雀鬼ドラえもん   作:クリリ☆

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麻雀の牌姿(はいし)は
漢数字がマンズ、英数字がソウズ、〇囲み数字がピンズを表しています。


イレギュラー効率

 のび太がドラえもんに泣きついてからおおよそ10分後、二人はスネ夫宅に乗り込んでいた。部屋に入るとすぐにジャイアンが睨み付けてくる。

 

 

「ようのび太、負け分は持ってきたのか?」

 

 

その威圧感に圧倒され、のび太は一歩後ずさりしてしまう。そののび太の前にドラえもんが立ちはだかる。

 

 

「ん、何だドラえもん?」

 

「博打の負けは、博打で返しに来たよジャイアン!」

 

「なんだテメェ、オレ達と打(ぶ)とうってか!?」

 

「ああ、のび太君の代わりにボクが打つ!」

 

「ほう、ドラえもんごときが麻雀を打てるのか?」

 

 

するとドラえもんはニヤリと笑う。

 

 

「フフフ、ボクの電子頭脳にはね、雀聖・阿佐田哲也や雀鬼・桜井章一、雀魔王のムツゴロウさん、そして多くのプロ雀士の闘牌における牌譜が可能な限り全て記録されているんだ。さらにはネット麻雀会社とも提携して、様々なネット麻雀の全牌譜が収められている。その対局データ数はおよそ1億と2千!」

 

「へっ、だからどうしたって言うんだ」

 

「その膨大なデータ量を元にはじき出される、手作りの最善の一打、相手の手牌予測、捨て牌読み、山予測などの精度は実に99.9987%の精度を誇るんだ」

 

「ふざけるな。ロボットなんかに麻雀が打ててたまるかよォ! それに、麻雀には“流れ”ってものがあるんだ。いくら計算ができたって流れが読めなきゃ麻雀は勝てねえんだぜ!」

 

「流れ? ああ、イレギュラー効率の事ね」

 

「イレギュラー効率だと!?」

 

「一過性の牌の偏り、この時代ではそれを流れとかオカルトとか呼んでいるけど、それを22世紀ではイレギュラー効率と呼んでいるんだ。そして、22世紀ではイレギュラー効率の研究も進み、ついにその全貌が解明され、すべて計算で算出できるようになったんだ」

 

「な、何だと!?」

 

「そしてイレギュラー麻雀は一気に発展し、多くの戦術が生み出されていった。そして、それまで主流だった牌効率を重視するデジタル麻雀はあっという間に衰退していったんだ。確か、21世紀ではまだイレギュラー、いや、流れをオカルトとして取り扱ってるんだよね。そしてデジタル麻雀っていう、イレギュラー効率を無視した原始的な戦術が流行ってるんだっけ」

 

「デジタル麻雀が原始的だと!?」

 

「22世紀ではイレギュラー効率、すなわち流れに沿った麻雀を打つのが常識になっているんだ。君らも多面待ちがペンチャンやカンチャンなどの効率の悪い待ちに、めくり合いで負けた事は何度もあるだろう? イレギュラー効率を無視してたらどんなに牌が残ってたってアガれる訳ないんだよ」

 

「じゃあ、未来の雀士はみんな流れが読めるっていうのかよ!?」

 

「流れが読めるというより、流れは計算できると言った方が正確かもね。そして、それが22世紀の常識なんだ」

 

「うるせぇ、能書きはいい、さっさと打つぞ! 借金を倍増させてやるからな!」

 

 

そうして闘牌が開始される。のび太は不安そうにドラえもんの手牌を見つめた。

 

 

 

闘牌開始!

 

 

東家:ジャイアン

 

南家:スネ夫

 

西家:しずか

 

北家:ドラえもん

 

 

東1局。ジャイアンの親番。

 

 

12巡目、ドラえもんはこんな形のテンパイになる。

 

 

二三三四四334455⑧⑧ ドラ4

 

 

(よーし、すごいぞドラえもん。タンピンイーペー、ドラドラ。高めならリャンペーコーの倍満まである~)

 

 

しかし、同時にスネ夫も張っていた。

 

 

三四七八九123②③④⑨⑨

 

 

待ちはドラえもんと同じ二五萬待ち。

 

そんな中、ドラえもんはひょっこりと場に2枚切れの南をツモる。

 

 

二三三四四334455⑧⑧ ツモ南

 

 

そしてスネ夫の捨て牌を軽く一瞥し、小考する。

 

 

 

(なるほど、のび太君から聞いた通りの戦術だ。ジャイアンが親の時は、完全に攻撃役をジャイアンに回し、スネ夫は万が一ボクへの振込みに備えて同テンで張っておく。こうしておけば親のジャイアンがどんな牌を強打しても頭ハネでフォローできるという訳か。ならば、こうしたらどうだ!)

 

ドラえもんは手の中から二萬を切り出した。

 

それに慌てたスネ夫、すぐにジャイアンにサインを送る。

 

(ジャイアン、ドラえもんからボクのロン牌が出てきたけどどうする? アガっとく?)

 

(バカヤロウ、どうせのみ手の1000点だろうが。そんなんでオレの親を流してどうする!? それよりオレは今、ハネ満の1シャンテンなんだ。見逃せ見逃せ!)

 

(分かったよ、ジャイアン!)

 

 

その直後、ジャイアンは牌をツモるとテンパイとなった。

 

 

七八九44789⑦⑦⑧⑧⑨南 ドラ4

 

 

「よーしリーチだ!」

 

(南は場に2枚切れ。安全牌を抱えてテンパイに持っていくとは、オレは手作りの天才だぜw)

 

ジャイアンはニヤリと笑みを浮かべ、南の牌を横に曲げる。(※1)

 

 

 

「御無礼、ジャイアン。ロン!」

 

「な、何だと!?」

 

 

三三四四334455⑧⑧南 ロン南

 

 

「チートイ、ドラドラ、ボクドラえもんで6400点」

 

「うおお、てめえ…!?」

 

 

その瞬間のび太は両手を挙げてバンザイをする。

 

 

「さっすがドラえもーん、タンピンリャンペーコーを捨ててチートイでジャイアンの余り牌を討ち取ったぞ!」

 

「どうだい、これが22世紀の麻雀だよジャイアン」

 

「く、くっそー!」

 

 

すると突然ジャイアンはスネ夫の頭に全力でゲンコツを落とす。

 

 

「いてーっ! 何するんだよジャイア~ン…」

 

「バカヤロウ、スネ夫、二萬はお前のロン牌だろー! 何でロンしなかったんだよォ!!」

 

「だ、だって、ジャイアンが見逃せって言うから…」

 

「オレのせいだって言うのかよォ!」

 

ジャイアンはスネ夫の胸倉を力いっぱい掴み上げる。

 

「ごめんよジャイア~ン…」

 

そうして波瀾の闘牌が開始されたのだった。

 

 

続く☆




※1 牌を横に曲げる

リーチを宣言するためのサイン
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