地上都市を制圧したアインズ達は巨大時計《黙示録の天使》と強力なスキルを使い切ってしまったマーレと地に落ちて生き残った天使達や戦乙女達の敗残兵狩りに有効な魔獣達を使役するアウラを地上都市に残した。
「アウラとマーレよ、お前達には地上都市の敗残兵狩りをしてもらいたい。巨大時計《黙示録の天使》の召喚時間にはまだ余裕があるので奴を上手く使え。アウラの魔獣達なら建物に隠れ潜む敵兵を刈り取ることなど容易いであろう。もしも手に負えない事態の場合は《メッセージ/伝言》で連絡を取れ、私が助けに行ってやるからな」
「はいっ、お任せください。アインズ様」
「お、お任せください。アインズ様、きっと殲滅して御覧にいれます」
「うむ、お前達に地上都市の敗残兵狩りは任せるぞ。我らは浮遊都市に昇る手段を探さねばならんからな」
アインズ達は、浮遊都市へ昇る手段を探し、壊滅し半壊した建物が転がる都市中央部を探す。
浮遊都市エリュエンティウでは魔法《浮遊》や《フライ/飛行》で飛び出せるのは一定高度までとなっているようで、此れは開放型の拠点ではありふれた防衛仕様だった。
「アインズ様、中央に設置された噴水が昇降機代わりに浮き上がる様になっているようです。これで浮遊都市へと上がれます。早速、斥候部隊を送り、浮遊都市での橋頭保を築きます。安全が確保され次第、アインズ様も護衛する者達と一緒に上がって頂きます。宜しいでしょうか?」
「うむ、任せるぞ。デミウルゴス、斥候部隊には遠距離からの防御系と遠距離への攻撃系のスキルや魔法を持った者を混ぜると良いぞ。浮遊都市で待ち構えているのは遠距離攻撃に特化した者達だろう。遠距離系の対応策が無ければ噴水の昇降機で上がれば、たちまちの内にハチの巣だろうからな」
「分かりました。流石、アインズ様。早速、部隊の編成に掛かりたいと思います」
俺が出れば、噴水の昇降機で上がって安全に橋頭保を築くのも容易いんだが部下の意見も最もだ。
まあ、今回はデミウルゴスやアルベド、パンドラの指揮の元、軍師サーロの助言もあるようだし、そう酷い事には成らないだろう。
お手並み拝見といくか。
デミウルゴスは昇降機に乗せられるだけの斥候部隊を乗せ、それを何度も繰り返す策を取った。
第1陣は遠距離戦の防御力主体、第2陣から遠距離の攻撃力を持つ者を混ぜるという具合だ。
魔神将が召喚した軍勢が次々に昇降機に乗り、昼まで掛けて猛攻を繰り返す。
降りた昇降機には魔神将が召喚した悪魔が橋頭保を築いたとの報告をデミウルゴスにしており、念の為にデミウルゴスが確認の為に昇降機に乗り昇って行く。
昇降機で降りて来たデミウルゴスがアインズに確認した事を報告する。
「アインズ様、無事に橋頭保を築けたようです。此方の被害は召喚した悪魔のみとなっております」
「ご苦労、私も上の浮遊都市に出向くとしよう。コキュートス、アルベド、我々の感知範囲外からの超長距離射撃で私を狙う恐れがある。其れに備えておけ。シャルティアは私を狙った狙撃者を供の者と一緒に殲滅しろ。よいな」
「ハッ、オ任セ下サイ」
「御任せ下さい。コキュートスはアインズ様の右側を主に守って、私は左側を担当するわ」
「ウム」
昇降機にナザリックの精鋭部隊が乗り、順次昇って行く、次にアインズ達が階層守護者達やツアーを集め昇降機に乗り、浮遊都市へと昇っていた。
昇降機は静かに浮遊都市に辿り着くと、辺りを警戒しながらアインズ達は昇降機を降りる。
昇降機は後詰の人員を乗せる為に静かに下りて行く。
アインズの見た浮遊都市は、かつては色鮮やかな瓦屋根が葺かれていたのが屋根は崩れ、瓦は辺りを散らばっているし、アインズの身長よりも高い華美で精緻な彫刻が崩れ倒れている。
見張り塔も塔の半分の部分で半壊して傍には塔の石壁を構成していた煉瓦が散らばっていた。
遠くに見える天空の城も半ば崩れて、内部が覗けるほどだった。
廃墟になっているとはな。
どうやら拠点を維持できる資金を地上都市の市民からユグドラシルのシステムで自動で得られる税金だけでは賄えず、徐々に廃墟化しているようだ。
アインズが辺りを見廻すと、始原の魔法《竜感覚》が天空の城辺りで危険を察知した。
「天空の城から攻撃が来る!皆、私を守れ!」
天空の城から伸びる青い魔力の奔流がアインズ達に襲い掛かる。
アルベドが漆黒の鎧を身に纏い、盾でアインズを守ろうと動くが多段ヒットする魔力の奔流に飲み込まれ、如何なる攻撃も3度まで凌ぐ防御形態も3度の防御をあっという間に崩される。
アルベドの後ろにコキュートスが立ちはだかり、武技を連続使用してアインズから魔力の奔流を捌く。
「〈武技・力場〉ァ!ヌウゥン、ゴ無事デスカ、アインズ様!」
「《世界断絶障壁》!大丈夫かい、アインズ」
コキュートスが斧槍で襲い掛かる魔力を弾くとコキュートスの前に青い力場が発生し、連続して武技を発動させる事で多段ヒットさせる魔力の奔流はアインズの斜め後ろに流れていった。
アインズの前には最小化した《世界断絶障壁》の一部が前方に向かって張り巡らされており、アインズはツアーに向けて片手を上げて、大丈夫だと意思表示する。
シャルティアはアインズの無事を確認すると一礼して、天空城に供の者と共に狙撃対策にジグザクに飛んでいく。
近づくシャルティアに対して天空城から度々、青い魔力の奔流が発射され、シャルティア達は其れを華麗に避けて天空城へ進んでいる。
「コキュートス、ご苦労だったな。ツアーも助かったぞ。アルベドも良くぞ其の身を盾にしたな、其の体では最早戦えまい下がって休むが良い」
「ハッ、有難キ幸セ」
「おやすい御用さ」
「くっ、後方にて全体の指揮を取らせてもらいます」
アルベドは3重装甲の漆黒の鎧「ヘルメス・トリスメギストス」が崩れ、最早手足にしか其の有様が見えず、純白のドレスに着替えてアインズの指示に渋々ながら従う。
天空の城から空間を断裂する連撃が放たれ、天空の城の大半が粉々に砕け散る。
天空の城から細かな瓦礫の雲と共に放り出されるのは真紅の鎧を砕かれたシャルティアだ。
だが意識を失っているようで此のままでは浮遊都市を放り出され、落下ダメージで即死判定を喰らってしまう。
「デミウルゴス、シャルティアを救え。お前の供の者も護衛として連れて行くと良い」
「アインズ様!、それでは御身を守る者が!」
「聞こえなかったか。行くのだ、デミウルゴス」
デミウルゴスがシャルティアを救いに浮遊都市を飛び降りる中、天空の城から白く光輝く闘気を放ち、アインズより一回り大きく、鎧を着込み、大盾と剣槍を持った人型の者が天使達を引き連れアインズの前に姿を現す。
本を持った天使が爛々と狂った両目を輝かせ、アインズ達を指さし嘲笑う。
「もう貴様たちは終わりだ。世界一つに匹敵する本【無銘なる呪文書(ネームレス・スペルブック)】を使い、我らの神が復活したのだ」
「くそっ、遅かったか。どうするアインズ、奴はあらゆる魔法が記載された【無銘なる呪文書(ネームレス・スペルブック)】を使い、おそらく超位魔法とやらを使ったのだろう。滅びた筈の天空城の主「八欲王」の一人が復活している!」
滅びた者、つまりはレベルダウンを繰り返し完全に灰に成った状態で復活したのか?
ありえない、ありえるとしたら何だ。
NPCの天使が神だと言っていたな、まあナザリックでも至高の41人とかで神様扱いなのは変わらないんだが、本当に神様なのだとしたら。
「超位魔法《コール・アヴァター/神の化身召喚》を使ったか。ユグドラシルでは神話の神様やユグドラシルの神様を呼び出し、戦わせたり、何らかの加護を貰ったりする魔法だ。どうやら此の世界では己が信ずる神様でも召喚できるようだな。どうだ正解か」
「正解だよ。さあ神よ、奴らに其の怒りの一撃を!」
光輝く闘気を持つ大柄の人が、剣槍を大上段から振り下ろすと遠近感を無視して空間を切断する。
コキュートスが防ごうと走り出しつつ武技を使い「不落要塞」を唱えるが、世界ごと斬られたかのようにコキュートスの蒼白い外装鎧に一筋の線が上下に入り、体が分断される。
コキュートスは片膝を付き、分断される体を慌てて抑え、自らの再生力で修復を図っているが此れで良く分かった。
「天空の城はアースガルズの天空城、八欲王は、かつてのワールドチャンピオン達が集まって作ったギルドだな。超弩級の最終特殊技術〈ワールドブレイク/次元断切〉に絶対防御の〈次元断層〉、相手に取って不足は無い。コキュートス下がれ、奴は私が相手しよう。お前達は天使達を相手にせよ。ツアーは私の部下たちの援護を頼む。ニニャ、黒宝珠の杖を借りるぞ」
「はいっ、お気をつけて」
ワールドチャンピオン「八欲王」の化身が剣槍に付いたコキュートスの青い血糊を払うと、剣風で地面が割れ切断音が鳴り響き、アインズに一歩ずつ近づく。
魔導王アインズは職業「レジェンダリー・ジーニアス」で様々な職業に変化しながら幾つもの補助魔法を己の体に掛け続け準備を整え、「八欲王」に竜の如く高まる闘気を携え、近づく。
ワールドチャンピオンと魔導王の戦いの火蓋が切られようとしていた。
・〈武技・力場〉
オリジナル武技
魔力の力場と共に、盾や武器を払い魔力系魔法や神官系魔法などを逸らす武技、盾の方がより効果が高い。
元ネタはエルデンリングの戦技「トープスの力場」
・《コール・アヴァター/神の化身召喚》
超位魔法
オリジナル設定
ユグドラシルでは神話の神様やユグドラシルの神様を呼び出し、戦わせたり、何らかの加護を貰ったりする魔法。
此の世界では変質し、己の信ずる神様でも呼び出せる様になった。
例えばNPCが神の様に崇めるプレイヤーの化身を呼び出せる。