望んでないのに救世主(メシア)!?   作:カラカラ

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新章開始です


九州奪還編
第11話:任務受諾


――提供する商品の品質を理解させることに成功したカイエン達が煌武院 悠陽達上層部と談話していた頃、西日本ではBETA駆逐部隊が中国・四国地方を奪回し、九州にいるBETA本体と関門海峡で激しい睨み合いをしていた。国連軍と日本帝国の共同作戦であるこの九州奪還作戦における国連軍の役割は鉄原ハイヴからの援軍を遮断することに専念し、日本帝国軍が関門海峡での睨み合いと、奪還したばかりの四国から最新鋭戦術機である武御雷を配備した第10斯衛大隊を中核とした二個連隊の別働隊が豊予海峡を利用して九州へ上陸し、一気に橋頭堡を確保するための電撃作戦の二正面作戦を担当していた。

 

――電撃侵攻部隊指揮官にHQから一報がもたらされる

 

『HQよりハイドラ1へ、作戦準備が整いました』

「ハイドラ1了解。――ハイドラ1より連隊各機へ、パーティーの準備が整った。繰り返す、パーティーの準備が整った。奪われたものを取り返す時だ、各員奮闘せよ」

『『『『了解!』』』』

 

――2週間後の2000年3月中旬、帝国連合艦隊第二戦隊による海上からの制圧支援砲撃を背景に大分・宮崎を奪い返す事に成功する。しかし、その代償は決して小さいものではなく、電撃作戦に参加した部隊の約2割が全損或いは大破となり、組織的な立て直しを必要となった。九州の残存BETAの7割は福岡・佐賀に居り、残り3割に関しては長崎・熊本・鹿児島に広く点在している。これは九州の阿蘇・霧島・雲仙岳・桜島等の火山地帯から距離をとった結果と考えられている。九州奪還には損耗した侵攻部隊だけでは手が足りない現状を鑑みた作戦司令部は、帝国軍司令部へ増援を要請したが、佐渡島ハイヴを抑える絶対防衛線からの戦力の抽出はもはや不可能な状態であり、帝都防衛隊は距離的事情により輸送が間に合わない(WILL駐留部隊は西日本奪還後にWILLへ派遣予定)、余剰戦力が欠いた事により戦線が膠着状態に陥ってしまった。

 

――このような状況下に頭を悩ませた榊・移住院の両大臣に下関で指揮を執っている紅蓮大佐から発想の転換をもたらす意見を得てWILLへとある連絡をいれた。

 

―――西暦2000年3月20日―――

 

「マスター、移住院さんから通信が来ました」

「ん? こっちに回してくれ」

 

 はて? 何の用かな。契約の食料はこの前しっかりと送っておいたから今すぐどうこうするような事はないはずなんだが。それに某国々の諜報機関達からの情報では、日本帝国は九州でBETA共とドンパチしていたはずだからこちらにちょっかいかける戦力的余裕はないのだけれどな。

 

『先日ぶりですな、カイエン殿』

「ええ、先日ぶりです。榊大臣、移住院大臣。ところで本日はいかがな御用でしょうか?」

『カイエン殿は現在帝国軍が九州奪還作戦を実施していることはご存知か?』

「もちろん。予定ではその作戦が終了次第、WILLへ駐留部隊がやってくるのでしたね。此方の受け入れ準備は完了していますので、いつお越しいただいても問題ありませんよ」

『実はWILLと新規の取引を行いたい』

 

 顔つきが変わったな、ここが本題か。新規の取引ね、前後の状況から言えば軍事に関わる依頼と見るべきか。

 

「どのような内容でしょうか?」

『九州南部、主に熊本南部と鹿児島のBETA掃討の戦力(戦術機108機+中隊規模の支援車両)を輸送してほしい』

 

 おや? ずいぶん過激な内容だな。てっきり軍事物資の調達かと思っていたのだが、戦闘になる可能性がある依頼ときたか、何か追い詰められているのか?

 

「報酬は?」

『引き受けてもらえるのかね?』

「条件次第ですね。契約の基本は等価交換、お互いWinWinが望ましいでしょう」

『ウム、現在支払ってもらっている食料支援の減額ではどうかね』

「それは却下です。先日成立させたばかりの条約をそう簡単に変更するのは将来に禍根を残しかねません。そういう前例は作るべきではないでしょう。」

 

 此方の食料生産量は元々過剰に作れてしまうから、此方のメリットが全くないんだよね。

 

『ではどの様な報酬であれば構わないのかね?』

「ふむ。そうですね、この2点ならどうでしょうか。1つ目、BETAと友軍戦力のデータを先払いでいただきましょう。2つ目、絹と綿の反物を各100本。これでどうですか」

『1つ目は戦闘に必要だとわかるが2つ目はそれだけで良いのかね?』

 

其れは価値観の違いだな。こちらではそれらは入手が困難なのでね。あいつらの服を作るのが厄介だったのさ。

 

「初回なのでサービスですよ。ああ、それと移住院大臣、現地でもし戦闘に巻き込まれた場合、応戦は許されるのでしょうね?」

『もちろんだ。自衛においてBETA相手の戦闘は規制する事はない。但し、土地を占領することや土地を重度に汚染することは許されない。もちろんフレンドリーファイアも極力無いようにしてもらいたい』

 

なるほど。正当防衛なら、OKということか。こちらの兵器は基本的に土地を得るための戦争に使っていた物だから、バスター砲等の一部以外は基本的に無害だから大丈夫だな。一番心配なのは友軍がショックバスターの衝撃波に耐えられるかだが、これはデータをアトロポスに解析してもらわないと何とも言えないな。

 

「確認だが、此方が攻撃の時に退避を促して従わなかった場合に発生したフレンドリーファイアは無罪と認められるか? もちろんIFFのデータもいただけると思っているが」

『戦闘に必要な最低限のデータは提供を約束する。そちらこそこちらのIFFデータを反映できるのか?』

 

 心配しているのか、或いは試しているのか。まあ、どちらでも構わないか。

 

「問題無い、こちらにもIFFはあるから入出力内容を変更するだけで対応可能だ」

『そうか、ではこちらのコードとデータを送るので確認してくれ。因に出撃までにどのくらいの時が必要だ?』

「そちらの荷物の量次第で決まるが此方は保有の輸送艦を使うから明日には準備は完了する。現場までの輸送時間も多めにみて1時間もあれば十分だ」

 

――カイエンの返答を聴いた榊・移住院両名は驚愕の表情を隠せなかった。通常この量を輸送する場合は、荷物の量から陸上輸送では1週間程度かかってしまい海路でも3~4日の時間を要する。それを準備に一日という圧倒的に短い時間で成し遂げられるWILLの実力に自身のもつ常識がガラガラと音を立てて崩れていくのを感じるばかりであった。

 

――通信を終えたカイエンはアトロポスに巡航輸送艦イールの出撃準備と入手したデータ解析を指示したあと、バスクチュアルにイールの操艦と防衛兵器として搭載する戦車(E-75)30台の遠隔制御を担当させることにした。

 

――こうして九州を舞台とした戦いにカイエンは身を投じる事となった。




このハイドラ1はType-00R(青)に載っている崇宰恭子です。

補足
E-75:F.S.S.第7~8巻に登場したバシュチェンコが乗ってた空中戦車です。
原作設定
最高速度はマッハ10とのことですが、滅多にそこまでの速度で飛行はしないそうです。
マッハ5位で地上100m(要塞級の衝角が届かない高度)を飛んだら爆撃機いらないかもしれませんね。衝撃波が爆撃になりますので\(^o^)/

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