

(殺すのは無しだ。今まで「蒼の薔薇」には世話になってるしな。まあ最悪の場合は記憶を改竄させてもらうさ)

 

 参ったな、骸骨姿を見られてしまうとはな。

 

「その顔、モモンが魔導王だとはね。どおりで強い筈だわ」

「モモン様が魔導王?骸骨?」

「モモンさんが魔導王ですか、もしかして騙していたんですか」

 

 アンティリーネとイビルアイとラキュースが、骸骨姿を晒したモモンに向かって不満を露わに非難している。

 

「落ち着いて下さい。魔導王だと黙っていたのは悪かったですが騙すつもりはありませんでした。単なる息抜きで冒険者をやっていたんです。それに骸骨姿は私の姿の一部、人の姿にも天使の姿にも成れます」

 

 モモンが職業レベルを(レジェンダリー)化した事で予め習得済みの魔法《パーフェクト・シェイプチェンジ/完璧なる変身》を無詠唱で使い、彫りの深い黒髪の人の姿を取り、素手でアンティリーネとイビルアイとラキュースの手をそれぞれ握っていく。

 手を握られたアンティリーネとイビルアイとラキュースは頬を染め、互いに視線を逸らしている。

 

「私が魔導王という事は黙っていて貰えませんか?私に出来る事なら、なるべく叶えて見せます」

 

 アンティリーネとイビルアイとラキュースは、モモンに向かって少し待っててと言って部屋の隅の方で何やら話し合いをしているが、しばらくして話が纏まったのかモモンの前に帰って来た。

 イビルアイとラキュースは恥ずかしがっているが、アンティリーネは自信満々にモモンに向けて答えた。

 

「出来る事なら叶えるって言ったわよね。ならイビルアイとラキュースと私の3人と結婚して貰うわ。人にも成れるなら子供も作れるんでしょ、私としても何も問題ないわ」

「えぇー?」

「殺しましょう。このガガンボ共が!」

「待て、ナーベよ。殺すとかは無しだ。その本当に結婚するんですか?骸骨姿でもあるんですよ」

「さっき人にも成れるって言ったじゃない。イビルアイとラキュースも貴方の様な男性なら結婚しても良いって言ってたしね」

 

 イビルアイとラキュースは恥ずかしがりつつもモモンに向かって話を切り出す。

 

「私と結婚してください。モモン様!」

「貴方の事を愛しています。結婚を希望します。モモンさん」

 

 まあ結婚して身内に成れば秘密は無いも同然だからな。

 イビルアイさんは可憐でアンティリーネとラキュースさんは美人だし、気心も知れてるし、好きではあるんだよな。

 

 モモンは天を仰ぐと結婚をして欲しいと頼む3人に目を遣り、にこやかに笑いながら答えた。

 

「その願いは叶えられませんね。何故なら私自身も貴方達の魅力に惹かれて何時の日にか結婚したいなあと思っていましたから。だから、私からも御願いします。イビルアイ、ラキュース、アンティリーネ、私と一生を共にして欲しい」

「あら、気が無い風で結婚する気はあったのね。それなら私達の願い事は結婚費用をそちらで出して貰うってのでどうかしら?ねえ、みんな」

「結婚費用は両者折半が原則なんですが、3人分ですよ。でも魔導王のモモンさんなら楽々で払えるかしら?」

「うむ、私は問題無いぞ。モモン様にお任せする。……ふふふっ、モモン様と両想い!こんな良い日があってよいのか!」

 

 アンティリーネが願い事を変え、ラキュースの疑問に答えてやり、体をくねらせるイビルアイに落ち着いて声を掛けて、倒れて気絶した仲間達の救出作業の傍ら、結婚について皆と和やかに話し合うのだった。




・〈ジャイアント・バット/巨大蝙蝠〉
 オリジナルモンスター
 大型犬ほどの体を持ち、翼を広げ、超音波や爪や牙での引っ掻きや噛みつきで攻撃するモンスター。

・〈グレーター・ディスペル・アイボール/上位解除の眼球〉
 オリジナルモンスター
 3mほどの巨大な目に幾つもの触手、触手の先には小さな目は付いて浮遊する〈アイボール〉系モンスター。
 様々な光線を中央の巨大な目から出せる。
 白い光線は破壊光線、緑の粒子の光線は此のモンスターが一日一回使える対象のあらゆる魔法効果を解除する。(対象に掛かっている魔法のみで魔法アイテムには影響しない)

・〈武技・双剣漆黒八連空斬〉
 オリジナル武技、前提:〈武技・双剣空斬〉、〈武技・漆黒八連撃〉
 八連続で体を蝕む漆黒の力を秘めた空斬を放つ武技

・〈武技・金剛撃波〉
 オリジナル武技、前提:〈武技・撃波〉、対物体の魔法の習得
 対物体用の武技、物体や無生物に特攻の効果ある武技
 地面を武器が叩くと一直線に衝撃波が飛ぶ。

・《スパイダー・クライム/壁登り》
 オリジナル魔法、第1位階魔法
 対象1体に、垂直な壁や崖あるいは天井を移動する能力を付与する魔法。
 元ネタはD&Dにある魔力系第1位階魔法《スパイダー・クライム》です。
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