漢数字がマンズ(m)、英数字がソウズ(s)、〇囲み数字がピンズ(p)を表しています。
また、会話の中の牌の種類は、萬はマンズ、索はソウズ、筒はピンズを表しています。
※は最後に用語解説をしております。
三人が洗牌を開始すると、ドラえもんは微動だにせず、その場で腕組みをする。
「どうしたのドラえもん君?
「いいよ、下手にボクが手を出すとまたジャイアンに殴られるからね。もう観念したよ。キミらのやりたいようにやってくれ」
「フフフ、そうかい、無駄な努力はしないのかい。さすがはデジタル。物分りがいいね」
「どうせ次もボクの山は使われないんだろ?」
「さあてね。その可能性は高いかも知れないけどね」
するとジャイアンとスネ夫もニヤリと笑う。
「ククク、それじゃあやりたい放題やらせてもらうぜ。お前の山にはクズ牌しか残さねえからな!」
そのセリフを聞いてドラえもんは内心でニヤリと笑う。
(フフフ、そのクズ牌も全部残ると恐ろしい事になるんだよ)
そうして、三人は自由に山を積み始める。そして、三人があらかた牌を集め終わったのを見計らい、ドラえもんも山を積み始める。そして山を積み終わってからドラえもんはサイコロをつまみ上げる。すると、ドラえもんはある事実に気がついた。
(このサイコロはグラ賽だ。何度振っても1と3の目しか出ないようになってる…。となると、次の出目は4。またもジャイアンの山からか…。フフフ、ちょうどボクが出したかった目だ!)
ジャイアンの山から配牌を取り始めると、続けて出木杉の山へ至る事になる。結局ドラえもんの積んだ山はここに至るでまだ1牌も使われていない。
ドラえもんは涼しい顔をしてサイコロを振った。当然ながら出目の合計は4となる。
「左4だね」
そうして4人は配牌を取っていく。配牌はジャイアンの山から始まり出来杉の山で終わった。当然ドラえもんが積んだ山は、そっくりそのまま目の前に残っている。
そして、配牌を取り終わり、出来杉は自分の手牌に目を落とした。
(フッフッフ、積み込んだとは言え、何て美しい
直前にドラえもんが無抵抗だった事や、緑に染まった手牌の美しさに、出来杉はいつも以上に長い時間手牌を見つめる。
(…まさにドラえもん君を葬るのに相応しい。って、それにしてもドラえもん君切るの遅いな。どうせボクらが積んだ山だ、手牌構成も確かグズグズだったハズだ。悩む必要なんてないのにな…)
出来杉がようやくドラえもんを見ると、ドラえもんは心なしか微笑んでいるように見えた。
「どうしたのドラえもん君、早く切ってくれないと」
「いや、それがもう、アガってるんだよ。ホラ」
「えっ…。はっ、まさか!?」
出来杉がハッと思った瞬間に、ドラえもんは牌を倒した。
「ツモ!
するとジャイアンとスネ夫は驚いて思わず椅子から立ち上がってしまう。そしてジャイアンがドラえもんの胸倉をつかみ上げる。
「そんな馬鹿な事あるかよ! オレ達が積んだ山だぞ。そんな風に積み込む訳ないだろ!!」
しかし、ドラえもんはジャイアンの質問には無視して言った。
「ところで、大四喜はダブル役満扱い(※1)かなあ?」
「ふざけんな、そんな訳ねえだろ!!」
「そうかあ、それは残念。でも、ま、関係ないか」
そう言うとドラえもんはジャイアンの手を払いのける。
「64000オール! 全員トビだ!」
「て、てめえ…」
「何か文句でも? 一度牌が倒されたら何があっても物言いは無しだと言ったのはキミ達だからね。さあ、払うもんをきっちり払ってもらうよ」
ジャイアンとスネ夫は悔しそうな表情でドラえもんを見つめる。一方の出来杉は顔を伏せて椅子に座っている。
「まさか、そんな手があったとはね…」
「さあてね。ボクは配牌を取っただけさ」
「いいよ。最後の最後で隙を見せたボクの負けさ…」
「そうかい。それじゃ、清算といこうか」
スネ夫:9000点⇒-55000点
ドラえもん:17000点⇒209000点
ジャイアン:17000点⇒-47000点
出来杉:57000点⇒-7000点
2回戦目のトータルポイントw
スネ夫:-85-30=-115
ドラえもん:189+30+20(オカ)=239
ジャイアン:-77-10=-87
出来杉:-37+10=-27
そして、2回戦のトータルポイント
1位:ドラえもん:-99+239=140
2位:出来杉:141-27=114
3位:ジャイアン:-87-31=-118
4位:スネ夫:-11-115=-126
「確か、千点5000円だったね。占めて70万両、きっちり払ってもらうよ!」
「くそっ…」
するとスネ夫は観念したかのように、自室の一角に置かれた金庫を開け、中から100万円の札束を一つ取り出した。そしてそこから30万円を抜き、卓上に叩き付ける。
「ホラよ、持ってけ!」
するとのび太は喜びのあまり、ドラえもんに抱きついた。
「やったぁドラえもん! でも、ボクも後ろでずっと見てたけど、確かに配牌はグズグズだった気がしたけど、一体どうやって天和をアガったの?」
するとドラえもんより先に出木杉が答えた。
「ツバメ返しだろ、ドラえもんくん?」
ドラえもんはニヤリと笑う。
「その通り。さすがは出木杉くんよく知ってるね。手牌の14枚と自分の目の前の山から14枚をそっくりそのまま入れ替える、まさにバイニン技の真骨頂、秘技ツバメ返しさ。しかも、ボクの技は雀聖と呼ばれた阿佐田哲也(※2)直伝なんだ」
「それはどういう意味だいドラえもんくん?」
「別に、そのままの意味さ。阿佐田哲也の技を寸分違わず再現した技だって事さ」
「寸分違わずって、どうやって?」
「簡単な事さ。タイムマシンで戦後の昭和期に行き、そこで阿佐田哲也さんにお願いしてツバメ返しをやってもらう。その時に身体にモーションキャプチャーを取り付けて、3Dで座標データを取る。後はその情報をボクの電子頭脳にインプットすれば、簡単に雀聖の技をコピーできるというわけさ」
「まさか、そんな方法で雀聖の技を現代で再現して見せるとは…」
「ちなみに、ボクがその気になれば最大100倍速で再現できるからね。まあ、油断してユルユルなキミ達が相手だったから等倍で充分だったけど」
「100倍速だって!?」
「22世紀のツバメはジェットで飛ぶのさ」
「この化け物め…」
「フフフ、誉め言葉だと受け取っておくよ。それじゃ話は終わりだ。ボク達はもう帰るよ」
そう言うとサッとドラえもんはスネ夫の部屋を出て行った。それを見てのび太もあわててドラえもんの後を追う。そして、戦いは終わり。のび太は自宅への帰り道、歩きながらドラえもんに尋ねた。
「やったねドラえもん。それにしても本当にヒヤヒヤだったよ~」
「うん、さすがのボクも今回ばかりは危なかったよ。でも、最後の最後でみんなが油断して隙を見せてくれたからね」
そうして二人は笑いながら、足取りも軽く帰路についた。
続く☆彡
※1 ダブル役満扱い
普通の役満以上に難易度の高い、四暗刻単騎、国士無双十三面待ち、大四喜、純正九連宝燈をダブル役満扱いとする、割とメジャーなローカルルール。事前に取り決めが必要。
逆に、天和にはどんな役満が重複しても、天和に敬意を表して他の役満はカウントしないルールもある。
※2 阿佐田 哲也
坊や哲、黒シャツとも呼ばれた麻雀打ち。本名は色川武大。
麻雀小説を多数書いた事で、麻雀の一般への普及に多大な貢献をし、雀聖とも呼ばれている。
阿佐田哲也はペンネームで『朝だ、徹夜だ』をもじったもの。