雀鬼ドラえもん   作:クリリ☆

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ワシズ麻雀のため、黒字が黒の練り牌、青字はガラス牌を表しています。
難しい用語は最後に解説を付けております。


ワシズ麻雀の盲点

ドラえもんはその内側から溢れ出る熱量で、いつしか体が黄金色に輝いていた。さらに眼は炎のように紅くなっていた。

 

「な、なんじゃ貴様のその姿は!?」

 

「伝説の形態、(スーパー)猫型ロボットになったようだ」

 

(スーパー)猫型ロボットだと!?」

 

「ぼくは22世紀では大量生産されている凡庸ロボットさ。しかし、1000体に1体の割合でどんなハンドメイド製でも作れない、規格外の超高性能を持つ猫型ロボットが生まれる。それがぼくなのさ」

 

「ふん、虚仮脅(こけおど)しだ! 見た目など所詮は虚仮脅しじゃ! 麻雀で許される行為はツモって切るだけじゃ。どんなに性能が上がろうが、所詮は虚仮脅しに過ぎん!」

 

「それがそうでもない。ぼくの場合、この姿になる時にだけ特殊能力が発動するんだ」

 

「特殊能力じゃと!?」

 

「麻雀には4つの属性がある。すなわち、『攻』『守』『読』『運』だ。普通の人間は先天的にこのどれかに属している。自分の属性と、選択した属性がマッチした場合に最も雀力を発揮できると言われている。しかし、ぼくはこの姿の時のみ、これら全ての属性の能力を最大限に発揮できるんだ」

 

「何が属性じゃ! 無い、そんなのがある訳ないだろう!」

 

しかし周りの白服達は内心、ワシズ様は運属性だな、と思った。

 

「誓約と制約だよ。覚悟の量で雀力を高める事ができるんだ。そしてその全てが開放された時、絶対時間(エンペラータイム)が発動する!」

 

「ええい、能書きはいい! だったら見せてもらおうじゃないか、その絶対時間(エンペラータイム)とやらを!」

 

「いいだろう。冥土の土産に見せてあげるよ」

 

そうしてゲームが続行される。

 

東4局、ミニドラの親番。

ここでワシズは鈴木からの差込で2600点の和了。しかも、続く南1局のワシズの親番で鈴木からの差し込み1回、ミニドラの振込み1回で早々に2本場を迎えた。

 

 

「おい!」

 

「なんだい?」

 

「さっきからワシしか和了ってないじゃないか! なんだ、貴様のさっきの言葉はただのホラか!?」

 

「ふふふ、そう死に急ぐなよ。ちょっと準備が必要だっただけさ。少々時間がかかったけど、ようやくワシズ麻雀封じの策が完成した。もうお前に勝ち目はない」

 

「ふん、面白い。ワシズ麻雀封じとやら、見せてもらおうじゃないか!」

 

南1局2本場が開始された。

 

 

7巡後、ドラえもんからリーチが入る。ワシズがドラえもんの牌姿を確認すると、以下のようになっていた。

 

 

23■■49白白発発中中

 

 

※■は黒牌、青字はガラス牌(他者から見える)

 

 

「ワシズ、オープンリーチ(※1)はありかい?」

 

「はあ? 無しに決まってるじゃろ。この麻雀は4枚中3枚がガラス牌じゃ。相手の待ちを1点読みで看破できる事も少なくない。オープンリーチなど認めたら、それこそかけ得じゃろ」

 

「まあ、確かにそうか」

 

「実際貴様のその手、素直に読むならメンホン、チートイ、待ちは9索。仮に黒牌を並び替えて撹乱しようとするなら、それでもソウズの下目が本命じゃろ。だが、貴様が勝手にオープンにする分には文句は言わんが」

 

「じゃあ、オープンだ」

 

233449白白発発中中

 

 

ドラえもんは自分の牌を全部倒す。待ちはワシズの言った通りメンホン、チートイの9索待ちだった。

 

「ふん、やはり9索か。しかし、なぜオープンにする?」

 

「それは、こうして和了った方がお前に分かりやすく絶望感を伝えられるからな」

 

「なんだと!?」

 

「予告する。ぼくは次のツモで9索をツモるよ」

 

「予告ツモだと、小賢しいクソタヌキめ」

 

 

ワシズが憤りと憎悪が入り混じった表情を浮かべる中、ドラえもんは悠々と中央の穴に手を伸ばす。

 

「さて、9索はどこかな」

 

そう言いながらドラえもんは穴の中の牌をジャラジャラとかき混ぜる。

 

「フフフ、見つけたぞ。13.7946g」

 

「はあ、何を言っておる?」

 

ドラえもんは中央の穴から牌をツモりあげる。その牌は9索だった。

 

 

233449白白発発中中  ツモ9索

 

 

「どうだい、今の9索ツモはただの偶然だと思うかい?」

 

ワシズはちょっと怪訝そうな顔をする。

 

「ハァッ、ただの偶然じゃろうが?」

 

「いいや、これは意図的にツモったんだ」

 

「何じゃと!?」

 

「ガン牌(※2)のようなものだよ。これこそがワシズ麻雀の致命的欠陥さ。ぼくはもう、自分のツモりたい牌を何でも自由にツモる事ができるんだ」

 

「ガン牌だと!?」

 

「そうだ。ぼくのアームに備え付けられた重量センサーは1万分の1g単位まで識別できる。一見同じような重さに感じる麻雀牌だけど、1万分の1g単位からしたらわずかに違う。つまり重量を計測する事で、どの牌も容易に識別できてしまうのさ。もちろん、通常の麻雀じゃツモ牌を自分で選ぶなんてできないから、重さで牌を識別する意味はない。しかし、ワシズ麻雀はツモる前に牌をつかんで重さを確かめる事ができる。だからツモりたい牌を自由に選べるのさ」

 

「そんな事あってたまるか!」

 

「ふふふ、34種136牌、1万分の1g単位の前では、全牌重さが違ったよ。さあ、全牌のガン付けは済んだ。ここからはもう、お前に勝ち目はないよ!」

 

「あり得ん。そんな馬鹿な話あってたまるか!」

 

 

そうして南2局が開始される。

 

 

 

続く☆

 




※1 オープンリーチ
自分の手札全体、または待ちに関わる部分だけを対戦相手に公開するリーチ。
通常のリーチは1翻だが、オープンリーチは2翻扱いとなる事が多い。また、リーチをしていない状態で相手のオープンリーチに振り込んだ場合、役満分の振り込みというルールもあるが、オープンリーチ自体が正式なルールでは存在しないため、事前の取り決めが必要。


※2 ガン牌、ガン付け
麻雀牌に自分にしか分からない目印を付け、自分にだけ特定の牌を識別できるようにするイカサマ。
また、雀牌に目印を付ける行為をガン付けという。
今回の場合は目印を付ける行為ではなく、牌の重量を確認する事を指してガン付けと言っている。
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