漢数字がマンズ(m)、英数字がソウズ(s)、〇囲み数字がピンズ(p)を表しています。
また、会話の中の牌の種類は、萬はマンズ、索はソウズ、筒はピンズを表しています。
※は最後に用語解説をしております。
場決めはつかみ取り(※1)で決められ、東場ミニドラ、南家ドラミ、西家ドラえもん、北家のび太となった。
「ルールの最終確認よ。食いタン・後付けあり、いわゆるアリアリのブチャラティルール。赤ドラは各5に1枚ずつ、ダブロンあり。チップ、焼き鳥(※2)はなし。いいわね」
「いいよ」
「四暗刻単騎と国士無双十三面待ちと
「ああ、それじゃ始めようか」
そうしてゲームが開始された。
東1局、10巡目にドラミがテンパイする。
ここでドラミはちょっと首をかしげた。
(イレギュラー効率的には数巡後に9筒をツモる流れだわ。個人戦ならここは二萬切りの一手。でも、親がミニドラだから、ツモ和了は効率悪いわね…)
ドラミはのび太の捨て牌をチラリと見つめる。
(のび太さんはソウズの一色手のようね。しかも、イレギュラー効率的にのび太さんは一発目に二萬をツモるわ。ここはハネ満ツモより、満貫の直撃のほうが効率がいいわね。それに、精神的ダメージを与える効果もありそうだし…)
ドラミはドラの9筒を横に曲げ、リーチを宣言する。その直後、のび太はツモった牌を手に入れる。
12233467899索19筒 ツモ二萬
のび太はここから三巡で1筒、9索、9索と落としてリーチを打った。その直後、ドラミはドラの9筒を掴む。
(やっぱり、ドラをツモっちゃったわね。それより、どうしてのび太さんから二萬が出ないのかしら?)
そう思いながらドラミは9筒をツモ切った。
「ロン!」
「えっ!?」
そう言うとのび太は嬉々として手牌を倒す。
「リーチ一発、ドラドラーw」
裏ドラは乗らず8000点の支払いとなった。
ドラえもん & のび太:50000 ⇒ 58000
ドラミ & ミニドラ:50000 ⇒ 42000
(あれ、おかしいわねえ。のび太さんなら絶対に二萬が出てくると思ったのに…)
さらに続く東2局、8巡目にのび太がツモった牌を卓の縁に叩きつける。
「ツモー!」
「即ヅモ(※3)、ドラ3はハネ満! 3000・6000!!」
しかし、ドラミはこの和了にすぐに不自然さを感じていた。のび太はこの手、8索を切ってリーチを打っていたのだ。
もし8索が手にあれば36958索の5面待ちだった。それを8筒単騎で待ったのだ。
(おかしいわね。確かに流れ的にはのび太さんは8筒をツモる流れだった。でも、それはイレギュラー効率を知っているからであって、21世紀の一般的雀士は牌効率を重視する。ここは8筒切りリーチがこの時代のセオリーのハズよ)
まるでイレギュラー効率を熟知しているような不自然なのび太の和了を見て、ドラミはのび太にカマをかけてみる事にした。
「ところでのび太さん、それ8索切りリーチだったら36958索待ちだったじゃない。どうしてわざわざ8筒単騎のような待ちにしたの?」
「ああ、最近読んだ麻雀漫画で、わざと悪い待ちにするとアガれるって話を読んだからさ。それを試してみたんだよー。それに、ソウズごちゃごちゃして何待ちか解らなかったからさ(※4)」
「ふぅん、そうなんだ…」
(やれやれ、やっぱりただの偶然ね。のび太さんがイレギュラー効率を使いこなせるはずがないものね。それにしても本当に素人のまぐれ当たりって怖いわね。とんだ親被りだわ)
ドラえもん & のび太:58000 ⇒ 68000
ドラミ & ミニドラ:42000 ⇒ 32000
だがしかし、その後ものび太の打ち回しは完璧に近かった。のび太を狙い撃ちするつもりで油断していたドラミとミニドラは不意をつかれ、手も足も出ないままオーラスを迎えてしまう。
南4局
ドラえもん & のび太:72700
ドラミ & ミニドラ:27300
(ば、馬鹿な…。これは明らかにおかしいわ)
5万点弱の点差にドラミは眉間に皺をよせ、大粒の脂汗を流しながら考える。そして、腹に付けられた四次元ポケットから、片側だけレンズの付いた機械仕掛けのゴーグルを取り出した。
「雀力スカウタ-!(※5) ちょっと失礼するわね」
「ん??」
ドラミが雀力スカウター越しにのび太を見る。そして一瞬驚きの表情を浮かべる。
のび太:雀力6800
(そ、そんな。21世紀の雀士の平均雀力は100程度。あの雀聖と呼ばれた阿佐田哲也でさえ1300程度。イレギュラー効率を直観で分かっていたと言われる、雀鬼と呼ばれた桜井章一でさえ3500程度なのに、そんなハズは…)
そして、そのままドラミはのび太からドラえもん達に視線を移す。
するとドラえもんは12000、ミニドラが8500の数値が表示される。
(やっぱり雀力スカウターは正常だわ。となると、のび太さんは何らかの方法で雀力を高めていると考えられるわね。一体どうやって…)
ここでドラミはハッとする。
(そうか、のび太さんの雀力上昇の理由が解ったわ! あの道具ね!)
そしてドラミは、すぐに涼しい顔をして四次元ポケットからストロー付きのメロンソーダを取り出した。
「のび太さん、のど渇いてない? これ美味しいわよ」
するとのび太はドラミが差し出したメロンソーダを、ホイホイと受け取ってしまう。
「わーい、ありがとうドラミちゃんww」
「あ、のび太くん、それは・・」
ドラえもんがそう言いかけると、ドラミがドラえもんをキツく睨みつける。
「駄目よお兄ちゃん、闘牌中のパートナーとの会話は禁止よ。じゃないと通しと見なしてイカサマ扱いにします!」
「あ、うん・・」
そうして、チュゴゴゴゴ…っと、のび太はメロンソーダを飲み干すと、突然激しい腹痛に襲われてしまう。
「うう、どうしたんだろう、急に、おなかが…」
そう言うと、のび太は顔を青ざめる。
「あらあら、大丈夫?」
「ごめん、ちょっとトイレー!!」
のび太は慌ててトイレに向かってダッシュした。それを見てドラえもんはすぐにドラミをキッと睨みつける。
「ドラミ、のび太くんに何を飲ませたんだ!」
するとドラミはしたり顔でニコッと笑って小さなビンを一本取り出した。
「これよ」
「それは、まさか!?」
「猛牛でさえ5分で脱水死させると言われる、超強力下剤モーデルよ」
「モーデルだって! どうしてそんな物をのび太くん に!?」
「すっとぼけないでよお兄ちゃん。ネタは割れてんのよ!」
「ま、まさか!?」
「暗記パンでしょ?」
それを聞いてドラえもんは思わず肩をビクンと震わせてしまう。
暗記パン
スライスした食パンを模した道具。ノートや本のページに重ね、内容をパンにコピーして食べるとその内容が確実に暗記できるが、スライス1切れにつき暗記できる量(せいぜい1切れに教科書1ページ程度)が限られ、大量のページを暗記できないことや、暗記した内容が体内に取り込まれることはなく、排泄によって効果がなくなるという欠点がある。
「恐らく、イレギュラー戦術理論書をスモールライトで超ミクロサイズで縮小し、暗記パンに写してのび太さんに食べさせたんでしょ。これでのび太さんがにわかに雀力が向上した理由が解ったわ」
「くっ…」
確かにドラえもんとのび太は未来の麻雀戦術書や理論書数十万冊やプロの牌譜およそ1億個をスモールライトで限界まで縮小し、暗記パン3つ分にまとめてのび太に食べさせていた。のび太の基礎雀力さえ上げてしまえば、たとえイカサマはできなくても十分戦えると見込んでいたのである。
「でも暗記パンには欠点がある。消化されてしまったり、体外へ排出されてしまうと、その効力は失われてしまう。これでのび太さんはただの凡夫に逆戻りね」
「だからって、モーデルを飲ませるなんて…」
「ふふふ、大丈夫よ。ちゃんと死なない程度に希釈してあるわ」
すると、腹の中の物を全て出し尽くしたのび太が、フラフラした足取りで部屋に戻ってきた。頬はこけていて、今にも死にそうな顔をしていた。
「ああのび太くん、なんてひどい姿に…」
ドラえもんが思わず駆け寄って手を貸す。その様子を雀力スカウター越しにドラミが見つめた。
のび太:雀力5
「麻雀力たったの5か、ゴミね」
ドラミはニヤリと口角を吊り上げて笑った。
続く☆
※1 つかみ取り
東、南、西、北の4つの牌を伏せてプレイヤーが1つを選び、その引いた牌で席順を決める方法。
※2 焼き鳥
対局中1度も和了できない事による罰則。
※3 即ツモ(即ヅモ)
リーチ後に一発でツモる事。リーチ・一発・ツモの事。
※4 悪い待ちであがる事について
主人公の所属する清澄高校の麻雀部部長、竹井久の特技。ツモ牌全てに意味があると考え、あえて悪い方の待ちを選択する事で最善の結果を残していく。清澄高校一のポイントゲッターでもあり、雀力は極めて高い。
※5 雀力スカウター
ドラゴンボールの戦闘力を数値化するスカウターの雀力バージョン。麻雀の強さを数値化する事ができる。
一般雀士:80~200
雀荘店員:130~350
プロ雀士:200~600
咲:500
亻鬼(カイ:むこうぶち):1200
アカギ:2500