[NEUE 惑星セルダール ビジネスホテル]
[現地時間 AM7:45 天候:曇り]
遭難2日目。
一応は現地の軍属に身柄を保護してもらえたが、現時点でガブリエルには
…いや、そもそもどうして
目覚めたガブリエルは、ただひたすらに自分の置かれた環境を調べ、考えるしか出来なかった。
「…紋章機…時空管理局…どうなっているんだ…」
『キールさん、朝食にしませんか?』
「…誰かに呼ばれた…?」
『呼びましたよ』
「えっ…どういうこと…?」
『お部屋から出てきてくださいな』
「…とりあえず行ってみるか…」
考え込むガブリエルの脳裏に、聞き慣れない言葉が響く。昨日までとは別の、柔和で落ち着いた声である。
しかし、ガブリエルは
混乱するものの、ひとまず言われた通りに部屋の外へ出てみると…そこには蒼い髪と大きな垂れ耳の小柄な女性が立っていた。
「ようやくいらっしゃいましたね、キールさん」
「…あの、あなたは…?」
「私はミント・ブラマンシュ、昨日お話をなさったフォルテさん達とは仕事仲間ですの」
「ブラマンシュさん…ですね」
「軽くパニックになっていらっしゃるようですわね。深呼吸なさっては?」
「は、はい!」
どうもガブリエル本人も気付かないうちに動転していたようだったが、それを見抜くミントがますます奇妙に感じられる。この人には
このセルダールに来てから訳の分からないことが立て続けに起きているが、そろそろガブリエルの頭は情報過多でパンクするような錯覚を感じ始めた。
しかもこの世界の人々は様子を見る限り、自分に合わせて話をしてくれるような感じとは思いがたい。「自分のいる世界」が会話のベースになるのは、人間として仕方の無いことではあるが…。
いや、そもそも目の前にいるこの女性は人間なのか?
「…あの、そんなに悩まなくても大丈夫ですのよ?」
「えっ?」
「食事のあとで基地に向かうと伺いましたわ。私も同席する予定ですから、そこで全て答えさせてください」
「あ…ごめんなさい…」
「謝る必要もありませんわ。突然異世界に来てすぐに順応しろというのが、そもそも無理な話ですもの」
[NEUE:惑星セルダール 空軍基地 応接室]
[現地時間 AM10:13 天候:曇り]
「…そうか、ミントの能力も相当にショッキングだったのか。あたしらは長い付き合いだから、その辺のことを忘れてたよ」
「テレパシーのことについては、確かにもっと早く説明するべきでしたわね。申し訳ないですわ」
「いえ、皆さんが悪い訳ではありませんから…」
今日はちとせとジョニーは居らず、聴取の相手はフォルテとミントであった。
結局、ガブリエルは終始ミントの異様な能力に困惑し、沈黙したまま基地まで来てしまった。途中、何度かミントが気を和らげようと色々話してくれたようだが、それすらも全く頭に入って来なかった。
とりあえずは昨日の話では聞けなかったことを今日話すのだろうが、迷い込んだ当事者がこんな有り様で大丈夫なのか、自分でも不安になるが…それでも沈黙するよりは良い。
「…は、話しましょう…黙っているとまた混乱しそうで…」
「何でも構いませんわ、聞かせてください」
「まず…昨日乗った
「ノスフェラト?」
「アジートの遺跡で見つかったジェット戦闘機だよ。聞いた話じゃ、元々キール君の世界で造られたものらしいけど…」
「あれを
「キール君、今聞いた通りだ。NEUEの中にアジートという砂漠の星があって、
「その様子だと、ジェットエンジンの技術は相当昔に廃れてしまったみたいですね」
「そう。もしかしたら君にとっては寂しい話かもしれないけどね」
「では何故アジートの遺跡にあったのかは不明なのですね?」
「残念ながら、それが分かるような情報も痕跡も無かったよ」
ということは砂漠の惑星に
昨日飛ばした限りでは単なるジェット戦闘機なので、あの
もう少し深掘りしたかったが、それ以上の何かを確定するような情報は無かった。
「ほら、黙ってるとマズイんだろ?他に何かあるかい?」
「では…ブラマンシュさん?」
「あら、ミントで結構ですわ」
「ではミントさん、ブラマンシュ商会というのは?」
「あら、よもやそれを聞かれるとは思いませんでしたわ」
「まぁ、普通は気にしませんよね。まして漂着して早々に…」
「でも気にかけてくださるのはありがたいことですわ。ブラマンシュ商会は私の家業ですの。お陰様で関わった並行世界ではいずれも非常に懇意にしていただけていますわ」
「なるほど、企業国家と捉えれば良いのでしょうか?」
「企業国家?私達は
「その企業国家ってのは、君の世界では普通なのかい?」
「はい、昨日話した
「何だそれ?あたしらの知る限りじゃ、そんな横暴な法人なんか無いぞ」
「でも住民のあなたがそう感じるくらい、
「はい、もしかしたら僕の見当違いかもしれませんけど…」
「何となくですが、話に聞くだけでも相当に経済への影響力が大きな企業のようですわね…」
「ちなみにミントさんは商会でどのようなお仕事を?」
「私はNEUE支部長として、この世界での活動全般を指揮しておりますの。基地への営業も仕事の一部ですわ」
「なんと…」
ブラマンシュ商会は、EDENと繋がるあらゆる世界にパイプがある超巨大商社。少なくとも今朝まで居たホテルの全てにブラマンシュの名があったところを見るに、世界への影響力は絶大であろう。
ホテルのリーフレットには「ブラマンシュ商会は、千切れた世界の復活から始まった」とあったが、聞けばこれは昔EDENであった
「あ…そうだ、あたしからも聞きたいことがあるんだったな」
「はい、何でしょう?」
「どうして同じ言葉を話せるんだい?」
「んっ?言われてみれば、僕もどうしてオーシア語が通じるのか不思議だったんです」
「オーシア語?トランスバール語じゃなくて?」
「なるほど、そちらではトランスバール語と言うのですね」
「ふむ…」
「偶然の一致にしては、あまりにも出来すぎている気がしますわね。あなたの出身は、元々EDEN…というより
「そうだと聞きましたが、これに関しては公用語としてずっと馴染んできた言葉なので何とも…」
「そうでしたか…」
昔から異世界転移をネタにしたフィクションはどの国でも出回っていたが、その中では「言葉が通じて当たり前」というのが暗黙の了解であった(と言うより、異国語では擦り合わせが大変だからなのだが)。
しかし、いざ自分が漂着して早々に言葉が完璧に通じてしまうと、それはそれで便利さを通り越して不気味さを禁じ得ない。
国や民族毎に言語が異なるのは当然だと思っていたが、少なくともUPWに関わる世界の歴史ではトランスバール語以外は衰退してしまったようだ。そしてそれが銀河連邦公用語のオーシア語と全く同じであることが、更に不気味さに拍車をかける。
「ちなみに他には何語を話せますの?」
「他に…母国語なんですけど、エメリア語を話せます」
「エメリア語?」
「Balla con l'angelo!」
「ばら…こん…らんじぇろ?」
「"
「そう言えばエメリア人って言ってたね」
「後は片言ですが…」
「ふむ、何だ?」
「Yo, Kumpel. Du bist immer noch am Leben?」
「…完全に聞き取れませんでしたわ…それもそちらにある言語なのですね?」
「はい、ベルカ語で"
「まるでパイロットが使うような言葉ばかりだな。どこで覚えたんだい?」
「"
「何となくだけど、歴史が垣間見えそうな名言じゃないか?」
「確かにドキュメンタリーは特にその側面が強いですから、是非見てみたいものですわ。そこから世界が見えますもの」
「
祖国エメリアが隣国エストバキアに侵略されたとき、エメリア軍が反撃の合言葉として唱えたのが「天使とダンスでもしてな!」「天使とダンスだ!」であった。今でもエメリア人の多くは、当時のエース"ガルーダ隊"の名と共に覚えている。
また名ドキュメンタリー「OBC ベルカ戦争」は、「よう相棒、まだ生きてるか?」という台詞の中で語られた"相棒"の謎の多さに、ベルカ戦争の終戦から数百年経っても「誰が相棒だったのか?」論争は終わらずにいる。
「あ…いけない、キール君に言うことがあるのを忘れてたよ」
「言うこと、ですか?」
「実は昨日、君の出身世界の政府に身柄の引き渡しを相談しようとしたんだ」
「政府間協議ができたんですか?」
「とりあえず銀河連邦にはコンタクトできたよ。で、やはり向こうでは君が昨日から行方不明ということになっていたんだ」
「行方不明…やっぱりそういう事に…」
「ところが事情を話したら、銀河連邦の内部で大揉めになり始めたらしいんだ」
「銀河連邦の内部で揉めた?」
「行方不明者を異世界から送還するだけで、何故騒ぎになるのでしょう?」
「とりあえずその時の音声データを受け取ったんだけど、一緒に聞いてみようか。あたしらも初めて聞くんだ」
ようやく帰れるかどうかの話が進むと思ったら、事態は暗礁に乗り上げたようだ。
UPWの実務関係者から音声データを渡されるということは、銀河連邦の実務者間で何を言い合っているのかUPWには判断しかねるということか。そして内情の推測を、
これだけでも十分に異常事態だが、中身を聞かないことには何も分からない。
≪…そうでしたか、ガブリエル・キールさんは無事なのですね?≫
≪はい、ですのでその身柄引き渡しについて…≫
≪ちょっと待った、それは我々が引き受けましょう!≫
≪何だと?まさか、お前達がまた何かやったのか?≫
≪何だ、その言いがかりは?ゼネラルにやらせたら時間が掛かるだろう!≫
≪その大学生が異世界に飛ばされたのは
≪…あ…あの…≫
≪すみません、どうもかなりデリケートな事情が絡んできたようです。すぐに折り返しますので、一旦失礼します≫
「…これは…確かにキールさんの無事を聞いて慌て始めた感じですわね」
「どう見る、キール君?」
「…まさか、この話が本当だとしたら…僕は何かの実験に巻き込まれてここに飛ばされたってこと…?」
「…おい、大丈夫か?声が震えてるぞ…」
「…それじゃ、
「キールさん、しっかり!まだそうと決まった訳ではありませんわ!」
「あたしも同感だな。確かに無事を聞いて慌て出したのは引っ掛かるが、問題はその理由だ。実験の絡みで君の身柄を狙うというのは、一理あるが確定じゃない」
「…そうですね…」
「"
「あ…それに関しては、思い当たる節があります」
「あるのか?是非聞かせてくれ!」
先日「大手企業なら異世界移動技術を秘匿しても不思議ではない」と思案したが、それは「ニューコムの実験」に全く心当たりが無い訳ではないからだ。
結局
こんなことがあった後なら、銀河連邦領内の誰かが異世界に飛ばされれば「
「…つまり
「そうじゃないかと思ってます。それに腐っても営利組織ですから、僕を足掛かりにしてUPWやその関連世界にも接触するのが自然です」
「どちらも商社を持っているなら商圏を広げたいのが人情でしょうが、ブラマンシュ商会とは真っ向から対立しますわね」
「じゃあキール君はどうしたい?これでは帰るのに不安があるのは確かだが…」
「…ひとまず銀河連邦の対応が決まるまでは保留すべきなのかと思います」
「私ももし同じ状況に置かれれば、そう判断するでしょう…」
ガブリエルが次の質問を考えようとした、その時…
《緊急警報です。未確認飛行物体が飛来中。攻撃に備えてスクランブル態勢を取ってください》
「えっ?」
「また!?」
「クソっ、昨日もこんなことがあったってのに!?」
「敵襲なんですね?」
「ミント、キール君、来てくれ!もしかしたら君達にも何か分かるものがあるかもしれない!」
「は、はい!」
けたたましいサイレンと共に周囲が騒がしくなる。昨日のように空戦が起きるのだろうか。
しかし昨日パイロットとして乗り合わせたジョニーは非番で、セルダール人では
不安は残るが、今の自分達に出来るのは現場を見に行くことくらいだ。
[NEUE 惑星セルダール 空軍基地 作戦司令室]
[現地時間 AM10:55 天候:曇り]
既にオペレーター達は持ち場でモニターにかじりつき、飛来している
いくらか情報の解析は済んでいるようだが、その情報の粗方は今のガブリエルに分かるものではなさそうだ。
「どんな状況だ?」
「シュトーレン中佐!お戻りでしたか!」
「その話は後で良い!相手は?」
「航宙機のようですが、かなり大きな異物が刺さっているようです」
「識別信号は読めたか?」
「送信はされていますが、読み取れたのは"SILVER HAWK"という単語のみです」
「
「アンノウン、雲を抜けました!映像、出ます!」
司令室のスクリーンに映ったのは、3つの刃状の翼を広げた戦闘機。白いボディに黄色のラインと水色に反射するキャノピー、そして機体側面の「Spirit of AMNERIA」の文字。それがノズルから煙を吹かしながら、ゆっくりと海面に降りようとしている。
その機体の主翼には、まるで木を彫って造られた鷹のような人間大の構造物が、炎を上げながら引っ掛かっていた。
どちらもUGSFでは見ない構造物…いや、このフォルムは恐らく紋章機でもないだろう。それに白い機体に
「…
「確かにあたしにもそう読めるな」
「アンノウン、滑走路に向かっています」
「滑走路…」
「自動迎撃の準備ができました!」
『頼む、降ろしてくれ…』
「いけません、撃たないで!そのまま着陸させて差し上げなさい!」
「ミント?どうした?」
「あの機体のパイロットがテレパシーを使いましたの!」
「何だって!?緊急着陸の用意だ!」
「…あの声、ミントさんにも…?」
突如聞こえてきたのは、恐らくシルバーホークと呼ばれた機体のパイロットの声。しかしミントとガブリエルにしか聞こえなかったところを見るに、テレパシーの類いで伝えたのだろう。
…待てよ、テレパシー?ガブリエルにはE.S.P.に類する能力は無いはずなのに、またしてもテレパシーが届いたというのか。ここに来てから、何故自分の身にかような現象が起きるのか?
あまりにも話が出来すぎて気味が悪くなってきたが、理由を突き止めないと解決の糸口が見えない。ガブリエルはまるで何かに突き動かされるように、声のする方へまっしぐらに走り始めた。
「アンノウン、
「消火班と救護班、急げ!」
「パイロット、しっかりしてください!」
「キールさん!?今行っては危険ですわ!」
「止せ、下手したら機体が爆発するぞ!」
[NEUE 惑星セルダール 空軍基地 格納庫]
[現地時間 AM11:25 天候:曇り]
謎の機体は滑走路への胴体着陸を強行し、派手な火花を上げながら止まった。しかしその時から、機体や異物から出ていた煙や炎は一気に弱まり、消火の必要が無さそうな状態にまで落ち着いた。
すぐさま救護班が到着し、中に乗っていたパイロットを救出したが…その様子を見た一同は驚いた。あのシルバーホークは機体の図体の割に1人の男しか乗っておらず、もう一つの鷹を象った異物からも別の男が救出された。
いずれも最初は機体の損傷が激しく、パイロットも口を利ける状態ではないと思われたが、どちらも奇跡的に軽傷で済んだ様子だった。そして双方共に基地の空き部屋へ通され、ガブリエルも交えて話を聞くことになった。
「…ありがとう、助かったよ」
「身体は大丈夫なんですか?」
「とりあえずはね。しかし、ここは一体どこなんだ?」
「それなんですが…まず、あなたの名前と出身を聞いても?」
「すまない、まずそこから答えるべきだったな。俺はギルバート・アジャーン。惑星ダライアスの者だ」
「何ですって、ダライアス?」
「この世界では聞いたことの無い惑星ですわね」
「聞いての通りだ、ミスター・アジャーン。今おたくは異世界に渡ってしまっているんだよ」
「…やはりそうか、途中からどうもおかしいと思ったんだ…」
「あぁ、言い忘れてすまない。あたしはフォルテ・シュトーレン中佐だ」
「私は民間人のミント・ブラマンシュですわ。お困りでしたら、力になれますわ」
「そうか、心強いな。で、君は?」
「ガブリエル・キールです。僕もこの世界に飛ばされて来ました」
「マジかよ、異世界に渡ったのは俺だけじゃなかったのか…いや、むしろ同志が出来た気分だよ」
ギルバート・アジャーン…シルバーホークと呼ばれた機体から出てきたパイロットは、やはり漂着直後のガブリエルと同じ不安な表情を浮かべていた。
惑星ダライアスという名前も初めて聞くので、
ところが、もう一人は…
「ところで、あんたは大丈夫か?宇宙服で直接ぶつかったようなものじゃないか」
「うぅ…」
「ご無事ですか?話せそうですか?」
「
「まぁ、言葉が通じないなんて!?」
「嘘だろ、それじゃどうやって話を聞くんだ?」
「
まさかの「言語が分からない」事態が、本当に起きてしまった。
今まではトランスバール人もダライアス人も
フォルテもミントもギルバートも、虚を突かれたように慌て始める。ところが、ガブリエルは彼の言葉を聞くと自前のスマートフォンを取り出し…そして翻訳アプリを使った。
「…あれ?この言葉、もしかして…」
「
「あなたのお名前は?」
≪你叫什麼名字?≫
「
≪私は
「
≪私の言葉が分かりますか?≫
「機械のお陰で、少しなら分かります」
≪因為有了這個手機,我可以學一點你的話了≫
「…おい、キール君…そっちの翻訳機が使えるってことは…」
「多分ですが、同じ世界から来た人ですね。出身国は違いますけど…」
ガブリエルにはこの言葉に聞き覚えがあった。たまに
それが何故衝突した状態でここにあるのか気になるが、そもそも飛翔散弾機に乗っていた呉林とまともに話せないのでは、情報を聞き出す余裕はない。
「フォルテさん、ミントさん、この言語に聞き覚えは?」
「私は全く心当たりがありませんが…フォルテさんは?」
「うーん…とりあえず話せそうな人間を片っ端から集めてみるか?」
「時間は掛かりますが、それしか無さそうですね…」
「
≪大丈夫ですか?≫
「何とかして話せる人を探してみます」
≪我們將嘗試尋找可以與您交談的人≫
「…ふむ…」
「さぁ、こちらへ…」
呉林はやって来た守備兵に連れられ、別室に入っていった。今は自力で応対できない為、話せる人が現れるまでは放っておくしかない。
今話を聞けるのはダライアス人のギルバートのみ。こういう時、言葉が通じるのは非常に心強い。
「えーと…アジャーンさん、ここに来るまでの経緯はどうでしょうか?思い出せますか?」
「俺か?さっきまで
「アジャーンさんは一目で異世界に来たことが分かったんですの?」
「まぁな、到着して早々に
「そうか、確かにそのバースト機関とやらは、あたしらの世界には無いな。世界を跨ぐと法則の違いで使えなくなる技術も、存在するのが自然か」
「で、
「無線のチャンネルが合わなかったか、そもそも通信方式が違うんだろうな。唯一読めた暗号が"シルバーホーク"だったんだ」
「そうか、それは読めたのか。で、普段テレパシーは信じないんだが、ダメ元で助けを念じたら滑走路が空いたんだ」
「あのテレパシーは私が受けましたわ。自動迎撃されるまで、本当に間一髪でしたのよ」
「マジかよ、念じてラッキーだったんだな…」
なるほど、ギルバートは本職のパイロットらしい。緊急着陸があんなにスムーズだったところを見るに、相応の実戦経験も積んでいるようだ。
しかしテレパシーを信じない彼がテレパシーに頼るというのは、相当切迫した状況だっただろう。それだけ、彼が乗る
「あの機体には"Spirit of AMNERIA"とありましたが、アムネリアって?」
「シルバーホークの原型が作られた星、惑星アムネリアのことだよ。今はどうなったか分からないけど…」
「さっきの飛翔散弾機はどこで引っ掛けたんですか?」
「あの木で出来た鷹か?
「そうでしたか…」
「キール君だったか。君も異世界に来た身だろうに、随分と積極的に聞くんだな?」
「あ…いえ、僕の時とはセルダールに来るまでの経緯が違うみたいで、気になったんです」
「セルダール?この世界のことか?」
「世界の名前がNEUEで、セルダールは国の名前です。僕も昨日聞きました」
「ふむ、NEUEのセルダールね…やはり聞いたことがないな…」
ふとフォルテとミントを見ると、ガブリエルがあまりに積極的に話を聞き出すせいか、感心したような顔をしていた。
特にフォルテは漂着直後のガブリエルを見ているからか、安心したような表情さえ浮かべている。
「キール君、凄いな。あたしらが聞きたいことを先に言ってくれちゃったじゃないか」
「いえ、そんなつもりは…」
「悪いことではありませんわ。いきなりの異世界で適応できない可能性も有り得ましたし、これはむしろ喜ばしい適応力ですわ」
「あ…あはは…」
その後、ギルバートの調査はガブリエルと同様に翌日へと持ち越された。EDEN軍からすれば、
[NEUE 惑星セルダール ビジネスホテル]
[現地時間 PM6:22 天気:曇り]
結局、ガブリエルは昨日と同じホテルに帰され、ギルバートも呉林も別室で休むこととなったようだった。やはりトランスバール皇国…と言うよりUPWの対応の迅速さは、一度や二度異世界人を受け入れた程度のものではない。
シャワーを浴びてベッドに寝転がるガブリエルだが…やはり「
「…適応力が高い、か…」
思い返せば、まだ遭難2日目。まだセルダールのことも、UPWのこともほとんど知らされていないはず。
なのに先程のギルバートへの質問は一体何だったのか。あれは本来、あの場におけるUPWの代表者たるフォルテが聞くべき話であったはずなのに。あれではガブリエルがUPWに属しているような格好ではないか。漂着した自分が別の漂流者に聞き込んで、一体何になるというのか?
銀河連邦内部で自分の扱いを巡って、ゼネラルとニューコムが揉めるのも気掛かりだ。まさか、自分は本当に何らかの実験に巻き込まれてここに来たというのか?であれば、同じ
「…ダメだ、考えるとまた疲れてくる…」
いくら思案を巡らせても、先の自分の行動を説明できない。ただの好奇心にしては出来すぎている。
これ以上考えても何も進みそうにない…そう考えたガブリエルは、眠ることにした。
恐らく明日になれば、自分達の処遇も何らかの前進がある…そう信じて。