雀鬼ドラえもん   作:クリリ☆

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一部の麻雀用語は最後に解説しております。


サン&ムーン

のび太は失意に満ちた表情のまま二回戦目が開始された。一回戦目を100点で終えたドラえもんとのび太としては、この二回戦目、相手をトバしての勝利でないと、総合得点で負けてしまう。

もはやのび太はドラえもんの足を引っ張らないようにしよう、ただそれだけを思っていた。

席順はそのまま、サイコロの二度振りで起家が決められた。

 

東家:ドラえもん

南家:のび太

西家:ミニドラ

北家:ドラミ

 

東1局。

先ほどの反省を活かし、のび太は配牌は真ん中の危なそうな牌を切り、安全そうな牌を温存する。そんな状況の中、8巡目にそれは起きた。

 

「ドーラ!」

 

ミニドラがリーチをかける。その直後。

 

「リーチよ!」

 

同巡内に続けてドラミがリーチを打つ。

ここまで誰も一言も発声がなかったが、ここに来て途端に卓が色めき立つ。その直後のドラえもんはツモった牌をツモ切りしてのび太の順番になった。

 

ここでのび太は自分の手牌に目を落とす。その右端には南が三枚キレイに並んで置かれていた。

 

(えへへ、ボクの切り札。万が一にも当たったとしても、待ちは単騎待ちしかない。絶対にダブロンはない。ボクって頭いい~w)

 

のび太は鼻息も荒く、南を一枚つまんで河に叩き付けた。その次の瞬間。

 

「ホーラ!」

 

「ロンよ!」

 

ドラミとミニドラは一斉に手牌を倒す。

 

「ええっ、ダブロン!? どうして、単騎待ちしかないハズなのに!?」

 

「うふふ、やっぱり暗刻落としだったわね。一斉にリーチして安全牌を釣り出す作戦は成功ね」

 

のび太はドラミとミニドラの牌に目を落とす。そして、次の瞬間に目を大きく見開いた。

 

 

ドラミ手牌

一九119①⑨東西北白発中 ロン南

 

ミニドラ手牌

一九19①⑨東西北白白発中 ロン南

 

 

「ダ、ダブル国士、南待ち?!!」

 

「運がなかったわね。これで64000点の支払い。トビね」

 

「そ、そんなぁ…」

 

のび太は目もおぼろに呆然と天井を見つめる。

 

「そうだ、これはきっと夢。本当のボクは、あったかいお布団の中…」

 

するとドラミが優しく微笑んだ。

 

「そうね、のび太さん。あなたは今までずっと悪い夢を見ていたのよ。今度目覚める時には、あなたはきっと超一流の人間に生まれ変わっているわ」

 

それを聞いてのび太はハッと我に返る。

 

「うわー、イヤだイヤだー! ブタのエサにはなりたくないー!!」

 

すると、ドラえもんがニヤリと笑う。

 

「大丈夫だよのび太くん。この局はナシだ」

 

「えっ!?」

 

するとドラえもんはフッと小さく笑いながらドラミ達を見た。

 

「ドラミ、確かにお前はダブロンアリって言ったよな?」

 

「そうよ。だからこれでトビでしょ?」

 

「いいや、その南、ボクも当たりなんだ」

 

「えっ?!」

 

「ダブロンアリはアリでも、トリプルロンはアリとは言ってないよね!」

 

「!!」

 

そう言うやいなや、たちまちドラえもんは自らの手牌を倒す。

 

 

一九19①⑨東南西北白発中

 

 

国士無双十三面待ち(ライジング・サン)だ!」(※1)

 

「くっ…」

 

ドラミは忌々しげにドラえもんの手牌を見つめる。一方、のび太はキョトンとした顔つきでドラえもんを見つめた。

 

「つまり、これってどういう事なの?」

 

「トリプルロン、つまりは三家和(サンチャホー)さ。これは流局(※2)になるってルールなんだよ」

 

「本当!」

 

のび太の表情はパッと明るくなる。

 

「命拾いしたわねのび太さん…」

 

するとのび太より先にドラえもんが答えた。

 

「命拾いしたのはキミ達の方さ」

 

「なんですって!?」

 

「いいかい、キミ達の待ちである南はボクとのび太くんで4枚とも握り潰していた。しかも親のダブル役満なら直撃は当然、ツモ和了だってキミ達は飛んでゲーム終了だったんだ。しかも国士無双十三面(シーサンメン)待ち。キミらが掴むか、ボクがツモるのは時間の問題だった。というよりミニドラ、キミの次のツモ牌をめくってみてごらん」

 

「ドラ?」

 

ミニドラはドラえもんに言われ、次のツモ牌をめくると、それは一萬だった。それを見てミニドラは青ざめた表情を浮かべる。

 

「フフフ、これでトビだったね」

 

ドラミとミニドラは悔し気にのび太を見つめる。

 

「くっ…。まあいいわ。のび太さん、私たちを倒す千載一遇のチャンスをふいにしたわね」

 

「う…」

 

そうして東1局は流局。ドラミとミニドラのリーチ棒2本を供託、さらに1本場でゲームが再開された。そして、親のドラえもんが牌を切り、のび太の順番がやってきた。ここでのび太は牌を1つツモり「あっ」と声を上げた。

 

「どうしたののび太さん。あなたが切らないと進まないわよ?」

 

「い、いやそれが、アガってるんだ…」

 

「えっ? 九種とかじゃなくて!?」

 

のび太は信じられないと言った表情で牌を倒す。

 

 

二三四七七七123⑤⑦発発 ツモ⑥

 

 

「地、地和(チーホー)…。16000、8000だけど、ドラえもんは関係ないから、8000点は8100点…」

 

まさかののび太の地和にドラミは苦々しい表情を浮かべた。

 

ドラえもん & のび太:50000 ⇒ 68200(供託棒2本含む)

ドラミ & ミニドラ   :48000 ⇒ 31800

 

 

(くっ、律する薬指の鎖(ジャッジメント・チェーン)に反応はない。まさか、こんなところで天然の地和をツモられるなんてね。ツイてないわね。まあ、でもこれくらいハンデに丁度いいわ)

そして東2局が開始される。そして、配牌を取ったのび太が目を大きく見開いた。

 

「あああっ!!!」

 

「どうしたののび太さん、やかましいわよ。ついに頭のネジが飛んだかしら!?」

 

「そ、それが、またアガってるんだ!!」

 

「な、何ですってー!?」

 

のび太は手牌をその場に倒す。

 

一一二二三三234④⑤⑥北北

 

「そ、そんな、馬鹿な…」

 

「ボクだって、信じられないよ…」

 

「2連続で地和、天和だなんて、イカサマとしか考えられないわ。でも、律する薬指の鎖(ジャッジメント・チェーン)でイカサマは封じてあるし…」

 

するとドラえもんが突然笑い出した。

 

「ハハハハハ、さすがはのび太くん、素晴らしいツキだ!!」

 

「ツキですって!?」

 

その瞬間、ドラミはハッとする。

 

「ま、まさか、あの道具…?!」

 

「フフフ、気づいたみたいだね。そう、『ツキの月』さ!」

 

 

【ツキの月】

ゴツゴーシュンギク(ご都合主義とシュンギクをかけたもの)という薬草から作られた月の形の薬。これを飲むと3時間、信じられないような幸運に見舞われる。普段運のない人ほど効果がある。映画『のび太と動物惑星(アニマルプラネット)』にて登場。

 

 

「これを食べると3時間の間、とにかくツキまくるのさ。のび太くんが下剤を飲んだ直後、ボクが食べさせた丸いお菓子は、月のツキだったのさ」

 

するとのび太が不思議そうな顔をする。

 

「でも、ボクずっとツイてなかったよ?」

 

「いいや、キミは本当はツイてたんだよ。ツキの月を食べた直後のダブルリーチでチョンボ(※3)した時の配牌も、キミがきちんと打っていたらきっと役満をアガっていたハズさ。その後はずっと配牌降り(※4)をしてたけど、きっとちゃんと打っていたら何かしらアガっていたんじゃないか?」

 

「そうかあ…」

 

「でも、まさかキミがこれほど腕がヒドイとは思わなかった。これだけ強運なのに、その運を使いこなせる腕が全然ないんだからね」

 

「うーん、そうだねえ」

 

そう言いながら、舌を少し出して、のんきに笑った。そして改めて卓を見つめなおす。

 

「それじゃ、親の役満で16000オール!」

 

ドラえもん & のび太:68200 ⇒ 100200

ドラミ & ミニドラ   :31800 ⇒ -200

 

そうしてドラミとミニドラはトビ、ゲームは終了した。

 

続く☆

 




※1 国士無双十三面待ち
麻雀漫画『無駄ヅモなき改革』では国士無双十三面待ちを『ライジング・サン』と呼称している。小泉ジュンイチロウの得意技。
なお、十三面待ちは『じゅうさんめん』ではなく『シーサンメン』という。


※2 流局
その局が終了する事。誰も和了できずにツモ牌が尽きる、三家和、配牌での九種九牌、四風連打、カンが4回発生するなど様々な条件で流局がある。


※3 チョンボ
ルール違反によりゲームの続行が不可能になる事。罰則として、原則的には満貫分の支払いが発生する。


※4 配牌降り
配牌をもらった時点から和了へ向かわず、振り込まない事に専念する事。
振り込まずにこの局を終えたら勝利、みたいな状態の時に配牌降りする事もある。
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