サリバンと契約、そしてバビルス入学です。
かなり稚拙な駄文ですが、宜しくお願いします。
(どうしてこうなったんだろう……)
入間は今、悲しみにくれていた。
バイト先でミスをし、バイト代を減らされてしまい、それに溜め息をつきながら夜道をキバットと共に歩いていたかと思えば突然周りの空間が赤黒くなったと思えば目の前に角を生やした老人がいて、気が付いたら縛られて『売却済』という張り紙が貼られていたかと思えば、キバットと共に何処かの豪邸へと誘拐されていた。
そこへ、目の前の角を生やした老人から携帯電話の様な物を渡され、聞き覚えのありすぎる声がした。
『いやー、興味本意で悪魔召喚したら本物出てきちゃってさ。「息子をよこせば金をやる」って言われて契約しちゃった!離れていても私達はお前を思っているよ…あ、ドンペリ追加で──』
そこで電話が途切れた。
あんまりと言えばあんまりな内容に、入間の涙腺はもう崩壊寸前だ。彼らに連れ回された修羅場の経験から、大抵の事はすんなりと受け入れられる癖が身に付いてしまったが、いくならんでも
「───そして、我輩が悪魔。名をサリバンである」
そんな入間のことなどお構い無しに、威圧感たっぷりの声で自己紹介する悪魔【サリバン】。
普通ならば逃げるなり騒ぐなりするだろうが、今の入間はただ床にうつ伏せになって泣くことしか出来ない。隣にいるキバットは入間を助けようにもいつの間にか縛られており、もがくことしか出来なかった。
「…ウム、そこはもっと両親に怒るところだと思うが……」
「怒ってますよ!だから次会ったらアレ、あの…『コラッ!』って言います!」
「ウム、怒り慣れていない程があるな…」
(悪魔にまで言われてやがる…。これなら強引にでも引き剥がすべきだった)
余りにもツッコミ所の多い言葉に、呆れと同情が含まれた目を向けるサリバンとキバット。だがそんな状況がいつまでも続く筈もなく、サリバンは椅子から立ち上がり、入間とキバット、正確には入間に向かってゆっくりと歩き出した。
「まあ、暴れられても面倒だ。こちらとしてもこのチャンスは逃せん。さあ…覚悟はよいな…」
迫り来るサリバンに、入間とキバットは何も出来ない。
縛られている事もあるが、自分達では
やがてサリバンが目の前まで迫り、入間に手を伸ばす…!
「え?」
しかし、現実は想像の真逆であり、入間は高そうな椅子に座り、キバットは椅子の隣に設置されたデッキチェアに寝転んでいた。
予想外の展開に、入間は紅茶らしき飲み物をカップに注ぐサリバンに声をかけた。
「え、ええと、これは?」
「我輩特製、究極甘やかしセット」
「甘や…?」
サリバンの顔は先程のような威圧感は欠片もなく、優しそうに微笑む姿は何処にでもいるお爺ちゃんの様だ。入間とキバットはそれに戸惑う。
「実は我輩、独り身でねぇ。ずーっとあこがれだったんだあ。……『孫』を持つのが」
サリバンは片膝を付くと、入間の手を取った。
「そんな訳で入間くん!我輩の孫になってくれないか?」
「はっ!?ええ!!?」
「羨ましいんだよレヴィやベリアールの孫自慢が!!何でも買ってあげるし、でろっでろに甘やかすから!!ねっ、いいでしょ!?」
涙を滝のように流しながら悲願するサリバンに、デッキチェアから飛び立ったキバットが、困惑する入間の心を代弁するようにサリバンに問いかけた。
『おい、それって入間に拒否権があんのか?』
「入間くんの意思は尊重するよ。嫌なら断ってくれても良いよ」
拗ねたように言うサリバンに、入間は必死に悩んだ。
入間は生まれてこのかた断るなんて経験がないのだ。だが、こんな非常識な事態だし、入間には拒否権がある。ならば、断っても大丈夫なのでは……?
そう考えた入間が生まれて初めてお願いを拒否しようとしたそのその瞬間──サリバンは入間に掴みかかった。
「しかしッ!だからこそ僕は全力でお願いする!!頼む!老い先短い老人を、助けると思って入間くん!!
「ッ!!」
『あ!おい、その言葉は…!!』
THE・お人好しの入間には、弱い言葉がある。
3位『頼む』
2位『助けて』
1位……『お願い』
入間に、選択の余地は無かった。
(断れなかった……)
判子を押した契約書を両手で持って喜ぶサリバンを後ろに、入間はガックリと項垂れた。
14年にわたる英才教育で身に付いてしまった癖で今まで散々な目に遭ってきたが、今回は最大級だ。
なんとなく援護を求めて、今更だと分かっていながら入間は顔の周りを飛ぶ小さな親友に目を向けた。
「キ、キバット…」
『まあ、なっちまったモンはしょうがないんじゃねぇか?』
「キバットッ!!?」
親友から、まさかの裏切り。
再び涙腺が崩壊しそうな入間に、キバットはため息をつきながら入間の肩に手(翼?)を置き、優しく語りかけた。
『入間、考えてみろよ。
「え?あっ…」
そう言われて、入間は部屋を見渡す。先程座っていた椅子もそうだが、部屋の作りも家具も、全てが高級品だ。キバットのデッキチェアが置いてあるテーブルにあるフルーツも、いかにも高級で美味しそう…。
今までの入間の住居といえば、何処かの山奥でボロボロの布でテントを張り、そこら辺に生えている雑草や虫を捕まえて食べる生活……
(あれ?もしかして、
「さーて、そうと決まれば」
入間の中で、ここで生活するのも悪くないかと思い始めた時、突然サリバンがパチンッ!と指を鳴らした。
「わっ!?」
すると突然、部屋が一転してキングサイズのベッドが置かれた部屋に風変わりし、入間のヨレヨレの服が青い鮮やかな制服に変わった。
「なっ、ななな何ですかこれっ」
「可愛い初孫だもの。保証は万全!衣服・食事・住居そして…教育!君を
「『!?』」
「君、両親に連れ回されてろくに学校通えてなかったでしょ!?大丈夫!手続きはもう済んでるんだ!なぁに気にしないでいいよ。僕は君の
「いやっ、あのっ、ちょっ…」
「人間が入学した前例とか無いけどさ、バレなきゃ食べられる事もないよ!」
「バレたら食べられるのッ!!?」
とんでもない台詞に入間は目を剥く。
『おい!いくらなんでもそれは…』
「あのっ僕…」
この家で暮らすならまだよしとしても、流石にそれは出来ない、認められないとキバットと入間がサリバンに抗議しようとする。
「いやーでも、入間くんが良い子でよかったよもし断られたら──僕は君を今夜の食卓に出すしかないもの…」
その時、サリバンの背中から翼が生え、角も体の形も禍々しくなり、恐ろしい台詞が聞こえた……。
「あれ?何か言った?」
「『いいえ』」
二人に、選択肢はなかった。
「明日は入学式で早いからね。よく寝ておくんだよ、お休み」
「あ、あの…!」
『おい待て!言いたいことが色々と……』
入間とキバットの自室となった部屋の扉が自動で閉まり、サリバンはルンルン気分で廊下を歩き始めた。
「──気紛れにも程があります」
「!オペラ」
鼻唄混じりで廊下を歩くサリバンの前に、一人の悪魔が現れた。
赤茶色の髪に猫の耳と尻尾を生やし、執事服を着こなした、男性なのか女性なのか判別しにくい、中性的な顔立ちをした悪魔だ。【オペラ】と呼ばれたその悪魔は無表情で、しかし何処か懐疑的な目を向けた。
「悪魔の養子などいくらでも取れましょうに…。よりにもよって
「…べっつにぃ。……ま、その内オペラにも分かるよ」
そう言って、サリバンはオペラの前を通り過ぎる。
オペラはしばらく遠ざかる背中を見送った後、はあ、と溜め息をついてその場を後にした。
一方で、誰もいない廊下を歩いていたサリバンは一度立ち止まり、夜空に浮かぶ二つの月を見上げ、独り言の様に呟いた。
「……
彼の呟きは、誰の耳にも届くことは無かった。
「うっわぁ~~」
入間は校舎を見上げ、感嘆の声をあげた。
切り立った崖の最奥に構えられた悪魔学校バビルスは、外からは全容が分からない程巨大な建物だ。ほとんど登校する事がなかった入間の学校の3、4倍はあるだろう。
「じゃっ、新入生はあっちね。頑張って!」
サリバンに促されて、入学式と書かれた看板の前でオペラに写真を撮ってもらうと、サリバンは手を振りながら走り去っていった。老い先短いとかっていたが、嵐のように元気なおじいちゃんである。
「あの、キバット…」
『まあ、あのじいさんには色々言いたいことがあるが、取り敢えず頑張れよ』
なんとなく、隣に立っていたキバットに声をかけ、キバットはいつもの調子でそう返した。同行はしないようだ。まあ彼は新入生ではないし、喋る蝙蝠なんて見つかったら騒ぎになるかもしれないのだから仕方がないと入間はガックリと肩を落とした。
『いいか入間。今はじいさんにぶっかけられた香水で誤魔化しているらしいが、それでも100%安全とは言えねぇんだ。バレないように行動して、危険が迫ったら俺様を呼べ。良いな!』
「う、うん!」
最後にキバットからの進言に、入間は真面目な表情で頷いた。
確かに、入間が人間とバレたら悪魔に食べられてしまう。ならば誰にも気付かれない様に、誰から注目されないようにしなければならない。
(僕は絶対に目立たないようにしなくちゃ!)
その決意を胸に、入間は悪魔学校の校舎に向かって一歩を踏み出した。
(どうしてこうなったんだろう…)
バビルスの中庭で、入間は短時間で我が身に降りかかり続けた不幸を嘆いた。心中の台詞は冒頭と全く同じである。
体育館で行われた入学式で、右も左も前も後ろも悪魔だらけの中で空気となっていようとする入間だったが、理事長挨拶でまさか祖父となったサリバンがバビルスの理事長であると判明し、しかも理事長挨拶なのに孫自慢して入間の話を持ち出し、その上先程撮った
しかも、本来入試首席がする筈の新入生代表挨拶をサリバンがプログラムを書き換えて入間がする事になり、流されるまま壇上に上がった入間だが、ノープラン過ぎる為に硬直していた中、先程の拡大写真の裏におじいちゃんのメモが書かれていたのでその内容を読み上げると、一気に大歓声が起きたのだ。それもそのはず、入間が読み上げたのは『禁忌呪文』であり、噛んだり読み間違えただけで手足が爆散するのだ。しかも効果はその日1日転ばなくなるという超絶ショボい効果だった。
そして、悪魔学校の廊下でトボトボと歩いていた中で、入間は薄桃色の髪に白い高級そうな制服を着た悪魔に中庭に呼び出され、開口一番に燃える火球を投げつけられたのだ。
「私はアスモデウス。……先の入学式で、代表の挨拶を
手に炎を持って入間を冷たく見下ろす彼の名は【アスモデウス・アリス】。火炎系の魔術を得意とし、その家系は厳格で、破壊と美徳を司り、礼儀を重んじ、バカにされると即プッツンする。
「先の挨拶……君が選ばれたのは、明らかに理事長の依怙贔屓だ!呪文も理事長の入れ知恵のパフォーマンスだろう!私は……実にくやしい…!」
(あ、謝った方がいいよね…?)
アスモデウスの怒りは正当だ。入間の意思では無いとは言え、代表挨拶を依怙贔屓でやってしまったのは事実なのだから。
だが、入間の謝罪の言葉よりも早く、アスモデウスの言葉が響いた。
「晴れ舞台を穢された私には……君が優秀な悪魔なのか、確かめる権利がある!…なあ!?」
その言葉と共に、中庭に歓声が沸き上がった。
入間が辺りを見回してみると、いつの間にか校舎塔の回廊に、大勢の悪魔が入間とアスモデウスの姿を観戦していたのだ。
「いつの間に、こんなギャラリー……ッ!?」
「私が呼んだ。さあ、
その言葉と共にアスモデウスは再び火球を放ち、決闘が始まった。
……20分後。
悪魔学校の中庭、爆煙が漂う中で、膝を付いてゼェゼェと息を切らすアスモデウスと、
「なんっ……きっ、貴様……。何故、当たらない……!?」
「す、すみませんすみませんすみません!」
息を整えつつ怨嗟の声を出すアスモデウスに、入間は何度も頭を下げて謝った。
約20分間、入間はアスモデウスの攻撃を避け続けたいた。
何故、そんな事が可能なのかと言うと、彼が
入間は幼い頃から、入間は
そして、養父母に連れ回された経験と、彼のお人好しから来る平和主義から、「危ない」「怖い」「痛そう」というものを避けることに関して、彼は達人的だった。
その時、ギャラリーから声が聞こえた。
「
「なに?それってつまり…」
「手を出すまでもないってこと?」
「スゲー」
どんどんざわめきは広がり、アスモデウスの目は鋭さを増して入間を睨み付けた。
「私など……攻撃するに値しない、ということか……ッ」
「いえいえいえいえ!!ぼ、僕なんてホント、虫けらみたいなもので」
首を振って否定しようとする入間だが、
「てめーは虫けら以下だとよ!ヒューヒュー!」
「さっさと尻尾を巻いてにげろとさ!ヒューヒュー!」
「ち、違うんですッ!!」
どんでもない解釈をされ、必死に弁明しようとする入間だったが、もう遅かった。
「ッッッなんたる侮辱!!!」
堪忍袋の尾が切れる音がすると、アスモデウスは両手をクルリと回し、激しく燃える炎の剣を作り出した。
「魔術が効かぬなら、武術で捩じ伏せるのみ……!!八つ裂きにしてくれるッ!」
「ちょっ、待ッ」
炎の剣を手にして一直線に向かってくるアスモデウスに、入間は大きく反射的に地を蹴って、アスモデウスの頭上を飛び越えた。
「キャアアァ!」
その時、女の子の悲鳴が聞こえた。
入間が咄嗟に振り替えると、アスモデウスが向かう先には、金髪の女子生徒がいたのだ。
アスモデウスは怒りで前が見えておらず、そのまま女生徒に突っ込んでいく。
入間は直ぐに後ろからアスモデウスの腰を抱え込んだが、勢いが止まらず二人まとめてグラリとバランスを崩した。
(た、倒れ…!)
倒れる。そう思ったとき、入間の体がフワリと浮いた。
何事かと目を見開く入間だったが、直ぐに三十分ほど前の、新入生代表挨拶直後の記憶を思い出した。
『成功すると、その日1日、転ばなくなるよ』
禁忌呪文の効果で、入間は転ぶ事が出来ず、アスモデウスを抱えたままフワリと宙で回転をした。
ドシャァアアアッ!
中庭に、盛大に砂埃が舞った。
騒ぎに駆けつけた教師や生徒会の役員、そして大勢の悪魔の視線の先で、ゆっくりと砂埃が晴れていく。
後に、この決闘を見たものは語る。
そう、それはそれは見事な……
ジャーマン・スープレックスであったと──…
──入学式で禁忌呪文を詠唱し、首席の頭をかち割る!
──
入間の悪魔学校の入学式は有事に終わり、翌日の校内新聞には入間がアスモデウスの頭をかち割った写真が一面として載せられたいた。
「いやぁ~、流石わが孫!幸先いいねぇ入間くん!」
『どうすんだ入間。空気どころか、お前もう一年生で超有名になっちまったぞ!』
「どっ、どうしよう!あんな酷いことしちゃって……謝りにいかないと……」
理事長室で、引き伸ばしたポスターを前にはしゃぐサリバンと入間の周りを飛び回るキバットだが、入間はそれすら耳に届かず、己がしてしまった事への罪悪感に頭を抱える。
その時、理事長室の扉がバンッ!と開かれると、薄桃色の髪をした悪魔が入ってきた。そう、アスモデウスだ。アスモデウスはそのまま無言でツカツカと入間の前に歩み寄ってくる。
「ア、アスモデウスくん…」
入間が言うより早く、ガッという音が床から響き、入間はビクッと肩を震わした。
キバットは既に何処かに隠れており、サリバンとオペラが見守る中でアスモデウスが取った行動に、入間は目を見開いた。
アスモデウスは、床に片膝を付いて胸に手を当ており、俗に言う敬礼をしていたのだ。
困惑する入間を他所に、アスモデウスはカッと目を見開き、口を開いた。
「魔入りました!入間様!!」
「!?」
「先の決闘…!あれだけ自分に有利な状況での敗北に、もはや文句のつけ様もありません!!」
「!?」
「加えて、気を失ったこの身を医務室まで運んでくださったのこと。このアスモデウス、言葉に出来ぬほど感激いたしました!」
「!?」
「敗者は勝者に従うのが悪魔の習わし!よって!!」
アスモデウスは入間と目を合わせる。
まるで、王に忠誠を誓う騎士のように──
「この身全てを捧げ、入間様の学園当地に尽力致します!早速、新入生全員を配下に収めましょう!」
先程の冷たい表情から一転して、人懐っこい笑みを向けるアスモデウスに、入間の顔から血の気が引いてゆき、髪と同じ色になるまで青ざめる。
「さあ、入間様!まずはだれから斬りましょうか!?ご命じください!」
「入間くん!この写真学園HPのトップ画面にしていい!?」
「やめてください!!」
やんややんやと騒ぐ
紅入間(14)、悪魔学校入学。
配下1名、確保!
殆ど原作通りに終わりました。
アズとの決闘でキバに変身するのもアリかと思いましたが、どう考えてもオーバーキルですし、入間くんも一般悪魔にライダーの力を使うとは思いませんので。後、個人的にジャーマン・スープレックスのシーンは好きなので。