キバッて魔入ります!入間くん   作:MTHR

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お久しぶりです。
他の小説に夢中になっていた事や、2月から色々と忙しい日々が続き、更新するのが遅れてしまいました。次の更新が何時になるかは作者本人にも分かりませんが、頑張りたいと思います。


10話 13冠の集い(サーティーンディナー)

師団披露(バトラパーティー)?」

 

 サリバン邸のリビングでオペラから渡されたチラシの内容を見て、入間は呟いた。

 キバットは入間の肩の上でチラシを覗き込み、オペラは台車に乗った荷物をガラガラと引いている。

 

師団(バトラ)による発表会。もとい、新入団員のお披露目会ですね催し物や出店で賑やかな行事(イベント)です」

『ほぉ~、文化祭みてーなもんか!』

「そう捉えて頂いて構いません。そして、師団披露(バトラパーティー)は一年生の親が見学に来ます。入学した子の様子を見るのに丁度良い機会ですから」

「成る程!それで……」

 

 オペラが運ぶ台車の上に積み重ねられたカメラやスピーカーといった撮影機器の山に、入間は苦笑いした。

 

「今から準備すると言って聞かなくて……」

「で、本人は…?」

「先ほどお出掛けに…」

 

 すると、オペラのまとう雰囲気が何となく真面目なものになったのを感じた入間は疑問符を浮かべる。

 そしてオペラは、機材の山を運びながら口を開いた。

 

「本日は重要な定例会議。魔界の英傑達による…13冠の集い(サーティーン・ディナー)ですので

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 広大な魔界の中央。

 荒れ果てた大地のただ中。

 止まない雷鳴の轟くその地に、その建物は建っていた。

 

 魔界のどの建物よりも高く聳え、全土を見下ろすその巨大塔の名は、魔界塔(バベル)と呼ばれている。

 始めて訪れた悪魔の多くは、その圧倒的な威容の前にすくんで言葉を失うと言う。並みの悪魔では近づくことすら許されない高位階(ハイランク)悪魔とその側近のみが立ち入ることを許された、魔界の超重要施設。

 

 そんな魔界塔(バベル)の最上階の一つ下、665階の晩餐室。

 そこに集まっているのは、魔界に棲む全ての悪魔達の頂点に立つ13人の悪魔──13冠

 巨大なテーブルを囲むように魔界の英傑達の会議(ディナー)───13冠の集い(サーティーンディナー)が、開かれた。

 

「では、これより協議にはいる」

 

 議長席に座るのは、額から触覚のような物を生やした老齢の悪魔、英傑次席 ベルゼビュート

 13冠の中でも三傑に次ぐ実力者だ。

 

 会議を始めようとするベルゼビュートに、ドレッドヘアにサングラスをかけた悪魔──天眼 アスタロウが待ったをかけた。

 

「お待ちを。まだ、人数が足りぬように思うが」

「色頭と暗帝は不在だ」

「またか!13冠の自覚が足りねぇな!」

「双方、多忙なのだ。ここは呑み込んで協議を始めよう」

 

 大柄な人狼四方筆頭 アマイモンが不満げにそう言い、ベルゼビュートがそれを宥める。

 13冠の集い(サーティーンディナー)は確かに魔界に重要な会議だが、魔界の統治を行う13冠は常日頃から多忙を極めている。この会議に置いても、全員が揃うことは滅多に無いのだ。

 

「一番の問題は食物の乱獲だ」

 

 会議が始まり、食王 ベヘモルトが真っ先ひ声を上げた。

 

「このままでは食い物が尽きて飢え死ぬ」

「いや、テメェは少し飢えた方がいい」

 

 溜め息を吐きながら喋るベヘモルトの台詞に、アマイモンはビシッと指を指しながらツッコミを入れた。

 

「金の回りも良くない。不正な物々交換が多すぎる」

「──不正と言えば」

 

 そこで、メガネを掛けた赤い髪と同化した角を持った悪魔が声をあげた。

 魔関署警備長 アザゼル・アンリ。魔界の警備局のトップであり、アメリの父親でもある男だ。

 

高位階(ハイランク)悪魔の不正渡航が増加しています。由々しき事態です」

「東方も荒れてるしなぁ。なぁ、嬢ちゃん」

「」

「フンッ。そっだらごどいわれてもわたすは知らんべや。そっちで何とかしてくんろ」

「おー、相変わらずのずーずー弁」

 

 そう言ったアマイモンの視線の先にいたのは、ゴスロリ服を着た美少女精霊主 パイモンだ。見た目とは裏腹に、話し言葉はかなりなまりが強い。

 

 魔界全土から持ち上がる問題は、増加の一途をたどるばかり。それは、魔界の統治が緩んでいる証拠だ。

 そして、その理由は魔界を統べる王──魔王の席が、何百年も“空席”になっているからだ。

 

 煮詰まった空気に、ベルゼビュートが真剣な表情で切り出した。

 

「やはり、ベリアール様。サリバン様。レディ・レヴィ様。……この三傑から魔王のを選出し、早急に魔界の統治を進めたいところだ」

「俺はベリアール様を推すね!彼はキレ者だ!」

「いや、レヴィ様だろ。知力・統率力ともに彼女が上だ」

「いーや。魔王にはズルさがねーと!」

「んにゃ。癒しでいけば、サリバン様だべ」

「サリバン様は…実力はあるが…」

「まだ10(ヨド)じゃねーしなぁ」

 

 魔王の話で盛り上がっているなかで、ドンッと机に足を乗せた金髪の青年悪魔が、彼等を鼻で笑った。

 

「ハッ。アホ臭ぇ、ドイツもコイツも……」

 

 雷皇 バール。南方の悪魔を取り仕切る猛将であり、ブノック・サブロの父の弟で、サブロとシルビアの叔父でもある人物だ。

 

「さざ波が騒いだところで、魔界には何の影響もねえっつーのによ」

「ああっ!?ロクに会議に参加しとらん若造が偉そうに…」

「会議ィ?愚痴大会の間違いだろぉ。おっさん」

「何だと!やんのかコラァ!」

 

 アマイモンが身を乗り出し、バールとの喧嘩が始まろうとする。

 メンバー達は慣れたもので、さっさと席を立って退出しようとし、これ幸いと仕事の電話をしようとする者も出てくる。

 しかし、アマイモンの言葉の暴力を悠然とした態度で流していたバールが放った一言で、全員の動きが止まった。

 

「大体なぁ、テメー等が愚痴大会をしている間に、魔界には魔王よりも優先しなくちゃならねぇ奴が出てきたって言うのにな」

 

 そう言って、バールはテーブルの真ん中に新聞紙を投げ、その一面に写った写真をみて、13冠の全員が目の色を変えた。

 

「ファンガイアの王…キバか……」

 

 ベルゼビュートが悩ましげに呟いた。

 バールが机の上に置いたのは、三傑の一人サリバンが理事長を勤める悪魔学校(バビルス)の校内新聞。その一面に載っているのは、両肩と右足に鎖を巻いた黄色い複眼の仮面をつけた鎧の戦士だ。

 新聞では『謎のヒーロー』と呼ばれているこの戦士の本当の名前は──キバ。

 前魔王デルキラは13冠の誰であっても敵わず、そんな彼の威光に焦がれた者達が13冠。彼等はデルキラの実力を魔界の誰よりも知っているからこそ、そのデルキラと対等に渡り合えた存在──キバの恐ろしさを、魔界の誰よりも理解していた。そして、この写真に写っているのが、キバの後継者であると言うことも。

 バールの言う通り、キバはある意味において、魔王よりも優先して議論する必要がある存在だった。

 遥か昔、13ある魔族の頂点に立つファンガイア族と、魔界に存在する以前から魔界に君臨している種族である魔神族と協力関係を結んでいる悪魔族の戦争が始まってから、数多くの高位階(ハイランク)悪魔を餌食にしてきたのが、ファンガイアを統べるキング──【キバ】なのだ。キバは強い。もしもデルキラがいなければ、魔界はとっくの昔にファンガイアの物になっていたであろう。

 しかし、デルキラの姿が消えたと同時にキバも姿を消し、悪魔は最高の統治者を失った代わりに、キバの歴史を闇に葬り、最大の敵であるファンガイアを、少しずつではあるが撲滅に追い込んでいるのだ。

 だが、再び魔界にキバが現れたのなら、悪魔族の優勢は一気に覆る。

 かつて、キバがいても悪魔族が滅ぼされたかったのは、キバと対等に渡り合えるデルキラの存在があったから。そのデルキラが姿を消し、魔界の治安も不安定な今、キバ()を得たファンガイアがどう動くのか、想像に難くない。

 

「やはり、魔王不在の穴は大きい……やはり、三傑のうちの誰かが魔王の名を継がなければならない。今日こそは、魔王が決まると良いが……」

 

 そう言って、ベルゼビュートは不安そうに、天井を見上げる。

 その時、アンリの懐にしまってあったス魔ホから着信音がなったことで、アンリは席を立ってベルゼビュートに一声かけた。

 

「失礼、仕事の電話をしてきても?」

「ウム、一時休憩とする」

 

 ベルゼビュートがそう言ったことで、13冠達は席を立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後。

 

「帰れない?」

 

 サリバン低にて、受話器を耳に押し当てたオペラは、サリバンの言葉を復唱した。

 

『うん。なんか人間界への不正渡航の疑いとかで…魔関署に取り調べ受けてる』

 

 受話器の向こうから、サリバンの啜り泣く声が聞こえてくる。

 夕食を済ませて入間とキバットと共にサリバンの帰りを待っていたオペラは、受話器の向こうにいるサリバンに、淡々と質問した。

 

「成る程。で、懲役は?」

『判決が早いよ!!』

 

 既に有罪が決まっている体で話すオペラに、受話器の向こうからサリバンのツッコミが飛ぶ。

 しかし、サリバンが不正渡航をしたのは紛れもない事実であるし、その上悪魔にとって最大の敵である入間(キバ)を孫として迎え入れて悪魔学校(バビルス)に通わせているのだから、サリバンの反論には説得力はなかった。

 

『ただの徴収だって!』

「冤罪なんですか?」

『勿論!…だってバレるわけないもん!

「自白してますね」

『とにかく!妙なことには違いないよ!』

 

 サリバンの言葉に、オペラは少しだけ視線を鋭くする。

 サリバンが不正渡航したのは本当の事だが、サリバンは十三冠の中でも次期魔王候補とされる大悪魔、魔関署に気取られるなんてミスをするはずがない。

 

「…入間様の()()については?」

『そこは問題ないと思うよ。ファンガイアやキバの事についてはなにも言ってなかったから』

「そうですか……」

『それで、入間くんは?さぞ心配で食事も喉を通らないんじゃ…』

「今は、キバット様と食後のゲームをしてますね」

『ゲーーーーム!!?』

 

 そう言ったオペラの視線の先では、格闘ゲームをしている入間とキバットの姿があった。互いにテレビゲームの経験など皆無だが、今のところキバットが全勝している。

 

「サリバン様を待っている間に格闘ゲームでもしようという話になりまして」

『ずるいずるい!僕も入間君達とゲームしたい!今日は無理だけど、すぐ帰るから!師団披露(バトラパーティ)には絶対行くからね!!』

「分かりました」

『だから入間くんには夜更かしさせずに暖かくして、眠る時には本を読んで上げてね!あと、遠くはなれていても愛していると入間くんに伝えてっ』

「はい」

 

 サリバンが言い終えた瞬間、オペラは二つ返事で電話を切った。

 振り替えると、入間とキバットの対戦でまたキバットが勝利したらしい。サイズ故に、コントローラーの大きさが体の半分程あるというのに、凄いテクニックである。

 

「あっ、オペラさん。お爺ちゃん、大丈夫でしたか?」

 

 オペラが二人のもとに歩み寄ると、それに気付いた入間が振り替えってオペラに質問をする。

 その言葉に、オペラは考え込むと、直ぐに無表情のまま、入間の質問に答えた。

 

「『心配するな』、だそうです」

「そっか!よかった!」

『……』

 

 オペラの答えに、入間は笑顔で答え、キバットはしばらく考えるようにオペラの顔を見る。

 

「あっ、そうだ。オペラさんも一緒にゲームやりませんか?」

「構いませんが…随分嬉しそうですね?」

「はい!今まで誰かとゲームしたことなかったので、嬉しいんです!」

 

 満面の笑みを浮かべてそう語る入間。バイト三昧で友達もキバット以外いなかった為、こうして誰かとゲームをするのが嬉しいのだ。

 そうしてオペラも参加することになり、右からキバット、入間、オペラの順でテレビの前に並ぶと、キバットと交代したオペラがバトルを開始する。

 

イルマ(アンタ)の勝ちー!』

 

「あっ、やった!勝てた!」

「…イルマ様はズルいですね」

「えっ!?ズル!?」

『イルマ、今回はオペラが正しい』

「キバットまで!?」

 

 キバットからもそう言われ、イルマは訳が分からず混乱するばかりだった。

 

 

 

 

 

「はぁ~~」

 

 数時間後、夢中でゲームをして気付けば夜の十次を回っていた為、寝巻きに着替えた入間は、ダイブするようにベッドに倒れ込んだ。

 そんな入間の顔を、キバットが羽ばたきながら覗き込む。

 

『ところでイルマ。サリバンのじーさんが帰ってこないって話だが…少し妙じゃねえか?』

「あぁ、キバット。…妙って何が?」

『あのちゃらんぽらんなじーさんが「心配するな」なんて、言うと思うか?それに、仕事が長引くならそんな台詞じゃなくて、何時くらいに帰れるのかを話すのが普通じゃねえか?』

「そ、それは確かに……でも、僕はよく知らないけど、お爺ちゃんは悪魔学校(バビルス)だけじゃなくて魔界の偉い人みたいだし、急な仕事が入って身体壊すかもしれないけど心配しないでっていう意味なんじゃない?」

『そう言う捉え方も出きるけどよ……』

「それじゃあ、お休み~」

 

 そう言うや否や、入間は布団の中に入り込んで、一瞬と言って良い程の速度で夢の世界に旅立っていった。サバイバルをして生きていた入間は、基本的にどんなところでも寝られる。最高級のベッドに入れば、こんな速度で眠りにつくのは必然である。

 安らかな表情でスヤスヤと寝息をたてる入間の様子を見て、キバットは溜め息を吐くと、入間の広い部屋の壁に掛けられたバイオリンの形をした寝床まで飛び逆さになってぶら下がる。

 

『何事もなけりゃあ良いんだけどな…』

 

 そう呟いてから、キバットも目を閉じて眠りについた。

 

 

 

 




改編する箇所が思い付かなかったので、三傑のシーンは省きました。次回から師団披露編となります。

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