また、ワシズ麻雀のため、誰からでも見えるガラス牌は青字で表しています。
※は最後に用語解説をしております。もし分からない用語などはあれば、お気軽に感想などで教えてください。追記いたします。
東1局9本場
中盤に差し掛かった9巡目でドラえもんの手がふと止まった。
※青字はガラス牌
(高めは234の三色。ここは⑥⑦筒落としか? しかし…)
ドラえもんが場を見渡すと他家の捨て牌と手牌を合わせて二萬が3枚、五萬が4枚とも見えていた。
(相手の手のガラス牌と捨て牌合わせて7枚見えか。もし相手が黒牌で二萬を持ってたら完全にカラ(※1)になってしまう。クソ、どの面子を外せばいいんだ。いつもなら流れを算出すればすぐ解るのに、原始的な牌効率に頼らなければならないなんて。リスクが少ないのは三四萬落としか…?)
ドラえもんは四萬を切り出した。その次の巡目、ドラえもんは4索をツモる。
「よしリーチだ!」
ドラえもんは勢いよく三萬の牌を横に曲げる。すると、その同巡に今度は対面のワシズが牌を横に曲げる。
「リーチじゃ!」
「マズい、追いつかれた?!」
そしてワシズがリーチを打った直後のドラえもんのツモ番。ドラえもんは黒牌の二萬をツモる。
(うっ…、三色に行ってればツモってた…)
ドラえもんは二萬をそのまま切り出した。すると、それを見てワシズがニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
「ロン!」
「リーチ一発、ピンフ、ドラ3!」
「何て豪胆な。ボクが勝負を避けた残り1枚しかない二萬待ちで追っかけリーチだなんて。それにしても、これが普通の麻雀だったら三色を取り逃がさなかったのに…」
「とりあえずハネ満確定じゃ、裏が2枚乗れば倍満まである。が、それは平常時の話。生憎ワシはこれで9連続和了でな。ここは
「何だって!?」
「ククク、48000点は50400点」
「クソッ…」
点棒の他に、さらにドラえもんの左腕に装着された採血用のチューブから、ドラえもんの採血が始まった。
白服の一人が注射器を引くと、そこには透明な液体が注射器型の容器の中に流れ込んできた。
「あれ、これは!?」
「ボクの機械オイルさ」
「機械オイル!? どうしましょうワシズ様?」
白服が困ったようにワシズを見ると、ワシズは言った。
「ククク、面白いではないか。続けろ。このカラクリ人形からどれくらいオイルを絞り取れるのか、それもまた一興」
「かしこまりましたワシズ様」
そうして、50400点にリーチ棒が含まれ計51400点がワシズに渡った事により、ドラえもんは機械オイル514mlが抜かれた。
(確か、ボクの体内の機械オイルはおおよそ1リットル程度だったはず。もし次に直撃を受けたら、もう持たない。いや、すでに半分抜かれてるんだ。この時点でどんな不具合が発生するか、もはや想像もつかない。こうなったら、次局は絶対にアガる、たとえイカサマを使っても・・)
そうして東1局9本目が始まった。ここでドラえもんは配牌を取る時点で、自分の手の動きがぎこちなさを感じた。
(マズい、機械オイルを抜かれた事で手の動きが悪くなっている。普通に麻雀を打つだけならともかく、精密な動作を必要とするすり替えやイカサマはとてもできない・・)
ここでドラえもんは改めて配牌を確認する。
(中のトイツがある。しかも、残りの2枚の中はミニドラが持ってる。これを鳴ければ一気にアガれるぞ。しかし気になる事が一つ…)
「おいワシズ、5本場以上は二翻縛り(※3)かい?」
「当然じゃろ。今は二翻縛りの状態じゃ」
「そうか」
(中のみじゃアガれない。もう一つ手役を付けなければならない。発をもう一枚重ねるか、もしくはホンイツか、あるいは
そしてドラえもんは第一ツモで9索をツモった。
(門前で行くならもう一枚2索か9索を重ねる必要がある。しかし、悪い事にミニドラの手に中だけじゃなく2索まで2枚持っている。門前でこの手を仕上げるのは無理だ。逆に、ホンイツで行くなら2索と中はすぐに差し込んでもらえる・・)
ドラえもんは二三四萬の出来面子を捨てる覚悟をし、四萬を切り飛ばす。そしてすぐにミニドラに中と2索を鳴かすように通しを送る。
そして6巡目。
「ツモ! 中、ホンイツで1000・2000は1900・2900!」
4556799 ポン222 ポン中中中 ツモ6索
「ほう、なかなかしぶといではないか。まあ、そうでなくては面白くない。 それでは選べ、金かオイルか!」
「血液だ! のび太くんの血液を返せ!」
「それは駄目じゃ。そのガキより先に貴様の支払った分が先だろう」
「ボクの事は後回しで構わない。早くのび太くんの血液を返せ!」
「だから、物事には手順があるだろう。ガキの分は後回しじゃ!」
「ぐっ…」
ドラえもんは何を話しても無駄だと悟り諦める。それ以上に今はとにかく時間が惜しかった。そうしてドラえもんは機械オイル29ccを体内に戻す。
そして東2局が始まる。しかしここもワシズが、残り1牌しかない待ちを一発でツモるなど、自分の剛運を見せ付けた。
続く東3局、ドラえもんの親番。ここで連荘に望みを繋ごうとしていたドラえもんをあざ笑うかのように、ワシズはオヒキである鈴木からの差し込みで早々に和了。
そして場が東4局に差し掛かる時だった。突然のび太が体を大きくのけ反らせたかと思うと、そのまま糸が切れた操り人形のように、床に頭を強く打ちつけ、そのままピクリとも動かなくなった。
「のび太くん!?」
すぐに白服の一人が駆けつけのび太の呼吸と脈を確認した。すると、すでに呼吸も脈もほぼ止まりかけていた。
「呼吸、心拍も極めて微弱。もはや仮死状態と言えるでしょう」
「そ、そんな、このままじゃ、もうもたない!?」
思わず卓から離れ、のび太のもとに駆け寄った。
「のび太くん、のび太くん、しっかりするんだ!」
しかしのび太は全く反応を示さない。
「ククク、そう心配しなくてもいいぞ。お前もすぐにこのガキと同じようにしてやる」
「このガキのように…? のび太くんのことか…。のび太くんのことかー!!」
ドラえもんは怒りと憎悪に満ちた目でワシズを睨みつける。ワシズはドラえもんから感じる威圧感に思わずツバを飲んだ。
「なんじゃ、こいつから感じるこのプレッシャーは!?」
「ボクはもう完全にキレた。ここからはリミッターを解除する!」
「リミッター解除だと!?」
「そうだ。ボクは全力で打つと全身の負荷が耐え切れないため、ここまで潜在能力の60%程度で打っていた。しかし、ここからは100%の力で打たせてもらうよ!」
「何が100%の力だ。腕力でも上がるのか? そんなもので麻雀が勝てるなら一流の雀士はみんな筋肉バカになっておるわ!」
「さあてね。それは打ってみてからのお楽しみさ。ここまでの闘牌で、すでにボクはこのワシズ麻雀の致命的な欠陥を発見した。そう、これからの闘牌によってワシズ麻雀はもうゲームとして成り立たなくなるだろう」
「ほう、ワシの考案したこの麻雀に致命的な欠陥だと? 面白い、その欠陥とやらを見せてもらおうか」
「ならば卓に着け。すぐにその口を酸欠の金魚のようにパクパク言わせてやるぞ」
そうしてワシズ麻雀が続行された。
続く☆
※1 カラ(純カラ)
自分の有効牌がすでに山に残っておらず、ツモる事ができない状態。
※2 八連荘(パーレンチャン)
同一プレイヤーが8回連続で和了をすると、8回目以降はどんな形だろうと役満扱いとなる。
※3 二翻(リャンハン)縛り
親の連チャンや流局が続くと1本場、2本場と次局の和了時の点数が300点ずつアップしていくが、それが5本場以上になった場合、和了するために手役が2翻以上必要になる。
通常時は1翻で和了できる。
※4 門前(メンゼン)
他家の捨て牌をポンやチーをせずに手作りを進める事。
鳴くと役の価値が下がるものや、そもそも役としてカウントされないものもあり、早く手作りができる分、点数は下がる。
ちなみにホンイツは門前では3翻だが、泣くと2翻に食い下がりがある。