ちょっとした衝撃回です。
初日の撮影で私は盛大なやらかしをしてしまった訳だが、意外にも今ガチの撮影は順調に進んでいった。
今の番組の中心はゆきだ。彼女は私が思っていたよりも
ある程度一緒に居ると皆んながどんなスタンスで今ガチに望んでいるのかが分かってきた。私とアクアくんは最初から本気で恋愛をするつもりがない。ケンゴくんはするつもりが無い訳では無いがカメラの前だと、どうしても仕事のスイッチが入ってしまい素の自分が出せないのだとか。その気持ちはなんとなく私にも分かる。
メムちゃんに至ってはよく分からないと言うのが正直な感想だ。私達に積極的に絡んではくるものの、今のところ深く踏み込んでくることもない。何処か一歩引いている様にも感じている。
と、まあ。恋愛リアリティショーなのに恋愛をする気が無い出演者がいるのはどうなのかと自分でも分かってはいるが……こればっかりは集めた鏑木さんのセンスの問題であり私のせいじゃない……と、思う事にしている。
こんな演者が揃っているからか、ゆきとノブくんが目立つのは当然と言えるだろうし、私としても異論は無い。元々私はこの番組で有名になってやろう等とは思って無いのだから。
とは言いつつも番組での私がどの様に映っているのかは気になってしまう訳で。今、私は自分の部屋でSNSに書かれている今ガチの反応を調べる、所謂エゴサーチと言うやつをしている最中なのであった。
『えーと、どれどれ〜「あかね別に居ても居なくても同じじゃない?」「特に好きとか嫌いとか無いかな〜」「最初の挨拶で濃いキャラが来て面白そうだと思ったけど期待はずれ」「ぶりっこで影薄いとか誰需要?」うわぁ〜結構言われてるねー』
「読み上げなくてよろしい!」
アイさんの言う通り今ガチでの私の評判は手厳しい意見が多く、どう好意的に見ても活躍しているとは言えない。それも当然の事。番組で私から何か大きなアクションを起こしている訳じゃないし。何というか、恋愛をする気が無い私が目立ちにいってもいいのだろうか?という後ろめたさが有って中々前に出る事が出来ないでいた。
ホントは私もメムちゃんみたいに盛り上げ役の傍観者みたいな立ち位置を確保できたらいいんだけど、ちょっとそれも難しそうだ。だって私は、メムちゃんと違ってコミュ力が高くないからね。知り合いならまだしも、初めて会った人とそれもカメラの前で仲良く恋愛トークとか私にはだいぶ難易度が高い。
『あれ?意外と平気な感じだね、もっと落ち込むかと思ったけど……』
「まあ、言われている内容に覚えはありますし。こんな事いちいち気にしてたら芸能人なんてやっていけませんから」
『ふーん……』
実際、ネットの声にも一理ある。恋愛リアリティショーはリアルを売りにしていると言ってもあくまでショー、"見せ物"だ。だから前提として番組を面白くする努力が出演者には求められる。だというのに明らかに番組に貢献していないであろう、毒にも薬にもならない出演者が居たらショーを観ている視聴者として文句の一つや二つが出てしまうのも
視聴者の意見は大事だけど気にしすぎると良くないのは分かってる。まあ、気にしすぎるとは言ってもアイドル時代を乗り越えた私にこの程度の批判意見なんてどうってこと────
『…………確かにあかねって時々口が悪くなるし!芸能人オーラ無いし!本質は陰キャだし!この評価も妥当なのかもね!』
「……………」
『…………』
「うぅ……ど、どうして…………」
『あっ……やばっ……』
「どうして……そんなひどいこというの……?」
『わぁぁぁっ!やっぱり効いてた!?ごめん、ごめんって!やり過ぎた。さっきの無し!』
「ぐすっ……ホントは私もかなちゃんのこと言えない性格だって分かってるんだよ……姫川さんにだって『お前は口と性格が悪いな』って言われた事あるし……恋愛リアリティショーなんか向いてないって。で、でも私なり次に繋げようと一生懸命……」
『分かった!分かったから泣かないで!そんな事ないよー!あかねは凄い!あかね強い!あかね優しい!あかね天才!あかね最高!!ねっ?だから一緒に頑張ろ?』
「……うん……投げやりな励ましありがと……」
いくら芸歴が長いと言っても、やっぱりネガティブな書き込みを見てしまうと気分も落ち込んでしまう。こればっかりはどんなに経っても慣れそうにない。
『全く、気にしてるなら気にしてるって素直に言えばいいのに……』
「だからって追い討ちをかけるのも違うと思う……」
アイさんとのやりとりで少し気持ちが落ち着いたとこで、私はこれからの事をアイさんに相談してみる事にした。
「考えてみましたが、私個人としてはこのまま目立たずに安全圏で過ごしてもいいと考えています」
『まあ、それが一番無難ではあるね』
私は特に切羽詰まってる訳じゃないから焦りは無い。だから今回の仕事は見せ場を誰かに譲って私はそれを眺めるというのも一つの手になる。しかし、それだと懸念点が出てきてしまう。
「アイさん、聞いていいですか?」
『うん?どうしたの?』
「もしこのまま、のらりくらりと番組をやり通したとして。鏑木さんは私に恩を感じてくれるのでしょうか?」
そう、これが問題だ。あの鏑木勝也と言うプロデューサーは話を聞く限りも、私から見たイメージでも、やり手ではあるがかなりの
『そうだね〜……』
アイさんは少しの時間考えると、ハッキリと結論を出す。
『無いね。もしあかねがこのまま番組を終えたとしたら、逆に仕事を紹介した恩を着せてくるか……期待はずれだったってガッカリして事務所の力が無いあかねはすぐに切られるのがオチだと思う』
「やっぱりそうですよね……」
予想通りの返答に私は頷く。アイさんから話を聞く限り鏑木さんはアイドルの分野にも精通しているみたい。なのでもし、彼に気に入られれば何処かのグループを紹介してくれるかもしれないし、オーディション等も紹介してくれるかもしれない。なんにせよ、上手くやれれば私の芸能人生のマイナスにはならないだろう。
その為にはまず信頼を勝ち取らなければならない。信頼される為には期待に応える。そしてこの場で言う鏑木さんの期待とは今ガチの成功。私をこの番組に誘って良かったと思ってもらう必要がある。
今ガチでの活躍か……
「うーん、中々難しい……」
『あかねは今ガチで結果を残したいのかな?』
「そうですね……打算ありきとは言えせっかくプロデューサーに声を掛けてもらったんです。このチャンスは逃しちゃいけない。そうは思いませんか?」
『確かに……その意見は私も賛成』
やはりこうなった以上、私もある程度は番組に貢献しなければならない。しかしどうすれば恋愛リアリティショーで活躍できるのか、それが分からないので困ってしまう。
焦って無茶な行動をしてもいい結果にならないのは火を見るより明らかだ。なのでここはしっかり計画を立てて撮影に望まないと……
『あかね、ここは一度、恋愛リアリティショーの本題である恋とか愛について考えてみるのはどうかな?』
「え?何言ってるんですか?」
『だから、今のあかねが思う愛ってなんなのかなー?って。そういうの好きでしょ、定義とかなんとか考えるの。題して愛の定義!』
この人は今自分がとんでもなく恥ずかしい事を口走っている自覚があるのだろうか?急に愛の定義とか頭が沸騰しそうになる。
『安心して、私にだって恥じらいくらいはあるから』
「えっ!?……あったんですか!?」
『ちょっと!?流石の私も怒るよ!』
驚くのと同時に納得もする。昔を知っているからこそ言えるが最近のアイさんは結構常識を備えつつある様に思える。前はもっと感性がぶっ壊れてて、変な発言を繰り返していたのに。良いのか悪いのかは分からないけど、少し変わってきてるって事なのかな……
なんか昔より性格が悪くなってる気がするけど……
『それでどう?あかねにとって愛ってなんなの?』
「ストレートに聞かれると更に恥ずかしいですね……」
生まれてこの方、誰かを恋愛感情という意味で好きになった事も無いし。誰かに告白された事も無い私が愛だの恋だのを語るなんて笑止千万も良いとこだけど……ふむ。私の考えか……
「いいですか?誰かに好意を抱く。この人が好き。種類こそあれ、こういった感情は誰しも感じた事があると思います」
『うん』
「ですがこの情報社会。人々はその感情に理由を付けたがるんです。不安で理由が無いと安心が出来ないから。『私はこの人の顔が良いから好きなんじゃないか?』『ホントはお金持ちだから好意的に思ってるのではないか?』そうやって悩み苦しむ事は別に間違いではありません」
『ふむふむ……』
「そして、人は苦しみ抜いた末にその人に好かれようと努力します。『この人の為に綺麗になりたい』『もっと近づきたいからいっぱい話したい』そしてまた、上手くいかなかったり、自分の感情が分からなかったりで悩む」
『…………』
「そうやって一人の為に努力をしたり、悩んだりする原動力である胸の中の感情。それこそが、"愛"と呼べる物なんじゃないでしょうか……」
『……あかね……』
『ごめん……普通に気色悪い……』
「あっ……はい……すいませんでした……」
今のは流石に自分でもやってしまったと思ったので素直に認める。やはり恋愛とは無縁で、本や演劇等の知識しかない私が愛を語ろうなんて可笑しいというのが分かった。
『あかねがロマンチストなのは知ってるし、えっと……私が聞いといてこんな事言うのはなんだけど……そういうの番組で言わない方がいいよ。引かれるから……』
「……はい……気をつけます……」
なんだか謝られると余計に辛い。「いきなり愛の定義がどうとか言い出した人に言われたくない!」とでも言おうとしたけどその言葉も引っ込んでしまった。
『……胸に抱いてる感情その物が愛か……』
「あの……?どうしました?」
何やらぶつぶつ言い始めたアイさんだけど何か考え事かな?
『ねぇ……一つ提案と言うか、お願いがあるんだけど……』
「なんですか?」
『私にも今ガチの出演。やらせてもらえないかな?』
「えっ!?本気ですか!?」
アイさんの突拍子もない提案に落ち込んでいた気分が吹き飛んでしまうくらいに驚く。
『本気だよ。私は注目を集めるのは得意分野だから、少しは役に立つと思う。あかねにとってもメリットがあるんじゃない?』
「それは、そうかも知れませんけど……」
しかし、アイさんが表に出てくるという事はつまり……
「アイさん……分かってますか?今ガチの現場には……」
『うん、アクアが居るね』
そう、今ガチに出演するという事はアクアくんとアイさんが直接関わるという事だ。共演者である以上、それは避けられない。
『だーいじょーぶ。今の私は"黒川あかね"。メルトの時みたいに上手くやるって!こう見えて嘘を吐くのは得意だから!』
まるで他人事の様に明るく振る舞う姿に私は違和感を覚える。何故こんな事をいきなり言い出したのか……私の中でいくつかの仮説は立てられるけど。ハッキリした答えは出ない。
答えが出ないのならば仕方がない。考えの真意は本人に。
「本当に……それで良いんですか……?」
『もっちろん!私ならだいじょ────』
「そうじゃありません!!」
私が声を荒げるとアイさんは押し黙ってしまう。その姿に少し罪悪感を覚えるが、それでもこの確認はしておきたい。いくらアイさん自身の問題だとしても、ここで目を逸らすのは違う。
「アイさんじゃなくてアクアくんの事です!アイさんが自分を偽ってアクアくんと会い、バレなかったとして。それでもいつかは本当の事を話さなければいけない時が絶対に来ます。その時に一番傷つくのは……アクアくんなんですよ……」
私と星野アクアが出会ったのは偶然だ。そして、出会ってから近づいたのは私の意思であり、知り合う事でアイさんの為になるかもという、ちょっとした打算もあった。
まだまだ彼の事は全然分からないし。ちょっと一緒に遊んだだけで、仲が良いとも言えないのだろう。
それでもアクアくんの事が心配だ。彼がどう思ってるのかは知らないけど、私は既に彼の事を友人だと思っている。友人だから情だって湧くし、友人なのだから傷つくとこは見たくない。
「アイさんがもし……何の考えも無しに今ガチに出たいと言ったのなら、賛同は出来ません」
『…………』
「そしてこれは……言う必要がない。いや、言うまでもない事ですが。理由が私の為なんだとしたら。余計なお世話だと、敢えて言っておきます」
私の言葉を最後にお互いの沈黙が続く。その時間は永遠に感じる様に長く、辛く、苦しい物であった。
しばらく待っていると不意に、絞り出した様な小さな声でアイさんは答える。
『良くは……無いんだろうね……』
『私もアクアも辛い事になるし、ルビーにだって明かすつもりはないから、ルビーの事も傷つける。それに……あかねの協力は絶対に必要だからあかねにも迷惑をかけちゃう。どうしようもない程に馬鹿で勝手なお願いだって私にも分かる……』
「なら……どうしてそんな事を?」
私の疑問を投げかけると再び静寂の時間が訪れる。自室とは思えない程に重たい空気。それを変えたのは、やはりアイさんの方であった。
『あかねってさ、強くなったよね』
私の疑問には答えず、さっきの声色とは違う調子で話し始めるアイさん。その様子を私は静かに見守る。
『昔のあかねは引っ込み思案だったし、声は小さいし、ずっと下向いてたし。なんて言うか……他人の顔色を伺って生きてる。みたいな、そんな子だった』
「うぐぅ…………」
『まあ、変わってない所もあるけどさ。強くなったのには間違い無い。ほんと……羨ましい程にね……』
強くなった。か……今でも他人と話すのはちょっと苦手だし、ネットの声に落ち込んだり。出来ない事だっていっぱいあるから、アイさんが羨む程では無いと思うけど。
『仮にも十年以上一緒に居たから私には分かる。あかねが強くなった原因……それは……人との繋がりなんだって』
なんだ……とっくにアイさんは生きる上で一番大事な事に気がついていたのか。それに気づかずに人との関わりを持たせようなんて。私はなんてお節介だったんだろう。
『あの二人に、大輝くんに、かなに、学校の友達に、メルトに、アクアに、メムに……あかねと向き合ってくれる人が増える度に、あかねは強くなる。そしてそれは……これからも増えていくんだと思う』
「…………」
『いつだったかあかねに言われたよね。「アイちゃんに弱い人の気持ちなんて分からないよ!!」って……あの時の私は言えなかったけど今なら言える……』
『私はあかねが思っている程強くない』
いつも明るくて、自信があって、決して弱い所を見せようとしないアイさんが。私の前で弱音を吐いた。
『アクア達に本当の事を言わない理由なんて"怖いから"しかない。拒絶されるのが怖い。あの子達の幸せを壊すのが怖い。本当の事を言って受け入れられるのも怖い。ありのままの私を伝える事が……私は怖い』
「アイさん……」
『生きてる時に私の事を理解しようとしてくれる人も居た。だけど私はあかねみたいに強くはならなかった……』
初めての事だった。アイさんが私に、ここまで本音をぶつけてくれるのは。
『本当の私を晒す事なんて諦めて、ずっと都合のいい自分を演じ続ける方が楽なんだろうけど……あかねを見たら。人と楽しそうに話すあかねを見てたら、何か行動を起こさなきゃって……』
「……それで今ガチに……?」
『うん、だから私が今ガチに出たいって言うか、表に出たい理由は"私の為"。アクアの為でもあかねの為でもなく、私の』
『私だって人と向き合っていけば何かが変わるかもしれない。実際、ちゃんと話す事で初めて友達が出来た。それはあかねが引っ張ってくれたお陰でもあるけど、私がしっかり向き合おうとしたからなんだよね?』
「はい、メルトくんがアイさんと友達になれたのは……アイさんがメルトくんと向き合った結果だと思っています」
『そう……だよね』
私はただ、メルトくんに指導をする時に力を貸して欲しいとアイさんにお願いしただけ。そこからの関係はアイ自身が築いていった物だ。
『だったら私はもっと人と関わりたい。その過程で誰かを傷つける事があるかもしれない、子供達に嫌われるかもしれない。あかねに迷惑をかけるかもしれない。それでも私は人と関わって強くなって、いつか……』
『昔の私しか知らない人達に今の私を見てもらって、笑顔でさよならができる様になりたい!』
「さよなら……ですか……!?」
『だってそうでしょ?私がこうなってる理由が神様の奇跡なのか、私の罪なのかは分からないけど。これからもずっと、現実に居れるって保証はない。アクア達に本当の事を話して受け入れられたとしても昔みたいに暮らせる訳じゃない。私はもう……死んでるから。だったら、星野アイはもう死んだ人間として、いつかはさよならしなくちゃだよね!』
今まで考えた事もなかった、私にとってアイさんが居るのが当たり前で、いつか別れる日が来るかもなんて……アイさんはそんな気持ちを抱えて、今まで過ごしてきたのか……
……きっとアイさんなりに考え抜いての決断なんだろう。アイさんが言うほど馬鹿じゃないのなんて私は知っている。
『だからお願い、私にもやらせて。あかねみたいに、怖くても、辛くても……前に進める人間に。私はなりたい』
今までひた隠しにしてきた星野アイの本心。それを私は聞いている。その決意の言葉は強く、とても自分の事を弱いと言っている人の言葉には思えなかった。
どうしたら良いのかと考える。見方を変えればアイさんのやろうとしている事は褒められたものじゃないのだろう。思い悩むくらいならば素直に打ち明けた方がスッキリすると考える人も居る。明かすことが辛いならば一生秘密にしておけばいいと考える人も居る。
「アイさん……あなたは愚かです」
『うぇ!?』
皆んなが傷つくかもしれない選択をするなんて愚かとしか言いようがない。完璧主義のアイさんらしくない。とても中途半端な選択と言える。そんなアイさんの味方なんてとても少ないのだろう。
「馬鹿だし、嘘つきだし、人の気持ちとか全然考えない。そんな……どうしようもない人間なんだって思います」
『うぐぅ…………』
私とアイさんは違う。私はアイさんにはなれないし、アイさんもまた、私にはなれない。
「でも、私が人と関わる事で強くなれたんだとしたら。その始まりは……アイさんだったんじゃないかって……」
『私が……始まり……』
「だからこそ、そんなどうしようもないアイさんの味方になれるのは。私が最初なんじゃないかとも」
この選択が良いのかなんてそんなのは分からない。それでも、アイさん自身が考えて選択した結果なんだとしたら、私は力を貸してあげたいと思う。
「よって、アクアくん達の事はアイさんに任せます。元々、私が口を出す事でもないですし」
『あかね……』
アイさんの決意は固そうだ。だけど私は今一度だけ、彼女の覚悟を確かめる。
「……最後に確認です。本当に……良いんですね?」
『うん、これは長い時間、私なりに考えて決めた事だから。もちろん昔の私への……心残りとか心配事がない訳じゃないけど……やるよ、私』
「分かりました……ですがアイさん、忘れないでください。もし上手くいかなくて。ダメだった時は───」
「私も……アイさんと一緒に謝るから」
『………………ありがと』
私個人の考えとしては逃げるというのも一つの手だとは思っている。生きていれば辛い事、苦しい事なんていっぱいあるし逃げるのは悪い事じゃない。向き合って皆が傷つくのなら無理にやらなくていいし、アイさんが子供達ともう関わりたくないと言うのならそれも尊重するつもりでいた。
逃げる事は卑怯だと言うし、無責任だと言う人も居るのだけれども。自分がダメになってしまうよりは幾分かマシだ。
それでもアイさんは進む事を選択した。自分を偽って皆んなと接する。なんていう覚悟がまだ出来てない中途半端な道かもしれないけど。進む事に。
「まあ、最初から反対するつもりもありませんでした」
『ええっ!?そうなの!?』
「だってアイさん言ったじゃないですか。『私にもやらせて』って。つまりはそういう事ですよね?」
『私に』では無く、『任せて』でもなく、『私にも』アイさんは一人でどうにかするつもりも、私を助けようとして提案したつもりも初めからなかったのだろう。
アイさんにだって分かってたんだ。今ガチで活躍出来ないのは私の問題。例え、アイさんに全てを任せて番組を切り抜けたとしてもそれはアイさんだけの力。人には得手不得手があるのは確かだけど、恋愛リアリティショーに貢献出来ないようではこの先、超凄いアイドルになんてなれないという事を。
それに、妙に鋭い鏑木さんが納得するかも微妙だし。
『むぅ〜全部分かってて言ってたんだ?あかねってさ……意外とイジワルだよね』
「それ、姫川さんにも言われました」
とにかく話はまとまった。アクアくん達がアイさんの事を今どう思っているのか分からないのが気がかりで心配だけど。星野アイを名乗らないのであれば、とりあえずは大丈夫だろう。
大丈夫……だよね……
「ではアイさん。今度の撮影はアイさんにもやってもらいますからね!活躍、期待してますよ」
『うん!一緒に頑張ろうね!』
いつか別れが来る。それは、絶対に避けられない運命なのかもしれない。だけど私は。その時が来るまで。前を向いて二人で進んでいきたい。
「で……話がまとまったのはなによりなんですけど……今ガチでの貢献。どうやったら良いでしょうか?」
『振り出しに戻って来ちゃったねー』
確かに話はまとまった。まとまったのはいいが、本題が一ミリも進んでいなかった。
『うーん。こういうのってさ。やっぱり自分の得意な事からアプローチしたりするんじゃない?』
「得意……ですか……」
私の得意な事。真っ先に思いつくのは演技。次にダンスや、歌といったところだろうか。
検討しようにもダンスや歌で攻めるのは微妙と言わざるおえない。いくら得意とは言っても、しばらく人前では見せてないし、どっちとも本業がメンバーに混ざっているから。
と、すると。演技の方が無難か……役者はアクアくんが居るけど。アクアくんはもう今ガチで演技をしていないから被ることはないし、演技力についてはアクアくんにだって負けるつもりはない。
「うーん……」
しかし演技をするには目標と言うか、モデルとなる人物が必要だ。本やアニメ、ドラマなど。どっかの創作物でも良いと思うけど……やっぱり恋愛リアリティショーなのだから実際の経験談とかを参考にした方がいいのかな……
とりあえず私は、自分の近しい女性陣を思い出し。参考になるか考えてみる事にした。
「恋愛……経験……」
まず真っ先に思いつくのはアイさんだけど……これは考えるまでもない。却下だ。
アイさんの恋愛観については本人も良く分かってない所があったりするし、何よりアイさん自身が出ると言っているのだから。私がアイさんを演じる必要なんてない。ただの劣化だ。
次に思いつくのは、かなちゃ──いや無いな。
一瞬でも考慮に入れた私が馬鹿馬鹿しくなるくらい単純な話で、彼女に恋愛経験なんてない。断言しよう。と言うか、彼氏どころか、かなちゃんは私達以外の友達だって居るのか怪しい。他の人と楽しそうに歩いている場面を私は見た事が無し、聞いた事も無い。
ちょっと同情しちゃうくらいにひとりぼっち。それが、有馬かなと言う人物であった。
あと普通に、かなちゃんの演技やりたくない。
と、すると。私の学友が候補に挙がるかな。あの二人に恋愛経験を聞いて、それを参考にしてみるというのはどうだろうか?
同じ学校に通う学友である二人の友達。彼女達は学内でも男女共に人気があり、ありたいていに言えば凄くモテる。
どちら共かなりの美人で。そこらの芸能人に劣らない容姿。それでいて文武両道。これらの要素が揃っていてモテないはずが無い。告白だって何回もされてきただろう。
「うーん……だけどなぁ〜」
確かに二人ともモテるのには間違いない。しかし、やはりと言うべきか、私の周りに居る人は悲しい事に変人であり。その……少々性格に難がある人物であった。
だから二人共、彼氏が居た事なさそうなんだよね……相談したとしても、まともなアドバイスをくれるかどうか……
あー、なんかダメそう……変な先入観を植え付けられるのもいやだな〜。
「うん、やっぱりあの"ブラコン反抗期"と"ゆるふわサイコパス"に相談するのはやめておこう」
何でこうも私の知り合いの女性陣は揃いも揃って"残念"なのだろうか。男性陣はメルトくんにアクアくん。……あと一応、姫川さんと。モテ男が揃い踏みなのに。
『あかね、類は友を呼ぶって言葉。知ってる?』
「人の心を読まないでください!」
と、とにかく。なんとか作を考えなくては。今ガチのメンバーに相談するのはリアリティや驚きが無くなっちゃうからやめておこうかな……
じゃあやっぱりメルトくんやちょっと嫌だけど姫川さんに相談するとか。でも二人とも絶対忙しいだろうし……どうしたものか……
『あかねが得意な事ならまだあるでしょ』
「え?なんかありましたっけ?」
『ほら!ゲームだよ、ゲーム!今もたまにやってるけど昔はもっと凄かったよね!私が夜更かしは良くないって言っても無視するくらいには。特に前やってた、なんだっけ?……そうだあれ!三人一組になって銃で撃ち合ってさ、最後のチームになるまで生き残ろー!ってやつとか得意だったじゃん』
「そ、そんな事。アイさんよく覚えてましたね……」
『だってあの時のあかね。すっごく楽しそうだったし!』
別段、隠す程のことでもないけど、実は私、ゲームが好きだったりする。主にPCでやってたけどCSにACと子供ながらにジャンルを問わず夢中になっていたものだ。
今はあまりやれてないけど中学生の頃はかなりハマってしまい、アイドルなのによく寝不足になっていたのは良い思い出。
それでよく、アイさんに怒られたりしてね。
こうやってゲームの事を考えていると……どうしても昔のゲーム友達を思い出す。
そもそも特に趣味などなかった私がゲームにハマったのもある人物に勧められたのがキッカケだった。
懐かしいな……あの時の情景は今でも鮮明に覚えている。
『あれー?どったのキミ?アイドルだって言うのになんか暗い顔してんねー。つまんなそーって言うか。楽しい事がなさそうな顔』
偶然現場で一緒にはなったが、特に絡みもなかった私にそうやって声をかけてくれた。私にとって役者としての先輩が姫川大輝であるならば、彼女はアイドルとしての先輩と言ったところだろうか。
もし、あの時。彼女が私に声をかけてくれなかったら。今の私はなかったと言っても過言ではない。アイさんとはまた違った。不思議な魅力を持ったアイドルであった。
今は疎遠になってしまったけど、元気かな……まあ、テレビで見かける事があるから、元気と言えば元気なんだろうけど。
『どう?どう?なんか思いついた?』
「そうですね……」
思い切ってあの人に久しぶりに連絡して「恋愛リアリティショーに出てるんですけどアドバイスください!」ってお願いしてみようかな?
恐らく相談には乗ってくれるだろう。だけど危惧する事としてはやはりと言うべきか、もうお馴染みではあるが彼女もいささか変わった人物であり。恋愛経験があまり豊富そうには見えない。そもそもアイドルだし。多分、相談したとしても……
『恋愛リアリティショー?へー、あーちんそういうの興味あったんだ。ちょっと意外。えっ?私?知らないよ、だって恋愛とかした事ないしよく分かんないから。ゆるゆるっとやればいいんじゃない?それより見た?この前のアプデ。ヘッドのダメージ減らすとか意味わかんないよねー。あの一撃で相手の心を折るのが気持ちよくて頭撃ち抜いてるのに。それとウルトもさー。問題なのは範囲であってリキャとかダメとかじゃ──』
こんな感じになるだろうなー。悲しいけど、やっぱり私の周りに居る人は見た目が良くても何処か残念であった。
「そうだ!もう一人!」
ここで私はもう一人のゲーム友達の事を思い出す。私の先輩である、あの人が数合わせの為に呼んだ男性。もっとも、芸能人とか何か特別な人間であったとかじゃなく。普通にあの人の友達でクラスメイト。
彼ともしばらく話しはしてないが、いきなりの相談であっても。きっと彼ならば親身になって話を聞いてくれるはず……
「あっ……ダメだ……」
こちらも危惧するべき要因が一つあった。私が相談する内容は恋愛リアリティショー。基本的には中高生、主にリア充と言われるであろう人達が観る番組で、出演者も観る側も華やかな人が多い番組である。そして相談しようと検討している私のゲーム友達は性格上……その手の番組が大嫌いなはず。
きっと話したとしても……
『恋愛リアリティショー?あー、若手の芸能人捕まえて付き合うだの付き合わないだのやってるあの番組ですか……いいですか!この際だからはっきり言っときますけどねぇ!あんな番組クソですよ!クソ!!何が悲しくて他人の色恋なんて見なきゃならんのです!製作陣が用意したラブミッションがどうたらでちょっと距離が近づいちゃったりして、でも他の子も気になっちゃってどうしよ〜ってか!たっはぁ〜くっだらな!そもそも、人様の恋愛を見世物にしようっていうコンセプトが僕は気に入りませんね。考えた奴絶対、性格悪いですよ!関係者全員いい加減にしろって言いたいくらいです!本気の恋は他人がどうこう言うものじゃないから!手出し無用!大体ああいうのってカップル成立してからも──』
絶対こんな感じになる。なんだかんだ言ってあの人。いわゆる陽キャって人達に対するコンプレックスが凄いからなー。気持ちは分からなくもないけど。
「ダメだ〜。打つ手なしの万事休す、絶体絶命で八方塞がりです」
『あかねの頭の中で、皆んなが酷い評価を受けてる気がする……』
さて、どうしたものか。このままではあんな事を言ったのにアイさんに頼るという、情けなさすぎる展開になってしまう。
『もうちょっと過去経験とか記憶とか探ってみたら?』
過去って……そんな経験があるならこんなに悩んでな……
「それだ!!」
『えっ!?どれ?』
思い立ったが吉日。早速私は行動を移す事にする。
立ち上がると部屋中のタンスや引き出しを開けながら目的の物を探す。部屋はちゃんと整理しているけど、何分むかしの事なので何処にしまったのか分からなくなってしまった。
えーと、確か机に……いや違った。じゃあ本棚?
『何探してるのかわかんないけど。そんなになるなら日頃からどこにやったか分かるようにしっかり整理整頓しなさいっていつも言ってるでしょ。何かに夢中になったらあかねは周りが見えなくなるんだから、その前に確認しなよ。第一、大事な物なら──』
「うるさいなぁ……アイさんには言われたくないから」
アイさんの方が大事な物とか管理出来ないくせに。
口うるさいお母さんみたいな事を言うアイさんを無視しながら自室の本棚を調べていると。ようやく、目的の物が見つかった。
「あった!」
『これは……ファイル?』
私が取り出したのは一つのファイル。物としては何処にでも売っているごく普通のファイル。時間が経っているのでちょっとだけ年季が入ってるかもしれないけど。
私は懐かしさを感じながらファイルを開く。すると中を見たアイさんがポツリと感想を漏らした。
『えっ……なにそれ……こわっ……』
「ぐはぁ……!」
アイさんが本気で引いているファイルの中身は。むかし私が書いたびっしりと文字が記されている大量のメモ用紙であった。
『も、もしかして今までのやつも全部ファイリングしてるんですか……?あそこのファイルとか、あっちのとかも全部……』
「ち、違いますから!これは特別な思い出であって……」
『ごめんなさい。私、黒川さんの事を誤解してました。でも、本当に犯罪とかはしないでくださいね』
「じ、自覚はあるから距離を取らないで!敬語もやめて!」
アイさんが敬語で話してくるなんてすっごくむず痒いと言うか、気持ち悪い。なので即刻やめていただきたい。
『で……結局それは何?』
「これは……私のゲーム友達から聞いた恋愛の経験談をメモしたものです」
演技の参考になるかもという理由と純粋な興味から。昔、ゲーム友達の彼が恋した人物の特徴がこのファイリングしたメモ用紙には書かれている。
あまり彼はこの事を話したがらなかったけどね。それも当然。これは甘酸っぱい恋愛の記録というよりは。辛い思い出というか、彼の失敗談のような物なのだから。
『ふーん、その情報が今ガチにどう繋がってくるの?』
「アイさんのおかげで私はこれを思い出しました。そこで考えたんです。そういえば彼が言っていた人物はリアリティショー映えする人だったんじゃないかと……」
ここに書かれている人物は一言で言ってしまえば明るい美人。マドンナと言っても差し支えないだろう。もっとも、彼の色眼鏡が入ってるかもしれないから鵜呑みには出来ないけど。
とにかく、この人を演じる事が出来れば。今ガチでの注目度は今よりずっと良くなるはずだ。問題として私は彼女の名前を知らない。名前の無い人物を演じるなんて出来るかは分からないけど、とにかくチャレンジしてみる価値はあると考えている。
『つまりあかねは、友達の恥ずかしい失恋を勝手に使って、名前も知らない誰かを勝手に演じるってことだよね』
「そ、その通りであります……」
勿論、失恋を勝手に使われる私の友達と、その相手に申し訳ない気持ちはある。だけど他に方法が思い浮かばない以上。進んでみるしかない。許可を取ろうにも「これから貴方の失恋を参考にして恋愛リアリティショーに出るけどいいよね?」なんて事は絶対に言えない。一応、役作りをする上で私の勝手な設定とかを付け足していって本人そのまんまとかにはならないと思うから大丈夫なはず……
なのでどうか、私の事を許してください。
『まあ、いいか。じゃあ私は静かにしてるから早く終わらせよーう』
「ええ、私も。安心した気持ちでこの前買った新作のゲームに手をつけたいですから」
私はファイルから数多くのメモ用紙を取り出し、壁や机に貼り付けていく。そして息を整えると、余計な事を頭から追い出し。深く、深く集中する。
手元にある情報は特徴だけ、姿どころか本名すら分からないなんて初めてだけど。やるしかない。
『性格は明るく、皆んなから頼りにされている』
『容姿だけじゃなく勉学の方もかなり優秀。まあ、名門校なんだから当たり前か……』
『トレードマークは黒いバンダナ』
『部活は新体操……新体操についてはあまり詳しくないから後で調べた方が良さそうかな……』
『それでいて応援団の副団長に、文化祭実行委員長か……これなら人望が厚いのも当然だね』
『押しに弱い所がある』
『ノリが良く、場を盛り上げるのが得意』
『感情が極まると、彼女独特の概念で喋る事がある』
『だけど意外と真面目で気配り』
『大手飲食会社エリアマネージャーの娘か……彼女のコミュニュケーション能力やリーダーシップは親譲りって感じかな?』
『でも恋愛観についてはかなり拗れた考えを持ってる。過去の出来事が原因?例えば前の彼氏と何かあったとか、酷い別れ方をしたとか……』
『だとしたら他にも悩みはありそう……特に異性からの視線は気にしてるのかな?トロフィーの様な扱いを受けていたり……美人ゆえの悩みってやつが……』
『そうだったら警戒心が強いのも頷けるなー。お金持ち特有の悩みもありそうだし、目立つ美人って言うと後は痴漢とかストーカーとか?もし全部を経験したんだとしたらもっと暗くてもいいと思うけど……』
『いや、意外と心の奥底ではそういう気持ちを持ってたりするのかな?ただ隠してるだけ、見えてないだけで』
『うん、段々分かってきた。つまり私が演じるにあたって必要な感情は──』
この日は結局。夜中まで作業が続いてしまい。私は新作のゲームに手を出す事が出来なかった。
☆
【今からガチ恋始めます】撮影現場
「あかね、おっはよー!」
教室の扉前まで足を運んぶと、明るく心地よい挨拶が私の耳へと聞こえてくる。最近仲良くなった共演者のものだ。
「おはよう、メムちゃん。それとアクアくんも」
「ああ、おはよう」
どうやら他の皆んなはもう教室の中でスタンバイしていて、入ってないのはここに居る三人だけのようだ。
「あかね!髪型変えたの!?」
「えへへ、ちょっとした気分転換にはなるかなって……どうかな?」
今の私の髪型は丁度よく家にあった黒いバンダナで今日あまの時より少し伸びた髪を側頭部で軽く結んで垂らしている。世間で言うサイドテール。
少しでも近づける為にバンダナを用意したのはいいけど、彼女の髪型が分からなかったので。アイさんが提案したサイドテールで現場に来てみた。
「可愛いいい!!すっごく似合ってるよぉ〜!」
「まあ、いんじゃね?」
テンションが上がっているメムちゃんとは対照的に興味なさそうな冷めた目で答えるアクアくん。
「アクたんさぁ〜。もうちょっと気の利いた事言えないのー?」
「メムはどうかしらんが、俺もあかねもここに恋愛をしにきている訳じゃない。あくまで仕事だ。だったらカメラがない所で取り繕ったって意味ないだろ」
「そうかもしれないけどさ〜」
「別に良いよ、アクアくんに期待してないから」
「お、お前……」
アクアくんがそういう性格なのは分かってるし、私としても何となくで聞いただけ。だから特段、何か思う様なこともない。
「それではカメラ回すんでスタンバイの方お願いしまーす!」
少しだけ雑談をしていたらあっという間に本番の時間が来てしまった。
「ほら行くぞ、メムもギャーギャー騒いでないで早く教室に入れ」
「はいはい、分かってますよ〜」
一足先にアクアくんが、それに渋々といった様子でメムちゃんがついて行く。
私はそれを追いかける様に教室の中へと足を踏み入れる。すると見えてくるのは大勢のスタッフさんと残りの共演者である三人。皆が静かに本番の時を待っている。
私は切り替る為、大きく息を吐き、目を閉じ意識を集中させる。本気の演技をカメラの前でやるなんて久し振りだ。始めてじゃないのに手に汗が滲む緊張を感じている。
やっぱりこれは似てるなー。アイさんと切り替わる時に。いや反対かな。あっちの方法がこれを真似たものなんだっけ。
…………
…………………
目を開けた瞬間、景色が変わった気がした。
「皆んなー!おはよー!」
私が声を出した瞬間。何故だか皆んなが呆けた様に驚いた顔をした。おかしい。なんでだろ?ゆきちゃんやケンゴ君、アクア君分かるけどさー。ノブユキ君やメムちょちゃんもなんておかしくない?
「あれれ?どうしたの皆んな?なんか暗い顔になっちゃってるけど?」
するとメムちょちゃんが恐る恐るといった様子で私に質問を投げかけてきた。
「えっと……あ、あかね……?」
「当たり前でしょ!?むしろ今までなんだと思ってたのメムちょちゃん!?」
当然すぎる質問に驚くしかない。すると次に声を上げたのはノブユキ君だった。
「いやなんか雰囲気がっつーか、別人みたいじゃん?」
「正真正銘の本人だよ!?皆んな酷い。もっと私の気持ちも考えて悪口であっても
なんだか場の空気が沈んでしまっている。共演者である皆んなだけじゃなく、周りのスタッフさんも不思議そうな目でみつめている。こんな空気で撮影が上手く進むのか凄く心配だ。
いや、心配するだけじゃダメだよね。こういう時こそ私が率先して動かないと。
「皆んなー!そんな顔してないで今日もアゲて行くよ〜!ウェーーイ!!」
実はこの作品のあかねちゃんはゲームが得意。
あかねちゃんの友人達については分かる人はニヤニヤ出来ると思います。勿論知らない人でも大丈夫な様に描くつもり。