アインズは鈴木悟の協力を得て、昔のギルドメンバーを探し、新たにギルドメンバーに加入しないかと提案すると、ギルドメンバーに続々と加入が決まって行った。
昔のギルドメンバーはユグドラシルが嫌で辞めたのでなく、仕事が忙しくて辞めたり、生活時間が合わなくなったり、お金に困って生活を切り詰める為に課金することを諦めてしまい、無課金では以前の様な活躍も出来ないと泣く泣くユグドラシルを辞めた者が多かったからだ。
まあ「ペロロンチーノ」さんの更なるエロスを求めて別ゲームにのめり込んだりしたのも現実になって自由度が上がり、18禁行為も可能となったナザリック地下大墳墓に戻ったり、「弐式炎雷」さんも巨大ロボット開発ができる様になり、初めて人の乗り込む錬金生物を見た時には狂喜乱舞した物だ。
ギルドメンバーの中には死亡者も多く、生き返らせたり、寿命を遡らせたりと様々な処置を行っていた。
どうやら玉座の間でギルドメンバーになったと宣言すると、ナザリック地下大墳墓の管理メニューにギルドメンバーとして登録される事も分かり、ナザリックの者達にも忠誠を誓われるようだ。
魔導王アインズの姿にギルドメンバーの殆どが驚いていたが悟兄さんの口利きもあり、皆さんにはナザリックで落ち着いて御茶でも飲んで貰っていた。
「けっ、生き返って、お前の顔を再び見るなんてな。たっち・みーさんよ」
「ウルベルト、俺は君を殺めてしまった事を謝らないよ。あの時は撃つしか無かったんだ」
「ふん、こんな世の中、テロにでも走らなきゃ変わりゃしないてのに富裕層に媚びを売るのがそんなに上等かねぇ」
「アーコロジーには俺の妻と娘が住んでるんだ。テロリズムを未然に防ぐのは当然だろ」
黒山羊姿の「ウルベルト」さんが生き返って早々、純白の鎧を着込んだ「たっち」さんと口喧嘩しているが手が出てない所を見ると、「ウルベルト」さんが死んだ事でケリが両者共着いたとでも思っているのかもしれない。
セバスとデミウルゴスが両者の近くで口喧嘩しているのをオロオロと眺めていた。
「まあまあ御二人共、喧嘩なさらずに。此の世界は我々、ナザリックが変えていきます。ウルベルトさんも最早テロに走る事も無くなるでしょう。ベルリバーさんも復活させていますので御二人とも話されてきては如何ですか?」
「ベルリバーか、あいつには世界を牛耳る闇の巨大複合企業の情報を頂いてたんだが企業に殺されてな。事故死扱いで行方不明になっていたと思うが、よく死体が見つかったな」
「ええ、死体は河川とは思えない毒の渦の底で見つけました。探索系の魔法を使えば簡単に見つけられますが下僕達が引き上げるのに苦労しましたよ。なんせナザリックの下僕達は異形の姿をしてますし、「神秘」が少ないですからね。周辺に杭を打ち魔力を充満させて「神秘」を引き上げる事で下僕達の存在を確定させてベルリバーさんを引き上げるという大仕事でした」
「現実世界」では「神秘」の薄さでナザリックの者は顕現できなかったが、死の宝珠が儀式魔法を行う際に空間の外周に縄を張り巡らしたり、杭を打ったりして境界をはっきりさせてから行う事があることから「神秘」を上げる為に魔導杭を開発し、4隅に打ち込んで魔力を充満させてみると現実世界でも「神秘」が高まり、無事にナザリックの者が4隅内で活動できるようになっていた。
もちろん4隅内だけの活動で其処から一歩でも出ると、ナザリックの者は急激に生命力と魔力を失い、体が崩れてしまう。
また魔力は生命体から溢れ出た代物のようで、植物や動物などが一定数集まると魔力の高まりがほんの僅か上昇する事も確認した。
おそらく「現実世界」でも古代の森の中で祭祀を行う分には魔力の量も足りて、簡単な魔法も使えていたんじゃないかというのが死の宝珠からの意見だった。
こんなコンクリートジャングルじゃ、そりゃ魔力も溜まらない訳だな。
「あぁ、どうして俺は早めにユグドラシルのアップデートのダウンロードしておかなかったんだ?そうすりゃ最後の日にダウンロードのデータ量に躓いて間に合わなかったって事も無く、今頃、シャルティアとイチャイチャできたのにー!」
「黙れ、弟。お前が早めにダウンロードしときゃ済んだ話しだろ。そもそも「転移世界」に行けるのは、あんたのアバターで本体は其のままの筈よ」
「やめてくれ、そんな夢の無い話は聞きたくない。モモンガさんにシャルティアをNTRされるのは辛い、でも興奮しちゃう。これがエロゲーで見たNTRの良さだというのか」
「馬鹿め、弟」
「ぶくぶく茶釜」さんと「ペロロンチーノ」さんは、既にナザリックの異形のアバター姿でピンクのスライムと金仮面を付けたバードマンがぺちゃくちゃと喋っているのをシャルティアは申し訳なさそうにアウラとマーレはニコニコと眺めている。
他の場所でもブレインイーター姿の「タブラ」さんがアルベドとニグレドと会話している。
「アルベドよ、お前の設定はモモンガの嫁として設定していたのだから今更モモンガのお嫁になった事を謝られるのは筋違いだ。よくぞあの朴念仁の心を射止めたな。嬉しく思うぞ」
「……お父様」
「あらあら、可愛い方の妹、良かったわね」
〈ネフィリム/半魔巨人〉姿の「武人建御雷」さんがコキュートスといつの間にか酒盛りを始めているし、〈エルダー・ブラック・ウーズ/古き漆黒の粘体〉の「ヘロヘロ」さんと「ホワイトブリム」さんと「ク・ドゥ・グラース」さんが一般メイド達と戦闘メイドのソリュシャンに囲まれて一般メイド作成の際に困った事を面白おかしく話して談笑している。
他にも様々な人が創り出したNPCと語り合い、例えば「餡ころもっちもち」さんと「やまいこ」さんの女性組がメイド長のペストーニャと副執事長エクレアと戦闘メイドのユリと何やら話しているし、「ガーネット」さんは戦闘メイドのシズと「源次郎」さんは戦闘メイドのエントマと「獣王メコン川」さんは戦闘メイドのルプスレギナと忍者姿の「弐式炎雷」さんは戦闘メイドのナーベラルを隣に座らせて話し込んでいるようだった。
「さて皆さんには此れからナザリックの闘技場で戦闘訓練の後に「転移世界」の城塞都市エ・ランテルに行って貰います。其処で冒険するのも良いですし観光するのも良いでしょう。スローライフがしたいならカルネ村がお勧めです。ですが貴方たちはレベルが低く死んでしまう可能性があります。その時には貴方の創造したNPCに頼って乗り切って下さいね。階層守護者達の仕事は暫くの間は休みとするので創造主のレベルが上がるまで付き合ってあげなさい。私は冒険者モモンと名乗って活動しているので漆黒の鎧を着込んでいる時はモモンと呼んでくださいね。後、私は悟兄さんの弟として活動していくのでモモンガでは無く、アインズ・ウール・ゴウンと名乗っています。これからもよろしくお願いします」
「「はーい」」
こうして新規に加入したギルドメンバーの大半は、ナザリックの闘技場での戦闘訓練で周辺国家においても最強とされるレベル30まで鍛え上げ、ナザリックで保管された「ゴッズ/神器級」や「レジェンド/伝説級」の装備品のレベル制限が取り払われた劣化版の複製品を身に付けて冒険の旅に出て行った。
危ない時は漆黒の戦士モモンに変装したアインズが同行したり、階層守護者や戦闘メイドが手助けしたりと危険ではあるものの楽しく旅を続けている。
鈴木悟の両親や「ウルベルト」さんの早くに無くした両親を復活させて、「たっち」さんの両親や今の家族たちを「転移世界」に呼んだり、他にもギルドメンバーの無くした両親を復活させたり家族を呼び寄せて、カルネ村で受け入れ静かに暮らして貰うことになった。
悟兄さんの両親はアインズが悟の弟という事実に硬直していたが、死んだ時から成長して立派な大人になった悟兄さんとアインズの詳しい話を聞き、なんとか納得してもらった。
今ではたまに集まって人化したアインズと悟兄さんが家族と一緒に食卓を囲む事もあるくらいだ。
暫くの時が経ち、「現実世界」でナザリック地下大墳墓が会社として設立した「フンボ会社」の副社長ラナーが株取引で荒稼ぎしたお金を使って、毒が噴き出す荒れ地となった四国全域と九州全域を買取り、開拓して元の状態に戻していこうとしていた。
魔導杭を打ち続け領域を創り出し、ユグドラシルの力と分からぬように外では奇妙な大型機械を稼働させて、天幕の中で身を隠したアインズの超位魔法《ザ・クリエイション/天地改変》で毒の大地を草が生い茂る平原に変え、細かな箇所は天幕に隠れたマーレが《大地の実りを豊かにする魔法》や《土地に植物を発生させる魔法》などのドルイド系魔法を駆使して土地を人が再び住めるように改良していく。
河川も河川と思えないような色の水の濁流から澄み渡る清流へと魔法によって毒を取り除かれ、空は黒いスモッグに常に覆われ、太陽を見ることは殆ど出来なかったのが嘘のように、青空を白い雲が浮かび輝かしい太陽が辺りを照らしている。
これは魔法や超位魔法で改変した後に《毒浄化》の魔導具を各所に設置して大気を常に清浄にしていた為だ。
だが、幾ら綺麗になっても大本の企業連合が垂れ流す大気汚染や土壌汚染や水質汚染をなんとかしないと、再び綺麗になった四国や九州は汚染されてしまうだろう。
アインズはギルドメンバーの意見を聞き、準備を整えつつ其の時を待った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
宵闇の時、此の辺りは薄く煙るスモッグも無く、三日月が輝き大地を薄っすらと照らしている。
雑草が茂り、大海原の様になった草原を光学迷彩で姿を隠した数十台の多脚重戦車と空中を飛ぶ数機の無人螺旋翼機(ヘリコプター)が進む。
脚全体の裏側を地面に着け、装輪戦車に変形した多脚重戦車の後部から動力機構を内蔵した強化外骨格で全身を覆い、軍で使用される対CBR(化学/生物/核)用の灰色のコンバットドレスを身に付けた全身義体の兵員が次々に降り立ち、ヘルメット内蔵のHUDシステムを稼働させ連絡を脳内通信で取り合う。
(アルファ小隊、ブラボー小隊、全員居るな。今回の作戦は「フンボ会社」が設置した正体不明の浄化大型機械の奪取もしくは破壊だ。企業連合は自らが感知しない浄化を嫌っておられる。我々は秘密裏に内部に侵入し作業中の大型ロボット達を破壊し、浄化大型機械を奪取するのだ。最悪でも浄化大型機械は破壊せよ。以上)
顔の前方を覆う形のヘルメットに取り付けられた多機能サイバーアイが、蜘蛛の目のように幾つもの赤い目を光らせ、数十人もの人影が草原を殆ど音を立てずに走る。
作業中だった複数の大型ロボットに対して企業連合兵がジェットマシンガンを撃ち、内蔵コンピューターの助けを借りて銃の反動を計算しつつ、幾つもの徹甲炸裂弾が軌道修正して一点集中で命中するが、銃弾が炸裂した事で腹が欠けているのに大型ロボットは構わず企業連合兵に大きく両手で掴みかかろうと近づいた。
(こちら支援求む。多脚重戦車の一撃を喰らわせてやれ!)
光学迷彩を解いた数十台の多脚重戦車と数機の無人螺旋翼機が大型ロボット目掛けて榴弾を発射する。
大型ロボットの体が幾つもの砲弾を受け、弾け飛び爆発していく。
破裂して崩れた大型ロボットの体を調べ始めた企業連合兵が驚きの事実を口走った。
(こいつら只の大型ロボットじゃない。中まで金属が詰まってやがる!どうやって動いてたんだ?)
其の時を見計らったかのように大岩に偽装した布を剥ぎ取り、現代風の黒いモノクリス防具を全身に身に付け、ヘルメットは顔全体を覆う型で目の部分はバイザーで覆われている身長2.3メートルもの巨大な大男達が、振動する大剣と大型透明防護盾を身に付け現れる。
狼狽えた企業連合兵を振動する大剣で袈裟斬りに斬り飛ばし、大型透明防護盾で銃を向けた企業連合兵を吹き飛ばす。
企業連合兵達がジェットマシンガンをモノクリス防具の大男に向け、次々に発射するが魔法が付与された大型透明防護盾を正面に構えられ此方へ向けて走り寄って来る。
大型透明防護盾の防御力を抜けず、次々と徹甲炸裂弾が盾で炸裂するに留まり、近づかれた企業連合兵達に対して大型透明防護盾で数人を纏めて上から押し潰したり、振動大剣で突き刺したり、大上段から斬り抜け頭から股下まで真っ二つにしたりと各所で大暴れだ。
数十台もの多脚重戦車の関節部分をモノクリス防具を身に付けた大男達が群がって、振動大剣を振りかざして斬り飛ばし無力化していく、苦し紛れに放たれた榴弾を大型透明防護盾を逸らすことで受け流して在らぬ方向へと榴弾が飛んで行く。
逃げ出した数機の無人螺旋翼機はモノクリス防具を身に付けた大男が大きく振りかぶって射出した岩で押し潰され、鍛冶長に頼んで作って貰った特別製巨大バリスタを装備した大男達が放つ槍の如きバリスタボルトが、轟音と共に残りの無人螺旋翼機に幾本も突き刺さり、悉く塵芥へと変わっていった。
幾人かの企業連合兵をモノクリス防具を身に付けた大男が魔法で強化した鋼鉄の縄で縛り上げた後、アインズが現代版の漆黒モノクリス全身防具を身に付け天幕の中から現れる。
「さて話して貰おうか。どうして我々を襲ったのかを」
「俺達は何も話さない。皆、脳内の対拷問チップを作動させろ!」
「ふん、そんな物は役に立たない」
無詠唱で《コントロール・アムネジア/記憶操作》を発動させ、兵長の頭に手を当て覗き見る。
「神秘」が少ないせいで魔力を多く使い余分に疲れるが此の程度は織り込み済みだ。
やはり東京アーコロジーの企業連合か、「ウルベルト」さんが言ったとおりだったな。
「奴らは汚いからすぐに此方の機械を奪いに来るぞ。まあ其の機械はユグドラシルの関係者だとバレると困るから張りぼてなんだけどな」
浄化の大型機械は空気浄化用の装置にあれこれ付け加えただけの張りぼて、大型ロボットは〈アイアンゴーレム〉の一種の〈ヘビーアイアンマシーン/重鉄動像〉に外装を現代のロボットが付けた物に変えただけで、現代風の黒いモノクリス防具を全身に身に付けヘルメットで顔全体を隠して目元をバイザーで覆った大男達は〈デスナイト/死の騎士〉や〈デスアーチャー/死の弓兵〉だった。
現代風に変える為に装備品をナザリックで作成したが魔法を付与された上級装備には叶わず、劣化品を身に付けて戦っていたのだが充分過ぎる程に成果が出ている。
魔法を無詠唱で詠唱したのもユグドラシルの者と判明させて、相手に対処されてしまうのを防ぐ為に非常に有効だった。
なんせユグドラシルの者とバレると例えば〈デスナイト〉なんかは、どんな攻撃でもHP1で耐えるスキルを持っている為に止めの一撃を放てば倒せるという情報があるのと無いのとでは、〈デスナイト〉が戦いにどの程度有効なのか変わるからだ。
これらの事はナザリックの頭脳派で諸葛孔明とあだ名される男、「ぷにっと萌え」さんに提案され、徹底的にユグドラシルを思わせる様な装備品は外されていた。
「東京アーコロジーの企業連合だな」
「……」
だんまりか、無詠唱で《ドミネート/支配》を企業連合兵長に掛け、録画用のカメラに全ての計画を話して貰う。
これで大義名分が立った、後は東京アーコロジーを獲るまでだ。
・魔導杭
オリジナルアイテム
4隅に打ち込む事で領域を創りだす杭。
領域内を魔力で満たせば、ナザリックの者でも「現実世界」で活動できる。
領域の大きさは体育館ほどの大きさです。
・《毒浄化》の魔導具
オリジナルアイテム
周辺の毒気を浄化して清浄な空気に変える。