無自覚中学生芹沢さん。   作:バナハロ

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春休みはやることが一番ない休み。

 定期試験が終わり、春休みに入った。当然ながら、妹も終了式を終え、次はいよいよ二年生。

 つまり、二人とも外に遊びに行くから、少年も普通に友達と遊べる。つまり……。

 

「おーっす、やるか!」

「おーっす、やろう!」

 

 二人でサッカーをする。あれからは土日は毎回、二人でサッカーをしているため、少女の実力もメキメキと上がっていった。

 どれくらい上がったのかと言うと……まぁ見た方が早い。ちょうど、準備体操がてらにリフティングを始めた。

 両足で膝上くらいまでリフティングをすると、膝下を通し始める。その後、高く上げてヘディングでリフティングし始めた。

 それが終わると、軽く高く上げて首の後ろに乗せ、そこから強引に高く上げると、また足元に落とした。

 

「よしっ、完璧」

 

 一年生とはいえ、もう中学生。それも、春休みが終われば進級する男女なのだ。

 にも関わらず、地面につくボールを、スカートなのに高く足を上げて蹴り上げた後、頭の上でヘディング、首の後ろにボールを置いたりするし、その際は当然、中腰くらいになるので足を大きく広げて上半身を前方に倒す……などと、とても女の子がしちゃいけないポーズを平気で繰り返している。

 そして、それを見ていた少年も、特に頬を赤らめることは無い。それよりも、技術の向上を見るのに必死だ。

 二人とも、まだ体の成長期もきていないことも相まって、中々小学7年生みたいな光景だった。

 

「やるじゃん。やっぱお前、筋が良いわ」

「ふっふーん、もう君のこと追い抜いちゃったかもしれないなー」

「それはない」

 

 こっちだって、まだまだ腕を磨いている。ていうか、思った以上に早い技術向上に、こっちもネタ切れにならないように早い段階で色々と技を探しているし、それが自分でもできるように練習している。

 けど、まぁ技術が上がって来たのならありがたい。もう一つ、少女が楽しめそうなことを考えて来たから。

 

「じゃあ少しレベルアップするか」

「お、良いね。どんなの?」

「交互でリフティング」

 

 言いながら、ボールを借りてから少し距離を置く。そして、インフロントで浮かしたパスを出した。

 

「それ、地面に落とさないようにこっちに返して」

「えっ? っとっとっとっ……!」

 

 胸でトラップしてから、なんとか体制を立て直すようにリフティングをする少女。腿を使ってなんとか落ち着かせてから、足元でリフティングし……そして蹴った。

 だが、真上だけでなく狙いを定めた場所にボールを飛ばすのは、また難しいのだ。

 

「それっ……て、あっ、ごめん」

 

 明後日の方向に飛ぶボール。それを予想していた少年は、目で追いながら拾いに行った。フィジカルは弱いけど、足は速いのだ。

 追い付いて左足でトラップし、すぐリフティングを始める。

 

「……おお、すっご……」

「はい、行くよー」

「あ、待って。同じくらい変な方に蹴って」

「え、なんで?」

「追いつきたい!」

 

 ……まぁ、やってみるのは大事かもしれない。もちろん、不可能ではない位置に飛ばす必要はあるけど。そう言う調整も得意なので、少女の足の速さ的に行けそうな辺りへ飛ばしてみた。

 

「ほれ」

「おっ、来た来た……!」

 

 まるで外野フライを拾いに行くように追っていった。読み通り身体は追いついた……が、高く上がったボールのトラップを足でするのは割と難しいわけで。

 綺麗にインステップで受けてもボールはバウンドしてしまう。

 

「うわっ、とと……!」

 

 ボールはそのままバウンドしつつ転がってしまう。その後を慌てて少女は追うが……ボールは公園から出て行ってしまう。

 そう思った時には、少年の体も動いていた。

 

「ちょっ、バカお前……!」

「むおっ?」

 

 車道に飛び出す前に襟を掴んで引き止めた。夢中になり過ぎである。側から見ると「飛び出し注意!」という学校のポスターみたいな絵面だったまである。

 ボールは車に撥ねられる事なく、反対側の歩道に無事に上がったし、とりあえずセーフだ。

 

「あぶな〜……おい、ちゃんと周り見ろよ」

「お〜……」

「お〜じゃなくて。スマブラの謎観客かお前は」

「意外と力あるんだね、君」

「話聞いてんのか」

 

 片腕で捕まえられたのが、なんか力持ち感があったのだろうか? 何にしても、どこに食いついてんのか、と思わないでもない。それよりも、小学生じゃないと注意されない点を言われたことを反省して欲しい。

 

「もう少し注意してよ。お前に死なれたら、俺も一緒にサッカーやる相手いなくなるんだから」

「友達いないの?」

「いや、放課後空いてる奴なんてもういないでしょ。部活やってて」

「ふーん……じゃあ、私は?」

「超友達」

「いえーい」

「うぇーい」

 

 何故かハイタッチした。こういうノリ、嫌いじゃない。友達と放課後に遊べた小学生の時以来だ。中学に入ったら、何故か女子は肩を組んだりだとか、ハイタッチだとかしてくれなくなった。

 だから、正直嬉しい。この子は普通のノリで。

 

「さて、じゃあもっかい二人でリフティングするか」

「うん。目指せ、100往復!」

「楽勝でしょ」

 

 なんて話しながら、引き続き二人でリフティングをした。

 

 ×××

 

 少し休憩。午前中からやっていた為、お昼を食べないと親にキレ散らかされる。

 で、だ。今日は……少し大人になって、外で食べる事にした。財布にお金も入れて持ってきた。

 

「どこで食べる?」

「そうだなー……」

「安いとこだとマックとかサイゼとかじゃない?」

「お寿司が食べたい!」

「聞いてた?」

 

 回転寿司屋は確かにあるけど……でも、1000円以内で済む気がしない。せめて1500円以内を望みたいのだが……。

 

「結構かかるでしょ。寿司さ」

「お母さんからお小遣いもらったから。お昼のために」

「マジか。良いなー」

 

 そんな余裕はうちにはない。祖父母からもらったお年玉をこう言う時のために貯めてある。

 

「と、いうわけで、お寿司!」

「あーもうっ、分かった分かった。じゃあ寿司ね」

 

 仕方ない。父親も「男なら女の子の好みに合わせろ」とか言っていたし、その心はよく分からないけどそうしておくことにする。

 さて、そんなわけで、寿司屋がある駅前に移動。のんびり歩きながら周囲を見渡す。

 

「そういや、暖かくなって来たよね」

「うん。この前、アリの巣見つけた」

「あれ冬場はないんだよな地味に。俺も昔探したわー」

「砂糖とかあげた?」

「あげたあげた。超やってたそういうの」

 

 結構、虫とか調べていた。楽しいものだ、餌とかあげて群がって来る様子を眺めるのは。鯉にもよくやっていた。

 

「私あれもやったよ。カマキリの前にバッタ置いたりとか」

「あー、あれ意外とバッタの方が早く逃げちゃうんだよな」

「あ、君もやったんだ」

「今は流石に残酷すぎて出来ないけどね」

「そう? なんで?」

「いや生き物の生死を握るでしょ……」

 

 慈悲の心は少なからずある。今では、虫取りもあまりしなくなった。結構、小学生の時は飼っていたカブトムシやクワガタを死なせてしまったモノだから。

 

「てか、そっちは今でもやってんの?」

「やってないよ。虫は飼ってるけど」

「えー……どんな?」

「クワガタ! もううちのオオクワガタ、二年生きてるよ」

「は⁉︎ すごっ!」

 

 そんなに生きるモノなのだろうか、と感心さえしてしまう。カッコ良いわけだ。

 さて、そんな二人は駅の近くに到着した。だいたい、どこの駅でも周囲にあるものは決まっている。マック、コンビニ、蕎麦屋、そして……パチンコ屋である。

 二人とも、パチンコというものがどんなものかイマイチ分かっていない事もあって、好奇心旺盛なので割と興味津々に中を眺めた。

 なんか大人達が椅子に座って片手にレバーを持って台を見ている……という様子を、少女は眺めながら呟いた。

 

「そういえばさ、パチンコ屋って何すんだろうね。ゲーセン?」

「パチンコでしょ?」

「や、パチンコって何なのかなって」

「あ、パチンコジャンボの頭にパをつけると……」

「パパチンコジャンボでしょ。知ってる」

「だよね……」

 

 そんなネタが昔は流行った。あの頃はそういう言葉遊びが好きだったけど……今は全然やらなくなった。なんかくだらないし。もしかしたら、それが心の成長なのかもしれない。

 

「あ、なんか俺、大人になった気がする」

「どうしたの急に」

 

 あさひから当然のツッコミが漏れるが、すぐに意図を察したようにあさひは呟く。

 

「あ、ここ18歳未満禁止だから?」

「え?」

 

 言われて看板を見ると、確かに18歳未満禁止の看板が置いてある。確かにそういう意味でも大人になった気分だ。

 そして、好奇心旺盛で馬鹿な子達というのは「入るなと言われた場所ほど入りたくなる」ものなのだ。

 

「よし……せっかくだし、ちょっと中入ってみようぜ」

「良いね! 面白そう!」

 

 と、息を巻いて中に入ろうとした時だ。自動ドアの向こう側から人が出て来た。しかも見覚えある顔……元担任の先生だった。

 

「ふっふっふっ、勝った勝っ……ん?」

「あ、先生!」

「数学の先生じゃん」

「君らなんでパチ屋入ろうとしてんの?」

「社会科見学!」

「みんなどんなことしてんのかなーと思って」

「……」

 

 先生は冷や汗を流す。この二人は割と有名だ。精神的な成長というのは人によって違うのはわかるが、この二人はいまだに小学校三年生くらい。行くなと言われ場所に行くし、やるなと言われたことをやる。

 オフとはいえ、もし今、自分がこいつらから目を逸らせば、この二人はどこに行くのか……想像に難くない。そしたら、責任を取らされるのは自分だ。

 

「よし、お昼奢ってやる。だから、このお店のことは忘れてくれる?」

「マジっすか!」

「よっしゃラッキー!」

 

 これは少年・少女、共に助かる。特に少年は、お金を可能な限り使いたくないので、これでたらふく食べられる事になった。

 

「何食べたい?」

「「お寿司!」」

「……まぁ良いか。回る奴だからね」

 

 そんなわけで、3人で寿司屋を目指した。

 

 ×××

 

 最近では飯テロのような事件が回転寿司では多発しているから、数学担当教員である矢数先生はあまりきたくなかった。

 でも……まぁ、目の前の二人がパチンコ屋に興味を持っていた以上、見過ごすわけにはいかない。

 

「よっしゃー! 寿司なんて久しぶりー!」

「いえーいっ、中トロめっちゃ食べよーっと」

 

 店の前で二人が騒ぐ。こいつら子供だから、仕方ないと言えば仕方ない。

 

「いやいや、お願いだから加減してね」

 

 とは言ったものの……まぁ、パチンコに勝った後だ。少しくらい大盤振る舞いしても構わないだろう。

 

「その前に一つ」

「? 何?」

「私のことは先生と呼ばないように。プライベートで教員が生徒にご馳走なんてバレたら、それはそれでやばいから」

「そうなん?」

「じゃあなんて呼べば良いっすか?」

 

 聞かれた先生は、少し困ったように顎に手を当てる。どうせなら、若く見られたいものだ。

 

「じゃあ……お姉ちゃん、とか?」

「それは無理あるでしょ」

「そんなに年近くないっす。今年で32っすよね?」

「……るっさいな、わかってるから」

 

 流石にないなと思ったけど、この子達の歯に衣を着せぬ物言いは腹が立つ。素直さと生意気さは紙一重なのだ。

 

「じゃああんたらが決めて良いよ」

「じゃあ、ゴボンヅノカブト!」

「オオクワガタ東南アジア産!」

「子供二人にそんな呼ばれ方する大人ってどういう関係⁉︎ 不自然じゃない名前にきまってんでしょうが!」

 

 なんだこのバカ二人。少し考えればわかることを何故しないのか。こんなんでも、二人とも数学の試験の点数は88、86とそこそこ高いのだから困る。

 

「もっと、自然な呼ばれ方にしてくれる? 大人と子供なのに呼ばれてもおかしくない感じの」

「……先生以外の最適解が見つからないっす」

 

 少女、芹沢あさひのセリフに、それはそうかもしれないが……と、思っている時だ。少年……澤木小夜の方が思いついたように言った。

 

「あ、分かった。その先生を別のニュアンスにすりゃ良いんだよ」

「と言うと?」

「師匠!」

「天才!」

「何処が! 今時、武道の先生でも師匠なんて呼ばれないっつーの!」

 

 ダメだ、こいつらに選ばせたら一生進まない。もう自分が決めることにした。

 

「良い? 私は近所のお姉さんって設定。呼ぶときは、詩織ちゃんって呼ぶように」

「先生の下の名前っすか?」

「おしりちゃん?」

「あんた次の成績1ね」

「え、まだ始まってもないのに……」

 

 そんな呑気な話をしながらも承諾し、中に入った。

 中は空いていたので、すんなりと席に座れる。さて、そうと決まれば早速、お寿司を食べる番……。

 

「来た、バッテラ!」

「イワシー! 美味しそう!」

「あんたら渋いな……」

 

 もう少しこう……子供らしくマグロとかサーモンとか食べれば良いのに……と、思わないでもない。流石に玉子とか連発されるのは奢り甲斐がないから嫌だが。

 

「んおっ……バッテラ美味っ。お前食べる?」

「もらうー。じゃ、イワシあげる」

「あざ」

 

 しかし……と、矢数は思う。仲良いものだ、この二人。中学生と言えば、恋愛に興味が出てくる頃だろうし、二人とも可愛い顔しているからお互いに惹かれ合うのもわからなくはない。

 ……とはいえ、別のクラスなのに休みに連絡とってまで遊ぶとは、少し意外だ。

 お互い、無自覚なんだろうけど……それはそれでなんだか可愛いものだ。

 

「うおっ、えんがわ来たえんがわ!」

「私にかんぱちとって。また一貫ずつしよ」

 

 にしても……やっぱ趣味が渋い。そういうところもなんか似ている気がする。

 

「あんたら、仲良いねー」

「そうっすねー」

「俺ら、マブダチなんで」

 

 ……肩組み合ってるし。ちょっと距離近い気もする。

 

「付き合ってんの?」

「うん」

「え、マジ?」

「私のサッカーに、ここのところ毎日付き合ってもらってるっす」

「いやいや、付き合ってるってスタンスじゃないよ。俺も楽しいから」

 

 いやその付き合ってる、じゃないのだが……まぁなんか分かったし別に構わない。

 

「でも、二人クラス違うよね。なんで知り合ったん?」

「……なんでだっけ?」

「球技大会で、この人がリフティングしながら進んでるのを見たからっす! それが、カッコ良かったから私もやりたくて……それからっすね」

「あーそっかそっか」

「ほら、ボール!」

 

 元気よくボールを見せてくる二人を前に、また子供みたいな理由で……と、呆れてしまう。本当に中学生だろうか? 

 でも球技大会をきっかけに友達が出来た、と思うのならば、割とああいう学校行事も無駄ではなかったことを悟る。

 クラス一致団結、ではないが、他のあまり絡みがない生徒ととも仲良くなれるという意味では大成功だろう。

 

「今も、公園でリフティングやってたんだよね。二人で」

「そ、そうなのか……」

 

 なんか……遊び方まで子供みたいな二人だ。自分が中1の時は部活をやっていて、その帰りにプリクラとかばかり撮っていたのを思い出す。それに比べれば健康的だし、心身の成長が遅いのも良し悪しかもしれない。

 

「ていうか、この人めっちゃサッカー上手いっすよ! ホント、なんでサッカー部入らないのか不思議なくらい!」

「そうなのか?」

「まぁそうですね。テクニックならサッカー部より上手いと思いますし」

 

 そう言われてみれば、確かにサッカーは上手だった。女子バスケットの後に見に来ていたが、割と見せプレイのようなことをして敵を翻弄した上で、ゴールはサッカー部に任せたりと、中間を上手く担っていた気がする。

 なんか少女漫画みたいな出逢い方してんな、と思ってしまい、少しため息が漏れる。

 

「確かに、上手だよね。昔はやってたの?」

「うん。やってた。フリーキックうまかったんだよ。外したことあんまなかったし」

「へぇ〜、やっぱり壁の頭の上を超えて?」

「うん。カーブさせて、ゴールの左上にぬるっと入れた」

「シュートなのにぬるっとってどうやったの⁉︎」

 

 おおっと、あさひが食い付いた。そのままシュートについての説明を始めたので、微笑ましく思いながら眺める。やはり、可愛いものだこの子達は。小学生の恋愛って、こういうものなのかもしれない。中学生の恋愛では断じてない。

 

「ふふ……なんか、お前ら可愛いな」

「? なんすか急に。カッコ良いじゃなくて?」

「そうだよ。俺は可愛くないから」

「はいはい……」

 

 そういう息ぴったりなところが可愛いのだが……まぁ、自覚しないほうが尊いだろうし、気にしない。

 

「二人とも、次は同じクラスだと良いな」

「はいっす!」

「まぁね」

 

 そんな話をしながら、お寿司を食べ続けた。

 

 ×××

 

 可愛い子達だ、と思っていたのは気の所為だった。

 

「はい、俺……18皿……!」

「私は19皿」

「まだまだいけるわ! 19、皿めぇ……!」

「じゃあ私20〜」

「お前何なの? カービィなの?」

 

 なんか大食い競争を始めていた。こいつら、人の奢りだということを忘れていないだろうか? いや、いるからこそのこれだろうか? 

 

「……ていうか、そろそろ勘弁してくれない? 二人で4千円食べてるけど」

「今勝負中!」

「そうっす!」

「いやお前ら、人の金で勝負すんな。雌雄を決したいのなら、お前らがリスクを払え」

「「……」」

 

 言うと、二人とも「確かに」と言わんばかりに顎に手を当てた。

 

「それもそうか……せっかくなんだし、味合わないとね」

「仕方ないっすね。じゃあ、私の勝ちってことで」

「じゃあおれ、もう二皿食べたら終わりにしよう」

「じゃあ私は三皿」

「間違えた、四皿だった」

「五皿」

「おわんないからよしなさい。二人とも、後一皿まで」

「「はーい」」

 

 まぁでも、素直なのは良いことだ。こういう割と面倒なところは困るけど、この無自覚な二人がいつ思春期に入ってお互いを意識し始めるか、というのは正直、興味がある。

 だから……まぁ、来年のクラス替えを楽しみにしながら、とりあえずお店を出た。

 なんか休日を生徒の面倒で終わらせてしまったが、たまには良いでしょ、と思いながら、そろそろ帰ろうと二人に声をかける。

 

「じゃあ、私帰るから。あんまり遅くまで遊ばないように」

「先生もやろうよ、サッカー」

「そうっすよ。たくさん食べたんだから動かないと太るっすよ?」

「たくさん食べたのはお前らだろ」

 

 ていうか……教師を遊びに誘うとかどこまで小学生なのだろうか? 気持ちは嬉しいけど、そろそろ遠慮しないと「生徒にプライベートでお寿司ご馳走しました」なんてバレたらペナルティがあるだろう。世知辛い世の中だ。

 世の中の教員のやる気が削がれるのも分かる。流石にご馳走は別かもしれないが、ちょっと可愛がるだけで疑心暗鬼なモンスターペアレントが成績まで贔屓してるだのなんだの言い出すのだから。何処からどこまでがダメで何処からどこまでがOKなのか分からなくなって「面倒なことになるくらいならやらない方が良い」となってしまうのだ。

 まぁでも、とにかく嫌だ。

 

「……とにかく、結構だ。二人で楽しめ」

 

 お邪魔したくない。色んな意味で。比翼連理、いつまでもそうしていてもらいたい何かがある。

 それだけ伝えると、さっさと退散することにした。

 

「じゃ、またね」

 

 去っていってしまう背中を眺めながら、残された二人は顔を見合わせる。

 

「まー……しゃあないか」

「サッカーやろう、サッカー!」

「だな。次はどんな技知りたい?」

「ボールを手も足も使わずに浮かせたい!」

「それただのウィンガーディアム・レヴィオーサ」

 

 そんな話をしながら、また元気に公園に戻っていった。

 

 

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