漢数字がマンズ、英数字がソウズ、〇囲み数字がピンズを表しています。
また、会話の中の牌の種類は、萬はマンズ、索はソウズ、筒はピンズを表しています。
※は最後に用語解説をしております。
のび太は青ざめた表情でヨロヨロと自分の席に座り込む。それをドラミは冷ややかに笑いながら見つめる。
「やれやれ、闘牌中に敵からもらった物を口にするなんて警戒心がないわね。まあ、お兄ちゃんは狙いに気付いてたみたいだけど」
「うう、ドラえもんごめん。ぼくが浅はかだったよ」
「もう、もっと緊張感を持たないとダメじゃないか。でも、それより今は身体の方を何とかしないと」
ドラえもんは急いでお医者さんカバンを取り出そうとする。しかし、焦ってしまって自分が思っていたのとは違う道具が出てきてしまう。
「あれでもない、これでもない・・」
そうこうしている内に、ドラえもんはある道具を掴んでハッとする。
(あ、この道具ならもしかして・・)
にわかに落ち着きを取り戻したドラえもんは、すぐにお医者さんカバンを取り出した。そしてカバンに付けられている聴診器をのび太の腹部に当てると、すぐに『脱水:対処法、水分補給』と表示される。そしてカバンから注射器型の容器に入った薬液を取り出した。
「のび太くん、お薬だよ。さあ飲んで」
「うん…」
のび太が薬を飲むと、スゥっと表情に血の気が戻ってくる。
「それと、
「ありがとうドラえもん」
ドラえもんは丸いお菓子のような物をのび太に渡そうとする。するとそれを遮ってドラミが言った。
「ちょっと待って、それ怪しい物じゃないわよね?」
「別に、ただのお菓子だよ。そんなに気になるならのび太くんを雀力スカウターで見てればいいじゃないか」
「それもそうね。いいわ、許可します」
のび太はドラえもんから丸い型のお菓子を受けると、それにパクついた。その状況をドラミは真剣な眼差しで見つめていた。
「なるほど。確かに雀力に変化はないわね。これでのび太さんはただの凡夫ね。いえ、凡夫以下のただのゴミね」
「ええー、ドラミちゃん、それはヒドイよー」
「あら、失言だったかしら。そうねえ、可憐で健気なドラミちゃん、のイメージが崩れてもいけないし。まあいいわ、のび太さんの脳を電子頭脳に取り替えたら今の部分の
そう言いながらドラミはチラリとのび太を見つめる。ドラミと目が合ったのび太はまた表情を青ざめさせる。
「ド…、ドラミちゃんの目………、まるで養豚場のブタでもみるかのように冷たい目だ。残酷な目だ…、『かわいそうだけど明日の朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね』ってかんじの!」
「落ち着くんだのび太くん。点差はおおよそ5万4千点。倍満の直撃でも届かないんだ。今は僕たちがリードをしているんだ。とにかくオーラス(※1)を凌ごう!」
「うん…」
そうして闘牌が再開され、オーラスが開始される。
南4局
ドラえもん & のび太:72700
ドラミ & ミニドラ:27300
東家:のび太
南家:ミニドラ
西家:ドラミ
北家:ドラえもん
配牌を取り終わると、のび太はパッと表情を輝かせる。そして、おもむろに牌を一つつまみ出し、それを横に曲げた。
「リーチ!」
のび太のダブルリーチにドラミとミニドラは苦々しい表情を浮かべる。いくら雀力が高くても親のダブルリーチへの対処への限界はあるのだ。しかもオーラス。ツモられた時点でもはやゲーム終了だ。
誰も、何もできないまま1打目を終え、2巡目を迎えると同時に、のび太はツモった牌を勢い良く卓の縁に叩き付けた。
「ツモ!」
その発声にドラえもんはホッと安堵する。が、のび太が手牌を倒した瞬間、ドラえもんの表情が凍りついた。
「ダブリー、一発、ツモ! それに、三カンツ、トイトイと、役牌で、えっと、9本くらい? まあいいや、とにかく倍満だーww」
するとドラミがクスクスと笑い出した。
「それと三アンコもあるわね」
「ああ、そうかあ。それじゃ三倍満!」
「ただ、それがちゃんとした和了形だったらね」
「えっ、どういう事??」
「のび太さん、麻雀の基本は4面子1雀頭よ。その例外はチートイツと国士無双しかないの。あなたの手は全然和了形になっていないじゃない」
「えっ!?」
のび太は思わずドラえもんを見つめる。するとドラえもんは何も言わず、首を横に振った。
「そ、そんなぁ…」
「何をやっているんだのび太くん。それじゃ4面子1雀頭じゃなくて、三カンツ1雀頭じゃないか。少なくとも三アンコと三カンツで満貫確定の手、それどころかしっかり打っていれば本当に役満を
結局のび太のチョ ンボで親満分の4000オールの支払いとなった。
ドラえもん&のび太:72700 ⇒ 64700
ドラミ &ミニドラ:27300 ⇒ 35300
「それじゃ1本場でオーラス続行よ」
「うん…」
のび太は先ほどまでとは打って変わって肩を小さくすくめている。
「のび太くん、ここはボクが何とかするから、キミはとにかく振り込まない事だけに専念しろ。ここは流局でもボク達の勝ちなんだ」
「うん…」
そうしてオーラス1本場が開始されると、のび太は配牌から安全そうな牌ばかりを切り出す。ドラミ達の現物(※2)があればそれを優先して切り出していく。
(何をやっているんだのび太くん。そんな完全安牌は場の状況が煮詰まるまで温存しておいて、序盤はもっと将来的に危険になりそうな牌を優先的に切っていくんだ…)
「あの、のび太くん…」
ドラえもんがそう言い掛けた時、のび太より先にドラミがキッとドラえもんを睨みつける。
「駄目よお兄ちゃん。局の合間ならともかく、闘牌中は一切の助言は禁止よ!」
「う、うん、分かってるよ…」
そうしてのび太がちょうど現物が涸れた12巡目。ミニドラが赤5sを切ってリーチを宣言する。そしてドラミ、ドラえもんを経てのび太のツモ番となった。
「わっ、わっ、どうしよう。全然安牌がないよ…」
そう言いながらのび太はミニドラの河に目を泳がせた。
「えーっと、筋ー!」
のび太はミニドラが直前に打った
「ホーラ!」
「ええっ、何!?」
するとミニドラに変わってドラミが答えた。
「
「そ、そんなぁ…」
ミニドラが手牌を倒した。
「それじゃミニドラの代わりに私が役を読み上げるわね。リーチ、一発、ジュンチャン、三色…」
「ドラドラドラww」
「そうね、さすがはミニドラ」
そして、さらに裏ドラをめくる。すると、裏ドラも①筒だった。
「ドラドラドラーww」
「合計13ハン。数え役満ね。32000点の一本場(※3)は32300点」
「そ、そんなぁ…」
ドラえもん&のび太:64700 ⇒ 32400
ドラミ &ミニドラ:35300 ⇒ 67600
「ぎゃ、逆転…」
のび太はガックリと肩を落とす。そこにドラミが言った。
「のび太さん、悪いんだけど、まだ半分なの」
「えっ?」
「その
「ええっ、ダマで張ってたの!? つまり、ダブロン!?」
「そう。安目なら満貫で済んだんだけどね」
「安目で満貫って事は、まさか、ハネ満!?」
「いいえ、役満よ!」
そう言いながらドラミは手牌を倒した。
「
「りゅ、
「あら、さすがに知ってるみたいね。オールグリーン。私の一番好きな役満なの」
「そ、そんなあ」
「ふふふ。とっておきよ、取っておいて」
ドラえもん&のび太:32400 ⇒ 100
ドラミ &ミニドラ:67600 ⇒ 99900
そうして1回戦目の半荘が終了した。結局オーラスまで優勢だったドラえもんとのび太コンビも終わってみれば、点数はわずか100点。
2回戦目。のび太達の勝利条件はドラミ達を100点以下にする事。すなわち、飛ばすしか方法はなくなってしまったのだった。
「ドラえも~ん(ToT)」
のび太の悲痛な叫びが、辺り一帯にこだました。
続く☆
※1 オーラス
麻雀の最終局。南4局を指す。
特殊な条件下で延長戦(西入)になった場合、西4局がオーラスとなる。
※2 現物
麻雀では自分で捨てた牌と同じものでは和了できないというルールがあるため、すでに相手が捨てた牌は絶対にロンされない。そのため、完全な安全牌と言える。ただし、あくまでも捨てた人には絶対あたらないだけで、捨ててない他のメンバーへの振り込みはあるため注意。
※3 一本場
親の連チャン、または誰も和了できない場合、次の局は和了点が300点プラスされる。それが2局、3局と続けば、600点、900点と徐々に和了点が上乗せされる。
余談だが、以前友人と卓を囲んでいた際、4本場で満貫を和了した友人が「8000は9200(クンニ)です」と言って、言った直後に恥ずかしい事を言った事に気付き、顔を赤くしていた事があります。