「じゃあ、どうやってドラえもんをおびき出そうか?」
「そうだね。またのび太のヤツを痛めつけてドラえもんを引きずり出そうかジャイアン」
ジャイアンとスネ夫が真面目な顔をして言う。それを見て出来杉が呆れた表情を浮かべる。
「本当、キミ達は発想が小悪党だねえ」
「なんだと!?」
「おびき出すって何さ? もっと正攻法でいきなよ」
「正攻法だと?」
「ドラえもん君ほどの雀士なら、自分の麻雀にはプライドを持っているハズさ。だったら、正面から勝負を申し込めば断らないと思うよ」
「なるほど」
「ところでキミ達、積み込みは出来るの?」
「いや、オレ達は牌のすり替えと河からの拾い込み、それとコンビでの牌交換くらいだな」
「なるほど。頭を使わずに出来るイカサマばかりだねえ。確かに頭の悪いキミ達にピッタリの技だ。でも積み込みは違う。すべてを計算して積まなくてはいけない。それとサイ(サイコロ)の目も自在に出せなくてはならない。積み込みは芸術品なんだ。ゲスな他のイカサマとは一線を画している事を肝に銘じておいてもらうよ」
そうしてジャイアンとスネ夫の積み込みの特訓が始められた。そして、打倒ドラえもん計画は着々と進み、一週間が経った。
そんなとある日の昼下がり、のび太が自宅に帰ってくる。
ドラえもんはいつものび太の階段を上る足音には注意を払っていた。のび太に何かトラブルが生じるといつも足音が荒々しくなったり、逆に弱々しく小さくなったりするためだ。タンタンと軽い足取りで階段を上る足音が聞こえ、ドラえもんは安堵する。
(フフフ、今日ものび太君は特にトラブルはなかったみたいだ)
そう思った次の瞬間、目の前のふすまが開かれ、のび太が入ってきた。
「ただいまドラえもん」
「おかえりのび太君」
「ねえねえ、今日も麻雀教えてよー」
「それはいいけど、キミは物覚えが悪いからなあ。この前だって、ボクが教えたこと全然守れてなかったじゃないか」
「ええっと、そうだっけ?」
「それじゃあ、おさらいだよ。例えば124と持ってて、何か1枚切らなきゃいけないとしたら、キミは何を切る?」
のび太は腕組みをしてちょっと考える。
「えっと、4かな」
「駄目だよのび太君、ここからは1を落とさないと」
「ええー、どうしてー? 1を落としたら24って間が抜けちゃって恰好悪いじゃん。それより12って並んでた方がキレイでしょ?」
「この前教えただろ。12も24も3を持ってくれば同じ一面子じゃないか。しかも、24って持ってれば5をツモった時に2を切れば3の受けを残したまま45の両面ターツが完成するだろ。そうしたら、3に加えて6の受け入れが増えるんだよ。だから124って持ってたら1を切るのが基本中の基本なんだ」
「ああ、そう言えばそんな事言ってたような…」
「じゃあさ、689から一枚落とすとしたら何を切る?」
「それはもちろん6だよ。68って隙間が空いちゃって恰好悪いけど、89って順番通りに並んでいた方がキレイだもんね」
それを聞いてドラえもんは大きくため息をつく。
「あれ、何か間違ってた?」
「これもね、さっき124から1を切ったように、689って持ってたら9を切るのが定石なんだよ」
「そっかあ、さすがはドラえもん、勉強になるよ」
のび太は口では感心しながらも、ヘラヘラと笑いながら全く意に介していない様子でリュックサックを降ろそうとする。それを見てドラえもんは『きっと全然身についてないな』と思い、再び溜め息をつく。が、次の瞬間、ドラえもんがリュックサックに貼り付けられた張り紙に気付く。
「あれ、のび太君、何か張り紙がはってあるよ?」
「えっ?」
のび太がリュックサックを見てみるとA4サイズの紙が張られていた。
「何だろう?」
その紙には次のように書かれていた。
ドラえもん君へ
キミは麻雀が強いらしいね。ボクに未来の麻雀を教えてくれよ。
お返しにボクがキミに敗北の味を教えてあげる。
今週の日曜日、午後2時にスネ夫宅で待ってるよ。
敗北の味を知りたければ遊びにおいで。
出来杉 英才
「ええっ!? 出来杉くんがドラえもんに麻雀の挑戦状だって!」
「へえ、21世紀の人間がボクに麻雀で勝てるでも思っているのかな。フフフ、返り討ちにしてあげるよ」
「でもドラえもん。出来杉くんはドラえもんの実力をジャイアン達から聞いて知っているはずだよ。なのに何の勝算もなくドラえもんに勝負を挑むとは思えない。これはきっと罠だよ!」
「大丈夫だよのび太君。たとえ相手が出木杉君だって、ボクが麻雀で遅れを取る訳がないじゃないか。フフフ、日曜日が楽しみだなあ」
そうしてドラえもんは出来杉との闘いを承認し、日曜日を迎える。
しかし、この時ドラえもんは、麻雀勝負が手積みで行われる事を、まだ知らなかった。
続く☆