スターデュランダル(仮)   作:AI Nemo

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Verse.4 囁くもの

[NEUE 惑星セルダール 空軍基地内 会議室]

[現地時間 PM4:22 天候:快晴]

 

「…まず、君の名前は?」

「ガブリエル・キールです」

「出身地は?」

「エメリア共和国です」

「出身世界は?」

「分かりません、ストレンジリアルと呼ばれているとは聞きました」

「君が今話している言葉は何語かな?」

「オーシア語です」

「戦闘機に乗ってNEUEに来たらしいけど、転移前の戦闘経験は?」

「ありません。遊覧飛行をしていただけです」

「ではUPWの紋章機に乗ったのは、純粋に実験に協力する為だったのかな?」

「はい。少なくとも僕もアジャーンさんも、試験飛行の段階では戦うつもりはありませんでした」

「それで非常事態になったから、一緒になって戦ったと…」

「そうです」

「そうか、分かった。何故この世界に来たのか分かるか?」

「分かりません。タンゴ線付近を飛んでいたら周囲が光って、ここの上空に飛ばされました」

「何か変わった操作はした?」

「何もしていません。そもそも事前に業者に教わった操縦しかできない設計です」

「なら君や機体が原因ではなさそうだな…」

 

 アイアンフォスルを撃沈した後、ガブリエルは諮問官とおぼしき男女に話を聞かれていた。しかも一人はまるで妖精を思わせる小ささだ。

 誰を見ても名前は分からないが制服を見る限り、右から順にUPW、時空管理局、UGSF、ダライアス軍、グラディウス軍の各職員と思われる。

 別室で待機しているギルバートにも同じ様に話を聞くのだろう。彼は正規の軍人である為、ガブリエルより話が長引くのではないだろうか。

 簡単な聴取が一通り済むと、先程の妖精のような背丈の女性が話しかけてきた。

 

「…キールさん、時空管理局特務六課のリインフォース(ツヴァイ)です。実は会談中、UGSFとUPWの許可を得て、あなたの乗ってきた戦闘機を調べました」

「あのエアロコフィン(デルフィナス#2)ですね。どうでしたか?」

「形状こそ他の世界と比べて異質ですが、やはり異世界に渡れるような装備はありませんでした。あなたが原因でないことは確定しました」

「そうなのですね」

「協力の上でフライトレコーダーを解析していますが、あなたが飛んでいた空域も失踪直前までに異状は無かったそうです」

「空に問題があったわけでも無かった…」

「今のところ、時空管理局としては"事故に巻き込まれた"可能性を見ています。元の世界へ送還するまでに、また色々聞くかもしれません。一応覚えておいてください」

「分かりました」

 

 リインフォース(ツヴァイ)、あんな身なりではあるが時空管理局特務六課の職員。一緒に座る他の軍の職員も、彼女の姿に驚愕したに違いない。

 しかし話を聞く限りでは、ジョニーが言うような好戦的な様子は見受けられない。「特務六課は異様に強く暴力的なセクション」ということだったはずだが、思い違いだったか。

 いや、彼女の担当は事務や外務だとしたら…1人を見て組織のすべてをはかろうとするのは無理だろう。

 次に話し掛けてきたのは、何故か宝石のようなものを軍服に埋め込んだ男だった。あの軍服は、フォルテ達が着ているものと意匠が似ている。

 

「ガブリエル君、僕のことは気軽にタクトと呼んでくれ」

「タクトさん…すみません、あなたのご職業は?」

「タクト・マイヤーズ、UPWの理事長をしている。だけど堅苦しいのは嫌いだから、構わず砕けた言い方で良いよ」

「覚えておきます」

「それで、さっき技術部門に手を貸してもらったついでで申し訳ないんだけど…まだ会議に時間が必要なんだ」

「すぐに帰れる見込みは無いのですね」

「そうなんだ、すまない。その間、有事には君にもできれば飛んでもらいたいんだけど、無理かな?」

「僕がですか?民間人なんですが…」

「分かっているよ。だけど…実は今回の一件の後から、他の部隊も戦闘が激化しているんだ。他部隊からの援護を見込めなくて、その辺も相談中なんだけど…」

「…それで民間人の僕の手も借りたいと?」

「マズイことなのは分かってる。でも今は、君の力を頼りたいんだ。頼む!」

「僕に出来ることなら手伝いますが、その敵とは?」

 

 タクト・マイヤーズ。話し方から推察するに、普段はかなりヘラヘラした感じなのだろう。しかし漂流者から話を聞くために、わざわざ連合政府の代表者が来るというのも、事態を重要視する姿勢が窺える。

 タクトが…というよりこの基地のUPW軍が援軍を要請できない事態に陥っているのも引っかかる。呼び寄せたUGSFとダライアス軍どころか、居合わせたグラディウス軍に協力を打診するのも、民間人まで使おうという話も、相当な焦りがあってのものだろう。

 そこまでして対峙する敵とは何か…答えは先程戦ったパイロットが出した。

 

「それについては俺から話そう。グラディウス軍のケヴィン・B・ジェイソン、さっき一緒に飛んだビックバイパーのパイロットだ」

「あなたがさっきのビックバイパーに?」

「そうだ。君は慣れない機体に乗って、あんなに鋭い飛び方をした。だから皆君を頼ろうとしているのさ」

「はぁ…」

「実は我々がセルダールに寄っていたのは、その近くに我々の敵対する種族が迫っているからだ。そいつが今、各地のUPW軍と交戦している」

「何者なんですか、それは?」

「我々は奴らを"バクテリアン"と呼んでいる。かれこれ1700年は戦っているな」

「バクテリアン…」

「グラディウス軍としては、他の国にまでバクテリアンの影響が及ぶ事態は避けたい。そこで我々としても、軍事協議に参加している」

「事情は分かりました。でも、僕に出来るでしょうか…」

 

 ケヴィン・B・ジェイソン。今回派遣されたのが1師団のみだからか、グラディウス軍からは重役ではなくパイロットが聴取に来ていた。

 彼が腕利きのパイロットであることは先程の戦闘中に分かっている。その彼からしても、ガブリエルの飛び方は見所があるというのか。

 嬉しい一方で恐ろしい気もするが、仮に自分も戦うとしても先程は紋章機(ホーリーブラッド)に乗っていた。あんな慣れない機体で自分の全力を出せるとは到底思えない。

 ところが…

 

「では我々から提案です、キールさん」

「あなたは?」

「UGSFのイリーナ・スターレンスです。あなたを助けて早々に引き揚げたかったのですが、この状況ではそれも出来ないことはお分かりでしょう」

「僕にも事情は分かりました」

「現在、我々が用意している戦力はほとんどが宇宙用です。艦隊のパイロットもほぼ全員が航宙機専門です」

「エアロコフィンは無いのですか?」

「2機用意しています。あなたが乗ってきた機体や、この基地で保管されている機体をあわせて4機です」

「全部で4機ですか…」

「ただし、あなたは民間人です。積極的な戦闘は避けてください」

「分かりました」

「また、作戦中は先導するパイロットを用意します。彼女の指示に従うように」

「そのパイロットの指示に従うのですね。かしこまりました」

 

 イリーナ・スターレンス。彼女が名将アレクセイ・マイヤーの副官なのか。リインフォース(ツヴァイ)と比べると、聡明で冷淡なイメージを受ける。

 民間人のガブリエルに対しても全く優しくする様子が無さそうだが、それは恐らく既に自分を戦力として数えているからだろうか。航空戦力の必要性が想定外だったところからも察するに、UGSFもガブリエルの起用を嫌とは言えなかったらしい。

 他に聞くことは…まだあった。

 

「先程バクテリアン軍がUPW領内を攻撃しているという話でしたね。ベルサーはどうしたのでしょうか?」

「ベルサー艦隊は今、同じ領域でバクテリアン艦隊と交戦中です」

「交戦中?」

「あ…失礼、ダライアス軍ヅーヌマ方面艦隊のパイロット、マリンです」

「マリンさん、その交戦中の領域というのは?」

「この惑星セルダールの衛星軌道です。既にUPWが保有する人工衛星が数機、ベルサーとバクテリアンの交戦で被害を受けています」

「そんなところで戦闘を!?」

「そうです。直にどちらか、もしくは両方が上空に現れるでしょう」

「…状況は分かりました」

「我々からも、協力をお願いします」

 

 ダライアス軍のパイロット、マリン。先程共に戦ったハルシオン隊の無線では、彼女とおぼしき声は聞こえなかった。ということは、何らかの理由で出撃しなかったのか。

 ヅーヌマ方面艦隊としても、セルダールから戻れなければ本来の持ち場に着けない。手早くバクテリアンとベルサーの包囲網を突破して、ヅーヌマに戻りたいはずだ。

 しかしハルシオン隊は先程のアイアンフォスルとの戦闘で損耗しているし、何よりギルバートの居た部隊は全滅している。彼の部隊が何機編成だったのかは不明だが、1部隊の全滅が艦隊にとって痛手でないはずがない。ダライアス軍にとっても、猫の手も借りたいと言ったところか。

 

「…分かりました、僕でよければ飛びます」

「ありがとう、ガブリエル君。話は以上だ、必要になったら呼ぶから自由にしてくれ」

「あの、僕が使うエアロコフィンはどこでしょう?」

「エアロコフィンは全てこの基地の格納庫に移してあります。場所は現地の作業員に聞くように」

「分かりました」

 

 この様子では、関わった全ての軍がガブリエルを頼りたい状態にある。その良し悪しはさておき、実際に人手が必要なのだ。

 民間人が軍関係者に請われて戦うことには気が引けるが、ガブリエルは意を決して会議室を出ていった。

 

 

[NEUE 惑星セルダール 空軍基地内 格納庫]

[現地時間 PM5:00 天候:快晴]

 

 

 格納庫に来てみると、確かにエアロコフィンが4機並んでいた。そのうち2機はデルフィナス#2(R-102)ノスフェラト(CFA-44)。しかもデルフィナス#2(R-102)は整備どころではない大改修を施され、ガブリエルが乗ってきた時とはまるで別物のような印象を受けた。

 特徴的な胴体とエンジンを上下に離した構造(ブレンデッドダブルボディ)の下部構造には、流麗なフォルムには釣り合わない戦略レーザー(Tactical Laser System)が埋め込まれ、機体そのものもレンタル業者から元々の製造元だったニューコム(Neucom.inc)のカラーリングに改められている。

 そして青いボディを前後に貫くように、白い線が描き込まれていた。その先端には、怪鳥のシルエット…エメリアの英雄・ガルーダ隊のエンブレムと同じ鳥が描かれていた。

 UGSFはガブリエルがエメリア人であることを知っているはずだが、わざわざ機体にそれを意識させるデザインを施す意味があるのか?

 

「よっ、お疲れ」

「ジョニーさん?待機中なんですか?」

「まぁな。もうそろそろギルバートの聴取も終わるはずなんだが…」

「アジャーンさんは軍人なんでしょ?長引きそうなイメージなんですけど…」

「それがな、盗み聞きができたんだが…話すことは精々シルバーホーク部隊の再編くらいしかないらしい」

「それだけですか?」

「所属艦隊が来たというのが大きいのかもな。結局機体(ジェネシス)も身柄も引き渡したらしいし…」

「なんと、民間人じゃないというだけで話は早く済むものなんですね」

「何故NEUEに着いたのか、あっちにも原因が分からないんだろ?聞いても無駄だと思ったんじゃないか?」

 

 隣に来たジョニーは、時空管理局が来ているというのに全く緊張していなかった。上空で"クラフティ"と呼ばれていたときに元々の列機が居たということは、部下もいるはずだ。その人達を放っておいて、自分を探しに来たのか?

 漂流者の自分達を気にしてくれたのかもしれないが、そうだとしてもわざわざエアロコフィンの格納庫まで探しに来るものだろうか。

 しかし少なくとも、ギルバートが無事にダライアス軍に戻れたことは喜ぶべきなのかもしれない。同時にギルバートを含めて損傷した部隊を再編することも、恐らくヅーヌマ方面艦隊の予定には入っていたのだろう。その意味でも、すぐに帰れない上に民間人のまま空へ上げられる自分よりはマシだ。

 …そう考える間に、本当にギルバートがやってきた。その顔は心なしか、若干晴れやかだった。

 

「…おっ、噂をすればギルバートだ」

「待たせたな。ちょっと話したいことがあってな」

「ふむ、聞かせてくれ」

「艦隊で部隊を再編することになった。部隊名はフォース・アルカディア、俺はその2番機になる」

「2番機?元々は何番だったんだ?」

「15番だから大躍進だな。リーダーはマリン大佐…キール君は話してるよな?」

「艦隊所属の女性パイロットですね」

「あれ、実は人間じゃなくてアンドロイド(AIT)なんだが…メチャクチャ腕が立つそうだ。彼女が乗るシルバーホーク(フォーミュラ)も、人間が乗れない特別仕様って噂だ」

「人間が乗れない?それ、相当な高機動とかって話か?」

「多分な。ついていくこっちは大変だぞ」

「大変とか言う割にはウキウキしてるように見えるぞ」

「んっ?あぁ、ようやく俺もシルバーホーク(ジェネシス)に戻れるからだろう」

「まさに生粋の飛行機野郎、ってところですか?」

「飛行機野郎か、悪くない表現だ。飛んでる間は楽しいから合ってるかもな」

 

 なるほど、ギルバートが喜んでいたのはシルバーホークにまた乗れるからか。と言っても、それ以外で空に上がったのは紋章機(ホーリーブラッド)に乗ったときのみ、それもたかだか2時間あるかどうかだ。それでもシルバーホークが良いと思うのなら、やはり世間一般で言う飛行機野郎と同じものがあるのかもしれない。

 さっきのマリンというパイロットは、ギルバートが身構えるほどのトップガンと見られる。アンドロイドということは、人類が耐えられないような高機動も苦ではないということだ。その特徴を活かした戦果は、怖いもの見たさで気になるのが人情か。

 

「…ガブリエル・キール君だね?」

「えっ?はい、そうですが…」

「…あなたも空に上がるんだって?」

「どうしてご存知なんですか?」

「私があなたを引っ張ることになってるからね」

「ということは、UGSFなんですね」

「そうだよ」

 

 ふと声をかけられた方を見ると、そこに居たのは青いミドルヘアの美女だった。しかしその身体はUGSFで見られる青いL.S.U.S.(UGSFパイロットスーツ)に包まれており、いかにもこれから航宙機…いや、航空機(エアロコフィン)に乗り込むという様子が見て取れた。

 UGSFは今までに話を聞いた他の勢力と違って、宇宙と空中・重力下を自由に往来できる機動戦力はあまり無い。当然、基本的に航空戦力と宇宙用部隊は別個に編成される。だから航空戦力はこの女性パイロットだけで、ガブリエルにも頼らなければならないのだ。

 

「そちらのお二人は?」

「UPWのジョニー・ウォーカー、クラフティです」

「ダライアス軍のギルバート・アジャーン、バウスですが…あなたは?」

「私のことはインパルとお呼びください」

「インパル嬢、出撃ですか?」

「まもなくベルサーが再度上空に現れますので…」

「マジか!?準備しなくちゃ!」

「やべっ、そうなると俺はまず艦に戻るところからだ!」

 

 インパルと呼ばれたパイロットが敵襲目前と伝えると、2人の異郷のパイロット達は慌てて格納庫を飛び出していった。ホーリーブラッドもシルバーホークも離れたところにあるのだから、急ぐのも当然か。

 そして後には、ガブリエルとインパルだけが残された。

 

「…あの…」

「はい、これ」

「…これは造花ですね…赤い宿根草(ガーベラ)?」

「どんな花言葉か知ってる?」

「…分かりません。何でしょう?」

「"挑戦"だよ。民間人なのに頑張って飛ぼうとしてるから、その勇気を認めようと思ってね」

「そんな、わざわざ用意したんですか?」

「それに、名前もガブリエルでしょ?だからガーベラなら呼びやすいかと考えたんだ。さっきまで緑の勇者(サンドラ)だったでしょ?」

「緑の戦士?サンドラってそういう意味があるんですか?」

「そう、古いおとぎ話だけどね」

「知らなかった…」

「今後は空ではガーベラって呼ぶから、覚えておいて」

「分かりました」

「そこにあるエアロコフィン、好きなのに乗っていいから」

 

 インパルはガブリエルに赤いガーベラを渡すと、並んでいるエアロコフィンの1機に乗り込もうとする。

 わざわざ造花を用意して手渡し、それをTACネームに指定する。変なことを言うパイロットだが、この人がこの後ついていくべき人だ。仮に本当に変人だとしても、我慢せねば。

 ふと、ガブリエルは思い出したように呼び掛けた。

 

「…あの、インパルさん!」

「何?」

「本当のお名前は何ですか?」

「本名?」

「…」

「転移前はどこに居たの?」

「えっ?ユージアのコモナ大学です」

「コモナ…ニューコム(Neucom.inc)のロケットセンターがあるところか」

「あの…」

「じゃ、出身は?」

「出身?エメリアのケセド島です」

「意外だね、グレースメリアじゃないんだ…」

「…あの、一体何を聞いて…」

「…私の名前は、無事に帰れたら教えてあげるよ」

「えっ?」

「そうすれば生き延びる理由になるでしょ?」

「そう…でしょうか?」

「じゃ、上で待ってるから…」

 

 ただ名前を聞こうとしただけで、こうも勿体ぶられるとは。それも理由は「生き延びるよう仕向けるため」と来た。やはり普通の人ではないらしい。

 更に聞こうとしても答えてくれそうにないので、仕方なくガブリエルも出撃準備に入ることにした。

 

 

[NEUE 惑星セルダール 空軍基地 上空]

[現地時間 PM5:49 天候:快晴]

 

 

 まもなく現地時間は午後6時。

 もうそろそろ夕焼けが見えてもおかしくない時間だが、空は昼間と全く変わらない青空が広がっている。そして空の彼方には、またしても魚介類の姿が見て取れた。あれはオウムガイだろうか?

 

≪敵艦は目視圏内まで降下、マッドホイール(オウムガイ型戦艦)です≫

≪降りてきたのはベルサーだけか?≫

≪その後方からコア級戦艦が追撃中、バクテリアン軍です≫

≪もつれたままおいでなすったか!≫

≪どっちも打たれ強い。消耗を待っていては周辺への被害が拡大するぞ≫

 

 結局デルフィナス#2(R-102)を選んだガブリエルの前には、インパルが乗っていると思われるエアロコフィンが共にタキシングをしていた。機体の型式番号はADF-11、名をレーベン(Raven)と言うらしい。

 なるほど、マイルカ(デルフィナス)ワタリガラス(レイヴン)、更には(シルバーホーク)(ビックバイパー)天使(ホーリーブラッド)との協同で、オウムガイ(マッドホイール)コア級戦艦(ビッグコア)を墜とすか。なかなかどうして、先鋭的な組み合わせだ。

 

≪そのコフィン、ガルーダを描いてもらったんだ?≫

「知らない間に描かれてました」

≪エメリア人だよね。やっぱりガルーダ隊は知ってるの?≫

「ケセドの住民はよく話題にしましたから」

≪グレースメリアなら首都だから分かるけど、ケセド島でもかぁ…≫

≪フォース・アルカディア、全機発艦を確認≫

≪ルナ・アンジェラス隊、離陸完了!≫

≪サイファー、パトリオットは?≫

≪全機正常だ。パトリオット隊はこのまま交戦する≫

≪UGSF、先陣はみんな上がった!離陸できるぞ!≫

≪インパル了解、離陸許可を得た≫

≪ガーベラ、臨時編成を実施する。君のコールサインはストライダー2(競歩選手2号)だ。インパルに続け≫

「了解!ガーベラ、離陸します!」

 

 ゆっくり話す間も与えられず、ガブリエル…サンドラ改めガーベラは空に上がっていく。

 デルフィナス#2(R-102)はセルダールに着いたときと比べて、信じがたいほどに身体が軽く、それでいてどっしりとした安定感と力強さをガブリエルに返している。コモナを出たときとは全く別物のような印象だが、何故か恐怖を感じない。ボディ形状…ひいてはコフィンシステムから伝わる操作感が全く悪化していないからか?

 スロットルを全開にした瞬間、今までに感じたことの無い強いトルクが、ガブリエルの身体をシートに押し付け、その脳を激しく揺らした。しかし機体はパイロットを襲う危険などものともせず、翼を動かさずとも揚力だけで勢いよく離陸していった。

 

≪ストライダー隊、離陸成功。そのまま迎撃行動に入れ≫

「うぅ…何だ今のは…」

≪やっぱり耐えられなかったんだね≫

「来たときとは全くの別物ですよ」

≪アップデートをずっとサボったまま使ってた機体だからかな≫

「ということは、これが最新の仕様なんですか?」

≪一応はね。どんどん行くからついて来て!≫

「あ…了解(コピー)!」

 

 インパルのレーベン(ADF-11)は既に臨戦態勢のようで、ガブリエルを気にせずどんどん前進していく。他の部隊がどんどんレーザーやウェーブビームを放つ中、彼女も緑のレーザーを連発して小型機の撃墜に勤しんでいた。

 置いていかれないように追うガブリエルだが、やはり先のアイアンフォスル戦のように小型機の追尾が激しい。自分が反撃に回るのは、かなり困難なように思えた。

 そもそもこんな状況が予想できていながら民間人を起用する時点で、この青年には囮としての役割しか期待されていないのかもしれないが…。

 

≪大丈夫?ついて来れてる?≫

「辛うじてです」

≪それだけで上出来だよ。追っ手はこっちに任せて≫

「はいっ!」

 

 そう言うと、インパルのレーベン(ADF-11)はガブリエルのデルフィナス#2(R-102)の目前で、軽やかに急減速宙返り(クルビット)機動を取る。

 あっさりとレーベン(ADF-11)を追い抜いたかと思った時には、その後方でTLS(レーザー)の射出音と爆発音が聞こえ、デルフィナス#2(R-102)を追う小型機は居なくなっていた。あの宙返りのわずかな時間で、追っ手をみんな撃墜したというのか?

 そういう空戦は昔のエルジアの無人機(UAV)に多く見られた芸当だと聞いたが、こんな時代でも再現するパイロットが居るのか。

 

「流石です!」

≪そっちこそ、よく逃げ切れたね。さぁ、まだまだ行くよ!≫

了解(ウィルコ)!」

≪ストライダー、こちらパトリオット1・サイファー。これよりビッグコアを撃破する、援護を求む≫

≪ストライダー1、了解≫

「んっ?ゼロ(サイファー)?」

 

 パトリオット隊はケヴィンの部隊、つまりグラディウス軍のビックバイパー部隊。先程ガブリエルを聴取した男が隊長だ。見たところ2機ずつの小隊(エレメント)を複数組んで飛んでいるようだが、これがグラディウス軍の基礎編成なのか。

 そのパトリオット隊は巨大戦艦の片割れ、ビッグコアの中心部分を集中的に攻撃している。本体のレーザーと周囲の支援機(オプション)からも撃たれるレーザーの攻撃は、非常に強力に見える。

 しかしマッドホイールとの距離が近いためか、部隊はバクテリアンとベルサー両軍の小型機の最前線に飲み込まれていた。

 

≪アルカディア1 エミリファイからルナ、ベルサーを押し上げたい≫

≪クラフティ了解、援護に向かう≫

≪紋章機隊はルナ隊ってコールするんだね≫

「アルカディアということは、バウスが?」

≪サンドラ、生きてるか?≫

≪インパルからバウス、ガーベラって呼んであげて!≫

≪覚えとくよ≫

 

 多数のシルバーホークで編成されたフォース・アルカディアは、先の防衛戦と同様にバーストビームとウェーブショットで小型機を薙ぎ払う。記憶違いでなければ、指揮しているのはケヴィンと共に聴取に来ていたマリンのはずだ。マリンが本当にアンドロイド(AIT)で、生身の人間では有り得ない高機動を実現できるなら、この局面を変えられる可能性は高い。

 しかし彼女はジョニーの指揮するルナ・アンジェラス隊を援護として呼んだ。素人目にはあまり分からないが、先の亜空間(ビッグバトルフィールド)をそれほど警戒しているのだろうか。ただでさえアイアンフォスルが打たれ強くて困ったところに、亜空間(ビッグバトルフィールド)で強化されたのだから、その懸念は分からなくもない。

 

「よし、こっちも出来ることを…」

≪サイファーからストライダー2、君はまだ実戦に慣れていないだろう。積極的には仕掛けず、通りすがりの敵に銃撃が当たれば上出来だ≫

「やってみます。ガーベラ、交戦(エンゲージ)!」

≪おっ、撃つの?頑張ってやってみなよ≫

 

 どことなくインパルの反応がそっけないのは、自分を戦力として数えていないからだろう。ほぼ単騎で戦線に出られるようなパイロットにとっては、精々素人に毛が生えた程度でしかない大学生の腕などアテにならなくて当然だ。それでもまだ列機にしてもらえるだけ、パイロット冥利と言うべきなのかもしれない。

 

 

 

 ところが、数分も経たないうちに事態は変化した。

 

≪タワーから全機、交戦圏内に不明機が侵入!数は6、機種は…ダークエンジェルだ!≫

≪何だって!?≫

≪ダークエンジェルとは?≫

≪かつてEDENを苦しめた反乱(エオニア)軍の紋章機だ。一昨日も現れたってのに、どうしてこのタイミングで?≫

≪誰が行ける?パトリオットは行けない!≫

≪アルカディアも動けない!まもなくBBF(ビッグバトルフィールド)が来る!≫

≪それじゃルナ隊も動けないぞ、援護が要る!≫

「んっ?それじゃベルサーが優勢?」

 

 マリンの言う通り、周囲は黄色い雲に包まれ始める。マッドホイールが追い詰められた証拠だ。であればベルサーはここから猛反撃に移行するはずだ。

 強化されたマッドホイールの攻撃が、ビッグコアを相手にどこまで通用するのかは未知数だ。しかし潰し合いに持ち込む意味では、これは少なからず有効かもしれない。

 そうなれば、ダークエンジェルと撃ち合える。今のデルフィナス#2(R-102)でなら、自分でも撃ち落とせる可能性がある。敵の出自がEDENやNEUEの陣営なら銀河人(ギャラクシアン)とは戦い慣れないし、それならいくら紋章機でもアップデートの済んだニューコムの戦闘機(Rナンバー)で張り合える。

 

「ストライダー1、敵艦の様子はどう見ますか?」

≪ガーベラ?急に何を言い出すの?≫

「ビッグコアとマッドホイールを殴り合わせて、潰し合いに持ち込みたいです」

≪それ、無理だって話じゃなかった?やり合わせる間に被害が広がるって…≫

≪クラフティからガーベラ、さてはダークエンジェルとやり合う気だな?ノスフェラト(CFA-44)で撃ち落としたから自信をつけたんだろ?≫

「ジョニーさんにはバレましたか」

≪そうか、ダークエンジェルから見ればガーベラは異世界人なのか。戦法が違えば素人でも勝機があるかもしれん≫

 

 インパルは反対するが、ジョニーとケヴィンは妙に乗り気に聞こえる。特にジョニーはノスフェラト(CFA-44)に同乗してダークエンジェルを撃ち落とした。その経験から、ある程度の勝機を感じ取れるのだろう。

 

≪よし、そういうことならパトリオットの援護も引き受ける!やっちまえ、ストライダー!≫

≪ここまで削れば、戦艦同士を潰し合わせるのもできるだろう。提言をした勇気、見せてみろ!≫

≪頼られてるじゃない、ガーベラ。インパルもこっちはアルカディアに任せて!≫

≪仕方ないな…方位090、行くよガーベラ!≫

「ありがとうございます!」

 

 

 

 半ば全員をその場の勢いに乗せる格好で、バクテリアンとベルサーの戦いから離れるUGSF機。話が通じるかも不明なダークエンジェルを迎撃する役目は、1人のエースと1人の大学生に委ねられた。

 戦線から離れる最中、ふと冷静になってガブリエルはインパルのレーベン(ADF-11)を見るが、意外にもインパルはどことなく自信を覗かせる声をしていた。

 

≪どうしてあんなことを言ったの?遭難初日に迎撃できたから?≫

「まぁ…そうです」

≪…実は私も、そのダークエンジェルが何なのか気になったんだ≫

「そうなんですか?」

≪ちょっと理由があってね…≫

「…見えてきましたね」

 

 機体のカメラが捉えた映像には、確かに遭難初日に見たものと同じ紋章機が映っている。本当にダークエンジェルが飛来したのか。

 すかさずインパルはガブリエルの前に出て、無線での勧告を行う。口調を聞くにかなり慣れた様子だが、彼女にはそういった経験が多いのだろうか?

 

≪退避勧告空域から方位090の不明機に次ぐ。所属と飛行目的を明かせ≫

「…声がしますね。応答みたいです」

『…我らは虚の存在ウィル、世界の支配者なり…』

「…ウィル…?」

『お前達は世界を揺るがす新たなイレギュラー要素…消えよ』

≪虚の存在?あなたは異次元生命体(バッツーラ)なの!?≫

異次元生命体(バッツーラ)?」

『バッツーラ…かような種族など、この世界には無い。そんなものを知るのは、やはり異世界より来たるイレギュラー…』

≪タワーからストライダー、そいつは最近NEUEを破壊しようとした、姿のない悪魔だ!敵と認定し攻撃せよ!≫

≪…素性は後でUPWに聞くべきみたいだね。やるよ!≫

了解(ウィルコ)!」

 

 相手はウィルと言ったが、話を聞く限りではそれが国家なのか非常に怪しい。

 インパルがウィルをバッツーラに例えたのも妙だ。ガブリエルはそんな種族がUGSF世界(ストレンジリアル)に居るなんて聞いたこともない。

 少なくとも彼女には、両者に共通する何らかの特徴を見出したのだろうが…それを考える前に、ダークエンジェルが一斉に襲い掛かってきた。

 

『行くぞ、異界の悪魔よ…』

≪悪魔とはよく言う!≫

「…やるっ、流石に大口を叩くだけはある!」

 

 自らを世界の支配者などと言うのは戯言かと思ったが、ウィルのダークエンジェルはこちらに対して積極的にヘッドオンを仕掛けてくるので上手く背後を取れない。ドッグファイトにおいてヘッドオンは上策ではないのだが、それが主たる戦法なのだろうか。

 とにかく背後を取れなければ、TLS(レーザー)を当てるだけの狙いができない。むやみやたらに正面突撃を繰り返す相手の背後を、どうやって押さえたものか…。

 その時、聞き慣れない声がガブリエルの脳裏に"聞こえた"。ウィルと同じ聞こえ方だが、ウィルが中性的な声なのに対して新しい声は老練のエースといった感じだ。しかも口調にどことなく聞き覚えがある。

 

『だが隙はある。相手から目を離すな』

「えっ?その声は誰?」

『私のことは気にするな。ヤツの突撃主体の動きは、恐らく海を使えば封じ込められる』

「…海…もしかして?」

『逃がさぬぞ、イレギュラーよ』

≪ガーベラ?≫

『低空飛行と水飛沫で動きを制限し、ヤツを追い抜いて墜としてみるがいい』

 

 謎の声に指示されたガブリエルは、亜空間(ビッグバトルフィールド)で黄色に染まった海に目を落とした。最初こそ青空を映して暗い藍色が広がっていたが、雲のせいで完全に黄色く反射してしまっている。

 しかし波が立っているということは、低空飛行で水飛沫を上げることはできるだろう。そうすればダークエンジェルは突撃して海中に飛び込むか、下方向への飛行を制限されてドッグファイトに持ち込みやすくなる。

 なるほど、声の主はそれで敵を誘い込めと言うのか。危険ではあるが、遊覧飛行で慣れた今のガブリエルにとって不可能な飛び方ではない。

 

≪よし、1機墜とした!≫

「ならこっちも…来い、ダークエンジェル!」

『小細工をしても無駄だ…』

『君なら出来るだろう。集中力を切らすな』

 

 インパルが正攻法でダークエンジェルを墜としたことで、ガブリエルの腹も決まる。

 急降下するデルフィナス#2(R-102)に合わせて3機のダークエンジェルが突撃を仕掛けるが、水面スレスレで水飛沫を上げながら飛行すると3機は突撃を中断した。そして予想通り、ガブリエルより少し高い程度の位置で追跡を始めた。

 こうなると、速度差を活かした追い越し誘発(オーバーシュート)もしやすくなり、背後を取れる可能性もぐっと上がる。水飛沫で視界を遮っている状態でもあるので、ただ追っているだけでも海水を被って性能を落とす可能性がある。

 

「…そこだ!」

『民間人にしては上出来だ、その調子でやってみたまえ』

≪おっ、やるぅ!≫

『やってくれたな…』

 

 ガブリエルにとって謎の声は、ウィルの戦法どころかダークエンジェルの機動も読み取っているように見受けられた。それほどに撃墜までの指示が的確だった。

 元々ホーリーブラッドでも、加減速に関しては頼りないような印象を持っていた。それより年式が古いと見られるダークエンジェルでは、更に出力と重量の比(パワーウェイトレシオ)が悪いだろう。

 その予想通り、急加速で追い付こうとしたダークエンジェルは、急減速したデルフィナス#2(R-102)をあっさりと追い抜いてしまった。そしてその瞬間を待ち望んでいたガブリエルは、即座にTLS(レーザー)を照射した。

 命中してすぐには機体を焼き切れなかったが、それでも上昇して逃げ行くダークエンジェルに狙いを合わせるのは容易く、当て続けて1秒も経たずに2機目が爆散していった。

 

「よしっ!天使とダンスでもしてな!(Balla con l'angelo!)

≪意外とやるじゃん!民間人にしては上出来だよ!≫

『その機転が身に付けば、エースになることも容易いだろう。異世界人に怯えるな、エメリアの青年よ』

≪よし、私も負けてられない!≫

『やはり異世界人は脅威度が高いと見える…』

 

 エメリアの青年…どうやら老練の声の主は、ガブリエルの出自を知っている。ということはUGSF世界(ストレンジリアル)の住民だろうか。しかしそれが誰なのかまでは分からないし、そもそも何故ガブリエルを助けるのかも不明だ。

 少なくともこの老練のアドバイスは、ウィルの強気の態度を突き崩すには十分らしい。既に正攻法でダークエンジェルを3機墜としたインパルも、エースの面目躍如と言ったところか。

 

『最後の1機は私の飛び方で仕留めよう。一旦操縦を意識せず、強いGに備えたまえ』

「一旦操縦を放棄…」

『行くぞ…相手を見極め、敵を理解するのだ』

≪ガーベラ、今度はどこへ?≫

 

 声の主の言うままに、ガブリエルは操縦の意思を放棄する。すると失速するはずのデルフィナス#2(R-102)は、急加速と高Gでの垂直飛行を始めた。後を追っていた最後のダークエンジェルも後に続く。

 しばらく上昇したかと思うと、今度は急激に失速して背面から下を向いていき…

 

[警告 失速(CAUTION STALL)]

『…もらった』

 

 後を追っていたダークエンジェルを、すれ違い様にTLS(レーザー)で貫いた。

 ウィルの操る紋章機(ダークエンジェル)を相手にした空戦はもっと苦労するものだと思っていたが、謎の声がその苦境を打開してくれた格好だった。そんなことが有り得るのだろうかと思ったが、実際に自分が今それで助けられたのだから疑いようがない。

 

『…お前は何者だ?』

「僕は…」

『憎むならこの私を憎みたまえ、異界の暴君よ。ミハイ・ア・シラージが居る限り、私の子供達に敵うと思わないことだ』

『ミハイ、まさに異界より来たる悪魔…お前こそ、我が世界を蹂躙できると思うな』

「…ミハイ…?」

≪ガーベラ、その声は誰?≫

「分かりません…ミハイ・ア・シラージと聞こえました」

≪あの声がシラージ王国の大天使(アルカンジュ)か…まさに天使とダンス(Dance with the angel)…≫

 

 あれが亡国シラージの大天使?950年近く昔の灯台戦争の、エルジア側の切り札?

 シラージ王国を併合したエルジア王国は、後のニューコム(Neucom.inc)にとって歴史的に重要な意味を持つ国だ。ゼネラルリソース(General-Resource.LTD)の出自であるオーシア連邦とは、灯台戦争で泥仕合になったという。

 そんな国の伝説の撃墜王が、何故9世紀以上後の世代の銀河人(ギャラクシアン)を助けたのか?そもそもどうやって死者が異世界に干渉できた?

 ウィルがミハイを認識し敵視したところを見る限り、ウィルもミハイと同じ次元に居るか、どちらかが他方の領域に来られることは間違いなさそうだが…。

 

≪ストライダーからタワー、敵紋章機隊を撃墜した≫

≪見事だ、ストライダー!そのまま戦艦撃墜に復帰せよ!≫

≪了解≫

「了解」

≪今の感じ、忘れずに行こう!生きてエメリアに帰ろう!≫

「同感です!」

 

 あまり考えても仕方ない。考察は後回しにするとして、今度はビッグコアとマッドホイールを何とかしなくては。

 

 

 

 バクテリアンとベルサー双方の戦艦は、艦載機も艦の艤装もかなり剥がされていながら、依然として墜ちることなく互いに激しく撃ち合っていた。

 撃破された小型機や艤装は、踏み留まったパトリオット隊やフォース・アルカディア、ルナ・アンジェラス隊の功労が大きいようだった。いずれもUGSF航空機(エアロコフィン)と比べて桁違いの面制圧能力を発揮する機体ばかりなのだから、その戦果は信頼できる。

 

≪無事か、ストライダー?≫

≪何とか墜としてきた!このまま削りきる!≫

≪よし、もう一息だ!≫

 

 声をあげて周囲を鼓舞するギルバートだが、明らかに疲弊の色を隠せない。

 確かギルバートはアンドロイド・マリンの2番機になったはずだ。出撃前は「これから大変になる」と楽しげに言っていたが、今となってはとても余裕があるようには聞こえない。それだけ艦隊戦が激しかったのか、あるいはマリンについていくのが大変だったのか。

 

≪あと少し…もう少し!≫

「もう砲台も外装も全部剥がれてるのに、堅すぎる!」

≪距離を取って撃て、格闘戦に巻き込まれるぞ!≫

 

 マッドホイールがオウムガイの形状をしているからか、あるいはビッグコアがマンボウのような飛び方をしているからか。もはや互いに体当たりとアームの差し合いを繰り返し、激しい噴煙や火災に包まれながらゆっくり降下していっている。戦艦の戦い方とは到底思えない肉弾戦だ。

 そして、ついに…

 

≪よし、爆発閃光を視認!ビッグコア、まもなく着水!≫

≪マッドホイールも撃破を確認!墜落する!≫

「やっと…墜ちた…」

≪頑張ったね、これで完了だよ≫

≪全機、帰還せよ(RTB)。無事に済んで何よりだ≫

 

 まるで刺し違えるかのように両者は動かなくなり、静かに落下していく。激しい爆発がそれぞれの外装で連鎖していき、その船体をズタズタに引き裂いていった。素人目にも分かりやすいほどの、バクテリアンとベルサーの共倒れである。

 ひとまずパイロットの自分達には、ここまでしか出来ない。後は何が分かるにしても、調査に任せるしかない…。

 

「…本当に…何をやってるんだろうな、僕って…」

≪何を言ってるの?頼まれた仕事を全うしたんじゃない?十分立派だよ≫

「…エミリファイは…それで良いんですか…?」

≪…どういうこと?≫

「民間人に頼る国防と、それに乗っかる民間人と…」

≪…そこを気にするのか、ガーベラは…≫

 

 ここまで色々と戦っておきながら、ガブリエルにはやはり疑問が湧いてくる。

 本当にこの方法しか無かったのか?UGSF側のパイロットは、本当に航空機(エアロコフィン)を操作できないのか?

 いや、元を正せばそもそも何故自分もベルサーもバクテリアンもNEUEに来てしまったのか?

 疑問に頭を押し潰されるまさにその感覚が、ガブリエルの思考を少しずつ止めていってしまうのであった…。

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