キバッて魔入ります!入間くん   作:MTHR

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飛行レース、始まります。


5話 初授業

 

「授業の内容は、谷奥の旗までの競争だ」

 

 入間を含めた13人の悪魔(クラスメイト)が、切り立った崖のような場所で、担任であるカルエゴの説明に耳を向ける。

 

 カルエゴの説明によると、谷奥のコースは主に二つに分かれており、遠回りだが危険の少ない『囀り谷コース』と、近道だが危険が満載な『金剪の谷コース』の二つに分かれているらしい。

 二つのコースにそびえる岩山と、巣を守っている怪鳥を避けてゴールを目指す種目であり、殺しすぎは原点となるが、鳥への攻撃は許可されているという。

 

「加えて、今年は『囀り谷』のみをコースとする」

「なッ!待てい!『金剪の谷』も通過コースだろう!」

 

 口を挟んだのは、サブノックだった。

 カルエゴはそれを、変わらぬ表情で軽く返す。

 

「何故か、“金剪の長”の気が立っていてな。今『金剪』は立ち入り禁止なのだ」

 

 金剪の長とは、名前の通り『金剪の谷』を支配する魔獣だ。他の怪鳥と比べて知能も攻撃力も遥かに高く、『金剪の谷』が危険なコースと呼ばれている理由の一つでもある。

 そして、今年は何故かその長が荒れているらしく、万が一遭遇し戦闘にでもなってしまえば、入学したての一年ではまず間違いなく殺されてしまう為、今年は『金剪』は通過コースに出来ないのだろう。

 

「なっらっぬっ!己は絶対に金剪にする!金剪でなければ意味がないのだ!」

「知るかッ!コースに変更はない!」

 

 金剪にすると言い張るサブノックだが、カルエゴは無理矢理話をまとめると、手を上げて生徒に声をかけた。

 

「総員準備!」

(準備?)

 

 カルエゴの掛け声に応じて、それぞれ距離を取り始める生徒達。入間は言葉の意味が分からず、困惑したまま立っていると……

 

バサァ!バサバサバサァッ!

 

 なんと、生徒達の背中から巨大な蝙蝠の翼が生えたのだ。

 その生徒達の姿は、まさに悪魔…。

 

 顔を青くする入間を残し、カルエゴは大きく宣言した。

 

「……では只今より、()()()()()を開始する!

 

 その言葉とももに、12人の悪魔は翼をはためかせ、飛び立っていく。

 はためいた翼の風圧にバランスを崩した入間は、よろけながらも崖のギリギリの所で踏みとどまる。

 

「オイ、早く行け」

「え」

 

 そこで、何処かのお笑い芸人のコントのように、カルエゴが入間の背中をドン、と押す。

 そうなればどうなるかなど、考えるまでもなかった。

 

「えぇええええええええーーーー!」

 

 入間はまっ逆さまに、崖下へ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぁぁあああああ!!!」

 

 地面が見えない崖を真っ逆さまにダイブする入間。

 いくらなんでもこんな経験は殆ど無い事で叫びながら崖を落ちる入間だが、次の瞬間には、頼れる親友を呼ぶために大声を上げた。

 

「き、キキキキバットーーーッ!!」

『おーっし!キバッて行……っておいおい、どういう状況だそりゃ!?』

 

 入間の声を聞き、何処からともなくキバットが飛んでくる。

 だが、崖から真っ逆さまに落ちていく入間に驚いたキバットは、慌てて速度70㎞/hの最高速で落下中の入間に追い付くと、そのまま入間の左手に噛み付いた。

 

『ガブッ!』

 

 キバットが噛みついたことで、入間の頬にステンドグラスのような模様が現れ、腰にキバットベルトが出現する。

 

「へ、変身ッ!!」

 

 キバットをベルトにセットし、入間は仮面ライダーキバに変身すると、背後の崖に爪を引っ掛け、ギャリギャリと落下速度を殺していく。

 やがて勢いが完全に止まると、キバットから呆れたような声が聞こえた。

 

『全く、人間界では熊やギャングに襲われ、魔界に来たら崖から落下かよ。お前のトラブル体質はどの世界に行っても変わんねぇな…』

「アハハ……ゴメン」

 

 魔界に伝わるキバの伝説を聞き、これから使うのに気を付けようと決意したというのに、こうもあっさりと使う羽目になった事に、入間は仮面の舌で苦笑する。

 やがて入間はキバの姿のまま、岩山を足場にピョンピョンと跳んで移動しながらも、この後はどうするべきかを必死に考え始める。

 

 これは()()レースだ。キバに変身しても、翼の無い入間に飛行は出来ない。キャッスルドランを呼び出してゴールに辿り着くことも出来るが、それだと入間がキバであるとバラしてしまうようなものなので、その手段は使えない。

 どうしようかと本気で悩んでいる、その時だった。

 

ギィヤァァァアスッ!

 

「『ッ!?』」

 

 突如として、岩山の影から、大きな鳴き声が響き渡った。ここに来るまでも怪鳥を見かけて鳴き声を聞いたが、これはそれの何倍も大きく、そして禍々しい。

 

「今のって……」

『怪鳥の鳴き声だな…どうやらここにはでっかい鳥がわんさかいるみたいだぞ?』

「………あ!そうだ!」

 

 そこで、キバ(入間)の頭の電球がピカッ!と光った。

 翼がないのなら、調達すればいいではないか。ここで適当な怪鳥をボコって手懐け、そのままゴールまで運んで貰おうという算段だ。

 正史(原作)入間(鈴木入間)ならば考えもしないアイデアかもしれないが、この世界の入間は、キバとなってファンガイアと戦いの影響か、暴力を嫌っていても、暴力への抵抗はそれほど強くなかった。

 

 やがてキバは崖を上ると、大きな鳥の巣のような物を見つけ、キバはそこを覗き込んだ。

 そこには案の定、道中に見かけた怪鳥よりも遥かに巨大でモッフモフな鳥型の魔獣がいた。

 しかし、キバ(入間)が注目したのはそこではない。

 

「キバット、あの足…!」

『え?あっ…!』

 

 そう、怪鳥の右足には、大きな切り傷が存在していたのだ。怪鳥の様子を見ると、かなり深く切ったのか苦しそうに体を震わせていた。

 

「そ、それ…」

 

『ギィヤァアスッ!』

 

 近づこうとしたキバを、怪鳥が威嚇する。

 怪我をして怯えているのだと理解したキバ(入間)は、慌ててベルトにぶら下がっているキバットに声をかけた。

 

「キバット、変身解いて」

『…ったく、しょうがねぇなぁ』

 

 そう言われたキバットはベルトから飛び立ち、キバの変身が解除される。

 突然姿が変貌した事に動揺した怪鳥だが、入間が何処からか鋭く尖った石を手にしたことで、怪鳥の目が血走る。

 だが、次の瞬間には目を見開いた。

 

ザシュッ!

 

 なんと、入間はその尖った石で、自分の左手の甲を切りつけたのだ。切り傷から血が垂れる様子を怪鳥が呆然と眺めていると、入間はポケットから取り出したサリバン(祖父)が刺繍をいれたハンカチをビリビリッと破り、それを血が流れる手の甲に巻き付けて、包帯を巻いた左手を指差した。

 

「えっと…()()をね、()()、やってあげたいだけなんだけど…ダメ?」

 

 怪鳥は未だ、入間を眺めたままだ。

 当然だろう。()()()()()()()()()()()()()なんて、いる方が少ないのだから。

 やがて怪鳥は、ズズッと、怪我をしている足をつき出した。

 

「ありがとう!待ってね。今この服を破いて…」

 

 そのとき、入間が左手に巻いた包帯から、ポタッと血が滴り落ち、怪鳥の足の傷口に落ちた。

 

シュウウウ…

 

 すると驚いた事に、白い煙を上げながら、怪鳥の傷がみるみる塞がっていったのだ。怪鳥は足をブラブラさせてみるが、痛みをもう感じないのか、平然としている。

 

「えっ!?治った!?」

『驚いた…。魔界(コッチ)ではお前(人間)にはこんな能力が備わるのか……』

 

 入間は驚愕し、キバットは冷静のように見えてかなり驚いているようだ。

 

『ギシャアアアッ!!』

 

 そんな二人を他所に、傷が完治した怪鳥は、嬉しそうに鳴き声をあげ、それを聞いた入間も先程までの疑問も頭から追いやり、心から安堵したように怪鳥に笑いかけた。

 

「とにかく、良かったねぇ!」

 

 入間の笑顔を、怪鳥はしばらくジッと眺めた後、怪鳥はまるで飼い主に甘える子犬のように入間に顔をすりよせると、嬉々として入間を背中に乗せ、翼を大きくはためかせて巣から飛び立っていった。

 

『……一件落着、なのか…?』

 

 取り残されたキバットは、もう自分の役目は終わったのだろうと判断し、溜め息を吐きながらサリバン邸に向かって飛び立った。

 

「ど、どこ行くの!?そっちは……『金剪の谷』だよーーっ!

 

 後ろから聞こえた、入間の叫びを無視して……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、入間は『金剪の谷』を経由してゴールした。

 しかし、やはりと言うべきか道中に何事もなくとはいかなった。

 

 立ち入り禁止となっていた筈の金剪のルートでゴールを目指そうとしたサブノックが、運が悪い事に金剪が立ち入り禁止となった原因である『金剪の長』と遭遇し、戦闘になってしまったのだ。

 噛んでいる武器と同質の武器を生成する家系能力“武器創生”で生み出した武器とサブノックのパワーが加わった攻撃も、長にはまるで通用せず、遂に止めを刺されそうになった所で、サブノックと長の間に、怪鳥の背中からそれを見た入間が立ち塞がったのだ。

 そして、驚いた事に入間が傷を完治させた怪鳥は長の子供(ヒナ)であり、長の気が立っていたのも、ヒナの怪我が原因だったのだ。

 サブノックはその隙に攻撃しようとしたが、入間がそれより先に長に声をかけ、更にサブノックに武器を置くように促して二人揃って両手を上げて危険はないことを示すと、長は感謝の意を示す様に、静かに目を瞑って頭を垂れたのだ。

 

 その後、二人は長の背中に乗って、ゴール地点まで運んで貰った。

 流石に時間が経ちすぎてビリとなり、立ち入り禁止コースに侵入した事でこっぴどく叱られたが、長の機嫌を直してコースの封鎖を解いた功績と相殺して、退学にはならなかった。

 

 そして、位階(ランク)の発表が始まった。

 

 

 





次回、悪食の指輪の登場です。これも恐らく原作通りになります。

他のキバ系ライダーを登場させるか検討中なので、読者の皆様からの意見をお聞かせください。

  • キバ本編のライダーは登場させる
  • 劇場版ライダーのみ
  • キバ系全員出す
  • ライダーは一人で十分だ(キバのみ)
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