雀鬼ドラえもん   作:クリリ☆

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手牌はマンズは漢数字、ソウズは英数字、ピンズは丸囲み文字で表しています。

今回のシーンではガラス牌表示は意味がないため、ガラス牌の青字表示を省略しておりますのでご了承ください。

※は、麻雀用語を最後に解説しております。
分からない用語などあればお気軽にお知らせください。追記いたします。



王の資質

 

南3局。 ドラえもんの親番。

卓の中央の穴からゴトゴトと音を立て、中の牌が洗牌(シーパイ)(※1)されている。そんな中でワシズが言った。

 

「おい、水を持って来い…」

 

ドラえもんに大物手をアガられて異様な空気の中、ワシズが搾り出すような声で白服に命じる。それを受けて白服の一人が近くのピッチャーからグラスに水を注いでワシズに手渡した。

 

「お待たせいたしましたワシズ様」

 

ワシズはグラスを受け取ると、そのグラスの中身をそのまま白服の顔面に向かってぶちまける。

 

「うわっ、冷たっ」

 

「これじゃない、バカモノ!」

 

「すいません、何か問題がありましたか?」

 

「バケツいっぱいに水を持って来い。早急にだ!」

 

「ハッ!」

 

白服は訳の解らぬまま、ワシズに言われた通り、バケツにいっぱい水を入れて持ってきた。

 

「お持ちいたしましたワシズ様」

 

「よし、それを穴の中に注ぎ込め」

 

「えっ、卓の穴にですか?」

 

「そうじゃ、やれ」

 

「ハァ…」

 

白服は言われるまま、バケツの水を雀卓の中央の穴の中に注ぎ入れる。穴はすぐに水で満たされた。

 

「どうじゃ、これで牌の重さによるガン牌はできないだろう! さあ、ゲーム続行じゃ!」

 

「フフフ、まるで問題ない。質量、体積、表面積、浮力、これらを計算すれば全く問題なく重量を算出できる。そんなものでボクを止められるものか!」

 

「なんじゃと!?」

 

ドラえもんが配牌をツモろうとした時、ワシズが言った。

 

「ちょっと待った!」

 

「なに、まだ何かあるの?」

 

「突然じゃが、ルール変更じゃ!」

 

「ルール変更?」

 

「そうじゃ。ワシはこのワシズ麻雀の発案者。つまり、このゲームでは王じゃ! よって王様権限じゃ。ここでルールを変更する!」

 

「どんな風に変えるんだい?」

 

「ルールは、親の第一、第二ツモでの和了禁止。そして、ワシは手袋を外して打たせてもらう!」

 

するとミニドラが思わず立ち上がって「ドラ! ドラ!」と講義をする。しかしドラえもんはそれを制して言った。

 

「いいよ、その程度のルール変更なら飲もうじゃないか。ただし、今後絶対にルール変更は許さない。いいね!」

 

「いいだろう。今後ルールの変更はなしじゃ」

 

そう言うとワシズは右手に着けていた革手袋を外した。

 

(くっくっく、これでヤツの天和は封じた。そして、ワシは盲牌(※2)を使って地和を作り上げてやる!)

 

そうして南3局、ドラえもんの親番が開始され、全員が配牌を取り終える。

 

ワシズ手牌

 

一九19①⑨東南西北白発中

 

 

(くっくっくっ、国士無双十三面待ち聴牌(テンパイ)。第一ツモでアガってやる。ヤツは最低2回以上ツモらねばならぬ。ヤツにこれを防ぐ手段はない!)

 

 

ドラえもん配牌

 

2222333344466発

 

「カン!」

 

333344466発 カン■22■  ツモ 6

 

「もいっちょカン!」

 

444666発  ■22■ ■33■ ツモ 4

 

「さらにカン!」

 

「な、なんじゃこりゃ…」

 

666発 ■22■ ■33■ ■44■ ツモ 6

 

「カンだ!」

 

「ま、まさか…」

 

発 ■22■ ■33■ ■44■ ■66■ ツモ 発

 

「リンシャン…、ツモ! 四槓子(スーカンツ)四暗刻(スーアンコ)緑一色(リューイーソー)、トリプル役満、48000オール!」

 

「ぐ、ぐぬぬ…」

 

「ボクは配牌の他にも4回ツモったよ。何か文句ある?」

 

「このクソダヌキめ。何をしてもすり抜けてきやがる…」

 

そうしてついにドラえもんは自分の負債分を完全に返しきり、のび太への血液を取り戻す。しかし、取り返したのは900mlほど抜かれた内のおよそ300ml程度で、まだ危険な状況には変わりがない。

 

「さあ、次いくよ! あと2回はダブル役満クラスの手をあがらなくちゃいけないんだ」

 

そうして、全員は水で満たされた穴に牌をそのまま投入する。そして、ドラえもんが自動卓の洗牌ボタンを押す。すると、『ギギ…ギ…』と変な音が鳴り、動かなくなった。

 

「あれ? 壊れたのかな?」

 

「どうやら、水を入れた事で、機械の調子が悪くなったのかも知れんな」

 

「ふーん、まあ、問題ない。機械で洗牌できなくても、穴に手を突っ込んでグルグルかき混ぜれば簡単に洗牌できるさ」

 

 

機械の故障はワシズにとっても想定外の事だった。しかし、この状況にワシズがニヤリと笑う。

 

「駄目じゃ!」

 

「えっ!?」

 

「ワシズ麻雀の決まりで、ワシズ麻雀はこのワシズ麻雀専用の卓で洗牌しないといけない決まりがあるんじゃ!」

 

「それじゃ、これを直せばいいのかい?」

 

「おい、こいつを直すのにどれくらいかかる?」

 

ワシズは白服の男に声をかける。

 

「これは特別仕様ですので、部品の発注などを含めて2週間はかかるかと…」

 

ワシズはそれを聞いてさらにニヤリとする。

 

「よし、ならばこの一戦、続行不可能だな」

 

「はい、続行は困難かと思います」

 

「そんな物、ボクが直してあげるよ」

 

「駄目じゃ! 貴様の事など信用できん。これはワシが信用できるところで確実に直す!」

 

「それじゃ、この勝負はどうするんだ?」

 

「途中でゲームが続行できなくなった以上、ゲームは中断するしかない。勝負の続きは卓が直った後だ」

 

「中断だって!?」

 

「そうじゃ! ワシは王じゃ! 王のワシが決めた事は絶対なんじゃ!」

 

「それじゃ、のび太くんはどうなるんだ!」

 

「まあ、2週間後の再試合次第だな。まあ、再試合までには、貴様の重量ガン牌を封じる策を用意しといてやる。ああそうだ、この麻雀牌を100組用意させよう。そして牌を1局ごとに全部入れ替えてやる。貴様の重量ガン牌はガン付けに数局は要していたからな。毎局牌を総入れ替えにしてやれば、もはや手も足も出まい」

 

「そんな事はどうでもいい。ならば早くのび太くんの血を返せ。すぐに輸血するんだ!」

 

「だから2週間後の再試合次第だと言っているだろうが」

 

「ふざけるな、早急に輸血が必要なのに2週間も待てる訳ないじゃないか! だったらすぐに病院に行く、さっさとここから出せ!」

 

「駄目じゃ。病院に行くふりをして逃げるかも知れん。勝負が終わるまでは屋敷から出る事は許さん!」

 

「貴様、完全にボク達を殺すつもりだな」

 

「さあ、それは貴様次第じゃ」

 

「お前、今まで何人の人間を殺してきたんだ!?」

 

「フッ、お前は今までに食べたドラ焼きの数を覚えているのか?」

 

するとドラえもんは完全にブチ切れてしまった。ドラえもんはスッと立ち上がると、対面でふんぞり返っているワシズの頭部を両手でガッチリと掴む。

 

「・・・・・・??!」

 

そしてそのままドラえもんは卓の中央の穴にワシズの頭を突っ込んだ。ほんの数瞬の出来事に、その場にいた誰もがあっけに取られていた。

 

「何が王だ! 王とは民の事を思い憂うもの! 我がまま放題なのは王じゃない、ただのガキ大将だ! 死ね、狂ったガキ!」

 

穴の中は水で満たされている。ワシズは息が出来ず手足をバタつかせた。ハッと我に返った白服も慌ててドラえもんを止めに入るが、(スーパー)猫型ロボットと化していたドラえもんは、皮肉にもワシズが言ったように腕力も桁外れに上昇していて、白服の男5人がかりでも全然外れる気配がない。

 

「ガババ…ブババ…」

 

ワシズも必死に逃れようとするが、ドラえもんのロックは全く外れない。そして死を予感したワシズはついに観念して、肺の中の最後の息を搾り出して言った。

 

「ワシが、悪か…、許し……」

 

「……」

 

そこから1,2秒間、ドラえもんは間を置いてからワシズの顔を穴から出してやる。そしてドラえもんが手を放すと、ワシズはそのまま仰向けに床に転がった。白服がすぐに群がり、ワシズに心臓マッサージを施す。水は完全に肺に入り込み、ワシズは青白い顔をして意識は朦朧としていた。

そして心臓マッサージを施して数秒、ワシズが肺に入り込んだ水を吐き出した。

 

「ガハアッ…、ハア、ハア…」

 

そうして1分ほどで、完全にワシズは意識を取り戻す。

 

「本気で悪かったと思っているのか?」

 

「あ、ああ、悪かった、調子に乗り過ぎた…」

 

「それじゃ、今すぐにのび太くんの血を返せ」

 

「わ、分かった…」

 

ワシズは朧気(おぼろげ)に天井を見上げて荒く息をしたまま、ドラえもんの言う条件を受け入れた。

 

 

続く☆

 

 

 




※1 洗牌(シーパイ)
麻雀牌をかき混ぜる事。


※2 盲牌
牌の表面を指でなぞり、指の感触で牌の種類を識別する事。
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