雀鬼ドラえもん   作:クリリ☆

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麻雀の牌姿(はいし)は
漢数字がマンズ(m)、英数字がソウズ(s)、〇囲み数字がピンズ(p)を表しています。

また、会話の中の牌の種類は、萬はマンズ、索はソウズ、筒はピンズを表しています。

※は最後に用語解説をしております。


天国の扉

天和(テンホー)をアガった直後、出来杉は涼しい顔をして洗牌を始める。それを見てドラえもんは違和感を感じた。

 

(天和と言えば一生に一度、アガれるかどうかの役満だ。普通の人がアガったならもっと興奮してハシャギ出すだろう。ボクの友達も以前天和アガった時、それを写メに撮っていたくらいだ。なのに出来杉君はそれをアッサリ崩してしまった。この冷静な行動、間違いなくあの天和は人為的に仕組まれたものだ…)

 

すると、ドラえもんの思考を中断するかのようにジャイアンが口を挟む。

 

「おい、早く山を積めよドラえもん。お前がやらないと次の局にいけないだろ!」

 

ハッと我に返ったドラえもんは、卓上を見渡すとすでに他の三人はほとんどもう牌を集め終わっている状況だった。

 

(しまった、ボクとした事が! 洗牌(※1)を妨害しなきゃならなかったのに…)

 

いきなりの天和に動揺をするドラえもんを見て、出来杉がニヤリと笑う。そして、出木杉はジャイアンとスネ夫に通し(サイン)を送る。

 

(フィニッシュホールド(とどめ)はOKかいジャイアン君、スネ夫君?)

 

(ああ、完璧だよ!)

 

二人からの通しを確認し、出来杉はサイコロを振る。出た目は1と1で、合計2だった。

 

「右2だね」

 

出来杉はジャイアンの山から取り始めた。それに続けて全員が配牌を取り進めていく。出来杉達はニヤニヤとイヤラシイ笑みを浮かべながら配牌を取るが、ドラえもんだけは表情がすぐれない。

 

「心配しなくてもいいよドラえもん君。2連続天和なんてないから」

 

「どうして分かるの?」

 

「それじゃつまらないからね。君にも少しは抗ってもらわないとボクも勝った気がしないからね」

 

「勝った気、ねえ…」

 

(フン、所詮は出来杉君もごく短い時の流れでしか生きない人間の考え方をする『あと味のよくないものを残す』とか『人生に悔いを残さない』だとか・・・便所のネズミのクソにも匹敵するそのくだらない物の考え方が命とりだよ! だが、このドラえもんにはそれはない! あるのはシンプルなたったひとつの思想だけだ。たったひとつ! 『勝利して支配する』。それだけよ、それだけが満足感よ! やはりキミは所詮人間だ。100%ロボットのボクには勝てない!)

 

すると出来杉は南を切って、そのままリーチをする。

 

 

「リーチだよドラえもんくん」

 

「くっ、もうテンパイか」

 

 

一方のドラえもんは、自分の配牌を見て唖然とする。

 

ドラえもん配牌。

 

 

二二二三三四四五五六六七七萬 (待ち:二三四五六七八萬)

 

(な、何だこれは! マンズの二から八までの7面チャン。地和チャンスだけど、そうじゃなくても倍満まであるぞ! が、僕は理牌(※2)もしていないのに、これは揃い過ぎている。これは3人の積んだ山から取った配牌だ。間違いなく罠が仕掛けてあるはず…)

 

 

スネ夫も一打目は中を打ち、ドラえもんのツモ番。ドラえもんは山をツモる手に力が入る。

 

二二二三三四四五五六六七七萬 ツモ九萬

 

 

(くっ、ツモれなかったか…)

 

ドラえもんはおもむろに九萬をツモ切りしようとした。が、その瞬間、背筋にゾクッと悪寒を感じて手が止まる。

 

(ま、待てよ。この手牌もツモ牌も全て出来杉君には筒抜けの公算が高い。となると、この九萬をツモ切るのは非常に危険だ。どうする…)

 

ドラえもんは対面の出来杉を見ると、出来杉は口角をつり上げて不気味な笑みを浮かべている。

 

(クソォ、何を切ったらいいんだ。読みが利かない、まるで真っ暗闇の中を全力で走り回っているみたいだ。くそ、恐怖心がまとわりついてくる…)

 

「どうしたのドラえもん君、一打目から長考かい?」

 

「くっ…。分かってるよ」

 

(駄目だ、九萬だけは切れない。かと言って他に何を切れば…。この手の中にまず間違いなく出木杉くんのロン牌がある。いや、逆に考えるんだ、この手の中で最も重要で切る事があり得ない牌、活路はそこにある!)

 

 

長考の末、ドラえもんは五萬を卓に強打する。

 

 

「フフフ、まさかそこが出るとはね…」

 

 

「どうだい、こいつは通すのかい? 通さないのかい?」

 

「キミの勇気に敬意を表すよ。でも残念、ロンだ」

 

「くっ、こっちが当たりだったのか…」

 

「フフフ、甘い考え。ボクが逃げ道を用意しておくとでも思ったのかい?」

 

 

「なんだって!?」

 

 

「キミの手牌、全部がボクのロン牌という事さ」

 

出来杉は自分の手牌をドンと一気に倒す。その牌姿を見てドラえもんは丸い目をますます丸くした。

 

一一一二三四五六七八九九九萬  ロン五萬

 

 

九蓮宝燈(チュウレンポウトウ)、48000点の一本場で48300点!」

 

「こ、ここまでやるとは…」

 

「どうだい、素晴らしいだろう。マンズの一から九まで、全てが和了牌の9面待ちさ。その美しさから別名、天国の扉(ヘブンズ・ドア)とも言われているんだ。他にも天衣無縫とも呼ばれているよ。ドラえもん君を葬るに相応しい役満さ!」

 

「何が、このままじゃ勝った気がしない、だ。最初から手を抜く気なんてサラサラないじゃないか!」

 

「そうさ、手を抜いたらキミに失礼だろ? それに2連続天和よりも、サシで勝負してるキミから直撃したほうが効率がいいからね」

 

「くっ、甘かった。出来杉君、キミはロボットのボク以上に人間としての感情がないらしい」

 

そうして1回戦目の結果が以下のようになった。

 

東家:出来杉;73000⇒121300

南家:スネ夫;9000

西家:ドラえもん;9000⇒-39300

北家:ジャイアン;9000

 

この点数にさらに1-3のウマが加わり、最終結果は以下のとおり。また、同点のジャイアンとスネ夫は着順差でスネ夫が2着となった。

 

出来杉:+91+30(ウマ)+20(オカ)=+141 (※3)

スネ夫:-21+10=-11

ジャイアン:-21-10=-31

ドラえもん:-69-30=-99

 

するとジャイアンが言った。

 

「ハッハッハ、いいザマだなドラえもん! それと、点5ってのは千点5千円って意味だからな! 払いも忘れんじゃねえぞ!」

 

「千点5000円だって!?」

 

「最初に確認しなかったお前がいけないんだからな! 半荘1回で49万5千円。もう一局打ったら100万は見込めるぜ」

 

すると、ドラえもんの後ろで応援していたのび太が泣きそうな声で言った。

 

「そ、そんなあ…。どうしよう、ドラえも~ん」

 

 

 

続く☆

 




※1 洗牌(しーぱい)
牌をかき混ぜる事。
手積み麻雀の場合は特に、相手の積み込みを妨害するために洗牌がより重要となる。


※2 理牌(りーぱい)
手牌を見やすいように並び替える事。
上級者は理牌しないまま打つ事ができるが、和了時には見やすいように並び替えてから相手に見せる事がマナーとされている。


※3
ウマ:順位点:着順について増減する点数

オカ:トップの人だけがもらうボーナス
通常は3万点を基準として、全員が-5点の状態(25000点)でゲームがスタートする事が多く、その差額はトップが総取りする仕組み。
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