※は最後に用語解説をしております。
闇に降り立った愚者
「あーあ、退屈だなあ」
日曜の昼下がり、のび太は何の目的もなくブラブラと麻雀ブログを閲覧して回っていた。パソコンの別のタブには
ふとのび太は、本棚に目をやると【アカギ -闇に降り立った天才-】(※2)のコミックスが目に入る。
「そう言えば、買ったまま読み忘れてたなあ」
何の気なしにコミックスの一冊を抜き取ると、座布団を二つ折りにして枕にし、仰向けになってコミックスを読み始めた。そこはちょうど、偽アカギこと平山幸雄がワシズ麻雀を打っているシーンだった。
ワシズ麻雀では1種4枚の牌の内3枚がガラス牌であり、同卓者全員に手の内が見えてしまうという特殊ルールで行われている。のび太はそのシーンを見ながらふと思った。
「すごい麻雀牌だなあ。でもワシズ麻雀だったら、相手の手が透けて見えるからボクでも相手に振り込まずに上手く打てるかも」
のび太は何の根拠もなく自信満々に思った。そうなると居ても立ってもいられない。こういう事に関しては無駄に行動力のあるのび太は、慣れた手つきで押入れからドラえもんのスペアポケットを取り出し、【絵本入りこみぐつ】を取り出した。
【絵本入りこみぐつ】
絵本の世界に入り込むことができる。また、登場人物に話しかけるなど、話の流れに干渉する事もできる。絵本への出入りは靴を両方履いている必要がある。
「ようし、これでアカギの世界へ行ってみようっと」
のび太は両足に絵本入りこみぐつを履き、アカギのコミックスを一瞥する。その時ふと、過去に絵本入り込みぐつでアラビアンナイトの世界に入り、散々な目に遭った事を思い出した。
のび太は静香ちゃんとアラビアンナイトの世界に遊びに行くのだが、その時に静香ちゃんが行方不明になり、ドラえもん達を巻き込んで救出に向かうという、くぐらなくていい修羅場をくぐる羽目になってしまったのだった。普通ならその時の経験から、同じ過ちは繰り返さないようにするだろう。
(そう言えばあんな事もあったなあ。でも、今思うといい思い出だなあ)
のび太の辞書に反省の文字はなかった。のび太の根拠のない前向きさは、逆境に立ち向かう時には希望を生み出す重要な原動力となるが、こと麻雀においては全く役に立たない。そもそも反省ができるなら、麻雀で2千試合を終えて平均順位3.75の数字にはならないだろう。
のび太は『今度こそ、今度こそ』と全く過去を顧みず、前に進んでは同じ失敗を繰り返す。
そうしてのび太は、軽く息を吸い込んでから、アカギのコミックスへ向かって飛び込んでいくのだった。
続く☆
※1 雀塊(じゃんかい)
ネットゲーム『雀魂(じゃんたま)』に限りなく近い本作のオリジナルの架空ネット麻雀ゲーム。
※2 アカギ ~闇に降り立った天才~
元々は『天 ~天和通りの快男児~』の登場キャラ、赤木しげるのスピンオフ作品。天登場時は初老だったが、本作では赤木の麻雀デビューから青年時代が描かれている。
全36巻の内、半分以上がワシズ麻雀編(半荘5回戦)という偏った構成になっている。