シャロン准将は金でしか動かない――地球防衛軍は地球を守らない   作:むーんしゃいん

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ユートピアなディストピア

 

    「自由は金でしか守れない」

                 マンガ「インベスターZ」より

 

 

《地球圏 大統領官邸》

 

 なんで護送車に乗らされてるのか。

セダンの座席で待たされたシャロン准将の不遇をかこつ気持ちは強い。

 

 自分でドアを開けたい衝動に駆られる。これは小学生が非常ボタン押したがる理論である。

カリギュラ効果や心理的リアクタンスなんてダサい名前ではない。

 誰がなんと言おうと、これは「小学生が非常ボタンを押したくなる症候群(シンドローム)」だ。

 

シャロン准将の胸ポケットのスマホ(アウラ)が振動し電話に出る。

 

 防弾仕様の高級車から、猫耳少女大統領が記者に場末の酒飲みのおっちゃんみたいな手の揚げ方をしながら、官邸のエントランスに入ってきた。

メディアが一様にカメラを向ける。猫耳少女大統領秘書官の質疑応答。

一語一句決められた定時会見していた。

 

 大統領護送の車列。セダンチェア・ワンの4台後ろ。防弾じゃない黒塗りのセダンにシャロン准将は乗って待っていた。

 

 金髪の腰まで伸びた長髪にキリッとタイトスカートにジャケットとトレンチコートを着込んだシャロン准将はスマホで電話をしている。

 

「…ええ。かしこまりました。申し伝えます」

 

 他の地球防衛軍(E D F)幹部に情報を連携するため、取り急ぎスマホを掛ける。

防弾じゃないセダンのドアを警護官がやっと開く。スマホのコールの最中だ。

 

「おそいよー ありがとう」

 

 文句を言いながら、警護官に笑みをこぼすシャロン准将。バニラ転属から3年後だ。

 この星の要人は大体が数え年になると恐ろしいことになる。

シャロン准将は見た目は変わらず20代だった。

 

 大統領執務室で作業をしている猫耳少女大統領に

25日の給料日にウキウキしたシャロン准将はファイルケースを14冊持ち訪れた。

 

「…今朝の地球防衛軍(E D F)のプロジェクトを持って参りました。大統領閣下」

 

 地球防衛統合省からワザワザ上司にしてヒマ人に仕事もってきた。

感謝してもいいし、褒めてくれてくれたら喜びます。

シャロン准将は秒単位で動いている猫耳少女大統領に、そんな事を思っていた。

 

「はいはい。それでシャロン准将。何か良い話は…?」

 

 大統領は良い話の隠語を踏むが、シャロン准将は絶対に地雷は踏まない。

議員に持ってくる儲け話はまだないよ。はにかんだシャロン准将は、猫耳少女大統領に微笑む。

 

地球防衛宇宙軍(E D S F)の幕僚議では、基本自治法草案は賛成を得れないと思われます」

 

 大統領閣下の血縁一族合わせての流動資産の桁が2個たりないですね。シャロン准将は満面の笑みである。

 

「…そういう政治の話じゃない。別の話よ」

 

 准将はまだしらを切る気か。まじでどうすればいい。猫耳少女大統領は心底残念そうだ。

猫耳少女大統領は字だけはやたら上手く、万年筆を走らせる。

 

「こちらにもサインを。あと、こちらの承認欄にも、記入を願います」

 

 そもそもがアウラが成功したからって、猫耳少女に手術するかな。シャロン准将が細く美しい指で、ペラペラとページをめくりながら、書類の筆記事項を指差す。

 

 事後承諾も許される地球政府は、官僚で始まり官僚で終わる完全官僚主義の世界である。

社会的責任だけ取らされる大統領も、まったく、かわいそうではないが。かわいそうだ。

 

 もうちょっとスマートな統治整備が出来てもいい。シャロン准将はふと思いついた。

 

「でも、思うの。中身を見ないとねー」

 

 新しいおもちゃEDFで作ろうぜ。とか。そういった雨後旬筍(うごしゅんじゅん)な代わり映えのしないファイルケースの一枚を大統領は手に取った。シャロン准将は絶対、頓挫すると思ってたので関わっていない。

 

「仰る通りです。大統領閣下」

 

 猫耳少女大統領もこの資料は関係官僚と話ついてるのを分かっていた。

つまり、ほぼ決定事項である。シャロン准将は、すぐさまスマホのアウラを呼び出す。

 

「アウラ。大統領閣下にお見せするRAMIA計画の写真と概略をプロジェクターに…」

 

 シャロン准将のスマホに3Dアウラが出てくる。

 白いジト目のどこかクールなアウラは、猫耳少女大統領に大げさにお辞儀をする。

アウラが、シャロン准将と大統領の身の丈に合わせた即席のプレゼンテーション資料をすぐに作り上げた。シャロン准将は出来た資料をパラパラと一読し、自分の癖の付いた内容である事を確認した。

 

「昔、見た頃と変わらず。アウラちゃんもかわいいわね」

 

 昔、アウラは地球のメディアで有名人で、EDSFルーンラビット(戦略型アンドロイド)をしていた経緯もある。

 猫耳少女大統領は、なぜ、そんな代物がシャロン准将のスマホに入っているのかは当人たち以外、誰も知らない。知りたくもない。

 

 うん。アウラはかわいいよね。それに本案(これ)、絶対アウラのほうが詳しいよ。シャロン准将は書類の内容をイチから説明を始める。

 

 中身は地球でいくつも敵性民族が暴れているから。ナノマシンで子供を出来なくして、民族規模でお家断絶させようぜ。そんな計画だ。

 

 シャロン准将のナノマシン(RAMIA)の第一印象は。

 全体主義をこじらせた地球防衛軍(E D F)精神に則った研究計画だった。

 

 EDFは、こんな人類滅亡の因子を増やすような提案ばっかりしてる。もっと、面白い事しようよ。儲け話とかさ。シャロン准将はお金のために生きている。

 

 猫耳少女大統領にとっても、些末(さまつ)な事案のようだった。

 

 1時間ほどでプレゼンは終了した。

 

「…とてもわかりやすかったわー。さすが、アウラちゃんが作ったプレゼンね」

 

 この原案は地球防衛陸軍(E D G F)の業務内容である。シャロンの出身母体は地球防衛宇宙軍(E D S F)であったが、大体知った内容だった。シャロン准将は笑みを浮かべる。

 

「お疲れ様でした。大統領閣下」

 

 変に嫌がらせをしてもコイツはなかなか動かないし。もう四の五の言ってられ無いな。猫耳少女大統領はシャロン准将の話をし始める。

 

「ところで、あなた。会社を経営しているようだけど。コツを教えてほしいわ」

 

 毎回、人のプライベートを調べないで頂けますぅ?シャロンは苛立ちを満身の笑みで返す。

 猫耳少女大統領はシャロンの素性をこの1年間、ずっと興信所で洗っていた。機密費ではなく

大統領の自費だ。

 

「いえいえ。税金対策の幽霊企業(ペーパーカンパニー)です」

 

 猫耳少女大統領は、シャロン准将に対してのかまってちゃん度は、ヤンデレのラブに近かった。

勘弁してほしい。と、シャロンは顔には出さないが思っている。

 

「ほかにも、零細企業。上場企業を所有しているそうね。ひとりに会社が3つもいるかしら?」

 

 標準時2年前。シャロン准将は革新的な艦船の機密ドアを売っている会社を公開買付(T O B)で安く買い叩いた。それが上場企業に化ける。

 名義を借りてもバレてた。まあ、大統領に表の会社知られても問題ないか。と思いつつシャロン准将は大統領に否定する。

 

「大統領閣下。僭越ながら。私に商才はありません」

 

 成功しているのは他人任せの経営だ。自分は秒で破産した過去があるビビるほど商才のない

シャロン准将は、極めて残念そうな意を述べる。

 EDFの銭で暮らしていたシャロン准将を、猫耳少女大統領は(フェイク)を張っている。と、勘違いしたようだ。

 

「興味はあるでしょ」

 

「仰る通り。多少は興味はあります」

 

「じゃあ、リッカの会社で勉強させてあげる」

 

 大統領は目を輝かせる。シャロン准将は、即座にパワハラ拒否権を発動する。

 

「いいえ、結構です。大統領閣下」

 

 どこかバツが悪そうな大統領がいる。

 

「今度、一緒に飲みに行く必要があるわね」

 

 お金減らすのやだなー。シャロンが内心、号泣しながら笑みを返す。

EDF隊員が、他人に奢られるなんて、私、接待受けてます。と公言するようなものだった。

 

「いい店知っているから、安心しなさい」

 

 総合職は、議員に説明するのが仕事みたいなものだけども。シャロン准将の裏家業とって、猫耳少女大統領とつるんで良いことはない。

 

「はい。ぜひ、お供させて頂きます」

 

 絶対冗談で言ってるし適当に取っておくか。シャロン准将は大統領執務室を後にした。

 

 

《地球圏防衛統合省。軍務補佐官室》

 

 シャロン准将の両隣にメガネとイケメンの軍務補佐官が居る。

 メガネ坊主の女性。階級はEDGF大尉だ。イケメンの階級はEDSF男性中尉だ。

シャロン准将とは畑が違い、名門大を出ているエリート幹部だ。

 

「シャロン准将。大統領閣下のご機嫌はいかがでした?」

 

 口が達者なイケメン中尉が、ノーパソで大統領の定例会見の台本を書きながら、シャロン准将にお伺いを立てる。

 

「あー、そうねー」

今日のシャロン准将の大統領落雷確率を叩き出す。

 

「5%ぐらいだね。調子はいいんじゃないかな」

 

 ソースは秘書官だ。朝に行くついでに内情を聞いてきた。

エリートと名のものに厳しい庶民派大統領である。

あーだ、こーだ。ケチを付けられるの勘弁だ。

 

「それはよかった」

 

 最初は出身大の違いで仲違いしてたが、最近の関係は大分マシだ。

 

 シャロン准将とこの二人、そして、他15名で大統領府業務を回していた。

 

 3年後の辞令では、おそらく、星系揚陸艦業務かもしれないが。それまでは、地球滅亡のお手伝いをすることになる。

 

地球防衛陸軍(E D G F)のRAMIA計画は、軍部でも前評判悪いらしいですが」

 

「大統領が承認するとは思えないですけど…」

 

「あ、今朝。ストックの全部の承認を得たんだけど。RAMIA計画もあったね」

 

 イケメン中尉が、14枚の中からRAMIA案件を引き出して開いた。大統領の署名が書かれている。

 

「うわー。承認されたんだ」

 

 それだけ、シャロン准将と猫耳少女大統領の関係が厚いということだろ。二人は勝手に納得しながら、自分たちの席に戻った。

 

 RAMIA計画か。まだ、開発段階だよね。少し探りを入れてみるか。

 RAMIA計画の実利と予算規模に違和感が残るシャロン准将は、EDGFの研究機関を訪れるために、スマホを取り出しEDGFの根回しをし始めた。

 

 内線でEDGFの研究機関と話しているとメガネ大尉がシャロン准将に変な手紙を差し出した。

 

「後で読んで下さい」

 

 それを無視して、シャロン准将は自分のデスクの内線を取る。

 

「お世話になっております。軍務補佐室のシャロンと申します。そちらは管理課でよろしかったでしょうか?」

 

 シャロン准将は、手持ち無沙汰なので何気なく手紙を開く。

 

「本日の11時に見学を申し入れたいのですが」

 

 ぱっと見、タロットカード占いの結果らしい。メガネ大尉の趣味だった。ほんと、多芸な御仁である。

 

「ええ…、はい。記入申込みは終わっています」

 

 未来面では、塔の正位置が出ているらしい。特に内容を見ず、メガネ大尉の診断結果を折るとデスクのクリアファイルに入れる。

 

「仰る通り。ええ…」

 

 そんなものね、こちらが無理言ってるのは分かってるんだよ。そちら様の愚痴聞く余裕はないのでね。シャロン准将は話を折る。

 

「つまり、管理課が多忙という理解で間違いないでしょうか?」

 

「EDGF技研では、監査をする際のその様な対応ですか?」

 

 シャロン准将は私的な見学を誤解されるようにうそぶく。

 

「私の考えを明言しておきます。組織を守るは大事ですが。貴方の旧態依然の考えでは業務に支障があると判断せざる得ません」

 

 気負けした電話口の相手にシャロン准将は話を切り上げることにする。

 

「では、本日の11時によろしくお願致します」

 

 多少の無理でもテンポよく行かねば上手く行かない。シャロン准将は内線を切った。

 




カリギュラ効果 「禁止されていることに対して興味が沸き起こる心理現象であり、日常生活やマーケティングで活用されています。具体的な活用例には、CM前の「ピー」音やホラー映画の警告、会員登録者限定の情報公開などがあります。」
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