雀鬼ドラえもん   作:クリリ☆

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そして現実へ

ワシズの指示で、のび太の血液を全てのび太に輸血する。そのおかげで、青白くなっていたのび太の顔が、ようやく赤みがかかってきた。その様子を確認して、(スーパー)猫型ロボット状態だったドラえもんも、ようやくいつもの青い状態に戻る。

 

「…う…ん……」

 

のび太が小さくうめき、手がピクリと動いた。

 

「のび太くん!!」

 

ドラえもんはホッと息をつくと、そのままのび太に抱きついた。

 

「ドラえもん? あれ、ここは?? 確かぼく、ワシズ麻雀に負けて血を抜かれて…?」

 

のび太はまだ夢うつつな状態で周りを見渡しながら言った。

 

「のび太くん、良かった、本当に良かった…」

 

「ドラえもん、ありがとう。きっとキミなら助けにきてくれると信じてたよ」

 

「まったく、キミは本当に馬鹿なんだから。さあ帰ろう、こんな所に長居は無用だ。ママが晩ご飯を作って待ってるよ。今夜のおかずはキミの大好きな鶏の唐揚げだよ」

 

「本当、早く食べたいなあ」

 

「ウフフ、さあ帰ろう」

 

ワシズ達が見守る中、のび太は片方脱げたままになっていた絵本入り込み靴を履き直した。

 

「待て!」

 

さあ帰ろうかという時に、ワシズが二人を後ろから呼び止める。

 

「まだ何か用? ここまでボロ負けしたのに、もう一勝負する気かい?」

 

「いや違う、こいつを持って行け」

 

するとワシズはレンガブロック1個分程の大きさの札束を無造作に2つ、ドラえもんに放る。

 

「ん、何だいこれ?」

 

「口止め料だ」

 

「口止め料?」

 

「ああ、そこにゴミが転がってるじゃろ」

 

ワシズが指差した先にはニセアカギの死体が転がっていた。が、所詮は架空の世界の登場人物な上、原作でも実際にワシズに血を抜かれて死んでいる。ドラえもんは原作を書き換える気はなかったし、ニセアカギの死には特に口出しをするつもりはなかった。が、下手に話をこじらせるのも面倒くさいと思い、ドラえもんは札束を受け取った。

 

「いいよ、この事はボクらだけの秘密にしておくよ」

 

「うむ、それじゃ目障りじゃ、とっとと失せろ」

 

「さあ帰ろう、のび太くん」

 

「うん、でも・・」

 

のび太はニセアカギの死体を見つめながら悲しそうな表情を浮かべる。

 

「あのお兄さん、助けられないかな?」

 

「助けるって言っても、彼はもう完全に死んでるよ。さすがのボクでも助けられないよ」

 

「でもさ、タイム風呂敷とかで時間を巻き戻したらさ」

 

「うーん、やってみる価値はあるかも知れないけど、彼は原作でも死んでるしなあ・・」

 

ドラえもんはのび太にはとにかく弱い。さっさと帰ろうと思ったが、のび太につられてドラえもんも何となくニセアカギに情が湧いてしまった。

 

「おいワシズ、その死体、ボクが引き取ってもいいか?」

 

「ハア? 何をバカげた事を。駄目に決まっとるじゃろ。あれは立派な証拠じゃからな。万が一貴様らがアレを持って警察にでも駆け込まれたら、もみ消すのが余計に面倒になる」

 

「そんな事しないさ」

 

「いいや、信用ならん。アレはワシの方で処分させてもらう」

 

「じゃあ、今もらった金で、彼の血液を売ってよ。それなら問題ないだろ?」

 

「血か、それは構わんが、そんな無駄な事をしてどうする?」

 

「それはこっちの勝手だろ」

 

そう言うと、ドラえもんは札束が大量に置かれているテーブルに、先ほどワシズから受け取った札束をそっくりそのまま叩きつける。それを見てワシズが白服に指示を出す。

 

「おい、その男の血をそのタヌキ人形にくれてやれ」

 

「だったら、その血を彼の中に戻してよ」

 

「了解しました」

 

白服はニセアカギから抜き取った血を、腕のチューブから全て体内に戻した。しかし、ニセアカギは死んだまま何の変化もない。それを見てワシズはドラえもんを侮辱するようにニヤリと笑う。

 

「おい、これで満足か?」

 

「ああ、それでいいよ」

 

そう言うとドラえもんは腹部に付けられたポケットから、時計の絵がびっしりと描かれた風呂敷を取り出す。

 

「タイム風呂敷ー!」

 

「タイム風呂敷だと?」

 

「この風呂敷で物を包むと、その包まれたものの時間を進めたり、戻したりする事が出来る。これで彼の心臓が動いていた時まで時間を巻き戻せば、あるいは・・」

 

ドラえもんはニセアカギにタイム風呂敷を被せる。そして数十秒、その場の全員が固唾を呑んで見守ると、不意にニセアカギの心臓の鼓動音が聞こえてきた。そして次の瞬間、ニセアカギはタイム風呂敷を剝ぎ取って起き上がった。

 

「おい何を被せてんだ。俺はまだ死んじゃいねえぞ、縁起でもねえ」

 

ニセアカギが動き出したのを見て、ワシズや白服の男達は唖然としていた。

 

「そんな、確かに死んでいたハズの平山が生き返っただと!? そんな馬鹿な! ありえん! そもそもそんな簡単に人が生き返ってたまるか。それでは死に対する尊厳がなくなってしまう。人は一度死んだら決して生き返らないからこそ、死は尊いのだ!」

 

するとドラえもんがギロリとワシズを睨みつける。

 

「何言ってるんだ、その尊厳を平気で踏みにじるお前が、死の尊厳を語るな!」

 

「馬鹿者、敬意を表しているからこそ踏みにじるのだ。ゴミや犬のウンコを踏みにじっても何の感慨も湧かないじゃろ。踏みにじるものは、高価で尊いものほど良いのだ」

 

相変わらずトンデモ理論を宣うワシズに、ドラえもんは相手にするのもバカバカしく感じた。そんなドラえもんにニセアカギが言った。

 

「なあ、あんたが俺を助けてくれたのかい?」

 

「まあ、一応ね。のび太くんに感謝しなよ。ボクはのび太くんに頼まれてやっただけさ」

 

「おお、このガキか。ありがとうな坊や、あんたは命の恩人だぜ。あん時は絶対死んだと思ったぜ」

 

「ええ、まあ、うん。死んでたと言えば死んでたんだけどね。とにかく助かって良かったね」

 

「それじゃあよ、本当は何かお礼でもしたいところなんだがよ、生憎持ち合わせがなくてな。今後どこかであったら礼をするよ」

 

「お礼なんて、別にいいよ」

 

「そうか。太っ腹なんだなアンタ。それじゃこんな所、長居したくないから俺は行くぜ。もう裏の麻雀はこりごりだ、つくづく俺には向いてねえ。もう実家に帰って稼業でも継ぐよ。じゃあな、またどっかでな!」

 

そう言ってニセアカギは部屋を出ると、一目散にワシズの屋敷を抜け、外の暗闇に消えていった。

 

「それじゃボクらも行こう、のび太くん」

 

「うん!」

 

すると二人の体がフワリと宙に浮き、そのままパッと消えてしまった。

 

「うおっ、消えた!?」

 

周囲はざわざわ… とした。

ワシズはその信じられない光景に思わず足の力が抜け、尻餅をついてしまう。

 

「ウヒ、ウヒヒヒヒ、なんじゃこりゃ。あり得ない闘牌、人が生き返って、宙に浮いたと思ったら突然消えて…。馬鹿な、あり得ん。そうじゃ、これはきっと夢、本当のワシは、きっと暖かいお布団の中…」

 

そう言うとワシズは狂ったように笑い出す。

 

「ああー、ワシズ様が狂ったー!」

 

「いや、前から狂っていた。むしろこれは正常な反応なのでは?」

 

「そうだ、ワシズ様が正常になった」

 

「いや、正常に狂ったと言った方が正しい!」

 

「ワシズ様が正常に狂ったー!」

 

「ワシズ様が正常に狂った―!」

 

白服達は何故か皆大はしゃぎで喜び合う。その光景を見てワシズが言った。

 

「うるさい馬鹿共! 貴様ら全員東京湾に沈めるぞ!」

 

「おおー、ワシズ様が正常に怒ってるー!」

 

「ワシズ様―!」

 

もはやワシズの一喝ですら、白服達の意味不明な盛り上がりを抑えることはできなくなっていた。

 

 

 

一方、ドラえもん達は無事に現実の世界に戻っていた。そこでドラえもんはのび太に、起こった出来事を話した。

 

「へえ、そうだったんだ。ドラえもんて(スーパー)猫型ロボットだったんだねえ。でもそんな無理して大丈夫だったの?」

 

のび太にそう言われてドラえもんは改めて自分の身体の各々を動かしてみる。が、特に異変は見当たらなかった。

 

「大丈夫みたい。早々に決着がついて半荘の途中で終わったし、短い時間だったから大丈夫だったよ。もし本当に最後まで打っていたら、さすがにどうなっていたか解らないけど」

 

「そっかあ、良かった」

 

「でものび太くん、もう次は知らないよ」

 

「ごめんねドラえもん。あ、何か良い匂いがするー!」

 

その時、階下からのび太の母親である玉子の声が聞こえてきた。

 

「ドラちゃーん、のび太は上にいたのー? 早くしないとご飯が冷めちゃうわよー!」

 

するとのび太の顔がパッと輝く。

 

「あ、ママの声だー! わーい、ママー!!」

 

のび太は物凄い勢いで部屋を飛び出していく。ドラえもんはクスッと笑い、のび太を追って階段を下りていった。

 

 

雀鬼ドラえもん VSワシズ戦 完

 

 

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