雀鬼ドラえもん   作:クリリ☆

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麻雀の牌姿(はいし)は
漢数字がマンズ、英数字がソウズ、〇囲み数字がピンズを表しています。


ドラえもん VS ジャイアン & スネ夫
コンビ打ち


 とある平凡な昼下がり。のび太はジャイアン、しずかと共にスネ夫宅に遊びに来ていた。何やらスネ夫が新しい玩具を購入したというので自慢したいらしい。カンに触るなぁと思いつつ、珍しいもの見たさでのび太もスネ夫宅に足を運んでいたのだった。

 そんなのび太達の期待に満ちた目で見守られる中、スネ夫はその新品の玩具を皆の前に披露する。

 

「どうだいこれ、最新式の麻雀卓なんだぜ!」

 

 

スネ夫は誇らしそうにその麻雀卓を見せびらかす。

 

 

「わー、すごいすごーい。家で麻雀が打てるなんていいなぁ」

 

「へへ、しかもただの雀卓じゃないんだぜ。これは何と、山を積むだけでなく、配牌まで自動的に取ってくれる最新式のアルティマっていうんだぜw」

 

「ええっ!? 配牌まで全部やってくれるの!」

 

 

単純に驚きの表情を見せるのび太に、スネ夫も悪い気はしない。自然と笑みが零れた。

 

 

「どうだのび太、打ちたいか?」

 

「打ちたい打ちたいー! 僕も混ぜてくれるの?」

 

「まあ、今は面子が4人しかいないしな。今日は特別だぞ」

 

「わーい、やったーww てっきり僕はまたのけものにされるのかと思ったよーww」

 

 

両手を挙げてバンザイしながら喜ぶのび太を見て、ジャイアンとスネ夫がニヤリとする。

 

 

(馬鹿だな、のび太のヤツ。カモられるとも知らねえでww)

 

 

(ジャイアン、きっちりのび太のヤツからカッパいでやろうねw)

 

 

(ああ!)

 

そんなジャイアンとスネ夫の思惑も知らないまま、闘牌が開始される。

 

4人は場決めを行い、それぞれ卓についた。

 

 

東家:しずか

南家:のび太

西家:ジャイアン

北家:スネ夫

 

の順である。

 

 

「頑張りましょうね、のび太さん」

 

「うん、しずかちゃんと打てるなんてボク幸せだなーww」

 

 

 

東1局。しずかの親番。

 

ここは出だしという事もあり、全員が周囲を見守りながら全員ノーテンの流局に終わる。

 

 

そして東2局、流れ1本場。のび太の親番。

 

手前にせり出される配牌13枚を、のび太は必死に理牌(※1)する。すると、そこにジャイアンがのび太に野次を飛ばす。

 

 

「早く切れよのび太。親が切らねえと始まらねえだろ!」

 

「あ、ごめ~ん」

 

 

理牌もそこそこに、のび太はあわてて孤立していた字牌を1枚切り出した。

 

 

「まったくよぉ、麻雀はテンポが大切なんだぜ」

 

「そうだぞのび太!」

 

「ごめんよぉ…(汗)」

 

 

そうして数順してのび太の手がだんだん整ってくる。すると、ふととある違和感に襲われた。

 

 

(あれ、この手牌何かおかしいなぁ…?)

 

 

三四四六六七九456③③  ドラ③

 

 

のび太はふと牌の枚数を数えてみると、そこには12枚しかなかった。

 

「あ、牌が1枚足りないー!!」

 

「ん、何だのび太少牌(※2)かよ」

 

「少牌はアガり放棄だぞのび太」

 

 

のび太はまとまりかけてきた牌に視線を落とし、ガックリと肩を落とす。するとそこに追い討ちをするようにスネ夫が言った。

 

 

「アルティマ少牌だなのび太」

 

「アルティマ少牌?」

 

「通常の麻雀では配牌の時点で親は14牌あるから親はツモらずすぐ切っていいけど、アルティマでは親も配牌は13枚しかないから最初にツモってから牌を切らなきゃいけないんだ。でもお前、最初に1牌ツモらないで切ったんだろ。アルティマではよくある事故なんだ」

 

「ええー、そんなの最初に教えてよぉ」

 

「何言ってるんだのび太、しずかちゃんは親番で、教えられなくても最初に1牌ツモってただろ。ちゃんとよく見てろよ」

 

「そんなぁ…」

 

その次の瞬間、ジャイアンがリーチを仕掛けてきた。

 

「リーチ行くぜぇ!」

 

「うわーん、安牌が何もないよぉ」

 

 

「馬鹿だなのび太、アガり放棄なんだから安全牌を抱えておけば良かったのにな!」

 

「そんな事言ったってぇ…」

 

 

のび太は指運に任せて適当に1牌を選んで切り出した。打九!

 

 

「ローン! 一発だぜのび太ァ!」

 

「そんなぁ…」

 

 

 

二三四七八66678③④⑤ ロン九  ドラ③

 

 

ジャイアンが裏ドラをめくるが、裏ドラは乗らなかった。

 

 

「メンピン一発ドラ1、8000点は8300点(※3)だぜのび太!」

 

「とほほぉ、いきなり満貫の放銃(※4)かぁ…」

 

 

点棒

 

のび太  :25000 → 16700点(-8300)

 

ジャイアン:25000 → 33300点(+8300)

 

 

東3局、親ジャイアン。

 

ここでのび太にチャンス手が入った。

 

 

二三四34678②③④⑤⑤ ドラ⑤

 

 

高め三色のタンピンドラドラ。ここでのび太、リーチに打って出た。

 

 

「ようし、勝負だ、リーチ!」

 

「おい、のび太のクセに生意気だぞ!」

 

 

ジャイアンが怒気を含んだ表情でのび太を睨みつける。

 

 

「だってぇ、テンパっちゃったんだからしょうがないじゃないかぁ…」

 

「へん、のび太の待ちなんかに当たってたまるかよォ!」

 

 

ジャイアンは無筋の2を強打する。

 

 

「あ、それローン! やったぁ、高めだぁww メンタンピン一発三色ドラドラ倍満だーww」

 

「な、何だとォ!」

 

 

ジャイアンは顔を真っ赤にする。その次の瞬間、スネ夫がニヤリと笑い、牌を倒した。

 

 

 

二二二四四四34567⑦⑦  ロン2

 

 

「その2索、頭ハネだよジャイアン。タンヤオのみ、1300点だけどね」

 

 

「おお、スネ夫ー、でかしたーww」

 

 

「へへへ、まあね」

 

 

それを見てのび太はガックリと肩を落とす。

 

 

「そんなぁ…」

 

 

点棒

 

のび太  :16700点 → 15700点(リーチ代 -1000)

 

ジャイアン:33300点 → 32000点(-1300)

 

スネ夫  :25000   → 27300点(+2300)

 

しずか  :25000

 

 

 

東4局、スネ夫の親番。 ドラ①

 

10巡目程でスネ夫がドラの①を切り出した。

 

(おや、ドラが出てきた。テンパイが近いのかな…)

 

 

そんなのび太の読み通り、次巡スネ夫はリーチを仕掛けてきた。

 

のび太の手牌はまだ戦える状態ではなかった。仕方なく現物を切ってベタ降りをしようとする。

 

 

「うーん、とりあえず現物の①かな」

 

 

のび太が①を切り出した瞬間、ジャイアンがニヤリと笑い、牌を倒す。

 

 

「それだのび太ー!!」

 

 

「ええっ!?」

 

 

①⑨⑨東東南南北北白白発発 ロン①

 

「メンホン、ホンロー、チートイ、ドラドラ、倍満は16000点だのび太ァ!!」

 

 

「ええー、そんなぁ!?」

 

 

しかし、のび太の点棒はすでに16000点を切っていた。

 

 

「あの、点数足りないんだけど…」

 

「ん、トビかぁのび太?」

 

 

「う、うん…」

 

「じゃ、精算するかのび太」

 

「えっ、精算!?」

 

「そうだよのび太、金がかかってるのに決まってんだろ!」

 

「ええっ、いくらくらい!?」

 

 

するとジャイアンが手をスッと大きくパーの形に開いてのび太に指し示した。

 

 

「えっと、1000点50円?」

 

 

「んなわきゃねえだろ! 1000点500円だ! トビの罰符含めてキッチリ3万両! 払ってもらうぜのび太ァ!」

 

 

金額を聞いてのび太は飛び跳ねて驚いた。

 

 

「えええっ!? そんなお金持ってないよ!」

 

「だったら家に帰って持ってこいよ!」

 

「で、で、でも、そんなの無理だよー!」

 

するとジャイアンがのび太の胸倉を強い勢いで掴み上げる。

 

 

「うるせーよ、とっとと持って来いっつってんだろうが! 行けオラァ!」

 

「ハ、ハ、ハイー!!」

 

 

ジャイアンの勢いに押され、のび太は思わず外へ飛び出す。溢れそうになる涙を必死でこらえ自宅に向かって全力疾走する。そして、家に入ると一目散に階段を駆け上がり、自室のフスマを勢い良く開けた。するとそこにはちょうどオヤツのドラ焼きを今まさに食べようとしているドラえもんがいた。

 

のび太はドラえもんの顔を見ると、堪えていた涙が堰を切ったように溢れ出す。

 

 

「ドラえも~ん!!」

 

 

のび太は全力疾走してきた勢いそのままにドラえもんの懐にすがりつき、大声を上げて泣きわめく。

 

 

「どうしたののび太くん、またジャイアンにイジめられたの?」

 

「それが、ジャイアンに麻雀で負けて3万円のお金を請求されちゃったんだよぉ、助けてドラえも~ん」

 

「何だって!? どういう事なんだのび太くん!!」

 

「それが…」

 

 

のび太は涙を流しながら、スネ夫宅での麻雀勝負での詳細を説明した。それを聞いてドラえもんは怒りの声を上げる。

 

 

「のび太くん、それはコンビ打ちだよ!」

 

「コンビ打ち?」

 

「そう、ジャイアンとスネ夫はきっと二人で組んでのび太くんを型にハメたんだよ。例えばオヒキ(サポート役)のスネ夫がリーチして、そのスネ夫の捨て牌にジャイアンの和了牌にしておけば、リーチに気を取られたのび太くんから和了牌を引き出せるからね」

 

「そ、そうだったのか!」

 

「許せない。雑魚で下手っぴで雀力最底辺なのび太くんをコンビ打ちで凹ますなんて!」

 

「あの、ドラえもん、それ言い過ぎじゃ…?」

 

「そんな事ないよ。イカサマなしで打ったってのび太くんなんかに負けようがないのに、2人がかりだなんてヒドイ!」

 

「ドラえも~ん、怒ってくれるのは嬉しいけど、サラっとディスり過ぎだよ~」

 

「大丈夫だよのび太くん、僕が代わりに打ってジャイアン達を凹ましてあげる!」

 

「ってか、あの~…」

 

「いいからいいから! ボクに任せて!」

 

「あの、ドラえもんって麻雀打てるの?」

 

するとドラえもんはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「ボクの電子頭脳はね、22世紀の最新式の物を搭載しているんだ。そして、実にその97%分のキャパシティが麻雀のために使われているんだよ!」

 

「ええっ、97%が麻雀のために!? っていうと、今までの生活や冒険の中で見せてきたのはたった4%分の能力だったって事なの?」

 

「違うよ、3%だよ。セワシ君は麻雀が好きでね。ボクを麻雀の代打ちができるように特別にカスタマイズしたのさ」

 

「セワシく~ん、ペース配分~(汗)」

 

のび太の遠吠えが辺り一帯にこだました。

 

 

 

続く☆




※1 理牌(りーはい)
バラバラの配牌を打ちやすいように順序よく牌を整える行為



※2 少牌
麻雀は手牌13牌と、ツモって14牌で手作りをするが、トラブルで手牌が13枚以下になってしまう状態。基本は和了を放棄した上でゲームを続行する。


※3 切り上げ満貫
多くの麻雀ゲームは30符4ハンは7700点(親11600点)だが、リアル打ちの場合は大概が30符4ハンは切り上げ満貫として8000点(親12000点)である。


※4 放銃
または振り込み。相手の和了牌を切る事で、和了点数を全額1人で支払う事。
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