雀鬼ドラえもん   作:クリリ☆

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麻雀の牌姿(はいし)は
漢数字がマンズ(m)、英数字がソウズ(s)、〇囲み数字がピンズ(p)を表しています。

また、会話の中の牌の種類は、萬はマンズ、索はソウズ、筒はピンズを表しています。

※は最後に用語解説をしております。


風前の灯火

 

「さあ、次行こうか」

 

一回戦目を終え、圧倒的勝利を収めた出来杉は一回戦目の成績を記録すると、再び牌をかきまわし始めた。ドラえもんもそれに続く。

 

(勝負はココ! 洗牌(シーパイ)の時だ! 山を積んでいる時点で勝負はすでに終わっているんだ!)

 

ドラえもんは三人の積み込みを妨害すべく、牌に手を伸ばす。その瞬間、ドラえもんの左頬をジャイアンの拳が打ち抜いた。その衝撃でドラえもんは椅子から転げ落ちる。

 

「うわあ、何をするんだ!?」

 

「おっと、悪ぃ悪ぃ。洗牌(シーパイ)に夢中になってて、つい手に力が入っちまったよ」

 

 

ドラえもんがヨロヨロと起き上がって卓上を見ると、すでに三人は山を積み終えた所だった。

 

 

「さあ、ドラえもん君、あとは君の山だけだよ」

 

「くっ…」

 

結局積み込みを阻止できないままゲームは開始される。

 

 

「それじゃあ、最後にアガったボクがサイコロを振るよ。出た目が親だ」

 

 

出来杉は2つのサイコロをつまみ上げる。そのサイコロは、下の方向は2と3が向いていた。

 

 

(出したい目を下に向けて1回転半転がる力で転がす。5を出せばボクの起親(チーチャ)(※1)だ。そして、ダブル役満になる手を積んである。天和(テンホー)で全員トバしてゲーム終了だ。残念だけど、ドラえもん君のターンは無い!)

 

 

出来杉はサイコロを転がす。コロッと直線的に回転し、その回転が止まりかけたその瞬間、ドラえもんは卓の脚を蹴飛ばした。すると、その衝撃でサイコロの回転が乱れ、2と6の目が出てしまう。それを見てドラえもんはニヤリとする。

 

 

「左8(ひだりっぱ)。スネ夫が親だね」

 

 

するとジャイアンがドラえもんの胸倉をつかみ上げる。

 

「おいてめえっ、どういう了見だ!!」

 

「ごめんよ、ちょっと伸びをしたら足がぶつかっちゃってさ」

 

「フザけた事言ってんじゃねえ。こんなの無効に決まってんだろうが!」

 

 

すると、出来杉が笑いながらジャイアンの肩をポンポンと叩く。

 

 

「まあまあジャイアン君、別にいいじゃないか。出た目と倒された牌は、たとえ神様だって変える権利はない。違うかい?」

 

「でもよお」

 

「この一線を超えたら、もう何が何だか解らない。大丈夫、これも想定の範囲内さ」

 

「そうか。まあ、お前がそう言うんならいいけどよお」

 

「その代わりだ。今度サイコロが転がっている間に卓に衝撃を加えた場合は、いかなる理由があろうと全員に役満分の支払いだ。いいねドラえもん君?」

 

「分かったよ…」

 

「うん。それじゃゲーム再開だ」

 

東家:スネ夫

南家:ドラえもん

西家:ジャイアン

北家:出来杉

 

この席順でゲームは開始される。すると出来杉はチラリとスネ夫に一瞥を送る。

 

 

(スネ夫君、ボクは自分が親じゃない時を想定して二段構えの積み込みができている。それに、キミ達に仕込んだ積み込みも、そういう事態を想定したものなのさ。さあ、3の目を出してくれ)

 

(でも、ボクはダイスの目を操作する技術は持ってないよ…)

 

(大丈夫、そのサイコロはすでに必ず3の目しか出ないように仕組まれているグラ(サイ)にすり替えてある)

 

(グラ賽?)

 

(ああ、中に重りが入っていてわずかに重心がズレている。だから、何度振っても決まった目しか出ないサイコロさ。ボクは賽の目を自在に出せるから必要ないけど、万が一ボク以外が賽を振る可能性を想定して準備しておいたものさ。)

 

(なるほど、そりゃいいやww)

 

 

スネ夫はニヤリと笑い、サイコロをおもむろに転がした。

するとサイコロは1と2の目が出、合計で3となった。

 

「対3。ジャイアンの山からだね」

 

配牌はジャイアンの山から始まり、スネ夫の山で終わった。ここまで3戦、ドラえもんの積んだ山は一牌も使われていない。

ドラえもんは配牌を見ると、様々な種類の牌が入り混じっており、一瞬安堵する。が、それも束の間。スネ夫、ドラえもん、ジャイアンと第一打牌を済ませ、出来杉が山をツモる。すると出来杉は、ツモった牌をそのまま卓の縁に叩きつける。

 

「ツモ!」

 

「なっ!?」

 

出来杉は一気に牌を倒す。

 

一一一五六七m7788s②③④p  ツモ8s

 

地和(チーホー)! 8000・16000!!」(※2)

 

「な、なんてヤツだ。事前に誰が親になっても構わないように山を積んでいたなんて」

 

「フフフ、まあ、その分火力は下がっちゃったけどね。本当なら東2局が来ることはない予定だったのに。でもその分、キミが苦しむ時間が増えただけだと思うけどね」

 

「くっ…」

 

 

そうして東1局の点棒の清算が終わる。

 

スネ夫:25000点⇒9000点(―16000)

ドラえもん:25000点⇒17000点(―8000)

ジャイアン:25000点⇒17000点(―8000)

出来杉:25000点⇒57000点(+32000)

 

続く東2局、ここまでドラえもんは何もできないまま、この戦いの中で初めての親番を迎えた。

 

続く☆

 

 




※1 起家(チーチャ)
ゲーム開始時に親番である事。強者は起家を好み、弱者はラス親(北家スタート)を好む傾向がある。


※2 地和(チーホー)
子の第一ツモで和了する事。どんな形であれ役満扱いとなる。
なお、子が他家の第一打牌をロンする事を人和(レンホー)というが、取り決め次第では役満扱いになる場合があるが、ローカル役満なため注意が必要。
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