雀鬼ドラえもん   作:クリリ☆

20 / 28
闘牌シーンは漢数字はマンズ、英数字はソウズ、〇囲み数字はピンズを表しています。

また、ワシズ麻雀のため青字はガラス牌で全員が分かる牌、黒数字が自分にしか分からない牌となります。また、他家から見た黒牌は■で表しています。

※は最後に用語解説があります。

その他分からない用語などは感想などでお知らせいただければ個別にご説明いたします。


ニセアカギの最期

ドクン…。

 

アカギの世界に降り立ったのび太は、不意に自身の心臓の鼓動を感じた。重苦しい空気感で、まるで海の底にでもいるかのような息苦しさを感じ、のび太は思わず深呼吸をする。

のび太は辺りを見渡すと、長い直線の廊下に立っている事に気付いた。その廊下の一方に片開きのドアがあり、その先からタン、タン、と牌が卓に打ちつけられている音が聞こえてきた。

 

(向こうでやってるのかな…)

 

のび太は、牌の音がする方向へ忍び足で歩いていく。そしてドアを小さく開けると、部屋の中央では、まさにワシズ麻雀(※1)が行われていた。隙間から中をそっと(うかが)うと、そこにはニセアカギ(※2)こと平山幸雄の背中が見える。左手には採血用のチューブが取り付けられている。

 

その対面に長髪の白髪の老人が見える、それがこの屋敷の主であるワシズだった。ワシズの横のテーブルには血液で満たされた250ccの注射器のシリンダーが4つ置かれていた。これは平山からすでに抜いた血液であった。3本のシリンダーはすでに満タンに満たされ、4本目は半分ほどの血液が入っている。この事から、すでに平山が900ccほどの血液を抜かれている事が分かる。

 

そんな中、平山が⑦筒(チーピン)を切ってリーチを打つ。その牌姿はワシズから見たらこのように見えた。

 

 

四五68③③④⑤⑥■■

 

 

※■は相手から見えない牌。各種4枚の内、1枚が相手から見えない。

 青文字はガラス牌、自分だけではなく、対戦相手全員も見える。

 

 

ワシズは平山の手を見て考える。

 

③筒(サンピン)と何かのシャボか? いや、黒牌は1種に1枚だからシャボは無い。③筒が雀頭で、黒牌部分で何かの面子ができてるのか? まあ、いずれにしろ、これはないじゃろ)

 

ワシズは河に捨てられたガラス牌でできた(ぺー)2枚をチラリと見る。そして、安牌候補に取って置いた、自分の手に1枚あったガラス牌の北を切る。すると平山が物凄い勢いで手牌を倒した。

 

「その牌、ロンだ!」

 

「何じゃと!?」

 

 四五68③③④⑤⑥③北 ロン

 

※青字はガラス牌(透き通っているため全員から見える)

  黒字はプラスチック牌(自分しか見えない)

 

 

手牌を倒し、平山が裏ドラ牌を、卓の中央に置かれている穴から一枚ツモる。その牌は四萬であり、裏ドラが一つ乗った。

 

「リーチ、一発、裏1で5200点だ!」

 

するとワシズは点箱から5200点を取り出しながら言った。

 

「小賢しい、牌の位置を並び替えたのか。それにしても貴様、なぜ⑦筒(チーピン)切りリーチなんだ?」

 

「ああ?」

 

「その手、⑦筒が手にあればタンヤオがつくし、高めでピンフもつく。しかも②⑤⑧④⑦筒(リャンウーパー・スーチーピン)の5面待ちじゃ。普通、鉄板(※3)で北切りリーチじゃろ?」

 

「うるせー! てめえが北を1枚浮かして持っている事は解ってたんだ。御託はいい、さっさと点棒を出しやがれ!」

 

チッ、と軽く舌打ちをしながらワシズは5200点を卓に置く。

 

「で、現金と血、どっちだ?」

 

すると平山はイライラしながら答えた。

 

「血だ! 血に決まってんだろ! さっさと血を返しやがれ!!」

 

対決中のワシズと平山に、直接点棒がやり取りされた場合、点棒の他に金か血液の移動が行われる。

 

1000点=10万円=10cc

 

今回のやり取りにより、平山はここまでに失血した1000ccの内、52ccが輸血される。

 

しかしその直後、ワシズの親番でハネ満をあっさりツモアガった。それにより平山は再び60ccの血液が抜かれる。

序盤は一進一退の攻防を繰り返していた平山も、失われた血液を取り戻すため、次第にワシズからの直撃にこだわり、自らの手を狭めてしまう。一方、のびのびと自分の麻雀を打つワシズと、次第に点棒に差が出始める。

さらに、失血による焦りと集中力の低下から、何でもないとこで無駄に失点を重ね、次第に二人のパワーバランスが崩れていった。

 

そしてワシズ麻雀4回戦目の終了時にワシズが5万点オーバーのトップに対し、ニセアカギは1万2千点持ちでラスになってしまう。10-30のウマがあったため、その半荘の精算により、平山は-48ポイント、すなわち480ccの血液が抜かれてしまった。ここまでの失血に加え、この480ccで致命的となった平山は、5回戦目に入ってすぐに突然意識を失って卓状に突っ伏してしまう。

すでに闘牌が開始されていたため、河がグシャグシャになり、ゲームの続行が困難な状況になってしまった。それを見てワシズの取り巻きである白服の一人が言った。

 

「おい、お前。これはチョンボの対象だ。お前が親だから4000オールの支払いだな。それと、失血も40ccだ」

 

「まあ待て」

 

ワシズはそう言うと平山をかぶり付きそうな勢いで見つめた。

 

「ククク、垂涎(すいぜん)、まさに垂涎じゃ!」

 

その瞳は狂喜に満ちており、だらしなく半開きになった口元からはわずかに涎が溢れかけていた。

 

「ククク、平山君、若いのにだらしがないぞ、早く続きを()とうじゃないか」

 

 

そう言いながらワシズは平山の頭をガシガシと乱暴に撫で回す。しかし、平山は目を閉じたまま、苦しそうにハアハアと浅く早い呼吸を繰り返すのみで何も抵抗しようとしない。その苦悶の表情を浮かべる平山を見つめ、ワシズは満足そうに笑みを浮かべた。

 

「よし、堪能した。いいぞ、抜け!」

 

「了解しましたワシズ様」

 

白服の一人がすでに意識のない平山の腕から、注射器型のシリンダーを取り付け、チョンボの代償として40ccの血液を抜いた。

それをドアの向こうから眺めていたのび太は、あまりの恐怖の余り、足がすくんでしまう。

 

(こ、こ、こここ、ここは異常だ。危険だ、帰らなきゃ…)

 

のび太は全身から震えが止まらず、その震えが触れているドアに伝わってしまい、ドアが小さく軋み、カタカタと音が出てしまう。ワシズはその音を敏感に感じ取り、ドアを睨みつけながら、見えないハズののび太に向かって指をさす。

 

 

「貴様、見ているな!!」

 

 

ワシズの威圧感に圧倒され、のび太はすくんだ足がもつれ、前のめりに転んでしまう。しかもその勢いで部屋のドアを思い切り開けてしまった。さらに運の悪い事に、転んだ拍子に絵本入り込み靴が片方脱げてしまう。

 

「あっ、しまった・・」

 

派手に転んだのび太は、立ち上がる間もなくあっという間に白服の男数名に組み伏せられてしまう。そしてワシズの前に連行されてしまったのだった。

のび太は両手を後ろに回されたままワシズの前に連れてこられる。ワシズはソファにどっしりと座り、のび太を見つめた。

 

「おい、貴様は誰だ? どうやってここまで入ってきた?」

 

するとのび太は半べそをかきながら答えた。

 

「ごめんなさいー、ぼく何も悪い事してないから許してくださいー!」

 

「いいからワシの質問に答えろ、お前は何者だ! 名を名乗れ!!」

 

「ぼく、野比のび太ですー」

 

「はあ? 何をふざけた事を。つくならもっとマシな嘘をつけ。のび太などとふざけた名前があるか」

 

「本当にのび太なんですー。それに、ぼくの同級生はもっとすごい名前がいるよ、愛久愛海(アクアマリン)とか、光宙(ピカチュウ)とか、スネ夫とか…」

 

「駄目じゃこいつ、早くなんとかしないと…」

 

そう言うとワシズは壊れた玩具を見る子供のような瞳で、卓に突っ伏してすでに息絶えているニセアカギを一瞥する。

 

「おい、このガキもさっさとあのゴミと一緒に棄てて来い」

 

「かしこまりましたワシズ様」

 

「うわー、待って待って、助けてくださいー!」

 

するとワシズは困ったように言った。

 

「いいかお前、ワシの立場になってよく考えてみろ。もしお前が自宅で人を殺したとして、その現場を見知らぬ人間に見られていたとしたらどうする? たとえそれが子供であろうとも、そいつを始末して口封じしようと思うじゃろ? これは必然、絶対、誰でもそうする!」

 

「そんなシチュエーション特殊すぎて解らないよー(ToT)」

 

「まったく、イマジネーションの足りんヤツだな。いいか、大成するためにはイマジネーションが必要なんじゃ。分かるか、イマジネーションだ!」

 

「はい、イマジネーションですね!」

 

「うむ、イマジネーションがあれば将来きっと成功する。まあ、もっとも貴様には将来どころか明日もない訳だがな。まあ、ワシのありがたい教訓は来世で活かすがいい」

 

「ぼく、絶対誰にも言わないから許してくださいー(ToT)」

 

「だから、貴様の言葉を信用する根拠が無い!」

 

「そこを何とかー(ToT)」

 

「まったく、情けないヤツじゃ。いいか、人は散り際が最も輝いて美しいのだ。ワシは、それが見たくて見たくて、一体何人の命を散らしてきた事か。まあ、ワシの事はどうでもいい、とにかく貴様、見苦しいぞ。こんなに情けないヤツは今まで見た事がない」

 

その時、ワシズの頭脳にとある閃きが走った。

 

「が、まあ、貴様の言葉を信じられる方法がない訳でもない」

 

「えっ、それは何ですか!?」

 

「雀士たるもの、共に卓を囲んだ者の人と成りは解るというもの。ワシと麻雀を打てば貴様の言葉も信じられるだろう。しかも、生きて帰れるどころか、もしかしたら大金を手にする事ができるかも知れないぞ」

 

「本当ですか!?」

 

「ただし、ワシズ麻雀では点棒と共に血液を賭けてもらう。つまり、失点次第では死ぬ可能性もあるという事だ」

 

「ええー、そんなぁ」

 

「ククク、さあ選べ、座して死ぬか、生きて大金を掴み取るか」

 

のび太は少し考える。

 

(ワシズ麻雀なら牌が相手から牌が透けて見える訳だし、それに未来で強豪雀塊のプレイヤー相手に毎日打ってるボクに分があるかも知れない…)

 

「解った、受けるよ」

 

「グッド」

 

(ククク、未来のある子供の希望の芽を摘むのは何と心地良い事か。垂涎、まさに垂涎じゃ!)

 

そうして、ワシズとのび太のワシズ麻雀による闘牌が開始された。

 

 

 

続く☆

 

 




※1 ワシズ麻雀
1種4枚の内、3枚がガラス牌で卓上の全員から手が見える特殊牌を使用する。
また、この麻雀はプレイヤーの血液が賭けられており、ワシズと直接点棒のやり取りがあった場合、1000点につき10ccの血液のやり取りが発生する。
ちなみにアカギ原作では、アカギの提案でこの10倍のレートでプレイしており1000点の失点で100ccの血液が抜かれる特殊ルールで行われている。
詳細は次の話で改めて行います。


※2 ニセアカギ
不良刑事、安岡が闇麻雀をやるためにアカギの後釜に据えた相棒。アカギの偽物と言っても見た目も雀風も全く違う。
卓上の見えた牌を一瞬で全て記憶してしまう特殊技能と、牌効率を重視し瞬時に最適解を見出せる高い雀力を持っているが、精神面の弱さがあり、土壇場で勝ちを逃す事が多い。
原作ではワシズ麻雀の末に死亡して死体が処理される描写があるが、実際の闘牌シーンはなく、今回の闘牌シーンは本作オリジナル要素。


※3 鉄板
ギャンブル用語。鉄板は非常に硬い事から、堅実・確実であるという意味。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。