キバッて魔入ります!入間くん   作:MTHR

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遅れてしまい申し訳ございません。
今回は原作との絡みは最初だけで、後半ほぼオリジナルと化しています。というよりタイトルが全てを物語ってますが、今回はあのフォームが登場します。

これからも亀更新になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。


9話 師団(バトラ)見学と青い狼とアメリの確信

「「ご、ごめんなさい……」」

 

 悪魔学校(バビルス)の廊下で、二人の弱々しい声が響いた。

 辺りには様々な道具のような物が錯乱し、大荷物を入れたリュックを背負った青年の上に馬乗りになった入間が、黄金の指輪を嵌めた手で青年の首を鷲掴みにしていた。

 

「あのっ、すみません……死んでる!!

 

 入間は慌てて飛び退き、その悪魔の容態を確認して、顔を真っ青にした。

 首根っこを掴まれたのは、緑色の髪に銀縁の眼鏡を掛けた細面の悪魔だ。師団(バトラ)勧誘のためのバッジを着けているあたり、恐らく上級生だろう。

 そしてそよ上級生は、青白い顔でピクリとも動かず、口の端から血を流していた。

 

「ぼっ、僕は何て事を……」

「や~、ビックリしたぁ。死んだかと思ったわ~」

 

 その時、緑髪の悪魔はハッと意識を取り戻し、口から血を吐いたまま起き上がった。

 

「あの…血が…」

「あ~、僕身体弱いんよ。大丈夫、吐血なんてしょっちゅう…」

(そ、それはそれで大丈夫なのだろうか…?)

 

 呑気に笑っている緑髪の悪魔に入間がはリアクションに困ってしまい掛ける言葉を脳内で探そうとしていると、緑髪の悪魔は入間の右中指に嵌められた金色の指輪を捉えた。

 

「って、あ~~!悪食の指輪やぁ!」

 

 入間の“悪食の指輪”を指差して嬉しそうな声を上げた緑髪の悪魔は、自分の首にある金色の首輪の、四角いプレートのような飾りを指差した。

 

「って事は、僕の首輪に反応したんやな。これも、指輪(それ)と同じ金属で出来てるから。結構貴重な魔具なんやで。他にも、色々な魔具が……って、ぐちゃぐちゃやぁ~」

「すみません!僕のせいで……」

 

 そこで緑髪の悪魔は、辺り一面に散らばっている道具に気付き、腰を下ろして道具を広い始めた。故意ではないとはいえ、自分がぶつかっませいでこうなったので、入間も心底申し訳なさそうに道具を一緒に広い始める。

 そこで、入間は『魔具研究師団』と書かれた木の看板を見つけた。恐らく、これが彼の所属する師団(バトラ)の名前なのだろう。

 

「わっ。邪魔だなぁ!さっさと退かせよな!」

「すんません」

 

 そこへ、師団(バトラ)見学で廊下を通りかかった一年の悪魔が二人やって来て文句を言い、緑髪の悪魔は軽く謝罪する。そこへ、もう一人の悪魔が顔を青くする。

 

「おいっ。その人、上級生じゃ…」

「え!ヤベっ……」

 

 連れて文句を言っていた一年生も顔を強張らせるが、ふと緑髪の悪魔の着ている制服の襟元につけられた位階(ランク)のバッジに彫られた彼の位階(ランク)を見ると、表情を一変させて馬鹿にしたような表情となっま。

 

「何だ、(ベト)かよ!驚かせやがって!」

「ダッセ!」

 

 文句を言っていた生徒が足元に転がっていた箱を蹴飛ばして緑髪の悪魔の顔に命中させると、2人は笑いながらその場を去っていった。

 入間は心配そうに、緑髪の悪魔に駆け寄って心配するが、緑髪の悪魔はあっけらかんとしていた。

 

「大丈夫ですか!ひどいなぁ、上級生なのに……」

2(ベト)やしなぁ。僕、魔力が少のうて、この首輪も魔力ためる為に作ったんよ」

「へぇ……」

「ほんでいつかは、魔力がない悪魔でも使うと活躍できる……そんな魔具を作りたいんよ

 

 何処か遠くを見るような不思議な目をした悪魔に、イルマは彼の顔を無言で眺めていた。

 やがて二人で道具を集め終えると、緑髪の悪魔は歩きだした。

 

「じゃ、僕はこれで」

 

 道行く生徒にぶつかっては怒られ、ペコペコと頭を下げながら彼はあるいて行く彼の後ろ姿を眺めていたイルマに、ピョコッと肩の上に現れたキバットが話し掛けてきた。

 

『どうしたんだ、イルマ?あの眼鏡が何かあったのか?』

「…キバット…」

『あん?』

「悪魔でも、いるんだね。……魔力がなくて困ってる悪魔(ヒト)……」

『……ま、そういうもんだろうな。白いにーちゃんみてーなエリートもいれば、緑のねーちゃんみてーな奴もいるし、アイツみてーに魔力が無くても必死に生きてる奴もいるってこった。ある意味、お前と似てるのかもな』

 

 キバットの言葉に、イルマは確かに、と心の中で頷いた。

 彼は、自分と何処か似ていたのだ。

 纏っている空気も、魔力の事で悩みながらも努力しているのだと言う所が。

 

「魔力がなくても……か」

 

 何処か嬉しそうな声色で呟いたイルマは、踵を返してアスモデウスとクララがいる場所に向かって歩きだした。

 

 

 

 

 

 上級生の勧誘が一段落すると、今度は見学期間となった。

 上級生が師団(バトラ)を紹介し、各師団(バトラ)を見学して巡り、自分にあった師団を選択する為のものだ。

 

「期限は3日!位階(ランク)昇級に関わる重要な選択だ。適当に決めるなよ、アホ共!」

 

 カルエゴの号令に、問題児(アブノーマル)クラスの面々はウェーイと返事し、師団(バトラ)の見学を始めた。

 

 入間もアスモデウスとクララといったお馴染みのメンバーと共に

 

「どの師団(バトラ)を見に行きますか?」

「えっと……ここと、ここと…あと」

 

 入間は勧誘チラシを元に目ぼしいものをリストに絞り込んでいく。そして、魔獣競技師団(バトラ)と魔術発明師団(バトラ)の下に、魔具研究師団(バトラ)という文字を見つけ、ペンを持つ手が止まった。

 そして、入間はアスモデウスとクララの三人と共に、リストアップした師団(バトラ)を見て回ることとなった。

 

 魔植物師団(バトラ)

 あらゆる魔植物を研究・育成し、薬の調合も行う師団(バトラ)で、花に囲まれて癒される様な場所だったが、クララが巨大ウツボカズラのエサにされかけた。

 

 図書師団(バトラ)

 魔界に関わる歴史書や娯楽書が揃っており、珍しい本を買ったり翻訳したりする、落ち着いていて良い雰囲気の場所かと思いきや、本の呪いでアホになった生徒が現れ、案内係の先輩が笑顔でカーテンを閉めていた。

 

 魔王師団(バトラ)

 一見魔王を目指す悪魔が日々バトルを繰り広げていそうな名前だったが、実際は魔王に関する文献を読みふけって考察する文化的な師団(バトラ)であった。

 サブノックはここに入団する事にしたらしい。

 

 黒魔術師団(バトラ)

 生け贄にされそうになった。

 

 サキュバス師団(バトラ)

 見学しようとするクララをアスモデウスが止めた。

 

 女体研究師団(バトラ)

 1年のカムイが募集していた。

 

 色んな意味で個性的な師団(バトラ)をあちこち巡り、師団(バトラ)でお爺ちゃんに調節してもらった悪食の指輪の力を試した後、喉が渇いてきた入間はアスモデウスとクララに声をかけなが、小走りに駆け出した。

 

「僕、ちょっと喉渇いたからジュース買ってくるね!」

「私が…」

「大丈夫!先に見学行ってて!」

 

 代わりに買いに行こうとするアスモデウスにそう言って、入間はジュースを買いにその場を後にした。

 

「やっぱり、魔力と評価は比例するんだなぁ。いろんな師団(バトラ)に誘われたけど、皆僕の指輪の中にある魔力に期待してるんだよね……」

 

 魔力の強弱で評価が決まる魔界の常識。

 だが、入間の魔力はサリバンから借りている偽物の力。だが、周りにいる皆はそれを入間の力だと思い込み、自分を過大評価している。

 入間自身(キバ)の力を公にすれば、もしかしたら命に関わる為に真実を話すわけにはいかないが、かといってそれを素直に受け入れられるのかと言われれば首を縦に振れない。そうやって入間は悶々としながら廊下を歩いて行くと……

 

ドガァアアアンッ!!

 

「ッ!?今の音って…!」

 

 校舎内の方から聞こえてきた轟音と生徒と思わしき悪魔達の悲鳴に、入間は血相を変えて音がしているの方に視線を向け、同時に何処からかやって来たキバットが入間の周りを飛び回る。

 

『イルマ!ファンガイアだ!!』

「よりによってこんな時に……キバット!」

『よっしゃあ!キバキバキバ~ッと!ガブッ!

 

 入間は自身の周りを飛び回るキバットをキャッチして手の甲を噛み付かせると、腰に鎖が巻き付いてキバットベルトが出現。キバットを前に突きだし、ベルトにセットした。

 

「変身」

 

 その言葉と共に、銀色に包まれた入間のシルエットが変化して行き、それが弾けた事で入間はキバに変身。両肩と右足の鎖をジャラジャラと鳴らしながら、ファンガイアが暴れる場所に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪魔学校(バビルス)の生徒会長、アザゼル・アメリは、現在様々な師団(バトラ)に所属する上級生が一年生を勧誘している廊下を、ツカツカと靴音を鳴らしながら歩いていた。悠然と歩くその姿に、上級生も一年生も思わずアメリの姿に見惚れてしまう。

 アメリがここに来ていたのは、理由としては師団(バトラ)見学の見廻りである。見学期間は1年争奪戦(ルーキーハント)程阿鼻叫喚といった騒ぎが起こることは少ないが、やはり羽目を外してしまう師団(バトラ)は少なからず存在する。位階(ランク)昇級に関わる師団(バトラ)は、それ程までに重要なのだ。

 …と、言うのは建前であり、今アメリがここを歩いているのは単にアメリ自身がそうしたかったからである。いわゆる気分転換というものだ。勿論、見廻りはちゃんとするつもりだが。

 

(まさか、イルマが私を生徒会長だと知らなかったとは……)

 

 そう、アメリが気分転換をする理由は、生徒会に勧誘していた一年、紅入間がス魔ホに送ってきたメールから、入間が自分が生徒会長であることを知らなかった事によるショックであった。自分で言うのも何だが、アメリは悪魔学校(バビルス)でかなりの知名度を誇る生徒会長だ。当然、一年生にも顔は知られているので、まさか入間が自分の役職を知らないとは予想だにしていなかった。

 しかも、師団(バトラ)の見学期間が始まっても、生徒会に入ると言った筈の(そんな事一言も言っていない)入間が何時まで経っても来ないのだ。折角、部下達と共に生徒会室を歓迎ムード全開になるように飾り付けしたというのに。

 

(生徒会長だと知られて、怖がられただろうか……)

 

 自分が世間一般的な『女の子らしい』という物から欠け離れている事くらい、自覚はしている。

 もしかしたら、生徒会長としての自分の姿を怖がってしまったのかもしれないと思うと、アメリは表情を暗くする。

 

(…って!私は何を考えているのだ!?ま、まるで私がイルマを意識してるみたいじゃないか!!)

 

 そこでアメリは立ち止まり、顔を真っ赤にして首を振る。自分がイルマを勧誘しているのはイルマがキバであるのかどうかの確信を得るために自分の側に置いておいた方がいいと考えたからだ。断じて、もっと一緒にいたいとか、初恋メモリーの感想を言い合いたいとかじゃない。ないったらない。

 そして再び見回りのために歩きだそうと歩みを進めようとした時…

 

「フ、ファンガイアだぁっ!!!」

「ッ!?」

 

 突如廊下に背後の悲鳴に似た叫び声が響き渡り、生徒達の悲鳴が無数に増え始めた。

 ハッと表情を変えたアメリがその音源の方に視線を向けると、そこには暖色系のステンドグラスの装飾をした身体にハチドリを連想させる容姿をした【モスファンガイア】が、右手にホースファンガイアが生成したものと酷似した剣を振り回して生徒を襲っている姿があった。

 モスファンガイアが壁際に追い詰めた生徒達に向けて剣を振りかぶった瞬間、アメリの髪が光輝き、閃光のようなスピードでモスファンガイアと距離を積めたアメリは、モスファンガイアの顔面に長い美脚から鋭い蹴りを繰り出した。

 

ドガァアアアンッ!!

 

『ウガァッ!?』

 

 アメリの蹴りをモロに食らったモスファンガイアは、悲鳴を上げながら吹き飛ばされて地面を転がる。

 襲われていた生徒を安全な場所に避難させたアメリは仁王立ちし、ややふらつきながらも立ち上がるモスファンガイアと向かい合った。

 

「やはり今年も出てきたか…。毎年毎年迷惑な連中だ…」

 

 毎年、師団(バトラ)の活動が活発になるこの時期はファンガイアの活動も多くなる。優秀な一年を勧誘することに夢中な悪魔達の賑わいに紛れ、こうして行動を起こすファンガイアは一定数存在するのだ。今年も例に漏れず、どさくさ紛れでライフエナジーを狙うファンガイアが現れたらしい。

 

悪魔学校(バビルス)の生徒会長として、貴様のような秩序を乱す愚者には死んでもらうぞ!」

『グゥッ!?』

 

 そういうや否や、アメリは再び地面を蹴ってモスファンガイアとの距離を積め、右足を旋回させて蹴りを放った。モスファンガイアは咄嗟に剣でガードするが、威力が強すぎた為に完全に防ぎきれず後退する。

 アメリは追撃を加えようと駆け出し、数メートル距離を縮めた地点で飛び上がり、モスファンガイアの脳天に踵落としを食らわせようとした、その時だった。

 

『グァアーーーッ!!』

「ッ!?」

 

 モスファンガイアは、全身からオレンジ色に輝く鱗粉のようなものを放出させた。その鱗粉は、並の悪魔ならば浴びるとたちまち炎に包まれ消滅してしまう炸薬鱗粉だ。

 アメリはその鱗粉に寒気を感じ、家系能力“幻想王(ロマンチスタ)”を発動して身体能力を高め、その鱗粉を防ごうとする。

 その瞬間、何かに掴まれた感触と共に、アメリの体はフワリと宙に舞った。

 

「ッ!?」

 

 体を動かしてもいないにも関わらず目の前の景色が動いていく事に目を見開くアメリ。

 景色の動きが止まり、モスファンガイアが数メートル先に見えたのを捉えた所で、アメリは自分が誰かに背中と足に腕を回されて抱き上げられている事に気づき、顔を真っ赤にさせる。

 

(こ、これは禁書で見た、“お姫さまだっこ”というヤツかっ!?)

「大丈夫ですか?」

「ひゃ、ひゃい!?」

 

 思考がピンク色に染まった所で不意に声を掛けられ、アメリは反射的に声をかけてきた人物に目を向ける。

 だが、黄色いコウモリの羽を模した黄色い複眼を持った仮面を見て、ピンク色に染まった思考は一瞬で消え去り、驚愕して目を見開いた。

 

「お前は…!!」

「…離れていてください」

 

 その仮面を被った鎧の戦士──キバは、ゆっくりとアメリを下ろしてそう声掛けると、キバは独特のファイティングポーズを取ってモスファンガイアに突撃して行き、格闘を開始した。

 

 モスファンガイアは手に持った剣を振るってキバを切り裂こうとし、キバは持ち前の身体能力と回避能力でモスファンガイアの攻撃をいなし、逆にわずかな隙を狙ってモスファンガイアの鳩尾を殴り、吹き飛ばす。

 地面を転がるモスファンガイアに、キバは追撃を加えようと走り出す。

 

『グァーーッ!!』

「ッ!?」

 

 上半身だけを起き上がらせたモスファンガイアは、口からオレンジ色の鱗粉を吐き出した。モスファンガイアに向かって走っていたことでそれを察知できなかったキバは、咄嗟に腕を交差させて身構える。次の瞬間、キバの体に振り掛かった鱗粉が火花を散らし、発生した衝撃で思わずキバは後退った。

 

「ッ、思ったより、強い…!!」

 

 キバは鱗粉が直撃した箇所を擦りながらそう呟く。すると、ベルトにぶら下がっていたキバットが声を上げた。

 

『こんな時はアイツの出番だ!』

「でも、魔界(コッチ)であの人を呼び出せるの?」

『やってみるしかねぇだろ!』

「そうだね…!」

 

 キバットの言葉にそう答えると、キバはベルト側面のホルダーからフェッスルを取り出した。そのフェッスルは何時ものウェイクアップフェッスルではなく、狼の頭部を模した様な青いフェッスルだ。

 キバットはそのフェッスルをキバットの口元に持って行き、キバットはその笛を加えて吹き鳴らした。

 

ガルルセイバー!!

 

 

 

 

 

 

 サリバン邸の何処かにある一室。部屋の中央にはモダンな机と三つの椅子があり、その椅子に座って紅茶を飲んでいたスーツを着た強面の男性は、突如部屋に響き渡った音に、紅茶のカップを持つ手を止めた。

 

魔界(シャバ)の空気でも吸いに行くか……」

 

 男はそう言うと、直ぐ様椅子から飛び出して姿勢を低くし、床についた手でガリガリと音を立てながら床に爪痕をいれる。

 その瞬間、その男──【次狼】に青い狼男のようなオーラが重なったかと思うと、次狼の体が青い狼音を模した彫刻に変化して飛び出していった。

 

『ギャオォオオオオッ!!』

 

 同時に、サリバン邸の一部から、紫色の竜の首と手足が現れた。そう、キャッスルドランだ。

 その途端、サリバン邸の外壁が捲れ、そこから姿を現したキャッスルドランが飛び立つと、断面にはキバの紋章が描かれている屋敷の上層がだるま落としのようにがストンと落下して元の形状に戻る。

 そして、キャッスルドランは次狼が変身した彫刻を、口から勢い良く発射した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレンジ色の光を纏い飛来してくる狼の彫刻を、キバは左手で掴む。

 すると、狼の遠吠えのような音と共に、次狼が変身した彫刻は更に姿を変えて行き、狼の顔を模した鍔に湾曲した刀身を持った剣──“魔獣剣ガルルセイバー”に変形する。

 同時に、ベルトにぶら下がるキバットの目が青く染まり、ガルルセイバーを掴んだキバの左腕と胸部を覆い隠すほど巻き付いていき、それが音を立てて弾ける。すると、鎖に隠されていたキバの左腕と胸は、まるで狼男の毛皮と腕を模した形状に変化していた。

 最後にキバに青い狼男の幻影が重なると、キバの黄色い複眼が青く染まった。

 

「姿が、変わった…!?」

 

 その光景を見ていたアメリは、目を見開いて呆然と呟いた。

 だが、姿を変えたキバ──仮面ライダーキバ・ガルルフォームは、アメリに視線を向けることすらなく大きく息を吸い込み、天に向かって咆哮を上げた。

 

「ウァアアアアアアッ!!」

 

 まるで野獣のような雄叫びを上げ、キバは普段よりも姿勢を低くしてガルルセイバーを構える。同時に、モスファンガイアも自身の持つ剣を構え、向かい合う。

 

『ウゥ…ウァアアアッ!』

 

 そして、先に動き出したのはモスファンガイアだった。剣を構えて構えて突撃し、キバに向かって剣を振り下ろす。

 だが、キバはガルルセイバーでその剣を受け止めていなすと、モスファンガイアの隙を狙って腹をガルルセイバーで切り裂いた。火花を散らし、モスファンガイアは地面を転がる。

 

『おのれ…!ハァアアッ!』

「フッ!」

『アァアアアッ!?』

 

 再びキバに突撃するモスファンガイア。しかしキバはモスファンガイアの攻撃をガルルセイバーで軽々と受け止めて剣を横に受け流すと、ガルルセイバーで二度三度モスファンガイアの体を斬りつける。

 

「ハァッ!」

『グアッ!?』

 

 更に追い討ちを掛けるように、キバはその場で片足を軸にして回転し、モスファンガイアの顔面に何度も回し蹴りを御見舞いする。あまりの猛攻に、モスファンガイアは成す術もなく蹴られ続ける。

 

「ハァッ!」

『ウワァアアアアアアッ!!』

 

 そしてキバはガルルセイバーを両手で持って振り下ろし、モスファンガイアの体を縦一直線に切り裂く。その一撃をモロに食らったモスファンガイアは身体から火花を散らしながら吹き飛ばされ、悪魔学校(バビルス)の壁を突き破って中庭に転がった。

 

『ウゥ…グワーーッ!』

 

 起き上がったモスファンガイアは、再び口から鱗粉を放つ。キバの強固な鎧でさえダメージを与えられてしまう強力な鱗粉だ。

 しかし、キバはその鱗粉が直撃する前に後ろに高く跳び上がって鱗粉の直撃を回避し、キバはガルルセイバーを前に突きだして構える。

 

ウォオオオオオオンッ!!

 

『ウァアアアアアアッ!!?』

 

 その瞬間、ガルルセイバーの鍔の狼の頭が口を開き、狼の遠吠えのような咆哮を放った。その遠吠えは衝撃波となってモスファンガイアに襲いかかり、モスファンガイアは地面を滑るように吹き飛ばされる。

 

『今だ、キバ!』

「うん!」

 

 キバットの言葉に頷き、キバはガルルセイバーを横にしてキバットの口元まで持っていくと、キバットはガルルセイバーの刀身に噛み付いた。

 

ガルル・バイト!!

 

 キバがガルルセイバーを両手に持って構えると、辺りが赤い霧が包み込まれて闇夜に変わり、景色は大きな満月が昇る草原へと変わった。

 驚くモスファンガイアを見据えながら、キバは仮面のクラッシャーでガルルセイバーを咥える。そして姿勢を低くしてモスファンガイアに向かって走り出し、数メートル手前で飛び上がる。

 満月をバックにし、キバは空中で体を回転させながら急降下して行き、口に咥えたガルルセイバーをモスファンガイアに振り下ろした。

 

「ウギャアァアアアアッ!!」

 

 咄嗟に防ごうとしたモスファンガイアの剣を砕き、ガルルフォームの必殺技──“ガルル・ハウリングスラッシュ”が炸裂する。

 身体を切り裂かれたモスファンガイアに青い狼男の顔が浮かび上がったかと思うと、その身体がガラスのような破片を撒き散らしながら四散し、そこかは光の球体が現れた。

 

『ギャオォオオッ!!』

『よく噛んで食えよ』

 

 そして、何時ものごとくキャッスルドランが咆哮を上げてやって来る。キバットがライフエナジーを追うキャッスルドランにそんな風に気軽に声をかけると、キャッスルドランは首を伸ばしてモスファンガイアのライフエナジーを食らう。そして大きなゲップをすると、再び翼を羽ばたかせて何処かへと飛び去って行った。

 キバは咥えていたガルルセイバーを離して手に持つと、景色が元に戻る。そしてキバは、モスファンガイアを吹っ飛ばした際に校舎に空いた大穴の向こうに佇む人物に、無言で複眼を向けた。

 

「……」

 

 その人物(悪魔)──アメリはキバが空けた穴の前に立ち、鋭い視線でこちらに視線を向けているキバの顔を眺めていた。

 暫くの間、アメリとキバは向かい合うように立ち尽くしていると、突如キバがクルリとアメリに背中を向け、地面を蹴って飛び上がる。キバは一跳び40mの跳躍力を活かして校舎の屋根に跳び移り、再び跳躍してアメリの前から姿を消していった。

 

 

 

 

 

「……はぁ~~、何とかやり過ごした…!」

『お疲れさん。そんじゃ、俺は先に帰るぜ~』

 

 ガルルフォームの機動力を活かして最初に変身した場所に戻ったキバは、変身を解除して入間の姿に戻る。壁に背中をつけて、大きく息を吐きながら腰を下ろした。キバットはそんな入間に一声掛けると、直ぐにサリバン邸に向けて飛び立っていった。

 

「うわぁ…!アズ君とクララからのメールが一杯……」

 

 ス魔ホの履歴を確認してみると、いつまでも戻ってこない入間を心配するアスモデウスとクララからなメールがぎっしりだ。正直、飲み物が買えなかったせいで喉がカラカラなのだが、これ以上心配させるのは不味いと入間は未だに疲れが残る身体を無理矢理動かし、二人の元に帰ろうとする。

 

 

ドォンッ!!

 

「ッ!?」

 

 その時、突如脇の教室から爆発が起こり、衝撃と爆煙が巻き上がった。

 

「な、なにッ!?」

「けほっ、けほっ!あ~、失敗やー。ゲホゲホ」

 

 入間は慌てて教室の方に駆け寄ると、爆煙の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 煙が晴れて見えてきたその人物の姿をみて、入間は目を見開いた。

 

「あれ?」

「貴方は……」

 

 そこにいたのは、先日ぶつかった銀縁眼鏡の悪魔が、また口の端から血を流している姿だった。

 爆発が起きた教室の横に掛けられた看板には『魔具研究師団(バトラ)』の文字、そして【アミィ・キリヲ】と書かれた木札が掛けられていた。

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 師団(バトラ)見学期間も最終日に入るなか、歓迎ムード全開に飾りつけをした生徒会室の机に座っていたアメリは、腕を組んで考えていた。

 

(…先日現れたキバが発したあの声……間違いない…)

 

 アメリの脳裏に浮かぶのは、先日見学会の賑わいに紛れて暴れまわったファンガイアを撃退した、青い姿に変わったキバの姿だった。

 モスファンガイアの攻撃から自分を助けてくれた時に掛けられた、中性的な声。あの声には聞き覚えがある……というよりありすぎた。何せ、ここ最近放課後になってから頻繁に聞く声なのだから。

 アメリは今度こそ確信した。

 キバの正体は、紅入間であると。

 

(だが、イルマがキバであったとして、何故アイツはファンガイア(どうほう)を狩り続ける?何故悪魔には一度も手を出さない?それに、何故理事長(サリバン)の孫ということになっている?)

 

 入間がキバであると確信したからこそ、次々と疑問が浮かび上がる。

 アメリは頭をフル回転させて答えを導きだそうとするが、やはり自他を納得させられるような答えは出てこない。

 

(お父様に連絡するのはまだ早いな。入間の真意が掴めるまで…せめて、初恋メモリーを読破するまでは……)

 

 下手に刺激してキバと事を構えるのは得策ではないと、アメリは魔関署に勤める父への連絡を保留にした。最後の理由は完全に私欲だったが。

 

(その為にも、イルマには生徒会に入って貰わねばな!さて、そろそろイルマも来る頃だろうし歓迎の為のお茶を用意して……)

 

 入間が生徒会に入って接触する機会が増えれば、おのずと入間の真意も見抜けるようになるだろう。頭の隅でそう考えながら、アメリは嬉々として紅茶とお菓子を用意しようとする。

 その時、アメリの懐にあったス魔ホが鳴った。取り出して画面を見てみると、入間からの電話だった。

 

『あっ、アメリさん!すみません。見学に誘ってもらったんですけど、時間がなくて行けそうになくて…』

「む!?そ、そうか。ならば仕方ないか…」

 

 折角、生徒会を飾りつけしたのにと残念な気持ちにはなったが、別件で忙しいなら仕方ないとアメリは気を取り直す。

 

「しょうがない奴だな!しかし、見学に来ずとも、入団は出来る!どうしてもというなら私が推薦を……」

『いえ、師団(バトラ)は魔具研究師団(バトラ)に入団を……』

 

 その言葉に、アメリはピシッと凍り付く。

 そして、直ぐにイルマに向けて怒声を上げた。

 

「何故そうなる!?生徒会に入ると言ったではないか!!」

『えぇっ!?いえ、言っては……』

 

 結局、入間はアメリの説明に2時間かかり、最終的に読書会の回数を増やすということで決着がついた。

 その際、アメリが「デート*1の回数を増やす」と言ったことで、デートの事を『重要な見回り』だと思い込んでいるアメリの部下達が、先日のファンガイアの剣もあって殺気立って校内を練り歩く事態に発展していた。

 

 

 

 

 

 

*1
入間とアメリの読者会の呼び名(アメリだけ)




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