「さて、それじゃまずルールの確認ね」
ドラミが言った。それにドラえもんが答える。
「じゃ、ボクとドラミのサシ馬(※1)勝負でいいかい?」
「それは駄目よお兄ちゃん」
「ええっ、どうして!?」
「だって、これは本来のび太さんの問題よ。のび太さんとのサシ馬が筋だわ」
「それは、いくらなんでも勝負にならないよ…」
「ええ、それは解ってるわ。だから、私も最大限譲歩して、ここはチーム戦を提案します」
「チーム戦?」
「ええ。お兄ちゃんとのび太さん、私はミニドラとチームを組むわ。そして、点数はチーム持ち点5万点。相手チームのどちらから取っても、その点数内でやり取りをしてもらうわ。そして、箱下清算は無し。持ち点がなくなったらそこで無条件敗北。いいわね?」
「つまり、仮にボクが全く振り込まなくても、のび太くんが振り込めばチームの持ち点が減っていくって事だね?」
「まあそういう事ね」
するとのび太が不安そうな表情でドラえもんを見つめる。
「どうしようドラえもん…」
「仕方ないよ、ここは受けるしかない…」
「うん…」
するとドラミは四次元ポケットからジャラジャラとした鎖を取り出した。その鎖の一端には
「
「何だいこれ?」
「これは、制約と誓約、審判の鎖よ」
「審判の鎖?」
「そう。この鎖に誓いを立てて、心臓に巻きつかせてもらうわ。そして、万が一その誓いを破った場合、鎖に付いた楔が心臓を貫く仕組みになっているの」
「ええっ、何のため!?」
「念のため」
「で、それでどんな誓いをするの?」
「それは、未来道具や、それに限らず一切のイカサマをしないと誓ってもらいます」
「べ、別にそんな事しないさ…」
「だから、念のためって言ってるでしょ。イカサマさえしなきゃ全くの無害だから大丈夫」
「解ったよ…」
そうしてドラえもんとのび太、それにドラミも含めて全員が
するとドラミが四次元ポケットから自動雀卓を取り出した。
「いいわね、それじゃ始めましょうか?」
「いや、ちょっと待ってくれ!」
「どうしたのお兄ちゃん?」
「まだ心の準備ができてない。お願いだドラミ、あと1時間だけ待ってくれ」
ドラミはちょっと考えてから言った。
「まあそうね。急な話だしね。いいわ1時間くらい」
そう言うとドラミはのび太の机の引き出しを開ける。
「どうせタイムマシンを使えば1時間も一瞬だしね。それじゃ、1時間後に勝負よ」
「ああ」
そう言うとドラミはペコリと頭を下げてタイムマシンに乗り込んで行った。その直後、のび太がドラえもんにすがりついた。
「ドラえも~ん、いくらなんでもボクじゃ勝てっこないよ~」
半泣き状態ののび太の頭を軽く撫でながらドラえもんが言った。
「こうなったらのび太くん、今から麻雀の特訓だ」
「特訓ったって、1時間じゃどうにもならないよぉ」
「大丈夫だよのび太くん。ボクらにはタイムマシンがあるじゃないか。これがあれば1年前でも1万年前でも自由に行き来できるんだから、ボクらがその気になれば1時間後なんて永遠に来ないのさ」
「そっかあ、さすがドラえもん。りゅうせきだね、ながれいしだね、流石だねえw」
「まあね。それじゃとりあえずタイムマシンで出発だ」
「おー!」
そうして二人はタイムマシンで10年前に移動し、南アメリカ大陸の奥深くにあるギアナ高原でキャンピングカプセル(※3)で適当に居住スペースを確保する。
着いてからふと、のび太は一つの疑問を口にする。
「ところでドラえもん。どうして未来では麻雀の勝負が大きな決定権を持っているの?」
「それは、未来では大量破壊兵器が進化しすぎてしまったからさ」
「大量破壊兵器? それと麻雀がどう関係してるの?」
するとドラえもんは神妙な顔つきになって言った。
「大量破壊兵器、つまり現代で言えば核兵器のようなものだけど、この開発が進み、もし人類が本気で戦争したら一瞬で銀河規模まで破壊できるようになってしまったんだ。そうなると、戦争なんてもっての他だ。だって、子どもが遊ぶオモチャですら、一歩使い道を誤ると大惨事に繋がってしまう危険性をはらんでいるからね」
「それで?」
「だから、どうしても話し合いで決着がつかない場合に、ある決め事が生まれた」
「それが麻雀で決着をつける事なの?」
「その通り。未来では殴り合いのケンカですら、どんな脅威に発展するか解らないからね。だから未来では問題はすべて、麻雀で決着をつけるようになっているのさ。しかもそれは日本国内に限った話じゃないんだ。世界共通のルールにもなっているし、国同士の約束事、すなわち外交でも麻雀が利用されているんだよ」
「でも、どうして麻雀なの? 他にも色々あるじゃないか。対戦型のゲームにしたって、例えば将棋やチェスやオセロ、その他にも…」
「むしろ、麻雀以外の思考型のゲームは全て、未来では廃れてしまったんだよ」
「どうして?」
「未来ではコンピュータが進化しすぎて、将棋やチェスなど、全局面が解析されてしまったんだ」
「つまり、どういう事?」
「つまり、無限とも思える盤上の全局面の全パターンがコンピュータにとっては既知のものなのさ。テレビの対局番組なんかで、人間が何時間もかけてやっと打った手が、機械だったら一瞬で表示できたりするし、下手をすると機械が一瞬で出した手の方が人間の考えた手よりも善手だったりする。そうなるともう、それだけで白けるからね。誰も将棋やチェスなんか打つ人がいなくなったのさ」
「へえ」
「21世紀の現代でさえ、パターン数の少ないチェスなんかはそのほとんどがコンピュータで解析され、人間の世界チャンプですらコンピュータに勝てなくなってしまっているんだ」
「なるほどねえ」
「そんな中、唯一残ったのが麻雀なのさ。全く同じ局面は存在しない。いや、仮に存在したとしても、運の要素が程よく混ざり、先の展開は解っていても対処しきれないからね」
「そっかあ、それで外交の最終手段として麻雀に白羽の矢が立ったんだね」
「そういう事。そして、そうなると官僚やエリートコースを進むためには麻雀のスキルは必須になってしまった。そうなると麻雀は学校の勉強と同等の地位を得てしまったんだよ。そして、麻雀は一気に世界規模で大ブレイクしたんだ」
のび太はようやく納得したような顔つきをする。
「それじゃのび太くん、今からガッツリ麻雀修行の始まりだー!」
「おー!」
そうしてのび太の麻雀修行が幕を開けたのだった。だがこの時ドラえもんは、のび太の頭の悪さをまだ、甘くみていたのだった…。
続く☆
※1 サシ馬
他者点数は関係なく、特定のメンバーだけの点数で勝敗やペナルティを賭けること。
仮にドラえもんとドラミのサシ馬勝負であれば、のび太がどんな点数だろうが、ドラえもんがドラミの点数を上回れば勝利ということ。
略して『ウマ』という事も多い。もしくは『サシ』と略す事もある。
※2 ジャッジメント・チェーン
『ハンター✕ハンター』に登場するクラピカの念能力。
相手の念能力を完全に封じるというチート級の効果があるが、幻影旅団のメンバーにしか使用できない制約があり、仮に幻影旅団のメンバー以外に使用した場合、自身の心臓を貫かれて死ぬという誓約をしている。
※3 キャンピングカプセル
ドラえもんの秘密道具。手のひらサイズの球体に先の尖った突起がついており、突起の部分を地面に突き刺すと巨大化し、簡易的な宿泊施設ができる。構造上、動物などは入ってこれず、どんな場所でも安全に過ごすことができる。