キバッて魔入ります!入間くん   作:MTHR

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専門学校の方に身を入れていたら、いつの間にか評価バーに色が着いていました。こんな行き当たりばったり小説を評価してくれた方々には感謝しかありません。


今回はクララの登場です。
使い魔召喚の話ですが、改編する所がなかったので飛ばしました。
今回は、原作とやや違った展開になっています。


2話 珍獣の少女

 

 入間がサリバンの孫となり、悪魔学校(バビルス)に入学してから2日が経った。

 間の1日目にも入間の学校生活は有事に終わっており、バビルスではもはや入間の名を知らない者の方が少ない程である。アスモデウスを共に廊下を歩く入間にチラチラと畏怖の目を向ける悪魔達に、ニコニコと嬉しそうに歩くアスモデウスとは対照的に入間は鬱蒼とした気分だった。

 

 バビルスに入学した翌日、入間達新入生は『使い魔召喚』という魔獣を呼び出して使い魔として一年間の契約を行い、召喚した使い魔の質で生徒の位階(ランク)を計るというバビルスの伝統行事が行われていた。

 使い魔召喚の儀式の担当官の名は【ナベリウス・カルエゴ】という悪魔で、デキが悪い生徒は即退学にするというかなり厳しい教師で、自身の三大嫌悪(喧しい、無節操、マイペース)を凝縮したサリバン(ミスター適当)の孫である入間が少しでもヘマをしたら即退学にしてやると、完全な八つ当たりをしようとしている教師でもあった。

 

 使い魔召喚の儀式は、カルエゴの印が入った羊皮紙に血で丸を書き、魔法陣の中へ入って蝋燭に羊皮紙の中央をくべると、煙が形を成して使い魔になるという物であり、生徒達は角の生えた鷹やイカした小さな猿、緑の形容しがたい生物などが次々と召喚され、アスモデウスは角と翼の生えた大蛇(ゴルゴンスネーク)を召喚し、遂に入間の番となった。

 

 悪魔でない入間に使い魔が呼べるのかと思ったが、その時に入間は自分が退学となって合法的に学校に通えなくなり、食べられる危険性もなくサリバン邸で暮らすだけだと、思わぬ所でカルエゴと思惑が合致していたのだった。

 

 だが、『召喚』とは悪魔が魔獣を使役する儀式であり、もしくは人間が悪魔を使役する儀式である。つまり、カルエゴの紋章が入った羊皮紙を使って半分人間(・・・・)の入間が使うと言うことは、カルエゴが入間の使い魔として召喚されると言うことであり、カルエゴは召喚されると同時に白くてモッフモフの小さな鳥の姿にフォルムチェンジしたのだ。

 結果として、契約解除は不可。カルエゴは自宅で寝込み、入間の位階(ランク)は測定不能。入間は『悪魔を使い魔にした恐怖の悪魔』として、更に悪名を轟かせることになってしまったのだった。

 

 そして今日は、授業で使う教材の配布日であり、入間は配布物のメモを手にして内容を読み上げる。

 

「悪魔の基礎、呪術、薬学…拷問学……」

「実技が楽しみですね!」

「えっ!?あっ、そ、そうだねアズくん…」

 

 良い笑顔でそう言ってくるアスモデウスに、入間は苦笑い気味に答える。やはり、悪魔と人間の価値観には大きな隔たりがあるようだ。

 因みに、『アズ』とはアスモデウスがそのように呼んでくれと頼まれて呼ぶようになった呼び名だ。

 

 そうしている内に配布室教室の前に着くと、なにやら教室内からガヤガヤと騒がしい音がして、入間は困惑しながら、アスモデウスは警戒しながら教室を覗き込むと……

 

「ン、ローゥリングーーー!!」

 

 突然、何かが物凄い勢いで転がりながら、入間とアスモデウスの前を横切ったのだ。

 よく見てみると、その何かは悪魔だった。まるで連続前転のように転がっていき、その先には教材をいれてあるであろう段ボールが山積みになって置かれている。

 そして……

 

 

バコーーーンッ!!

 

 

 まるでボーリングのピンのように、段ボールは空を飛び、煤煙が起き、墜落した段ボールがグシャッと潰れ、教室は阿鼻叫喚である。

 なにが何だかわからない入間は、取り敢えず状況を確認しようと歩を進めとうとする。

 

「ストラーイク!!あっはははは!!」

 

 すると、大きな声で笑いながら倒壊した段ボールの山から飛び出してきたのは、羊のような角に薄緑色の髪をした悪魔の女の子だった。スカートにポケットがあり、奇妙な形状のスリッパを履いている。バビルスの女子制服を着ているので、恐らく新入生だろう。

 

「大丈夫…?」

「!いけませんイルマ様!話し掛けては…」

「えっ?」

 

 少女の安否を確認しようと駆け寄って手を伸ばす入間をアスモデウスが止めにはいるが、一歩遅かった。

 

 入間が少女に顔を向けると、話しかけてもらったのが嬉しいのかキラッキラした目で入間の顔を覗き込んだかと思うと、突然の目の前にズイッと顔を近づけ、早口言葉のようにツラツラと喋り始めた。

 

「あたしクララ!右足がコナーで左足がマーフ!使い魔はファルファル!あんね!教材取ろうとしたの!でも勢い余って突っ込んじゃった!物が積んであると、バコーンてやりたくならない?なるよね!あ、飴ちゃんあげる!もっかいやるから見てて見てて」

「コラコラ積むな積むな!」

 

 一方的な自己紹介が終わった途端に歌いながら段ボールを積み重ね始めるクララと名乗った少女を、教員が慌てて止めようとする。

 困惑する入間に、アスモデウスがコソッと耳打ちした。

 

「ウァラク・クララ。かなりの変人と有名です。懐かれると面倒なので皆近づきません。中にはちょっかいを出すものもいますが、絶対に関わらない方が良いですよ」

「そ、そうなんだ…」

 

 確かに、段ボールを積み上げて再び自分の体でボーリングしようとしているクララを見れば、彼女もかなり癖が強そうだ。

 ここはアスモデウスの言葉に従おうと、入間はしっかり頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……2時間後。

 

「も……ムリ……」

「元気、ペコペコ!?」

 

 入間とアスモデウスは中庭の芝生にで仰向けになって倒れていた。

 段ボールを積み上げて再びボーリングしようとするクララは教師に追い出され、クララに懐かれてしまった入間とアスモデウスに教師から後は任せた!と押し付けられ、三人仲良く(?)中庭に放り出されたのだ。

 その後、クララは入間を『イルマち』、アスモデウスを『アズアズ』と呼んで魔々ごと(魔界のおままごと)をしようと言い出し、逃げようと進言するアスモデウスに戸惑っていた入間にクララが『お願い』と言ってしまわれ、入間は魔々ごとに参加、入間から『一緒にやろ』と言われたアスモデウスも参加することとなり、牙の生えた本から逃げまわったり、クララの作った禍々しい煙を放つ料理を出されたり、クララがアスモデウスを馬にしたりと、2時間ぶっ通しで遊び続け、流石の入間とアスモデウスも体力が底を尽きたたのだ。

 

 そんな二人の様子を見たクララは、突然スカートのポケットを叩いた。すると、まるでドラ○もんの四次元ポケットのように、ポケットからジュースが入ったペットボトルが飛び出してきたのだ。

 

「はい、ジュース!お菓子もあるよ!」

「あ、ありがとう…それって……?」

「これ!?私の家系の特技なの!見たことあるもなら何でも出せるよ!」

 

 そう言いながらポケットから蛇のようなオモチャと三ツ又の槍を取り出すクララに、入間は前にアスモデウスから教えて貰った事を思い出した。

 魔界には家系魔術と呼ばれるものがあり、誰にでも扱える物でなく、血筋によって使えると言う特別な魔術だ。

 ウァラク家の家系魔術は“呼び出し(トイトイ)”。能力は彼女が説明した通りの物だ。

 

「おや?ウァラクじゃないか」

「ホーちゃん!」

 

 すると突然、中庭を囲んだ回廊から声が響いた。

 振り向くと、そこには隣に女子生徒を侍らせた男子生徒がこちらを見下ろしており、クララが男に向かって駆け寄って行った。

 

「へぇ、飼い主(・・・)が増えたのかい?」

「うん!」

 

 クララからホーちゃんと呼ばれた生徒がクララの頭を撫でているが、入間にはまるで、ペットでも扱うかのように見えていた。

 

「ま、いいか。いつもみたいにジュースくれないか?」

「うん!」

「ありがとう。それじゃあ」

 

 そう言われたクララは、ポケットからジュースを二本取り出すと、それを男に渡し、受け取った悪魔はもう用はないと言わんばかりに女生徒を連れてさっさと何処かへ行ってしまった。

 

 それを見ていた入間は、キョトンとして目を瞬いた。

 

「……今のって」

「あのね!ああやって、何かあげるとね!喜んでくれて、たまーに、一緒に遊んでくれるの!」

「それって…」

「でもね!こんなにちゃんと遊んでくれたのは、イルマち達が初めて!だからね……あのっ。また……一緒に、遊んでくれる……?」

 

 あせあせと照れくさそうに尋ねるクララに、入間は笑顔で答えた。

 

「……うん!」

「やめましょう、イルマ様……!アホがうつります……」

「あっ、アズアズ復活した!?遊ぶ!?」

「きょっ、今日はもうやめとこうか」

 

 取り敢えず、今日はここでお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、入間達3人は数日間、休み時間に中庭に集まって遊ぶようになった。

 クララのする遊びは奇想天外で命懸けだったが、同年代の子と一緒に遊ぶなんて一回もなかった為、クララとの時間はとても楽しいと思えた。

 だが一つ、クララは遊びが終わると、いつも決まってジュースやお菓子を出してそれを入間とアスモデウスに渡していて、貰う度に、入間は違和感を感じていた。

 

「…ねぇ、キバット」

『ん?』

 

 中庭に設置されたベンチで、クララから貰ったジュースのペットボトルを眺めながら、入間は背坂の上にとまっているキバットに、ポツリと語りかけた。

 

「…義父さんと義母さんから『貰えるもんな何でも受け取れ』って言われてきて、つい貰っちゃったけどさ……。やっぱり、一緒に遊ぶのに、こういう風に物を貰うのは違うと思うんだけど……キバットはどう思う?」

 

 入間とキバットは幼い頃からずっと一緒にいたが、一緒に遊んだことはない。遊ぶ余裕がなかった事や、体格や精神年齢に大きな差があったからだ。だからこそ、入間は何か悩んだ時は、こうしてキバットに相談するのが常だった。

 

『そんなの、決まってンだろ?』

「え?」

『俺様が今こうしてお前の話し相手になってやった時、俺様はお前に報酬を求めたか?お前は俺様に何かを望んだか?違ぇだろ。誰かと仲良くなったり遊んだりすんのに、報酬も損得も関係ねぇんだよ』

「……そっか、そうだよね。よし…!」

 

 キバットと話している内に、入間は何か思い付いたのか、サリバンから貰ったス魔ホを取り出し、ピッピッとメールを始めた。キバットはそれをしばらく眺めていたが、ふと後ろから物凄いスピードで何かが突撃してくる音が聞こえ、静かに羽ばたいてその場を後にする。

 

「ドーンッ!!」

 

 その突撃してくる何か──クララは、ス魔ホを手にしていた事で後ろに気付かない入間を突き飛ばし、入間は目の前の茂みに逆さまに突っ込んだ。

 

「あっははは!命中!」

「クラ…」

「あのねーこれね!私の好きなお菓子!あとジュースと本とー、ぬいぐるみもあるよ!全部あげる!イルマちが欲しいもの、何でも出すよ!」

 

 笑顔でジュースやお菓子やオモチャを差し出してくるクララ。だが入間には、その笑顔は無理をしているようにしか見えない。

 

「だからねっ!だから…また、私と一緒に、遊ん…」

いっ、いらない!

 

 入間の言葉に、クララは固まった。

 

「…あっ、このお菓子きらい?なら」

「ち、違うよ。ごめんクララ。僕…」

 

 別のお菓子を出そうとするクララを止めると、入間は思い切って口を開こうとするが、それよりも前に大きな声が中庭に響いた。

 

「う゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 

 大粒の涙を流して大声で泣き始めたクララに、入間は慌ててクララを宥めようと声をかける。

 

「ちょっ、クララ」

「まだだッ、い゛つもそう!呆れられてもう遊んで貰えない!!」

「ちがっ、そうじゃなくて…」

「いらないって言った!!」

「聞いて…」

「じゃあダメじゃん!私、バカだからねっ、遊んでもらうには何かあげなきゃダメなのッ、迷惑料なのッ!!」

 

 泣きながらそう叫ぶクララの両手を、入間は咄嗟に掴んだ。

 

「そんな物なくたって、僕は君と一緒に遊びたいよ!」

 

 予想外の言葉に、クララは再び硬直し、入間はクララの手を握ったまま、笑顔で語りかけた。

 

「だってクララと遊ぶの…楽しいもん!」

「…ほんと!?」

「ほんとだよ!そのっ、つい貰っちゃったけど…でも、やっぱり一緒に遊ぶのに贈り物はいらないと思う。クララは色々やりすぎるけど…僕は遊ぶの下手だから、きっとやりすぎ位が丁度いいんだ。だから」

 

 ポツポツと確認するように語っていく入間。

 最初は勢いと、「お願い」と言われたから遊んでしまったが、途中から段々と楽しいと思えるようになり、最近では休み時間に遊ぶのは一つの楽しみとなっている。だからこそ、クララがくれるお菓子やジュースが迷惑料だなんて思わないし、そんな物を受け取ろうとも思わない。 

 

「僕たちと、また一緒に遊んでくれる?」

「ッ!……うんっ!!」

 

 その言葉に、クララは力一杯頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、ウァラク。最近付き合い悪いじゃないか。またジュースお願い出来るか?」

「!ホーちゃん」

 

 初めて遊びに誘われたクララが大はしゃぎし、そのまま二人で談笑していると、聞きなれた声がした。

 目を向けてみると、そこにはホーちゃんと呼ばれていた悪魔がいた。あの時侍らせていた女悪魔は今は居ないようだ。

 

「ちょ…」

 

 いきなり貢ぎ物を要求する悪魔に入間が文句を言おうとした時、突然クララがスクッ、と立ち上がり、ズンズンと目の前の男子悪魔に歩み寄る。

 入間が目を向けると同時に、クララは振り向いて…

 

「見てて!」

 

 ニヤリ、とイタズラっぽい笑みを浮かべるクララに、何となく予想が着いて苦笑いする入間。

 そんな事も知らずに、ホーちゃんと言う悪魔は歩み寄ってくるクララに話し掛けた。

 

「冷たいのを一本。それと、それ以外にも君に用事があっ……て?

 

ゴッ!

 

ズドォオオオンッ!

 

 クララに用事があると言いかけた時、クララが家系能力(トイトイ)で呼び出した自動販売機が顔面にぶち当たり、ホーちゃんは一瞬にして押し潰された。

 自販機の下敷きとなったホーちゃんに、クララは仁王立ちでムンッと胸を張り、自信満々に言い放った。

 

「お金入れたらいっぱい飲めるよ!!バイバイ!」

「アハハ…やっぱりやりすぎ…」

 

 ニコニコと笑うクララに、思わず苦笑いする入間。

 

 だが次の瞬間、バァアアンッ!と大きな音がして、入間とクララが咄嗟に音源の方に目を向けると、なんと今さっき自販機の下敷きにされたホーちゃんが自販機を両手で放り投げたのだ。

 先程クララがやっていたのでそれほど驚きはしないが、突然の事に入間とクララと僅かに動揺するなかで、ホーちゃんは口を開く。

 

「貴様ァ…よくもやってくれたな……」

 

 先程のどこか穏やかな雰囲気から一転し、憎悪が含まれたその言葉と共に、顔にステンドグラスのような模様が現れたかと思うと、一瞬でその姿が変貌した。

 その姿は、馬を無理やり人型にした様な怪物だった。体には青いステンドグラスの様な装飾が施されている。

 完全に姿が変わった悪魔に、二人は驚愕する。

 

「うえ!?変わった!スゴ~い!!」

「ファンガイア…!」

 

 クララは驚いて直ぐに興奮したようにはしゃぎたすが、その正体を知っている入間は警戒を強めて馬の異形──【ホースファンガイア】を睨み付けた。

 

 するとホースファンガイアは口から白い息吹を発射した。

 その息吹の勢いは並みではなく、突然のことに入間とクララは大きく吹き飛ばされ、木の幹に激突した。

 

「アダッ!?」

「へニュッ!?」

 

 入間は背中、クララは頭から木の幹に激突し、ズルズルと崩れ落ちる。クララに至っては脳天から激突してしまった為か「キュ~」と目を回しながら気絶してしまった。

 

 そして、ホースファンガイアは地を踏みしめながらとクララに近づくと、突如空中に2本の巨大な光の牙が出現し、ゆっくりとクララに迫っていく。それを見た入間は、血相を変えて立ち上がろうとする。

 

『待て待て~~い!!』

 

ガキンッ! バシッ!

 

『グァアッ!?』

 

 その時、どこからか金色の小さな影が猛スピードでホースファンガイアに接近し、強烈な体当たりを連続で仕掛けた。

 突然の不意打ちにホースファンガイアは対応出来ず、身体から火花を散らしながら大きく後退し、クララへと迫っていた光の牙もフッと消えた。

 

「キバット!」

『おう!来てやったぜ!』

 

 ホースファンガイアに突撃した黄金の影、その正体は先程まで入間の話し相手をしていたキバットだった。クララが入間に向かって突っ込んできた辺りから木々の影から二人の様子を見守っていたのだが、予想外の乱入者に驚きながらもクララを助けるためにホースファンガイアを攻撃したのだ。

 後退したホースファンガイアが、攻撃された箇所を擦りながら立ち上がると、回廊が騒がしくなった。

 

「何の騒ぎだ!?」

「こっちでスゴい音がしたぞ!」

 

 クララが自販機を叩きつけた音かホースファンガイアが吐いた息吹の音か。生徒達がザワザワと集まっていく。

 

『クッ、教師が呼ばれるのは不味い…!』

 

 このままではバビルスの教師が呼び出されて追い詰められてしまうと思ったのか、ホースファンガイアは踵を返して森の奥へと消えていった。

 咄嗟にそれを追おうとした入間だが、それよりも未だに倒れているクララの安否を確認しなければならないと、キバットと共にクララの元に駆け寄っていく。

 

「キバット、クララは大丈夫?」

『安心しろ。頭打って気絶してるだけだ。それより、アイツどうする?』

 

 クララの無事に安堵した入間だったが、キバットに質問されて、直ぐにホースファンガイアが逃げた方向を睨み付けた。

 魔界で出来た遊び相手のクララ。そんな彼女を贈り物目当てで利用し続け、挙げ句の果てには食料として殺そうとしたのだ。心優しい入間とはいえ、あのファンガイアを許すつもりなど微塵もなかった。

 

「決まってるよ。行こう、キバット」

『おう!』

 

 入間の言葉にキバットが威勢よく応答し、二人はホースファンガイアを追って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 森の中を走り抜け、校舎の影に身を隠したホースファンガイアは、自分の背後から足音が聞こえてきたことに気付き、振り替えると、そこには青みがかった髪をした、ここ最近悪名を轟かせている悪魔の姿の姿があった。

 だが、その佇まいからは普段の無害な雰囲気は全く感じとることが出来ず、その目にはホースファンガイアに向けての激しい怒りと敵意が籠った瞳に、思わず馬の怪物はたじろいだ。

 

「キバット!」

『おっしゃぁ!キバッて行くぜ!』

 

 入間の言葉に呼応するように、キバットが飛んでくる。

 入間はキバットを右手でキャッチすると、キバットを左手に近づける。

 

「ガブッ!」

 

 その左手にキバットが噛みつくと、左手を中心に入間の顔に向かってステンドグラスの様な模様が浮かび上がり、腰に鎖が現れて巻き付いたかと思うと、鎖が側面に笛を携えた深紅のベルト──“キバットベルト”へと変化する。

 入間はキバットを右手で持ったまま前に出し、あの言葉を叫んだ。

 

「変身ッ!!」

 

 キバットをキバットベルトに逆さにしてセットすると、ベルトを中心に波紋のようなものが広がり、入間の身体が銀色に包まれ、シルエットが変貌する。

 やがて身体を包んでいた銀色が弾けると、入間の姿は大きく変わっていた。

 

 黒の身体に赤い胸部、肩と右足は銀色で鎖が巻き付いており、黄色の翼を開いた蝙蝠のような形状のつり上がった複眼を持った仮面を被っていた。

 

『お前は…!』

 

 驚愕するホースファンガイア。

 しかし、姿が変わった入間はそれに答えず、両腕を斜めに大きく広げ、足を屈めると、ホースファンガイアに向かって走り出した。

 

 

 戦いが、始まった。




というわけで、よっちゃん達は登場せず、代わりにホースファンガイアが登場して変身となりました。
かなり無茶苦茶な展開だとは思いますが、何処かで変身して戦わないとほぼ原作パクっただけの小説になりますし、金剪の谷の長とは戦えないので……。ご不満でしたら申し訳ございません。

次回、入間くんが変身したキバの戦闘です。
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