オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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エ・ランテル周辺の山賊砦

 ゴブリン部族連合の北上を防いだモモン達は、その後いくつもの依頼を解決して、ニニャと死の宝珠は順調にレベルアップしていた。

 モモン達は、やがてモモンの着る漆黒の鎧から、他の冒険者からチーム「漆黒」と呼ばれることになる。

 

 そして、モモン達は、現在、冒険者組合2階に上がり会議室で皮鎧やローブ姿の他の冒険者達と共に冒険者組合の組合長プルトン・アインザックがエ・ランテル周辺地図と砦の見取り図を机に広げて、エ・ランテル周辺に潜む山賊達が拠点にしているであろう砦の説明を受けていた。

 

「冒険者から得た情報によると山賊たちは、此処にいるらしい。女性たちも多くが攫われている。君達には、砦を占拠する山賊を協力して討伐して欲しい。女性たちを救い、山賊達は全員皆殺しにしてもらいたい。よろしく頼む」

 

 山賊を皆殺しにするには、冒険者の数隊で取り囲んで殺すのが1番効率的なのでモモンも他パーティーと組むのは問題ない。

 

 まあ報酬も良いし、断る理由も無い。

 よーし、複数の人間相手にモモンで戦うのは久しぶりだから、無傷で勝てるようにしないとな。

 モモンの戦士の修行の為に〈上位物理無効化Ⅲ〉と〈上位魔法無効化Ⅲ〉の常時発動型スキルは、OFFに切り替えてあるから油断すると攻撃に当たってしまうのだ。

 後でセキフには他の冒険者達には、ばれない様に付いて来いって事と死の宝珠に他の冒険者がいるから喋らないように言わないといけないな。

 

 数日掛けて、モモン達はゴーレム馬に乗ってハムスケは野営用荷物を運び、他の冒険者達は馬に乗り、共に昼間を過ぎた頃に山賊砦が遠くに見える位置までやって来た。

 山賊砦は、山の中腹にあり周辺の木は切り倒されて見晴らしが良くなっている。

 石造りで石塀に囲われており主塔は3階建てで、門番に二人の山賊が肩に鈴を結び暇そうに見張っている。門の前には防御柵が設置され簡単には接近できないようになっていた。見張り塔にも一人、弓矢を持った山賊が肩に鈴を結び立っているのが見える。

 肩に鈴を結び付けるのは、敵による不意打ち対策だろう。声も出せずに倒されても肩に付けた鈴が大きく鳴り響き、砦の中の山賊に敵襲を知らせる訳だ。

 

 モモンは、作戦を立て皆に説明する。

 

「まず私達のチームが正面から門番と見張り塔の山賊を無力化して砦の中へ入ります。皆さんは、砦の見取り図を見れば裏に秘密の脱出口があるのが分かります。脱出口の出口で見張ってて下さい、脱出口は狭いので一人しか通れませんから逃げて来た山賊を必ず一人に対して二人以上で当たり倒して下さい。さあ行ってください」

 

 他の冒険者は、頷くと砦裏に向け静かに移動していく、しばらくしてからモモンは声を掛ける。

 

「ニニャ、死の宝珠と協力して門番と見張り塔の2か所に強化した魔法で《サイレンス/静寂》と《スリープ/睡眠》を掛けよ」

「はい、《エンラージマジック・サイレンス/魔法距離延長化・静寂》、《ワイデンエンラージマジック・スリープ/魔法効果範囲拡大距離延長化・睡眠》」

 

 ニニャが魔法を唱えると門番二人が音も無く倒れ眠りこけている。ニニャは、続けて見張り塔の山賊を魔法で無力化しようとする。

 

「《エンラージマジック・サイレンス/魔法距離延長化・静寂》、《エンラージエクステンドマジック・スリープ/魔法距離延長持続時間延長化・睡眠》」

 

 《睡眠》を持続時間延長で強化して後回しにしようとしていた見張り塔の山賊は、塔の中に眠ったまま音もなく崩れ落ちた。

 これで山賊に見つかる心配は無いだろう。

 

「セキフ、入口に罠は無いか?」

 

 忍術のスキル〈影潜み〉でモモンの影に潜んでいたセキフは、姿を露わし片膝をついた。

 

「はっ、入口に落とし穴があります。落とし穴を作動させ破壊します」

 

 セキフが落とし穴を破壊した後、砦の門まで辿り着き、眠りこけた山賊達の喉元を斬り飛ばしていく。

 山賊の死体から握りこぶしより小さな青い光の球が生まれ、ニニャの【強欲と無欲】の【強欲】が、青い光の球を吸収している光景が偽装され、ニニャは、ただ鋼鉄の籠手を死体に向けているようにしか見えない。これは幻術で鋼鉄の籠手に偽装された【強欲と無欲】の効果にまで幻術の視覚効果が乗ってしまった副次的効果だった。

 

 セキフには遠くから砦を見張り、冒険者の手を逃れて山賊が逃げ出したら、これを隠密で殺すようにと、ハムスケには入口から逃げる山賊がいたら殺すように言っておいた。

 

「御意、畏まりました」

「殿、このハムスケにお任せを!一人たりとも逃がさないでござる」

 

 黒宝珠の杖に嵌った死の宝珠がモモンに、レベルが上がり強力になった魔法《プロトタイプエクステンドマジック・ウォリアーレベルアップⅢ/魔法試作持続時間延長化・戦士職段位上昇Ⅲ》を掛けている。

 モモンは、2本の双大剣を両手に構え、武技を唱え準備を整えた。

 

「〈武技・武器魔法付与:雷槍〉」

 

 双大剣には、黄みがかった稲妻が絡みついているようだ。双大剣に一時的に《サンダースピア/雷槍》の力を宿し、攻撃力を増大させたのだ。

 モモンは、門から頭を出し中を覗き見て山賊が何人いるかを探った。

 

 門の先は、開けた中庭に成っており、空が見え木が疎らに生えているようで、寂れた鍛冶場が隅に建っているのが見えた。

 周囲を石壁に囲まれ奥の方に上に上がる階段が見える。

 中庭の先には石壁にハムスケも通れる大きな通路があり別の空間に繋がっているようだ。

 石壁の上の通路に数人の山賊がうろついていて、上の通路の先に主塔内に入るための扉が見えた。

 

 小声でニニャに指示を出し、上の通路の数人の山賊を《スリープ/睡眠》の魔法で眠らせてから、奥へ行き階段をできるだけ音を立てないように上り、周囲に誰も居ない事を確かめてから寝転がっている山賊達の喉を斬っていく、後は見張り塔の山賊を殺せば外に出ている者は居なくなる。

 見張り塔の山賊を殺した後は、下に降りて中庭の通路の先を確認するが馬小屋があるだけで他には何も無かった。

 

「後は、主塔内の山賊共だけだ。ここからは速度が大切だ、私が敵目がけて突撃するから、ニニャは私の右側からナーベは私の左側から魔法を撃つようにせよ」

「はっ、了解しました」

「はい、ナーベさんと一緒に頑張ります」

 

「〈武技・七彩強化〉、〈武技・黒曜石剣の円陣〉」

 

 モモンは、武技により一瞬体が七色に光輝いた後に体が軽くなり、双大剣を振ると頭上を取り囲む黒く輝く3つの黒曜石の剣を創り出した。

 

 主塔内の扉を開くと、中では山賊達が暖炉の前で椅子に座り机の上にはツマミが並んでいて酒盛りをしていた。

 略奪してきた安いワインやエールを片手に燻製肉を齧っている山賊達もいるようだ。

 こちらを見て驚いて大声を上げようとしたが、もう遅い。

 

 モモンは、突撃して頭上を飛んでいた3つの黒曜石の剣が乱れ飛び山賊達を切り裂いていく、座っている椅子や酒のツマミが並ぶ机ごと、数人いた山賊達を双大剣で斬撃を何度も叩き込み切り飛ばして、モモンの両脇からニニャとナーベの《マジック・アロー/魔法の矢》の魔法が飛び、遠くの席の山賊を射抜いていった。

 

 「……新しく武技を覚えたな。このまま3階に上がり山賊の親玉を討つぞ。ナーベ、ニニャ、私に付いて来い」

 

 3人は横に並べる大きな石の階段を上っていくと、下階の騒ぎに気付いたのか山賊達が武装して降りて来た。

 

「死ねぇ、〈武技・斬撃〉!」

「〈武技・重要塞〉」

 

 モモンは、〈武技・重要塞〉で双大剣を交差して受け止め、〈武技・斬撃〉を使ってきた山賊を壁まで跳ね飛ばして周囲を見回す。

 3つの黒曜石の剣が空中を飛び交い山賊達に襲い掛かっているが、山賊達も盾を使い黒曜石の剣やナーベとニニャの魔法を防いでいる。

 

 モモンは、先程手に入れた武技を試しに使ってみた。

 

「〈武技・八光連撃〉!」

 

 モモンが、双剣による一撃を振るう刹那に、周囲の敵に八度の斬撃を叩き込む神速の武技が炸裂した。

 攻撃がばらけているが剣閃によって、数人の山賊達の手足を斬り落とし、三人の胴体が薙ぎ払われ、一人の頭を斬り飛ばしていた。

 降りて来た山賊達のほぼ全員が、蹲って傷口を抑え呻き声を上げている。

 モモンは、蹲る山賊達を斬り飛ばしつつ先を進み、主塔の最上階へ山賊長を探しに行った。

 

 最上階に上がったが誰も居ない、モモン達一行で探して見ると、高そうな椅子の裏に隠し通路への入り口が隠されていた。どうやらこれで脱出口へ行こうとしているようだ。

 モモン達は、隠し通路を通り一人しか通れない狭い階段を下りていく、やがて感覚からして1階に降りたと思われる頃に出口らしき部屋に辿り着いた。

 使われてない牢屋の中だ、牢屋の出入り口は開いていて牢屋の外に出られるようだった。

 牢屋の外に出ると、他の牢屋には怯えた女性達が下着同然の姿で震えながら隅の方に集まっているのが見える。

 

「皆さん落ち着いて下さい、助けに来ました。私達は冒険者です。此処へは山賊の首領を追って来ました。首領が何処へ向かったか何か知っている方は居ませんか?」

「ああ、山賊達なら、あんた達と同じように牢屋から出てきて、そこの看守室の方でゴソゴソしてたよ」

「ありがとう。看守室で鍵を探して来ますので、しばらく待っていて下さい」

 

 モモンは看守室に行き鍵を見つけ、彼女達を頼むと言ってニニャに鍵を渡した。

 どうやら看守室の隣に隠し通路があったようで、そこから微かに剣戟の音が聞こえてくる。

 看守室の隣の隠し通路は、石造りで出来ていて長期間に渡って使われてないのか湿っていて黴臭い気が滅入る代物だった。

 モモンは、ナーべを後ろに連れ共に隠し通路を進んで行くと、ランタンや松明を持った山賊達と、それなりに立派な身なりをした山賊長が砦裏の脱出口の出口で冒険者達と戦っているのが見える。

 隠し通路は狭くて一人しか通れないほどだ。モモンは片膝を突き屈みこんで、後ろに居たナーベに肩越しに声を掛けた。

 

「ナーベ、《ライトニング/雷撃》の魔法を山賊達の足を狙って撃て」

「はっ、《ライトニング/雷撃》」

 

 《ライトニング/雷撃》の魔法がモモンの肩越しに直線上にいる山賊を通して山賊長に放たれた。

 放たれた稲妻は山賊達の足を貫通して山賊長の足にも届いたようで、山賊長達は叫び声を上げ足を抑えて倒れている。冒険者達は、絶好の攻撃の機会だと山賊長達の首を刎ね、頭に剣を振り下ろしていった。

 

 どうやら、これで山賊達は全滅だろう。武技を解き、脱出口の出口で待つ冒険者に、私達はモモンだと一声掛けて出口を出る。

 出口では、山賊の返り血を浴びたのか血だらけになった皮鎧の冒険者達が笑いながら待っていた。

 他の冒険者達と砦内の山賊の話をしながら砦の門へ戻ると、ニニャが山賊に捕まった女性達に毛布を被せて服を着せているのが見えて来た。ハムスケは、ニニャ殿は大変だったのでござるな~とニニャと話している。

 捕まっていた女性達を他の冒険者と共に、エ・ランテルまで連れて帰らないといけない。

 とりあえず砦内に戻って、捕まっていた女性達のエ・ランテルまでの食料や必需品がないか探すとするか。




・《サイレンス/静寂》
 原作にある魔法。
 範囲内のすべての音を無差別に消すことが出来る。神官の使える隠密用の魔法。
 通常、魔力系ではないが、魔力系魔法詠唱者でも使えるように開発された物がある。
 オリジナル設定:ニニャも使える事にしています。

・〈武技・武器魔法付与:????〉
 オリジナル武技。前提武技〈武技・双武器魔法化〉
 武器に一時的に様々な魔法の力を宿す事で、武器で攻撃する際に魔法の攻撃力を加算する。
 ただし、攻撃を当てた時に、魔力と集中力を消費するので魔法より魔力を消費しないが、それでも連撃だと消費が激しくなる。
 付与すると魔法毎に視覚効果が発生する、炎の魔法だと武器が炎に包まれるなど。

 例:〈武技・武器魔法付与:雷槍〉、攻撃を当てれば武器による物理ダメージに《サンダースピア/雷槍》の魔法によるダメージが入ります。

・〈武技・八光連撃〉
 オリジナル武技。
 ガゼフのオリジナル武技である四光連斬の双剣版、つまり2倍攻撃が発生する。
 八光連撃とは、双剣による一撃を振るう刹那に、周囲の敵に八度の斬撃を叩き込む神速の武技。攻撃がばらける命中率の低い剣閃という弱点がある。

・【強欲と無欲】の吸収時の視覚効果について
 オリジナル設定。幻術や隠蔽魔法を使うとアイテムの効果についても幻術や隠蔽魔法が効くのではと考えました。
 でないと透明の呪文で隠れても【強欲】が、小さな青い光の球(経験値)を吸収する視覚効果で透明でも場所がバレてしまいます。
 なので透明の呪文なら小さな青い光の球(経験値)を吸収する視覚効果も透明になるし、幻術なら視覚効果も隠蔽されるとしました。
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